緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第175弾 鬼の穴

「ここか?」

俺達は山の奥に入り、多恵ちゃんに案内してもらいその場所にやってきた。

そこは、一言で言えば、闇の穴だった。

ぽっかりと開いたその空間のそこは見えない。

まるで黄泉の国に繋がっているという印象すら抱かせる。

「お館様」

まじめな顔をしたジャンが信冬に歩み寄ってきた。

「ジャン報告を」

「はっ! この下に鬼がいるのは間違いないと思われます。1体と断言はできませんが・・・」

「ふむ」

信冬は辺りを見回しながらしめ縄のような縄が張り巡らされているのを見ながら

「結界の強度には問題ありませんね。おそらく、1000年は持つでしょうが・・・」

それは鬼が出てこれないというだけであり、外部への干渉はできる。

そう、信冬が説明してくれた。

つまり、こいつを放っておくと次々と多恵ちゃんを使い、鬼は人間を食らうということだ。

「どうする信冬? 降りるのか?」

「ええ」

といいながら、信冬も髪が金に発光するとその目を闇の中に向ける。

視覚強化のステルスを使ったらしいな

信冬が納得したように頷くと

「幸村」

「はい!」

「先行して下りなさい。 決して油断なきように」

「はい!お館様!」

「・・・」

にしても、ジャンといい幸村といい・・・

普段の様子からは考えられない姿だ。

きっと、こいつらは昔からこんな仕事をこなしてきたんだろう。

「優希?」

にこりと信冬が微笑んでくれる。

こんな子が俺に無条件に好意を寄せてくれている。

それはきっと幸せなことなのかもしれないが・・・

信冬と結婚するということは自然とこういった仕事に関与することになるんだろうな・・・

「なんでもない」

「そうですか? あなたには私が鬼と戦ってる間私の後ろを守ってください」

「っ!」

幸村の目がくわっと見開いた。

それは俺の役目なのにという目だ。

「い、いいのか? 幸村の役目なんだろそれ?」

「いいのです。幸村には遊撃を勤めてもらいます。分かりましたね」

「はい・・・」

納得はしていないがしぶしぶといった感じだな・・・

「では行きます」

と、幸村がするすると、縄を伝って穴のそこに降りていった。

続けて、ジャンが

「では行ってまいりますお館様」

「気をつけてください」

「ワハハ、お任せを、少年も後でな」

と、ジャンはそのまま、縄も使わずに飛び降りていってしまった。

まあ、あいつなら死なないんだろうが武器忘れて行ってるぞ。

バスターソードやチェーンガンといった武器はがけの上に置かれている。

おそらくジャンの能力からして問題ないんだろうが・・・

「俺達はまだ、行かないのか?」

と、信冬に聞くが信冬は頷きつつ

「多恵さん、鬼の情報をもう一度」

幽霊の多恵ちゃんは頷くと

「鬼といっても角の生えた鬼じゃないの・・・あの存在がなんだのかはもう、分からない。

ゾンビみたいなもの」

やはり、聞いてもよく分からんな・・・

バイオ○ザードのゾンビみたいなもんがいるのかこの下には

「異能の力を持つものが死してもなお、活動するのはありえないことではありません。ゾンビなどその典型です」

と信冬がいうのでいやな予感がして

「な、なあ信冬」

「なんですか?」

「ゾンビなんてこの世にいるのか?」

「ええ、妖狐だってゾンビだっていますよ」

まじか・・・

この子に関わると現実ががらがらと崩れていくような感覚に陥るよ・・・

「優希の椎名の家でも武田と同じ活動をしてるはずですが・・・」

聞いてないから!

「その紫電はステルス殺しと同時に霊を切ることもできるんですよ?」

知らなかった・・・

「まじか!」

「はい、まじです」

と、信冬に言われて俺はため息をついた。

鏡夜当たりは聞かされてるんだろうが俺はごたごたで説明してもらってないからな・・・多分

「ん? てことは姉さんもそんな霊と戦ったりしてるのか?」

「水月希お義姉さまも昔、鈴・土雪土月花で相当、戦ったらしいですよ」

鈴・雪土月花は姉さんが所属していたチームだ。

土方さんもそこに所属していた。

「それって土方さんも・・・」

「・・・」

土方さんの名前をだした瞬間、急に信冬のまとうオーラーが変わった気がした。

「の、信冬?」

「私は認めてません」

「へ?」

「あの人が・・・さ・・・んて」

よく聞き取れなかったがまあ、触れないほうがよさそうだな・・・

そこまで考えたときだった。

ドオオンと爆発音がしたかと思うと遥か下で何かが光ってる。

あれは、戦闘の光か?

「信冬!」

「はい、行きます!多恵さん」

「はい!」

ジャンと幸村が鬼と戦闘を始めたんだろう。

俺達は信冬の風を纏い、闇の中に降下していった。

いよいよ、鬼退治本番か

 


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