緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第171弾 温泉パニック(裏)後編―命をかけた男達の物語-さらば村上また、会う日まで!

おかしいぞ

 

ジャンの悲鳴の一分後、果てしなく続く廊下を武藤と走りながら村上は思った。

 

(こんなにこの宿は広かったか?)

 

ある程度は鍛えている大の男が全力で駆けているのに端にたどり着かない。

まさか……

 

「武藤これは……」

 

村上が必死に走る最後の仲間に言った時

がしゃああああんと二人の後ろの部屋からドアを突き破って髪を前に垂らした白い服の女が飛び出してきて四つん這いになった。

そして、手二つと足を二つを使いまるであの生き物を連想させる動きで村上達を猛然と追い始めた。

辺りは昼だと言うのに薄暗く、髪を前に垂らして陸上選手並みの這ってくるその姿は恐怖以外なんでもない。

大多数は悲鳴を上げて失神するだろうが村上達は必死に逃げる。

 

「だ、駄目だ追い付かれる!」

 

端の見えない廊下を走りながら武藤が顔を青くして言った。

部屋に飛び込んで行き止まりならそこでエンドだ。

ならば……

 

「悪霊を迎撃するぞ!」

 

 

言いながら村上はMP5のバリエーションHK94を取り出した。

 

「まじかよ!幽霊に銃が効くのか!」

 

そう言いながら武藤もパイソンを取り出した。

 

「やるしかない!撃て!」

 

村上は平賀さんに改造してもらったフルオートで悪霊に向かい9ミリパラべラム弾、357マグナム弾が女……いや、悪霊に命中する。

肩、手、腕頭以外に全て命中するがまったく悪霊には効果がなく速度は落ちない。

 

「だ、駄目だ!」

 

「きぃあああああああああああああああ!」

 

女は恐ろしい雄叫びをを上げてバンと四つ足で飛び上がると武藤に飛びかかった。

 

「うわぁ!」

 

「武藤!」

 

悪霊に組み伏せられた無敵は叫んだ

 

「行け!村上!後は頼んだ!」

 

武藤は悪霊に引きずられて近くの部屋に引っ張り込まれそうになるのを柱を掴んで抵抗していたが悪霊の力は凄まじいらしく、指が一本一本離れていく。

 

「ぐお!何やってんだ!村上行け!俺達の……男のロマンを敵えろぉ!」

 

「分かった!」

 

村上が走り出すのと武藤の手が離れ、部屋に引きずりこまれるのは同時だった。

「うわあああああ!」

 

武藤の叫びが聞こえたが村上は止まらなかった。

ただ、全力で駆けると階段をかけ上がった。

 

直後、ガサガサガサガサと階段の下に悪霊が現れた。

村上は息を殺して様子を探る。

階段の前は三つ道がある。

村上がいる階段に、まっすぐに進む、左の通路だ。

悪霊は村上を見失っているのかもしれない。

 

(レキ様どうか私に祝福を……)

 

村上はレキに祈ったが運命は無情だった。

ガサガサガサガサ

 

(ちっ!)

 

階段を上がってくる悪霊

村上は走り出した。

村上が倒れたら全滅だ。

ジャン、武藤の熱き思い(ただし覗き)を胸に村上は走った。

「死死死死死死死死死死死死死死死死死」

 

悪霊は呪詛のように言葉をはきながら村上を追った。

 

「ここだ!」

 

ある部屋に村上は飛び込んだ。

響によればこの部屋は女性従業員用宿泊施設だったらしいが数年前に客の苦情で使用が中止された部屋だ。

なぜなら、その部屋の窓からは女湯が丸見えになるからである。

例え一目でも見れればいい!

村上は部屋に飛び込んだ

 

「な、なんだと!」

 

彼の女神(レキ)は微笑まなかったようだ。

なんと部屋の窓は雨戸が閉められ、しかも板を釘で打ち付けて固定されていた。

旅館側も馬鹿ではないということか……

 

「くっ!」

 

村上は慌てて、ドアを閉めて鍵を駆けた直後

 

「きぃあああああああああああああああ!」

 

バーンと悪霊が扉に激突した音がした。

続いてドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンと扉を激しく叩く音

扉はメリメリと音を立て始めた。

 

「もはや……これまでか……」

 

村上は諦めてポケットに手を突っ込んだ。

 

(ん?これは……)

 

取り出して村上ははっとした。

まだだ!

村上は窓に向かい短機関銃をフルオートで撃ち尽くした。

 

直後に悪霊がドアを破って飛び込んで四つん這いになりゆっくりと村上に歩く

まるで、村上にはもう逃げ場がないとわかっているかのようにだが、レキ様ファンクラブ会長は伊達ではなかった

 

「悪霊!」

 

村上は左中指でかちゃりと眼鏡をかけ直すと短機関銃を悪霊に向けた。

 

「私の勝ちだ」

 

「死死死死死死死死死死死死死死死死」

 

だが、そんなものは効かないと悪霊は思っているのだろう。現にさっきは効かなかった。

 

「ふっ」

 

微小すらする村上に悪霊は何かを感じ取ったのか

 

「きぃあああああああああああああああ!」

 

奇声を上げて村上に飛びかかる。

 

「ふっ、なめるな悪霊」

 

トリガーを引いた瞬間、大爆発が部屋で巻き起こった。

 

ドオオオオオンと爆発音と共に村上は爆風で短機関銃の掃射でぼろぼろになった窓を突き破って外に投げ出された。

炎の中で悪霊が髪で見えないが

村上に問いかけている気がした。

すなわちお前は何者だと

村上は空中で

 

「レキ様のレキ様だけのレキレキファンクラブ会長村上正だ。覚えておけ悪霊!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシャアアアアン

直後、村上は水しぶきを上げて背中からお湯に突っ込んだ。

「くっ!」

 

ここがどこかは分かっている。

女湯だ!

 

「レキ様!」

 

村上は辺りを見回す。

そこは乙女の桃源郷だった。

アリア、理子、信冬、ジャンヌ、秋葉、綴。

みんな湯船に浸かっていたがビックリした顔で湯船の中でから温泉中央に落ちた村上を見て固まっている。

そう、みんな丸裸だ。

だが、レキだけがいない。

 

「あ、ああああ、あんた……」

 

アリアが怒りにわなわなさせながら全員が慌ててバスタオルを巻いた。

その時

 

「村上ぃ、覚悟できてんだろうなぁ?」

 

と綴がバスタオルを巻いてゆらりと立ち上がった。

全員が立ち上がり、激怒した状態で村上を取り囲む

バスタオルを巻いたとはいえ、バスタオル一枚の美少女達に取り囲まれる状況、ジャンや武藤なら狂気しただろう。

だが……

 

「貴様らの裸なんか一文の価値もないわ!興味なし!レキ様だけが究極の美しさを兼ね備える女神だ!」

 

「「「「「いいたいことはそれだけか(ですか)(かな?)」」」」」

 

殺戮の嵐が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後ずたぼろになった村上をそれぞれの武器や足で小突き回しながら、ジャンヌが看破した村上の眼鏡を踏み潰して焼却した後、彼の今日最大の悲劇が襲う。

ひたりと裸足が村上には見えた。

 

「おお……レキ様……」

 

ボロボロだがなんとか村上は意識を保ち、武偵高の制服のレキを見上げる。

 

「……」

 

レキは無表情に彼を見下ろしていたが

 

「村上さん」

 

なんとレキが村上に話しかけてきた。

村上は狂喜しながら返事をする

 

「はい!」

 

「ワタシハアナタガダイキライデスキモチワルイ」

 

完全な棒読み、明らかに誰かが指示して言わせた言葉だが村上の精神は砕けた。

 

「うわああああああああああああ!」

 

泣き崩れる村上を見ながら女子達は少しやりすぎたかなと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村上達が撤去された後のお風呂では

 

「いやぁ、それにしても信ちゃんの幻術すごいねぇ」

 

理子がぱちゃぱちゃ泳ぎながら言う

 

「あの女性のことですか?女将さんに聞いて再現したんです」

 

と、信冬は顔をタオルで吹きながら言った。

 

「しかし、見事なものだ。自分の分身に幻術を兼ねた複合ステルス」

 

「もう、補充しないと使えませんけどね」

 

そう、あの悪霊の正体は信冬の分身だ。

それを理子が特殊メイクをして、更に、信冬は幻術のステルスを使い村上達を翻弄した訳だ。

因みに、分身は性格まで変えられるらしく、あれは信冬の性格ではない。

そして、時間がたてば消えるが、信冬自身の風林火山も使えるため、村上達の銃弾も効かなかったのだ。

ジャンも信冬とは気づかなかったものの、信冬には勝てない

因みに、三人は部屋にぶちこまれ綴とマリの尋問受けているがまあ、制裁されたし死にはしないだろう。

 

「あいつ、あたし達の裸見たくせに興味ないなんて……別に見られたくないけど許せないわ!」

 

とアリアが言った。

まあ、お前らは女ではない見たいな言い方されたら誰でも怒るだろう。

 

「クフフ、最後の一撃聞いてたねレキュ」

 

「……」

 

レキは無言でハイマキを洗ってやっている。

そう、レキにあの棒読みを言わせたのは理子だ。

 

「それにしても……」

 

ジャンヌは爆発した窓を見上げながら

 

「村上め……まさか、武偵弾なんか使うとはな」

 

爆炎はジャンヌが氷で消し止めたが謎が残る

 

「信冬、村上はあそこで何と戦っていたんだ?」

 

「分かりません。私の分身は武藤さんを捕らえた後時間切れで消えましたから」

 

「夢でも見てたんじゃないの?」

 

と理子

 

「うーん」

 

ジャンヌは窓を見上げながら村上が明らかに誰かとしゃべっていたのが気にかかったが終わったことをごちゃごちゃ言っても仕方ない。

 

「まあ、別にいいがな。ふー、いい湯だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある暗闇

 

ガサガサガザカザ

 

「死死死死死死死死死死死死死死死死死死村上死死死死死死て死死死死驚嘆死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死」

 

 

 

 


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