緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第169弾 温泉パニック(裏)―命をかけた男達の物語前編

それは数日前に遡る。研修旅行の準備をしていた村上にある電話がかかってきたのだ。

 

「やあ、村上君」

 

「お、お前は!なぜ、あなたが」

 

「ふ、ロリコンを甘くみないことだ。聞いたよアリアたん達と旅行に行くそうだね」

 

「何?あのロリもこの旅行へ?」

 

レキ以外には興味がなかった村上は参加リストを入手した時、確認をしていなかったのだ。

 

「その通り、我々も参加したかったが一歩出遅れてしまってね。まあ、私はこの夏休みは忙しいので行けなかったんだが……」

 

「それで何を?」

 

「フフフ、村上君取引をしよう」

 

「取引?」

 

「そうだフフフ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、やっとついたぜ」

 

椎名が女子部屋に連行されていき。男達、武藤、村上、幸村、ジャンは男部屋で荷物を片付けていた。

 

「ワハハハ、驚いたか幸村?」

 

どかりと畳に座った大男、ジャンは幸村の背中をばしばしと叩きながら言った

 

「げほ!やめてくださいジャン!というかなんでここにいるのか結局聞けませんでしたし」

 

「ワハハハ、お館様に依頼が入ったと言わなかったか?」

 

「依頼の内容を聞いてません!」

 

刀を横に置いて畳に座りながら幸村が言った。

 

「そういやよお、お前ら、あの信冬ちゃんだっけ?あの子とはどんな関係なんだ?」

 

上半身だけ起こして武藤が聞いた。

 

 

「うむ、武偵で言うところのチームと言った所か」

 

「チーム編成は修学旅行の後だろ?もう組んでるのか?」

 

武偵校はチーム編成を2年の修学旅行の後に申請する。

多くは生涯を通じての絆となるこのチーム編成は非常に重要だ。

気心知れただけでは成り立たない

 

「いや、風林火山は正確にはチームではない。何せ、お館様と同じ年なのは幸村だけだからな」

 

「え?えっと」

 

「ジャンだ」

 

「ジャン……さんは何年何です?」

 

「ワハハハ3年だが気にするな!敬語は嫌いだ」

 

「でも、真田が敬語で……」

 

と先輩と分かり恐縮する武藤、3年には閻魔の3年と言う別名があるからだ。

 

「こいつは糞真面目だからなぁ」

 

「年上には敬語で話すのが当たり前です」

 

「うむ」

ともう、納得してるのかジャンが頷いた。

 

「じゃあ、遠慮なく敬語はやめるぜ。俺は……」

 

互いに自己紹介し終わった時、

 

「で?村上は何やってんだ?」

 

車で来た三人はすでに自己紹介が終わっている。

 

「今はまだ、見せられんな」

 

と、スマートフォンを村上はいじる。

 

「ところで……みんな、温泉ということは分かってるな?」

ジャンがちょっと声を潜めて言う

 

「ああ、分かってるぜ!あれだろ?」

 

「……」

 

村上だけは無言でスマートフォンをいじっているが話は聞いてるようだ。

 

「あれとはなんです?温泉といえばお風呂に入るんじゃないのですか?」

 

理解できないのか幸村が言った。

 

「馬鹿だな真田。温泉と言えば女子風呂を覗くことだろ。あの信冬ちゃん小柄だけど小柄大和撫子タイプじゃねえか。見たいだろ信冬ちゃんの裸を」

 

想像したのかちょっといやらしい顔で武藤が言った。

 

「なっ!覗き!そんなこと許さんぞ」

 

と刀を鞘から抜こうとする幸村を見てジャンは笑った。

 

「ワハハ、あいかわらず真面目な奴……だが仕方ない諦めよう」

 

「本当ですか!分かってくれたらいいんです」

 

その時、武藤とジャンは一瞬でアイコンタクトで意志疎通した。

 

「普通に風呂に入る前にみんなで乾杯しよう」

 

とジャンは鞄から缶を取り出した。

 

「普通逆じゃないですか?それにまだ、優希……様が戻ってないし」

 

いいからいいからとジャンが缶の蓋をあけて幸村に押しつける。

武藤やスマートフォンを弄る村上の前にも缶を置く

 

「これはなんですかジャン?コーラですか?」

 

「うむ、麦コーラだ。では乾杯!」

 

「かんぱーい」

 

村上以外はゴクリと一気に缶の中身を口に放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……」

 

「弱いなこいつ」

 

一分後、布団の中で顔を真っ赤にして落ちた幸村を見ながら武藤は言った。

 

「これ酒だろ?」

 

と幸村が飲んだ缶を持ち上げて武藤が言う。

 

「ワハハハ、まさか、我が家に伝わる秘伝の薬を混ぜただけでコーラの味がするノーアルコールだ。まあ、酒に酔った感覚と同じになるがな」

 

 

「まあ、どうでもいいけどよ。それでどうする?優もそれで寝かせるか?」

 

「ワハハハ、少年も参加してくれるとは思えんからな」

 

その時

 

「うむ、把握した」

 

「どうかしたのか村上?」

 

武藤が黙り込んでいた村上に声をかけた。

 

「武藤、ジャン、お前達はどうやって女風呂を覗く気だ?」

 

「え?そりゃ、塀を乗り越えて……」

 

「無理だ」

 

かちゃりと中指で眼鏡を押し上げた村上が言った。

 

「というと?」

 

二人は自然に集まって村上の言葉を待った。

 

「これを見てくれ」

 

そういいながらスマートフォンを二人に見せる

 

「こりゃ、この旅館の見取図か?」

 

「うむ、実はこの旅館な。昔から、数々の男達が女湯を覗こうと努力し、散っていった悲劇の旅館なのだ」

 

「な、なんだって!」

 

「この、旅館の女将がくの一の身体能力を持っているのもあるが、隠れたガードマンがいるらしい」

 

「ガードマン?」

 

「そんな気配はないが……」

 

武藤とジャンが首を傾げる。

 

「出るのだよ。現に、R3の連中は去年来て、小学生グループを覗こうとして壊滅している」

 

「運が悪かっただけじゃねえの?」

 

「いや……」

 

村上は知っている。

レキ様のレキ様だけのレキレキファンクラブと互角に戦えるアリアちゃんのためのアリアちゃんだけのロリロリファンクラブの連中、特に会長の響はロリに対する執念は凄まじい。

だが、その響が失敗し電話で村上に言ったのだ

 

「気を付けたまえ村上君、あの旅館の女湯は鉄壁だ。覗こうとして覗けた男は存在しない。それでも行くと言うなら止めはしまい。男の戦いだ。頑張ってくれ。だが、あの旅館のガードマンは化け物だ」

 

と言っていたのである。

 

「とにかくこの戦いは命がけになる。止めるなら今だ」

 

「村上」

 

武藤は立ち上がるとニヤリと笑った。

 

「覗きは男のロマンだ!俺は行くぜ」

 

「ワハハハ、俺は元より行く気だったからな」

 

「そうか」

 

男達三人は自然と手を重ね合わせた。

覗きを通じて真の友と書いて変態チームが生まれた瞬間だった。

「それでどうするんだ?正面にはくの一の女将さん。違うルートにはガードマンがいるんだろ?」

 

「作戦を説明しよう」

 

村上はスマートフォンを弄りながら

 

「まずは、このトイレから屋根裏に出られる。ここを通れば女湯まで一直線だ」

 

「おお!屋根裏かよ」

 

「うむ、だがガードマンの存在が気になるな。そこにガードマンがいるんじゃないのか?」

 

「それは私も考えた。だが、聞いた話、前回ガードマンは床下でロリコン共を迎え撃ったらしい。ならば、天井裏から行くことが望ましいだろう」

 

「なんか行ける気がしてきたな」

 

「フフフ、そうだろう。お目当ての女は誰だ?私はレキ様だけだ」

 

「星伽さんがいないからなぁ……大和撫子ってことで信冬ちゃんか理子……いや、ジャンヌも捨てがたいな」

 

「ワハハハ!俺は見れるなら誰でもいいぞ!もちろん、お館様はぜひ、見たいものだ」

 

「決まったな。二人ともこれを」

 

「これは?」

 

武藤が受け取っただて眼鏡を見ていった。

 

「眼鏡型カメラだ。お目当ての女子を取るといい」

 

そう、村上には野望があった。

女神(レキ)の生まれたままの姿を手に入れたかった。

 

(待っててくださいレキ様!今行きます!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………フフ」

 

 

その存在は村上達に気づかれることなく部屋の入り口から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男達の命をかけた最終決戦(でも覗き)が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中 編に続く


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