緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第167弾 温泉パニック前編

「おかみー着いたぞ」

 

田舎道を歩きながらゆうやくついた場所は東京武偵高校指定かげろうの宿。

綴は女将と知り合いらしい

 

「……」

 

ん?誰も出てこないな……

綴がだらけた顔から少し真剣な顔で入っていく。

続けて入ろうとしたら手で止められる。

レトロな日本の宿らしい玄関に入り、綴が辺りを見回すとグロッグをいつでも手にできるように構える。

な、なんだ?まさか、敵か?

いつでも対応できるように俺も身構える。

対して周りはん?と疑問顔、いや秋葉だけは玄関の上を見ている。

 

「おい、秋葉何か……」

 

風で探知を行なったいらしい秋葉にいるのかと聞こうとした時、天井から影が飛び出す。

同時に綴が反応し影と綴は互いに銃を向けた所で静止した。

 

「ふっ」

 

「うふ」

 

二人は満足そうに声を出すと銃をしまった。

 

「さすがね綴」

 

泣きほくろがある美人の仲居さんが言った。

 

「そっちこそなまっちゃいないみたいだな」

 

と笑いあった。

なんだよ知り合いかと俺は緊張を緩めた。

 

だが、次の瞬間

 

「何やら空気が変わったので来てみたが……」

 

げ、あいつは!

廊下の奥から現れた相手に俺は慌てて身構えた。

 

「てめえ!」

 

イ・ウーにいた大男ジャンは俺達を見ると

 

「ん?おお!少年に幸村じゃないか!ワハハハ待っておったぞ」

 

え?

俺が幸村を見ると幸村は驚いたように

 

「じ、ジャン?なぜあなたがここに?」

 

幸村と知り合いらしいなこいつ

 

「おっと少年!今日は戦う気はないぞ。お館様もおられるからな」

 

と言った時

 

「何の騒ぎですジャン、あら優希に幸村着いたんですね」

 

と浴衣姿の信冬が言った。

 

「の、信冬!」

 

「お、お館様ぁ!」

混乱してきた……なんなんだよこの状況は……みんな唖然としてるし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜなんだ……

本来、男子部屋と女子部屋は分けられているので俺は男子部屋に逃げ込もうとしたがマリや理子に連行されて女子部屋に放り込まれ尋問を受けていた。

まあ、答えるのは信冬達なんだがなんなんだこの居心地の悪さは

 

「初めて、皆さん。優希の婚約者の武田信冬です」

 

「「婚約者!」」

 

知らない女子連中は驚いてるぞ。

ちなみに、武藤やジャン、幸村は部屋にはいない。

みんな男子部屋だ。

「はい」

 

と信冬が微笑んだ。

 

「久しぶりだな武田」

 

皆が驚くなかジャンヌだけが親しげに信冬に声をかける。

あ、そうかこいつらイ・ウーで……

「ええ、あなたが捕まって以来ですねジャンヌ」

 

「う……」

 

ぐさりと傷をえぐられたのかジャンヌが胸を抑える。

 

「お前こそよく騙してくれたものだ。教授は知ってた見たいたがスパイだったとはな」

 

ちなみに、ここにいる皆はイ・ウーのことを知ってるので特に何も言わない。

 

「あなたもお久しぶりです理子さん」

 

「うん……でも信ちゃん本当にユーユーと婚約してるの?」

 

「はい、20歳には結婚します」

 

ちょ!待て!

 

「き、聞いてないぞ信冬!」

 

「両家でそう合意してるのです」

 

と、あくまで笑顔を崩さない信冬

 

「……」

 

レキは何も言わずに無表情にハイマキに餌をあげてるしハイマキはそんなの知らんとばかりにバクバクご飯を食べている。

 

「そっかぁ……」

 

痛い痛いぞ!女子の視線が!特にマリと秋葉!なんだそのヤンデレ目は!

 

「私は優様は仕える主ですから」

 

露骨に様をつけるな秋葉さん!

なんだよ!知ってたんだろうが

 

「でも、婚姻届け出してませんからまだ、チャンスはあるはずです!」

 

ヤンデレ目のまま手を握り締めたマリがなんか怖い

婚約とか結婚とかの話にアリアなんてフリーズしてるし……

まあ、一度怒ってるから風穴はないと信じたいな

 

「そ、それより!信冬なんでお前がここにいるんだ!」

 

話題を必死に変えようと努力しよう。

 

「療養……と言いたいんですけど山梨武高から……と言うよりも武田に依頼が入ったんです。まあ、簡単な調査ですから半分は温泉に入りに来たのが正しいです」

 

と信冬が答えてくれる。

 

「ジャンは?あいつは何でここにいる!」

 

「言ってませんでしたか?ジャンは幸村と同じ、風林火山の『火』の将です」

 

信冬の部下だったのかあいつ……

 

「山梨武偵高3年です」

 

学生!あの体格で学生なのあいつ!

チェーンガン振り回して大火力で姉さんと戦ったらしいが確かに火の部分は納得できるが……

 

「まあ、続きは温泉で話せお前ら、研修は明日からだからな」

 

と綴が立ち上がる

 

「椎名ぁ、お前もくるか?」

 

「なっ!」

 

思わず想像してしまったがこのメンツにそんなことして見ろ。風穴どころか粉々になっちまうよ

 

「ああ~、期待したんだ間抜けぇ」

 

くそ!綴にからかわれるのは腹がたつな

みんながカバンをいじり始めたので俺は部屋を後にしようとする。

だって、みんな平気で下着とか出そうとしてるし!

 

「いつまでいるのよ優!」

 

 

とアリアに追い出されながら

 

「えー、ユーユーも入ろうよお風呂」

 

「な、そんなことできるわけないでしょ理子ぉ!」

 

理子の場合からかってんだろうが……

 

「私は構いませんよ」

 

と信冬だがこいつも正直、俺のこと本気か違うか図りかねる……

実際の所、本気で俺と彼氏彼女をしたい女の子なんていないのかもな……

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻るとなにやら、男3人が集まって何かを話している。

村上、武藤にジャン……幸村のやつなんで寝てんだ?

なぜか、顔を真っ赤にして布団の中で寝息を立てている幸村。

 

「おお、戻ったか少年」

 

ジャンが左手をあげてくる。

俺は紫電を腰から外しながら畳に座る。

 

「信冬から聞いたよあんたあいつの部下だったんだな」

 

「お館様から聞かれたか?流石は婚約者だなワハハハハ」

 

「ちくしょう……なんで優ばかり持てるんだ……しかもあんな可愛い子が婚約者だなんて世の中狂ってやがる」

 

「まあ、私としては嬉しいがな。婚約者がいるならレキ様に手を出さないことだハーレム野郎」

 

最初から出してねえよ

武藤と村上を睨んでからお茶を探すがあれ?

 

「なあ、お茶ないのか?」

 

旅館には当たり前のポットやお茶の葉が見当たらない

 

「うむ、飲み物ならこれをやろう」

 

ジャンが缶を投げてくる。

うわ、投げるなよ

 

「ありがとう」

 

「礼には及ばん。ところでお館様達はまだ、部屋かな?」

 

「いや、みんなで風呂行くってよ」

 

「ほぅ」

 

ジャンの目が光った気がした。

なんなんだ?

俺は缶のふたを開ける。

コーラか?見たこと柄だが……

喉が乾いていたので一気に口に入れる。

「所でなんで幸村は寝てるんだ?」

 

研修津は明日からとはいえ昼間からしかも、ついた早々に

 

「うむ、幸村は真面目だからなぁ……」

 

そう言いながらジャンが新しいコーラを渡してくる。

 

「いいのか?」

 

「うむ、もちろんだ。戦った無礼を精算するために飲むといい」

 

「お前らは飲まないのか?」

 

「俺達は幸村とさっきまで飲んでたんだ。気にするな優」

 

そうか?ならいいけどこのコーラなんか飲んでると腹の底がきゅっとしてきてなんか気持いいな

 

「んじゃ」

 

ごくごくと飲むとジャンが次々とコーラやジュースを進めてくる。

アハハ、なんか楽しくなってきた……てか、これってまさか……

 

「おやすみハーレム野郎」

 

畳に寝転んだ俺はそのまま、村上の言葉を最後に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

目が覚めると部屋が真っ暗になっていた。

起き上がると周りを見渡す。

いつ、布団で寝たんだ?

携帯で時間を見ると午後8時。

 

「うーん……」

 

隣では幸村が寝ているが武藤達はどこ行ったんだ?

ああ、寝起きで駄目だなんか頭が働かん。風呂行こう

準備して風呂に向かう。

のれんで入る方が男湯だと三回確認してから中に入る。

うん、分かってるんだ。

男湯と間違えて女湯なんて馬鹿なことは俺はしないのさ

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド??

 

「……」

 

音もなく現れたそいつは、静かにのれんを逆にすると姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、生き返るな……」

 

風呂に武藤達がいると思ったがいないようだな。

誰もいない風呂はいいものだ。

しかし、湯気が濃いな……何も見えないけど……

ふぅ……

夜空を見上げながら露天風呂か……最近怪我続きだし疲れも取れるな……

 

「ん?」

 

ふと、視線を感じた気がしたので振り返ってみたが誰もいない。

気のせいか?

そろそろ、上がるかな……

と、立ち上がろうとした瞬間悪夢は訪れる。

 

「二度風呂二度風呂♪」

 

こ、この声は理子!

 

「あれは無効よ無効!」

 

「武偵卓球だ。敗けを認めろ神崎」

 

あ、アリアにジャンヌだと!

 

「でもいい勝負でしたよね」

 

「ええ」

 

ま、マリに信冬!

 

「レキさん。ブラジャー落ちましたよ」

 

「……ありがとうございます」

 

あ、秋葉にレキまで……なんであいつら男湯の脱衣場に!

 

「理子いっちばぁん!」

 

や、やばい入ってくる。

慌てて、俺は近くの湯船の真ん中の大きな岩の後ろに隠れる。

同時にばしゃあああんと理子が飛び込んだ音が聞こえた。

不幸中の幸いだ。湯気が濃いから見えないしなんとか脱出の機会を……

 

「む!すごい湯気だな」

 

「風で吹き飛ばしますね」

 

「ああ、頼む山洞」

 

あ、秋葉!やめろ! ビュオオオと風が湯気を吹き飛ばしてしまった。

岩があるから隠れてられるが脱出は難しくなってしまったぞ。

じゃぶじゃぶと水を掻き分ける音がする。

や、やばいこっちに誰か来るぞ!

逃げられない……

岩影から誰かが現れる。

青ざめて肩まで湯に浸かり、現れた相手と目が合う。

 

「……」

 

無表情のレキが俺を見下ろしている。

なんというか……丸見えの状態で……

 

神様……俺は今日死ぬんですね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後編に続く


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