緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第162弾 序曲の終わり

「シャーロック、お前は……そんな危険な戦いにアリアを巻き込ませるつもりなのか!自分の曾孫を」

 

ヒステリアモードを更に凶暴化させたベルセでキンジは言う

 

「キンジ君。君は、世界におけるアリア君の重要性が分かっていない。1世紀前の世界に僕が必要だったように、彼女は現代の世界に必要な重要人物なのだ」

 

「違うこいつはただの高校生だ!俺はよく知ってる!こいつはたとえ体の中に何を抱えてようとただの高校生だ!クレーンゲームに夢中になってももまんを食い散らかしてテレビ見てばか笑いしてるただの高校生なんだ!分かってねえのはシャーロックお前の方だ」

 

「認めたくない気持ちはわからなくもない。君は彼女のチームメイトなのだからね。だが、キンジ君。この世には悪魔はいないにしても悪魔の手先のような人間はいくらでもいるのだ。この広い世界には君の想像も及ばぬような悪意を持つものがイロカネを……」

 

「俺は、世界なんてものに興味はねえ!善意も悪意も知ったことか!」

 

シャーロックは静かに目を閉じた

 

「ハハハ、優希お前の友達も面白いじゃないか私は気に入ったぞ。なぁ、シャーロック」

 

 

姉さんが笑いながらシャーロックに言う

 

「それが、世界の選択か」

 

そういいながらシャーロックは背を向ける

 

「それなら平穏に生きるといい。君はそういう選択もできるのだよ。その意志を貫くためにアリア君を守り続けて平穏無事に緋弾を次の世代に継承しなさい。全て君達が決めていいんだ。そして、その意志は通るだろう。なぜなら君たちは十分強いのだから。いいかいキンジ君。意思を通したければ強くなければならない。力なき意志は力ある意志に押しきられる。だから僕は君たちの強さを急増させるために、イ・ウーのメンバーを使ったのだよ。君達がギリギリ死なないような相手を段階的にぶつけていくパワーインフレという手法を用いてね」

 

なるほどな……シン、ローズマリー、ブラド、荒木源也あいつらはお前の差し金か……確かに、あいつらと戦ってなければ俺はまだ、刀を握ることすら叶わなかったかもしれないのだ。

 

「武偵憲章3条強くあれ但しその前に正しくあれ」

 

神戸で奏ちゃんに言ったようにキンジが怒りを込めて言う

 

「?」

 

「強くなければ意志は通らない。それは正しいさ。だが、正しくなければ意志を通してはならない。それが俺たちのルールだ。お前はその逆をやっている。天才の頭脳と強大な力で自分の自己中にアリアを巻き込もうとしてるんだ」

 

「そうかもしれない。でも、僕にはそれができた」

 

「く……」

 

腹がたつなシャーロック。

だが、今はキンジに任せる

 

「そうはさせねえっていってるんだよこの俺がな」

 

「それならさっきも言ったようにそうしなければいい」

 

 

シャーロックはそう言いながら折れたエクスカリバーを手に白煙を吹き続けるICBMの一本に去っていく。

格納庫の天井が開いていく

 

「待て。それで終われるか。こっちを向け」

 

「何だい」

 

キンジの言葉に振り返らずにシャーロックが答える。

 

「俺はキレたぜ」

 

キンジはバタフライナイフを抜いた

 

「どんな理由があろうと、お前はアリアを撃った。自分な曾孫を背後からな」

 

「そうだ。しかし、だからどうするというのだね。君は、僕には勝てない。優希君はぼろぼろでアリア君は僕とは戦わない。唯一僕に対抗できる希君は君には手を貸さない」

 

「勝てないだろうな。だが一撃はいれてやる」

 

「できるつもりかね」

 

「できる。『桜花』、絶対にかわせない一撃でな」

 

桜花?初めて聞く技だ

 

「僕にも推理できないものがある。どうやら君のその非論理的な行動はそれが遠因なのかもしれないな」

 

「何だそれ」

 

「若い男女の恋心だよ」

 

アリアがぼんと赤くなる。

なんか……痛いな……アリア……お前はキンジを……

 

キンジがシャーロックにかける。

 

「この桜吹雪散らせるものなら」

 

超音速の一撃がシャーロックに迫る。

時速1236km

 

「散らしてみやがれ」

 

キンジのバタフライナイフから銃声ににた衝撃音が上がる。

音速を超えたナイフの背から桜吹雪のようなヴェイバー・コーンが放たれると同時に超音速の衝撃波で引き裂かれたキンジの右腕から鮮血が飛び散る

 

「うおおおお!」

 

バチイイ

 

嘘だろ。

シャーロックは音速の一撃を左手だけで真剣白羽取りで止めた。

 

「惜しかったねキンジ君」

 

シャーロックは言いながら折れたエクスカリバーをキンジに振るう

 

「惜しくねえよ」

 

キンジはそれをシャーロックと同じく片手の白羽取りで受け止める。

両者が両手を止められた千日手だ。

 

「そうくることは」

 

キンジはそう言いながら大きく後ろに反らした瞬間、シャーロックが驚愕に目を見開いた。

 

ガスッッッッ

 

キンジの頭突きがシャーロックの頭にに炸裂しシャーロックは背中から床に叩きつけられた。

シャーロックを倒しやがったのか

すげえなキンジ……

 

「すげえなキンジ」

 

「キンジ、こんなに傷が」

 

「アリアが傷つくよりずっといいさ」

 

俺とキンジはやったなと拳を付き合わせてからアリアがシャーロックに近づくのを見た

 

「曾お爺様。いいえ、あえてこうよびます。シャーロック・ホームズ」

 

超偵用の手錠を手首にかけた

 

「あなたを逮捕します」

 

事件解決か……いや……

 

「……」

 

姉さんは面白いものを見ているようにこちらを見ている。

 

 

「素敵なプレゼントをありがとう。それは曾孫が僕を超えた証に頂戴しよう」

 

頭上からかけられたしわがれ声に俺達は慌てて顔をあげるー

 

ICBMの扉に捕まり頭突きで流血しつつ笑顔のシャーロックがいた

 

「キンジ君。さっき君にもらった一撃は僕にも推理できなったよ。さっきまでの若い僕なら、とっさに推理できただろうけどね。まあ、歳には勝てないということかな」

 

倒れているシャーロックが砂金に戻り崩れる。

 

くそ、パトラのあれかよ

 

「シャーロック、どこに行くんだ!お前はもう、今日までしか生きられないんじゃないのか?」

 

「どこにも行かないよ。昔から言うだろう?老兵は死なず。ただ、消え去るのみと。さあ、卒業のか時間だ。花火で彩ろう」

 

シャーロックが扉に入る直前俺はシャーロックが姉さんと目を会わせるのを見た。

姉さんは頷くとシャーロックは微笑んで扉に消えた。

 

「曾お爺様待って!行かないで!いや、いや!あなたのことママのこともっともっと、話したいことが……

 

「待てアリア!危ない戻れ!」

 

アリアは俺の声に聞き耳持たずに小太刀を逆手二本でじゃんふしてICBMの表面に刃を突き立てる。

アリアはそのまま、交互に刃を突き立てながら上がっていく

 

「アリア君、短い間だったが楽しかったよ。なにか形見をあげたいところだが、申し訳ない。僕は君にあげられるものを何も持っていないのだ。だから、名前をあげよう。僕は緋弾という言葉を英訳した二つ名を持っている。緋弾のシャーロック。その名を君に……さよなら緋弾のアリア」

 

 

扉がとじICBMが持ち上がり始める

 

「くそ!」

 

 

腰から携帯用ワイヤーをICBMに打ち込むと飛び上がり紫電をICBMに突き立てる。

アリアはまだ上だ。

キンジもエクスカリバーを突き立てICBMに張り付いている。

 

「アリア!早く降りろ!」

 

「嫌よ!曾お爺様がどこかへ行っちゃう」

 

この馬鹿が!

紫電と携帯用ワイヤーの先端を突き刺しながら上がっていくとICBMが持ち上がり始めた。

下を見るとイ・ウーが小さくなりつつある。

飛び降りたらなんとか重症ですむかもしれんが冗談じゃない

キンジとアリアを掴める前まできてから動きが止まる。

ICBMが加速してしがみつくのが精一杯になったのだ。

ぐあ、やべえぞこれ

下を見るとイ・ウーは見えないし雲に突っ込む

必死に紫電を掴んで落とされないようにする。

アリアも同様らしくピンクのツインテールが風になびいている

し、死ぬ。

宇宙にでてしまうぞこれ!

後ろを見たら日本列島が見えた気がした。

薄れそうな意識の中、同じICBMが10つ四方八方に向けて飛んでいる。

イ・ウーの残党か

 

ガキン

 

げ!紫電がシャーロックのICBMから離れる。

 

「優希君」

 

シャーロックの声が聞こえた気がした。

ICBMからみるみる遠ざかりながらも声は聞こえる。

 

「アリア君を頼む」

言われるまでもねえよ

 

「シャーロック!」

 

同じようにキンジとアリアも空中に投げ出されたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空から女の子が落ちてくると思うか?俺はそんな非日常は望んでいなかった。

でも、空から女の子が降ってくるのはやはり、物語の始まりなんだろう。

 

アリア、キンジと空中で手を伸ばして掴む

 

「キンジ……優」

 

「「アリア」」

 

やれやれこんな三人でいると思い出すよ。

あのチャリジャックからな……思えば腐れ縁だったな……

遥かに下に見える海面。

駄目だな叩きつけられたら確実に死ぬ

 

「キンジ、優……こんなことに付き合わせてごめんね」

 

「は、何を今更」

 

「だな、チャリジャックにあった日から諦めてるぜ」

 

「ありがとう。ありがとう、あたしの大切なチームメイト。あたしは、あなた達を誇りに思う……これは序曲の終止線。終わりで始まり。今、探偵の時代が終わりあたしたち武偵のの時代が始まるのよ。優の好きな武偵憲章10条諦めるな。武偵は決して諦めるな。キンジ、優正直に言うわ。あたしはイ・ウーで何度も諦めかけた。もう何度も諦めかけていたの。でもあんた達が前を向かせてくれたからあんた達があきらめなかったからあたし達はまだ!生きてる」

 

秋葉はステルスを使い果たしてるし、信冬は果たして動けるのか……

関わった全ての人を思い浮かべながらなぜかレキの顔が横切った。

ごめんなレキ……みんな……今回ばかりは……

後10秒で海面か……くそ……

 

「曾お爺様はきっとこの瞬間が来るこたも推理してたんだわ。だからホームズ家の女にこの髪型をさせた……理子にできるんならきって私に…も…」

 

アリアのツインテールが翼のように広がり風圧に引かれるように反転し速度が落ちる。

アリアのツインテールが理子のように翼のように広げる。

 

「アリア……」

 

ハハハ、また命救われたな

 

「あ、あんまり見ないで。これなんかすごく恥ずかしい」

 

再び羽ばたいたツインテールで速度が飛び込みぐらいに落ちる。

見渡せば信冬が空に浮かびながらほっとしたか顔でこちらを見ている。

救命ボートでは白雪と秋葉が呆気に取られたような顔をしている。

ボートの縁ではパトラと彼女に抱かれて半身を起こしているキンイチさんも驚いた表情でこちらを見上げていた。

 

「優希」

 

姉さんが前に表れる。

 

「よくやったな。この記憶は解除してやろう」

 

といい姉さんが俺の頭に触れた瞬間、過去のアリアに会った記憶が頭に流れ込んできた。

 

「姉さん……」

 

上に消えていく姉さんを見ながらアリアの声を聞く

 

「き、キンジ、優あたしにもあんた達が必要だわっ。ぶ、武偵憲章1条」

 

着水直前

 

「1条『仲間を信じ仲間を助けよか?』」

 

「そ、そうよだからキンジ、優」

 

「と、とりあえず浮き輪になりなさい!!」

 

さぶうううんと海に落ちながらキンジと二人でアリアの浮き輪になりながら空を見上げる。

 

 

「まったく無茶しますね優希」

 

気絶したキンジとアリアを掴みながら信冬が救命ボートにのせてくれる。

 

「てめ!待ちやがれ希!」

 

「希様!」

 

「ハハハ、じゃあな歳、月詠」

 

見るとはるか海の向こうから空母型の護衛艦の甲板に乗った土方さんと月詠の姿が見えた。

姉さんは逃げたらしいな……

 

「ああもう……」

 

信冬に膝まくらしてもらいながら多大な疲労を感じつつ

 

「今回の護衛これで終わり」

 

そして、完全に俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、俺達は知らなかったのだ。

ここまでが俺たちのほんのプロローグに過ぎなかったことを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イ・ウー編完


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