そういえば、そろそろ届くかな?
用事があるというレキと別れた俺は、部屋に戻る。
確か、カジノ警備で着る服が送られてくるはずなんだよ。
どんなのかなぁ?
なぜなんだ……
箱に入っていたのは
『女性ジュエリーショップ社長』
と、なぜか女装のセットまで入っている。
陰謀かよと思いながら付属してある紙を見たら男は一人のみでどちらかは、女装必須と書かれてあった。
カジノ警備の依頼主め俺が女顔だと思ってちくしょう!
キンジを女装させるのは無理だから仕方ねえか……
「あっ、背中っ、せ、背中はダメっ!見たら風穴!風穴あけるわよ!」
ん?
リビングからアリアの声の方を見るとキンジがアリアの小部屋を開けていた。
そういや、アリアはどんな格好なんだろう?
「アリア?」
と、除き込む
バニーガール……だとぉ!
わたっ、わたたっ、とアリアが手で隠そうとしているその背、左側には古い、弾痕があるな
それが恥ずかしいのかな?
それぐらいで恥ずかしがるなよな。
まあ、男と女の違いはあるんだろうが弾痕ぐらい俺もあるぞ、古傷では右肩近くとかにな
「おい、別にお前の背中なんてどうでもいいんだがな」
とキンジ。
そういや、普通に話してるなお前ら仲直りできたのなら何よりだ。
「服装ぐらいガマンしろ。まあ、手伝ってもらう俺が言えた立場じゃないが、武偵は潜入捜査とかGメンやるときはいろんな衣装を着なきゃいけないんだ。ほら。本番でトチらないためにも少しそのカッコで生活して、慣れとけって」
「う~~」
と唸ったアリアは悔しそうにしてツインテールとウサギの耳を振ってこっちを向く。
何か違和感がある……ん?なるほどアリアのやつ、胸に大量のパッド入れてるな?
バニガールの衣装は胸がないと残念な形になるからな……
言ったら殺されるから言わんが
「ア」
ずむ!
キンジが何か馬鹿なことを言おうとした瞬間、アリアの足がキンジにめり込みどぅとキンジが倒れる。
「パットはファッション!パットはおしゃれ!パッ!ト!は!無罪」
アリアがじたんだ踏むように倒れたキンジを踏みまくる。
キンジは必死に身をよじって避けてるが自業自得だろ
だんとアリアの足がキンジの顔の右に落とされ、丁度キンジの頭をアリアがまたぐ形になった。
見る人みたら誤解だねぇキンジ、白雪さんとか
「キンちゃん!どうしたの!?」
ちょっ!?
俺は白雪の噂をしたことを心底後悔した。
ばばん!と部屋に入ってきたのは巫女装束で、旅帰りらしく風呂敷を背負った白雪さんだった。
キンジの額をヒールで踏んで腕組みしたバニーガール姿のアリアを見て
「神崎・H・アリア……!う、うふふ、ふふふふふ……」
や、やばいぞ!ヤンデレモード発動か!
「し、白雪違う!これは違うんだ!」
「何が違うの優君」
ひいい!こええ!
「なんでもありません!」
話しかけたら俺に被害が飛んできそうなので俺は黙った。
だって怖いし!
このオーラだけなら姉さん並だよ白雪さん!
御免さないませという感じに白雪は顔をちょっと伏せ、ぱっつん前髪が作る影で目を隠した。
さぁ―と武装巫女が流す言い様のない殺気が室内に張り詰めていく。
ここに、アリアがいなかったらすでに全速力で逃げてるぞ。
し、仕方ねえ炎を使うなら紫電で……
「キンちゃん、ただいま」
「お、おかえり」
「ごめんなさい。星伽でキンちゃんを占ったらウサギ難の相が出たから私、お仕事のあとすぐ帰ってきたの。それで、こんなこともあろうかと『あれ』、持って来ちゃったんです」
あれ?なんだろう
「あ、あ、あれはやめろ白雪!昔、使うなって言ったろ」
とキンジが慌てて起き上がった瞬間重たい金属物が白雪の緋袴の内側から落ちた。
あ、あれ?あれとよく似たもん昔、見たぞ。
確か、姉さんがアメリカ軍と……
「だからごめんなさいなんです」
叫びつつ白雪が持ち上げたそれがぶっといバネ仕掛けで、がしゃかじゃがしゃと電光石火の早さで組み上げ
抱えるように構えた。
「「「!」」」
俺達は絶句する。
M60マシンガン。
米軍が開発した重さ10キロにもなる戦争用の機関銃だ。
昔、姉さんはこれを装備していたアメリカ軍の一個大隊を壊滅させたことがあるから知ってる。
姉さんは余裕でも俺には!
ていうか白雪!それは日本じゃ持ってちゃ駄目だろ!
白雪はM60を右腕一本で腰だめに構えると白小袖からぞろろおおと銃弾ベルトを出し、左手に乗せて給弾の構えを取った。
「この泥棒猫!そんなあられもない服で、キンちゃん様と、お、オトナの遊びに興じるなんて万死に値します!万死!万死!すなわち1万回死すべし!」
「な、ななな何なのよこの女は!毎回おかしいわよ!」
さすがに火力負けするからかアリアが壁際まで後退する。
や、やめろアリア!俺を盾にするな!
白雪は問答無用とばかりに瞳孔がヤバイことになった眼でアリアというか俺に照準を合わせる。
や、やめてくれ!白雪ぃいいいい!
「や、やめろ!」
悲鳴をあげながら俺は両手を白雪に突き出した瞬間
「くだばれ神崎アリア!これは天誅!天誅なのですっ!あはっ、あははははは!」
「ぎゃあああああ!」
俺が悲鳴をあげた瞬間
ばりばりばりばりばりばりばりばりばりばりばりばりばりばりばりぃ
撃たれた瞬間、アリアが忍者のように天井裏に逃げ込んだので俺もワイヤーを張って慌てて天井裏に逃げ込む
下からはバーサーク白雪は壊れ気味の高笑いを上げつつ天井にNATO弾を叩き込む
ぎゃあああああ!天井裏に穴が!死ぬ死ぬ!
前を見るとすでにアリアはいない。
早すぎる。
うわあ!
音か気配かしらんが白雪さん!狙ってるの俺だから!アリアはいないからやめてぇ!
「アハハハハハハハハハハハハ!」
命からがら部屋から脱出した俺はぜいぜいと荒い息をはきながら一息ついた。
ここは寮から200メートルほど離れた場所だ。
キンジも巻き込まれたはずだがどうなったやら……
「ふぅ……」
とりあえず、白雪が落ち着くまでは戻れん。
となるとうーん
「おーう、弟」
ん?
「姉さん?今日はよく会うね」
「まあ、部屋に行ったら星伽の白雪が暴れてたから沈めといたぞ。久々に手応えがあった。村上といい今日は大量だ」
満足そうに姉さんは言う。
そうか、姉さんが白雪なんとかしてくれたか……てか、もっと早く来てよ
「弟、今から時間あるか?」
「え?まあ、夏休みだしカジノ警備以外にもクエストは受けてるけど今のところは」
「そうか。なら、行こうか」
直後どっと首に衝撃が走り意識が飛ぶ
「ね、姉さん……」
「おやすみ優希、教授がお前を待ってるぞ」
「ぷ、プロキシ……オン?」
俺の意識はそこで途絶えた