緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第145弾 レキデート再び(裏)―それは語られなかったもう一つの物語

「それでは作戦の確認をします」

 

7月7日、夏休みが始まるこの日、村上達レキ様ファンクラブことRRRの面々はそれぞれの配置につき、支持をまっていた。

 

村上は自室で数人の会員とともにモニターを見ている。

それぞれの会員の頭や各地につけた監視カメラの映像だ。

機器はコネクトやレザドから借りてきた。

 

「ついにこの時が来たか……」

 

村上は言いながら壁に張られたレキ様の写真を見る。

隠し撮りではなく正規品である。

1年の時の文化祭で武偵高の制服を着て、ドラグノフ狙撃銃を肩に体育座りをして星空を見上げている写真だ。

希望者は誰でも買える。

というのも学校では遠足や体育祭など写真を取って、廊下に張りだし、希望者は番号を書いて、封筒に金を入れて購入する。

つまり、写真をとるものは正々堂々とレキ様を撮ったわけで盗撮ではない。

そういう意味ではこの写真は貴重品で、レキ様ファンクラブでも昨年からファンクラブに入っていないと持てないという品だ。

村上は500枚買い、引き延ばしたり、小さくしたり保存用など様々な方法で保管している。

新規ファンは喉から手が出るほど欲しいが村上は譲る意思はない。

ちなみに、この写真合計で2000枚以上売れたことでちょっと裏では伝説になってたりする。

さぞ、写真屋は涙目で作業を行っただろう。

 

「会長」

 

「うん?どうした会員No.239」

 

最近、RRRに入ったコネクトの 一年生だ。

機械の扱いが上手いからこういったことには大活躍している。

 

 

「林っす!会長!名前覚えてくださいよ」

 

「番号を覚えるので十分だ。それで何かあったのか?」

 

「あ、はい。偵察中の海藤さんから……」

 

「番号で呼ぶんだ会員No.239」

 

「はい会員No.110が予想通り、ビルの屋上で反射光を確認しました。椎名優希は山洞秋葉と共に中華料理屋に入りました」

 

「ふむ」

 

村上は頷く機器を操作して電話を手にとる

 

「諸君、作戦開始だ全てはレキ様のために!」

 

「「「「「全てはレキ様のために!」」」」」

 

一斉に受話器から声が返ってくると同時にドンドンと銃声が聞こえてきた。

椎名優希を狙っていたビルの上のスナイパーはゴムスタン弾の直撃を受けて沈黙したはずだ。

 

「目標に命中!やりました会長!」

 

RRRのスナイプの生徒が村上の耳のイヤホンに歓喜の声を上げた瞬間

 

「ぐわ!」

 

「どうした会員No.100」

 

 

「会員No.99です!これはそげ……ぐぎゃ!」

 

「おい!」

 

「……」

 

どうやら会員No.100と99はやられたらしい。

 

「会員No239、狙撃した相手を探せ」

 

「了解っす」

 

カタカタと機器を叩き出す会員No.239

 

「ぬぅ……やるなロリコン共」

 

RRRが椎名 優希を守っている。

実に奇妙なことだがこれは数日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

その日、村上はファンクラブで決まったレキ様の浴衣姿をとった後、椎名優希を排除というのを頭に入れながら今日、レキ様が食べたカロリーメイトと同じ味を口に入れながら携帯の画像を確認していた。

ほとんどが隠し撮りだが、中には正規品もある。

 

「うむ、レキ様はやはり、お美しい……完成されたまさに、芸術」

 

うんうん村上が頷きながら人気のない廊下を歩いているときだった。

 

「RRR、レキ様のレキ様だけのレキレキファンクラブ会長村上だな?」

 

「ん?」

 

見るとひょろっとした優男風の武偵高の制服を着た男が腕を組んで村上を見ている。

 

「何者だ?」

 

尋常ではない男の気迫を感じながら村上は言った。

 

「失礼、私はこういうものだ」

 

と名刺を差し出してきたので見てみる。

 

『R4会長、響 亮」

「R4だと?聞いたことがないぞ」

 

優男はふっと長い髪を左手でかきあげながら

 

「アリアちゃんのためのアリアちゃんだこのロリロリファンクラブ、通称R4(アールフォー)だ」

 

アリアだと!椎名優希の近くにいるあのロリか!

 

「それで、そのR4が私になんの用だ?」

 

「一応、僕は先輩だ村上会長、敬意を払ってもらおうか」

 

3年だと!

 

「失礼、ではその先輩が一体どのようなご用件で?」

 

「何、簡単さ」

 

ふっとキザに笑いながら響は

 

「次の七夕のお祭り、共闘しようじゃないか」

 

「何?共闘?」

 

軽く目を見開く

 

「椎名優希を排除するのだろう?我々も彼と遠山キンジを当日排除する予定だ。一緒に行動しようじゃないか」

 

「遠山キンジだと?なぜやつを」

 

「ふ、奴はアリアたんとデートする予定らしい。それに、最近、遠山キンジ、椎名優希はアリアたんに近づきすぎている。次も同じクエストを受けるらしいからな」

 

アリアたんだと?

 

「そこで、祭り日の祭り前に二人を排除しようじゃないか。RRRも椎名優希を排除するんだろ?」

「もちろんだが、それはレキ様の浴衣姿を写真に納めてからと決まっている」

 

「すると、二人が合流してから排除すると?それでは手遅れだ。考え直したまえ」

 

「我々の考えは一つだ。レキ様の浴衣姿の写真を手にいれる!」

 

「どうやら、君を誤解していたようだ村上会長」

 

「何!?」

 

響はクククと笑いながら

 

「よろしい、ならば勝負だ会長、我々は全力で椎名優希達を排除しよう。祭りが始まるまで守りきれるかな?」

 

「当たり前だ!先輩、私はあなたに敬語は使わない!なぜなら、あなたはレキ様ファンクラブの敵となったからだ!」

 

「いいだろう。アリアちゃんのアリアちゃんだけのロリロリファンクラブが君たちに宣戦布告する全力で椎名優希と遠山キンジを祭りの日に祭りが始まる前に排除する!」

 

「受理しよう。レキ様だけのレキ様だけのレキレキファンクラブ村上正が宣言する」

 

「ふ、しかしロリの良さがわからんとは悲しいな村上君、アリアたんこそ究極のロリの化身だというのにな。君たちのレキもロリの素質はあるが胸が少し育ってしまっている」

 

「貴様レキ様を愚弄する気か!完成された芸術!静かな人形ねような美しいレキ様とあのような凶悪怪獣ロリ娘を比べるとは!」

 

「なんだと?ならば教えてやろうロリの良さを!見るがいい真っ赤になってわたわたしているアリアたんの写真だ」

 

響が携帯電話をつきつけてくる

 

「ふ、ならば私だって負けん!見よ!犬と戯れるレキ様の写真だ!」

 

「なんだと!ならばこちらはレオポンと……」

 

不毛な写真見せあいは深夜まで続き、見回りに来た蘭豹に叩き出されるまで続いたが両者に妥協点は見えず決着は祭りでつけることとなった。

そして、迎えた祭り当日、響達R4と村上達RRRは学園島各地で他の一般生徒に気づかれないように壮絶な潰し合いを行っているのだ。

格闘、火器、罠、情報ありとあらゆる戦いのバトルロワイヤル

殺しだけは禁止だが、恐らく、ファンクラブ同士の戦いでは最大規模の戦いが裏では行われていた。

前話で優や秋葉が感じたのはこの二つの潰し合いの余波である。

そして午後5時になる頃にはRRR5人R4は10人にまで減っていた。

ちなみに外部を含めてRRRは248人、R4は200人の会員がいる。

いかに凄まじい潰し合いだったか想像できるだろう。

潰された会員はみんな病院送りか自宅療養だ。

 

「残ったのはこれだけか……」

 

もはや、時間も戦力もまずいことから村上も上野駅に出てきていたがここでは迂闊に銃が使えないからその他で戦わないといけない。

しかし、戦力が半壊しているのは向こう同じで恐らく、響も出てきているだろう。

だが、戦力は倍だ。

会員No.239を含めて戦闘がでない会員はおいて来たから実質3人対10

願わくば戦闘ができない相手だといいが……

 

「会長もはや時間が……」

 

時刻は午後6時椎名優希やレキ様はすでにここに来ているかもしれない。

遠山キンジは7時にくるはずだから実質、村上達の勝利は目前だったがこの人混みで襲われたら終りだ。

 

「か、会長レキ様です」

 

「何!おお……我が女神」

 

改札から歩いてくるレキ様を見て村上は決断した。

やはり、武偵高制服のレキ様はこの町で浴衣を購入するのかもしれない

村上は携帯である番号を呼び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君から壊滅を望むとは嬉しいよ村上会長」

 

まずいと村上は思った。

なぜなら、相手は10人全員が戦える面子らしい。

こちらは3人だ。

呼び出して決戦は無茶だったか……

 

「さあ、RRR、ロリの前に屈せよ」

 

響がばっと会員に襲いかかるように言い、村上が覚悟を決めたその時だった。

 

「見つけたぞ」

 

ドンといきなり裏路地で対峙していた村上達の前に空から女の子が降ってきた。

見覚えがあるぞ!椎名の姉か

 

「何か用ですか?おばさん」

 

ロリでないものはおばさんていう響が言った。

知らないとはいえ世界最強の存在に向かって

 

「お前らだろ。今日、学園島で大騒ぎしていた黒幕は。私は眠りを邪魔されて不機嫌なんだ。それに、お前ら私の弟を狙ってたらしいな」

 

「椎名優希の姉だと!邪魔をするなら……」

 

その瞬間稲妻が走ったような気がした。

一瞬で響達、アリアちゃんのためのアリアちゃんだけのロリロリファンクラブの10人が空を舞った。

地面に叩きつけられ響がなんとか顔を上げ

 

 

「馬鹿な……ロリコンがおばさんに負けるなぞ……あっては……」

 

「ほぅ、私の攻撃に耐えたかごほうびだ」

 

ドゴオオオオと大砲ような音と共に響にパンチが入り、響が沈黙する。

一瞬で、アリアちゃんのアリアちゃんだけのロリロリファンクラブは壊滅した。

 

「さって次はお前らだな」

 

にやりと戦闘狂の視線を村上達に向ける。

いかんと村上達は武器を取り出そうとしたが気がついたら空を飛んでいた。

響達と同じように殴り飛ばされたらしく地面に落下する。

 

「ぐは!」

 

激痛に耐えながらなんとか体を起こすと残ったの2人も気絶していた。

 

「ほぅ、お前も耐えたか」

 

ぞくりした瞬間、村上の体がぶっ飛んだ。

壁に叩きつけられてずるずると落ちて地面をなめる

 

「なんだったんだこいつら?さて、弟でもからかいにいくかぁ」

 

体が……動かん……

顔だけなんとか動かすとヒラヒラと何かが落ちてきた。

村上がいつも持ち歩いている女神の写真だ。

レキ様……そうだ私はレキ様の浴衣姿を……

 

「ん?」

 

「ま、まだだ……」

 

水無月希が目を軽く見開いた。

がくがくと足を揺らしながら村上は立ち上がった。

 

「驚いたな。2発以上耐えたやつは久しぶりだ。手加減してやるから寝てろ」

 

水無月希の姿が消え、村上の体が7回はねあがった。

7発の連打だ。

引きちぎられたような激痛を浴びながら最後の一発を受けた村上はビルの7階近くまで吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる瞬間、風が彼を包んでしかし、激しく叩きつけられた。

 

「終わったな」

 

「ま、まだ……だ」

 

もはや感覚がない。

村上はただひとつの目的のために立ち上がる。

レキ様の浴衣姿を見て椎名優希を排除する。

壁にもたれ掛かりながらも村上は立った。

 

「何者だお前?」

 

水無月希は腰の刀に左手を置いた。

村上はふっともう見えない右目を閉じながらボロボロの体で

 

「だだのファンクラブ会長さ」

 

「ファンクラブ?」

 

水無月希は刀から手を放して言う。

そして、

 

「面白いやつだな。名前は?」

 

「RRR会長……村上正」

 

「そうか、戦士村上、お前はよく頑張った。なぜそうまでして戦う?」

 

「全てはあの人のために……これは愛だ!」

 

「なるほどな。弟のやつがお前の崇拝する女に手をだした訳か……後で見に行くか」

 

「く……」

 

ふらりと村上はふらついた。

 

「じゃあ、止めだな」

 

水無月希の姿が消えた。

来ると思った瞬間、連打の嵐が村上を襲った。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11連打

 

「ぐが……」

 

どしゃりと村上は地面に落ちて今度こそ動かなくなった。

 

「悪く思うなよ」

 

といい水無月希が立ち去った後、

 

「れ、レキ様……」

たが、驚いたことに村上はまだ、意識があった。

ずるずるとゾンビのように裏路地からただ、一人の女性を求めて出た瞬間あの男を見た。

 

「……くっ、椎名ぁ」

 

「む、村上?」

 

驚いた顔の椎名優希を一目に、村上は最後に浴衣姿の女神(レキ)の姿を捉えて手を伸ばした。

 

「……レキ様……」

 

最後にお会いできたのがあなたでよかった……

ファンクラブの中で唯一、レキ様の浴衣姿を見た村上正はついに力尽きた。

 

これは語られなかったもう一つの物語

 


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