緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第144弾 レキデート再び

7月7日ついに夏休みが始まった。

 

祭りは午後6時からだからとりあえず、いつものように、トレーニングした後、秋葉と一緒に、中華料理屋炎に来ていた。

 

「本当に刺されますよお兄さんかーなーしみーのーです」

 

なんだそりゃ?

 

「私も見ましたが優君は道を踏み外したらああなりかねません」

 

「あ、山洞先輩も見ましたか?あれは主人公のまごとが最低すぎですよね」

 

何やら意気投合した二人が話し出す。

秋葉もアリスもアニメ好きだからな……

多分、それ系の話だろう。

 

「で?お兄さんの本命は誰なんですか?秋葉ちゃんですか?」

 

はええよ!気がついたらアリスの秋葉に対する呼び方が秋葉ちゃんになってやがる。

 

「私なんですか?」

 

無表情に自分を指差すな秋葉!

 

「違うってるだろ!」

 

まったくどいつもこいつも……

 

「ではレキさんですか?」

 

「おお、あの無表情な先輩ですね」

 

「今日この後、優君レキさんとデートですし」

 

「そ、そうなんですか!やりますねお兄さん。あれだけ女の子に手を出しといてパクッとレキ先輩を食べちゃうんですね」

 

お前の言葉は日本語なのかアリス!

 

「いい加減にしろ!」

 

切れた俺はゴンゴンと拳骨を二人の頭に手加減して叩き込みアリスは悲鳴をあげて後ずさる

 

「お、女の子を殴るなんてひどいですお兄さん」

 

「最低です」

 

右手ですりすりと頭をさすりながら秋葉も言った。

どうしりゃいいんだよ……ん?

 

「どうかしましたお兄さん?」

 

「いや……」

 

後ろを見ながら俺は首をかしげた。

 

「誰かに見られてました」

 

「やっぱりか?」

 

秋葉は風の流れで周囲を探知することができる。

やはり、誰か俺達を見ていたようだった。

心当たりがありすぎるな……

姉さん関連で俺は多分、かなりの組織に連鎖的に恨まれてるし、個人的にもランパンや魔女連隊には恨まれてるしだろうしな……

まあ、一応警戒しとくか……

 

「どうぞお兄さん」

へ?

どんと置かれたのは以前、レキが食べた地獄ラーメンだ。

あ、あれ?

 

「ま、待てアリス!俺は頼んでない!頼んでないぞ!」

 

「頼みましたよ。適当に頼むと」

 

だからって地獄ラーメンをチョイスするな!

これ食べられないと一万もするんだぞ!

 

「はい、開始です」

 

「まっ!」

 

結局あまりの辛さに食いきれずに一万円が財布から消えた。

トホホだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所では

 

「椎名優希を確認。これより作戦を開始する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後5時40分、秋葉と別れた俺は上野駅改札口前でため息をつきながら携帯をいじっていた。

レキへのメールを読み返しながら千夏ちゃんのアドバイスを思い出す。

やれやれだ……これじゃ、本当にデートを待つ男見てえだな……

電車が着くたびに改札を見るがレキは来ない。

まだかなぁ……

30分前は早すぎたか……

 

そうして、午後6時ピッタリにレキの姿を見た俺は

 

「レキ!」

 

右手をあげてレキと目を合わせるとドラグノフ狙撃銃を背負ったレキがスタスタとやって来た。

 

「優さんこんばんは」

 

「おう」

 

分かってはいたがレキは浴衣ではなく武偵高の制服を着ていた。

千夏ちゃんの予想通りかよ……さすがだな

 

「?」

 

レキが無表情に俺を見ている。

何か喋らないと

 

「浴衣姿じゃないんだな」

 

「私は浴衣を持っていません。千夏さんが優さんが買ってくれると電話がありました」

 

おい千夏ちゃん!聞いてないぞ!

祭りの前に浴衣を買いに行けとはいわれたが……

 

「じゃあ、浴衣買いに行くか?」

 

こくりとレキが頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはいかがですか?」

 

デパートで捕まえた店員のお姉さんにセールをやっていたのでレキの浴衣を選んでもらっている。

俺じゃわからないからな。

 

「……」

 

しゃとカーテンが開くとピンクと赤を基調とした金魚柄の浴衣だがレキのイメージとはなんか違うな……いや、似合わないわけじゃないが……

 

「駄目ですか……では次を」

 

シャッとカーテンが再びしまる。

中でごそごそレキが着替える音が聞こえるが落ち着かないぞ……周り、カップルだらけだし

カップルじゃない組み合わせなんて俺とレキぐらいか……

 

シャッとカーテンが開くと店員がどや顔をしてきた。

いかがでございますか?

 

「……」

 

ちょっと言葉を失う黒を基調とした浴衣で帯は紫色、柄は桜か?なんかレキによく似合ってる……というか……

 

「かわいい」

 

思わず口から出てしまったが店員がにやりとする

 

「彼氏さんこれがお気に入りだそうですよ彼女さん」

 

「ではこれにします」

 

はっ!いかん彼氏彼女を完全にスルーするとこだった。

 

「い、いやこいつとは……」

 

「ありがとうございます。8万円になります」

 

えええ!

 

「ま、待て8万だと!」

 

たかが浴衣だろおい!

 

「はい、この作品はとある有名なデザイナーの作品であまり出回ってない貴重品を特価価格で販売していますおやめになりますか?」

 

「……」

 

レキと目があった。

無表情だが、買わなかったら俺が悪くなりそうだぞ一応金はある!あるんだけど……

仕方ないか……

 

「はい」

 

と札束を店員さんに渡す

 

「毎度ありがとうございます。これ、レシートです」

 

「ハハっハ……」

 

しくしく泣きながらレシートを俺は受けとるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優さん」

 

祭りで混雑してきた道をレキと並んで歩いているとレキがすっと8万円の札束を俺に渡してきた。

 

「いいよ。誘ったのは俺だしプレゼントだ」

 

「……」

 

レキは自分の浴衣に目を落としてからふるふると首を横に振る

 

「あなたに貰う理由がない」

 

「理由ならあるだろ?神戸での戦いで俺を助けてくれたし、実家じゃ、あの荒木源也相手に戦ってくれた。だから、もらってくれよレキ」

 

その理屈だと理子やアリアにもいずれ何かしてやらないといけないけどな

 

「はい」

 

レキはそう言うとお金を浴衣のおまけについていた巾着袋に入れた。

因みに、レキが着ていた武偵高制服はコインロッカーに入れてある。

時刻は午後7時、祭りは本格的に始まっている。

浴衣にドラグノフは激しく違和感だが、突っ込むまい

屋台が連なる路地を歩いているとレキが足を止めた。

 

「どうし……ああ!」

 

「さあ、射的だってああ!」

 

屋台の親父と目があった。

その親父は以前、姑息な射的で稼いでいたのをレキが叩き潰したあの親父だった。

 

「ま、まさか嬢ちゃん達にまた、会えるなんてな。やってくかい?」

 

見ると商品は猫のストラップやペンダント、コップと言った真っ当なものが多かった。

改心したんだな親父

「はい」

レキが言いながらコルク銃を手にとる。

 

「じ、嬢ちゃん悪いが5発だけにしてくれないかな?兄さんからも頼むよ」

 

まあ、真っ当にやってるからいいか

 

「レキ、五発だけだから好きなの射てよ」

 

「はい」

 

レキはそう言うとコルク銃を撃った。

 

パンパンパンパンパン

5発を発射し、取れたのはカロリーメイト4箱、そして、なんだか高そうな狼の形をした銀色のペアのペンダントだった。

 

「ほれ、景品だ。相変わらず凄い腕前だなぁ兄さんの彼女」

 

違うって!ん?

 

「優さん」

 

レキが銀色の狼の形のペンダントの片方を俺に差し出す

 

「くれるのか?」

 

こくりとレキは頷いた。

浴衣のお礼かな?

まあ、これくらいはもらおうかな?

 

「サンキューレキ」

ペンダントをいじるとへー、ロケットになってるのか……

最近ではあまり見かけないがロケットとはペンダントの中に写真を入れることのできるペンダントのことだ。

狼とかかっこいいしつけようかな……

 

「……」

 

レキが歩き出したので俺も後に続く

またなぁ嬢ちゃん達と後ろから聞こえたが今はレキだ。

 

「レキ!」

 

無表情だがカランコロンと風流のある音を立てるレキ

ドラグノフには違和感があるけどな……

なんでだろうな……この子といるとなんか落ち着くんだ。

っ!

頭がずきりと傷んだ。

血にまみれたレキ、暗闇の中で血まみれの俺は刀を抜いて言っている。

 

「行け…………レキを頼む」

 

これはなんだ?

 

「優さん?」

 

はっとして横を向くとレキが俺を見上げている。

身長は俺が高いから自然にそうなるのだ。

 

「どうかしましたか?優さん」

 

「い、いや何でもない。それより今日はよく、来たよなレキ」

 

俺は綿あめをレキに渡しながら俺も自分の分にかぶりつく

 

 

「話したいことがあると言われましたから」

 

そう言われてメールの内容を思い出す。

あれか……確か、武藤が無責任に書いたんだよな……

ど、どうしよう

 

「……」

 

レキが無表情に俺を見ている。

やばい、何か言わないと……そ、そうだ!

 

「か、カジノ警備」

 

「?」

 

「クエストブーストでアリア、キンジ、俺、秋葉でカジノ警備やるんだレキもやらないか?」

 

最近はレキともよく組んでいる。

それに、修学旅行の後のチーム編成ではレキとも俺は同じチームになりたいと密かに考えてるんだ。

遠距離をカバーできて絶大な信頼がある友人はレキだけだからな。

だからこそ、同じ仲間でクエストはやりたいんだ。

 

 

「はい」

 

「やってくれるのか!サンキュー!」

 

笑顔でレキの手をとって俺は言った。

 

「風を感じるのです。熱く、乾いた、喩えようもなく……邪悪な風を……」

 

ん? よくわからんがまあ、いいか

 

「じゃあ、祭りの続きだ!林檎飴食おうぜ」

 

「はい」

 

手を繋いだままだったがなんとなく、手を離すタイミングが掴めずレキと混雑の中を手を繋いで歩いていく。

うう、意識するとレキの手はひんやりとして小さいんだなぁ

 

林檎飴を買って食べようとした、瞬間

 

「よう、弟」

 

ヒョイと林檎飴が取り上げられたので慌てて後ろを見ると姉さんが林檎飴を口に入れていた。

 

「姉さん」

 

「ちゃぷ、あむ、なかなか上手いな。弟、今日も女をひっかえ……ん?お前?」

 

姉さんはレキを見て目を軽く見開いたが納得したように頷いた。

な、なんだ?

 

「なるほどなるほど、本妻はキチンとキープしてるわけだ。まあ、そうしてくれないとウルスの連中がうるさいし、あいても何か言うだろうからなぁ」

 

ウルス?なんだそれ

 

「蕾姫(レキ)、優希を頼むぞ」

 

こくりとレキが頷いた。

え?何?レキ姉さんと知り合い?

記憶にはないが……

 

「レキ」

 

「?」

 

お前はやっぱり俺と昔……

 

ブーン

うわ、なんだようるさい虫だな

 

「おっと」

 

姉さんが人差し指で虫を払うと虫は跡形もなく消滅した。

ひどいな姉さん、こがね虫は別に毒もないのに

 

「ちっ、パトラのやつ姑息な手を使いやがって」

 

パトラ?

 

「おい、弟」

 

ゴンと頭を殴られる。

痛ぇ!

 

「油断するなよ。次のお前の敵はかなり厄介だ」

 

敵?

 

「姉さん敵って」

 

「まあ、自己責任だ。アリアと蕾姫(レキ)はお前が守るんだな」

 

タアアンと地面を蹴り林檎飴をくわえたまま姉さんはビルの屋上に飛ぶと姿を消してしまった。

なんだったんだ?

 

「優さん」

 

手を繋いだまま、俺ははっとすると

 

「レキ、お前姉さんと……」

 

「く……椎名ぁ……」

 

うわ!

 

「む、村上」

 

なぜかボロボロのレキ様ファンクラブ会長、村上正はレキに手を伸ばし、

 

「れ、レキ様……」

 

と力尽きた。

なんだったんだ?とりあえず、救急車呼んどくか。

 

後に分かったことだがレキ様ファンクラブは姉さんにより壊滅させられ、像すら一撃で破壊する姉さんの攻撃を20発以上受けてレキ様ファンクラブ会長をなめるなと言った村上はなぜか姉さんに認められて一週間入院することとなった。

不本意だが村上に付き添ったためデート……いやいや、レキとの遊びは終わったが結構楽しかったな


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