緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第143弾 優希プロポーズ!?

今日は7月6日、武偵高の夏休みはクエストブーストの関係から7月7月よりスタートとなる。

当然、期末も7月6が最後、だが解放的になる前に……さらにはレキとのデート……いや、出掛ける前に史上最大のピンチを迎えていた。

 

「終わった……」

 

最後の筆記試験を終えて夏休みの注意事項を担任が言ってから出て行き5分、俺は力なく机に突っ伏していた。

 

「よっしゃ終わったぜ!優、キンジ、不知火どっか遊びに行こうぜ」

 

「僕は構わないよ」

 

「俺は今から用事があるからすまん」

 

不知火とキンジの声が聞こえるが顔を上げる気力が……

 

「優は?ってどうした?」

 

「金がない……」

 

「はっ?」

 

そう、俺がこんなに力がないのも金がないからだ。

というのも最近、武偵弾を使いすぎたため請求書がとんでもない金額になってしまった。

借金1000万だ。

冗談じゃなくて本当に……

藤宮姉妹に無利子で立て替えてもらっているが今月は細かい支払いしたせいで7月31日まで金が振り込まれない。

アリア護衛の報酬も毎月、月末が基本なのだ。

飯も3日食ってないしな。

ついにガソリンも尽きて隼も動かなくなっちまった……あれは燃費よくないし……

 

「武藤……不知火金貸してくれ……」

 

ちなみにキンジには頼んだが貸してくれなかった。

他のメンツはアリスは法外な利子をふっかけるからアウト、マリは遠出でいないからアウト、姉さんはここ数日見かけない(いたとしても多分、貸してくれないが……)。

秋葉も貸してくれるし頼めば料理でもなんでも毎日でもお弁当とか持ってきてくれるが、頼り過ぎたくないのでアウト、レキやアリアは最初から選択肢になく、実家に言えば多分、月詠辺りが来て、俺の通帳を没収して管理するかもしれない……

一応、実家からは使用額無制限のクレジットカードは貰ってるがあれはもう、生涯使わないと決めている。

以上が現状なのだが

 

「すまん優!俺も今月は金欠だ」

 

「ごめんね椎名君、ちょっと、装備を整えたらお金が……」

 

分かってるよ……武偵は何かと金がかかるからな……

俺も装備品を優先したがための金欠なんだよ……

 

「おい優、明日レキとデートだろ?大丈夫なのか?」

 

「うるせえ……デートじゃない……」

 

力なく俺は言う!

もう、喋りたくない……

冗談抜きでやばいぞ。

 

♪♪♪

ん?

携帯が鳴ったのでポケットから手に取ると通話ボタンを押した。

 

「はい」

 

 

「今、いいか優希?」

 

「大丈夫です……土方さん」

 

公安0の土方さんだ。

何だろう?

 

「なんだ?声に元気ねぇな?どうかしたのか?」

 

「ハハハ……3日何も食ってなくて……」

 

「自己管理もできねえのかお前は?ちっ、しょうがねえな。校門まで出てこい。飯奢ってやる」

 

「まじですか!」

 

ガタアアンと椅子を蹴倒して立ち上がるとキンジがびっくりした顔でこちらを見上げる。

 

「あ、ああ今、武偵高前だ」

 

「みんなじゃあな!俺帰る!」

 

返事も待たずにまさしく疾風のように俺は窓から飛び降りて校門まで、ワイヤーで飛んでいく。

飯を食わしてくれるなら絶対に逃がさない。

 

「土方さん!」

 

タバコを片手にスバルのレガシィと意外に庶民的な車に乗った土方さんがこちらを見る。

 

「乗れ」

 

「はい!」

 

意気揚々と車の助手席に乗り込むと土方さんは車を発進させる。

 

「お前、金をなんに使ってるんだ?」

 

いきなり、土方さんが聞いてきたので苦笑しながら

 

「武偵弾です」

 

「ガキが持つのははええもんだが……まあ、お前の相手じゃ仕方ねえな」

 

土方さんは俺がどんな化け物クラスと戦ってきたかを知っている。

それに、実は土方さんは姉さんの知り合いでその関係から椎名の家とも細いながらも交流がある。

とはいえ土方さんが姉さんが生きているのか知ってるかわからないので下手なことは言えないが……

「で?お前は金を貸してくれる友人もいねえのか?」

 

「いやまあ……」

 

簡潔に事情を説明する。

アリアと喧嘩したことも含めてだ。

 

「なるほどな……今日、俺が来たのは神崎の件もある……」

 

レガシィが曲がり角を曲がると見覚えがある後ろ姿があった。

ツインテールをひょこひょこ揺らしてるあれは……

 

「ん?ちょうどいいじゃねえか」

 

土方さんは口元を緩めてクラクションを鳴らした。

アリアが振り替える。

土方さんは窓を開けてアリアに近づくと

 

「神崎今、時間あるか?あるなら飯でも食いに連れてってやる」

 

「土方さん?」

 

アリアと俺の目線が合う。

俺は冷や汗を書きながらやぁと左手をあげてみる。

アリアがなにやらわたわたしだした。

おい!そんなに俺の存在って嫌か?

 

 

「ひ、土方さんせっかくですけどまた、今度に……」

 

アリアが慌てて立ち去ろうとする中

 

「神崎 かなえの件でも話があるぜ」

 

アリアがピタリと足を止めた。

ずるいぞ土方さん……その言葉でアリアが釣られないはずがない。

「話は聞くわ」

 

そう言いながら、アリアは後部座席に乗り込んで来て、運転席の後ろに座った。

ねえ、アリアさん!そんなに俺嫌い!姉さん誤解解いてないんじゃないの!

と、この場にいない姉さんを思い浮かべながら

 

「それでママの……」

 

「先に飯だ神崎、東京に繰り出してもいいが……」

 

「土方さん……早く飯食いたいです」

 

グウウと腹の虫が泣いた。

 

「ちっ、ならそこのファミレスにするか文句言うなよ」

 

言うわけないだろ!やっと飯が食えるんだぁ!

 

 

「……」

 

そんなやり取りの中でもアリアは無言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、食った食った」

 

1時間後、山のような空の皿を前に俺は言った。

 

「食いすぎだてめぇ!遠慮を知らねえのか?」

 

土方さんは呆れたようにブラックコーヒーを口に運ぶ。

ちなみに、禁煙席しか空いてなかったのでタバコは吸ってない。

 

「土方さんもういい?」

 

うずうずしていたらしいアリアが言う。

彼女の前にはももまんが10個空になって置かれている。

お前も食いすぎだろ!

 

「神崎 かなえの件だろ?まあ、簡単な報告ぐれえだが、神崎かなえを有罪にした最初の裁判だが、何人か、イ・ウーに通じてるやつがいやがった」

 

まじかよ!てことはやはり……

 

「じゃあ、そいつらを調べれば……」

 

アリアが希望を掴んだみたいにぱっと顔を輝かせるが土方さんは首を横に振る。

 

「そいつらはもう、この世にいねぇ……変死体で見つかった。公にはされてねえが殺されたみてえだな」

 

「土方さんが殺したの?」

 

「馬鹿いうんじゃねえよ。殺されたのは俺が調べる前だ。それに、俺も確固とした証拠は掴めてねぇ」

 

「そう……」

 

アリアがしょぼーんと下を向いてしまった。

そうだよな……うまくいけば更に裁判を遅延させられたかもしれないのに……

 

「話はそれだけだ。後、これは他言無用だ。俺達に消されたくなきゃ黙っとけ」

 

「ありがとう土方さん。また、何か分かったら連絡下さい」

 

俺を無視するようにアリアが立ち去ろうとする。

 

「おい、神崎 アリア」

 

「は、はい」

 

アリアが振り向く。

「いい加減、こいつを許してやったらどうだ?その女とのパートナー宣言は冗談だったんだろ?」

 

「で、でも……」

 

アリアがちらりと俺を見てくる。

ついでに、土方さんまで睨んでくる。

え?俺が……悪いんだよね……

 

「すまんアリア!」

 

俺は90℃背中を曲げて本気で謝った。

 

「俺のパートナーはただ一人生涯神崎・H・アリアだけだ!だから、許してくれ!」

 

「し、生涯!」

 

ぼんとアリアが真っ赤になるが知るか!勢いで押しきってやる!このチャンスを逃したら後はねえ!

 

「ああ!俺はお前に命を助けられた!生涯味方だしずっとお前の傍でアリアを守る」

 

「ま、まままま、待ちなさい優生涯ってけ、けけけ……」

 

ん?

 

「けっけけけ……か、風あにゃあ!」

 

「なんでだあああ!」

 

その後、風穴地獄になりながらも最後は土下座してアリアに謝り、ようやくアリアは顔を真っ赤にしたまま

 

「ゆ、許す!許すからあっちにいけ馬鹿優ぅ!」

 

とガバメントを振り回すアリアから逃げながらようやく許されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、アリアの問題はなんとか片付いたな……後はレキか……ふぅ……

 

 

ちなみに、この後、土方さんが10万円無利子で貸してくれたことは余談である。


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