緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第141弾 孤独なアリア

毎回、この姉さんには昔から、俺は振り回されることが多かった。

世界中を旅してた時も、姉さんは何もかもが突然で

 

「よし、フランス料理を食べにいこう」

 

と言われていきなり、フランスに連れていかれたり

 

「んー、本場のハンバーグ食べたいなぁ……アメリカ行くか

 

と、行動はめちゃくちゃだった。

世界最強の移動は無論各国は緊張するのだがこの人、人脈もめちゃくちゃでアメリカの大統領には家族同然と言われたり、ヨーロッパの首相の大半と知り合いであると言ったりするので西側諸国の移動は容易に行えた。

しかし、問題はいわゆる東側諸国で一度行くと言えば北朝鮮だろうがイランだろうがまったく、関係なしに拒否されれば密入国する。

そのせいで死にかけたことは一度や二度じゃないはずだった。

記憶があいまいだが死にかけたのは覚えてる

だけど姉さんはいつでも正しかった。

フランスに入ると移民同士のいざかいをまず、力で屈伏させてから政府と仲介役になったり、アメリカでは大統領暗殺を未然に防いだりなど、一歩まちがえば大惨事になりかねないことを平気で解決しているのだ。

むちゃくちゃだけど正しい姉であり師匠の水無月希。

だが、今回ばかりは意味が分からない。

姉さんは何らかの目的で死んだことにして、俺の前に再び、現れた。

アリアを殺すこと、そう姉さんは言った。

仮に未来にアリアが巨悪になるとしても水無月希が出れば片がつく。

あるいはカナに合わせていただけなのか……

くそ、考えれば考えるほどわかんねぇよ

 

「ま、お前が何かを聞きたいのは分かる。だが、内緒だ。武偵なら、自分で調べろ」

 

不適に笑いながらかべを背にして腕を組んでいる姉さん

 

「分かってるよ」

 

俺が言ったとき

 

「ん……」

 

「キンジ?椎名優希?」

 

目を閉じたままカナが言った。

キンジが壁にぶつかった音で目が覚めたか……

 

「昼寝はもういいのか?」

 

姉さんがカナに話しかける。

 

「ええ、悪いんだけど希……」

 

「ああ、分かってるさ。ほら、行くぞ弟、お姉ちゃんとデートしよう」

 

「へ?」

 

音もなくぱっと俺の後ろに回り込んだ姉さんは俺の体を掴むとどんと窓から飛び出した。

 

「ぎゃあああああ!」

 

突風が吹いたかと思うと急上昇、後ろを見れば寮どころか学園島がみるみる小さくなっていく

 

「お、下ろしてくれぇ!」

 

情けない声をあげた瞬間

 

「降りたいのか?」

 

ぱっと姉さんが多分、高度700メートルくらいからいきなり手を離した。

もちろん、俺は重力に……

 

「は、離すな馬鹿師匠!地上に戻せぇ!」

 

冗談抜きで死ぬぞ!ワイヤーでどうにかなる問題じゃない!

 

「なんだ、注文の多い奴だな」

 

姉さんが俺の背中に触れた瞬間、一瞬、景色が歪み気がついたら俺は学園島の道路で膝をついていた。

瞬間移動かよ……

 

「殺す気か姉さん!」

 

「ハハハ、カナに弟とは二人で話したいと言われてたからな。それに、私もお前とはいろいろ話したいこともあるしな」

 

「話したいこと?」

 

姉さんはククと笑いながら俺に顔を近づける。

 

「アリア、秋葉、理子誰が本命なんだ?」

 

「はぁ?アリアと秋葉に理子?なんでそんな話になるんだよ」

 

「隠すな隠すなもうからだを許すほどの仲なんだろ?」

 

かっ……!

 

「何、馬鹿な……」

 

「いやぁ、世界中でフラグたてまくるお前見てて素質は感じてたが見事に開化したわけだ。こりゃ、あの子にも……」

 

「いや、姉さん……アリアも理子も友達だから!それに秋葉は……多分、俺を憎んでるだろ……」

 

「……」

 

姉さんは少し黙り込んだ。

 

「葉月さんのことは気にするな……とは言えんか」

 

山洞秋葉の母親、山洞葉月は俺が殺したのだ。

操られていたとは言え、秋葉が俺に恋愛感情を抱くなどあり得ない。

友達という関係でさえ、不思議な仲なのだ。

 

「この際だから言うが秋葉の奴、昔はお前のこと好きだったぞ。女の子としてな」

 

「だとしても……今は違うだろ……」

 

少し驚いたがそれは過去の話だ。

今の関係には何の変化もない。

 

「はぁ……お前というやつは何でそんなに……」

 

姉さんは何かブツブツいっていたが近くの木にもたれかかった。

 

「お前が鈍感なのはわかったから少し、違う話をしよう。お前、単位足りてるか?」

 

嫌な話題だな。

 

「いや、足りてないけどカジノ警備で補填できるから進級はできるよ」

 

「カジノ警備ぃ?はぁ、まんまと……がって」

 

え?今なんて

 

「まんまと何だよ姉さん」

 

「知らん、それもお前が選んだ道だ。モード緋弾、使えるようになっておけ」

 

「モード緋弾?」

 

初めて聞く名前に眉を寄せる。

 

「モード緋刀か?どっちでも言いがローズマリーを倒したあの力だよ。剣術はまあまあ、だし紫電もあるからある程度の敵には勝てるだろうがRランクと戦うこともあるだろう。お前が本当にアリアの護衛を完遂するならな」

 

アリアの護衛を知っている?

誰にも話したことはないのに

 

「姉さん何でそれを……」

 

 

「さあ?」

 

ニヤリと姉さんは笑う。

依頼主が姉さんという可能性はあるが恐らくは違うだろう。

姉さんに知り合いは多い、今も繋がりがあるかは不明だが何人いるか特定はできない。

 

「知りたいか?」

 

姉さんはフフと笑いながら

 

「私とイ・ウーを見学してみるか?暫くは、お前は私のパートナーと言うことになるがな」

 

イ・ウーを見学だと!

本気で言ってるのかよ姉さん!

行くだけでも犯罪になりかねないことを……

 

ドンと何かがぶつかる音が後ろからした。

 

「!?」

 

慌てて振り替えると大きく目を見開き涙目のアリアが驚愕の視線を向けていた。

 

「あんたも……なの優……」

 

「え?」

 

アリアは涙を流しながら

 

「キンジはカナ……だけどあたしにはまだ、優がいると思ってたのに……あんたは……その水無月希と偽名を使う女……」

 

や、やばいアリアのやつなんかおかしいぞ!幸いイ・ウーの名前は聞かれてないようだが姉さんが俺をパートナーと言った言葉を聞いたらしい

 

「ま、待てアリア!違う!違うんだ!」

 

「……もぅみんな、何もかも……ほんとに、なくしちゃったよぉ……」

 

うつむいたアリアの目から涙が地面に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違うアリア!俺は裏切ったりなんかしない!

俺は……


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