緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第137弾 最強の存在

アリアを殺す……どういうことだ……

 

「いきなり出てきて何を言ってるんだよ!アリアが何かしたのか!」

 

「ふーん」

 

姉さんは不敵な笑いを崩さず

 

「向きになるなぁ優希。京都での戦いの時といいアリアに惚れたか?」

 

「なっ!」

 

「おお、赤くなったなった。成る程そういうことなら……」

 

「違う!アリアとはチームメイトだ!」

命の恩人でもあるけどな……

と心に付け加える。

 

「ふーん」

 

姉さんはニヤニヤしながら俺を見ている。

なんなんだよ一体

 

「それよりこっちの質問にも答えろよ姉さん!なんで死んだはずのあんたが……」

 

「秘密」

 

左の人差し指を口に当てて、姉さんはいたずらっぽく笑った。

この人は気分屋だからしゃべらないと言えば絶対にしゃべらないと。

例外はあるがそれを成した人間は存在しない。

 

「それとも力ずくで聞くか?」

 

びりびりと頬に当たる殺気。

そう、姉さんから気分を曲げて話を聞きたいなら姉さんを倒すしかない。

ないのだが……

 

「実力差くらい分かってるさ。アリアを殺さないと言うなら戦わない」

 

姉さんの対峙したなら戦うな。

絶対に勝てない。

戦艦の巨砲すら彼女の前にはゴミに等しい。

何より、昔から姉さんの戦闘能力は嫌と言うほど見てたからな……

 

「なんだよぉ、戦えよ優希ぃ」

 

つまらなさそうに姉さんがむくれる。

 

 

「嫌だ!絶対に戦わない!」

 

情けない話だけどな……

 

「まあ、まだ緋弾の力は扱えてないから後でもいいが……」

 

「緋弾?」

 

聞きなれない単語に首をかしげた時、背後から銃声がした。

はっとして振り向くとキンジが足を踏み外してプロペラから落下しかけてワイヤーで止まる。

あの女敵か!

 

「キンジ!」

 

距離的にワイヤーじゃ無理だ。

ガバメントを取り出すと走り出そうとするが姉さんがいきなり、前に立ちはだかる。

 

「退いてくれ!」

 

「心配しなくていいさ優希カナは弟を殺さない」

 

弟?キンジの姉さんなのか?

昔からの癖なのだろう。

俺は姉さんに言われてその場に立ち止まる。

女性……カナがプロペラの縁に立つと再び発砲した。

な、なんだ?いつ抜いていつ撃った?まるで見えなかったぞ。

 

「不可視の弾丸(インヴィジビレ)、カナの得意技だ。お前も似たようなことランパンの連中とやり合った時、やったろ?」

 

記憶を探ると奏ちゃんを助けるときシンに放った居合銃か……だがあれは抜き放つ高速を利用したものだ。

あのカナは多分、抜いて仕舞う動作を高速でやって見えないようにしているんだろう。

それも一瞬で照準して……

なんて技量だ。

 

ガクンとキンジが下に下がる。

今の弾丸でワイヤーを掠めたのか!切らずに……

 

「大丈夫だ優希。最悪私が助けてやるさ」

 

姉さんがそう言うなら大丈夫なんだろうけど……

カナとキンジは何かを言ってるみたいだが風もあって聞こえねえな

最悪、俺でも助けられる準備だけはしとくか……

 

キンジが何かを叫んでワイヤーを昇ろうとした瞬間、キンジのワイヤーが切れたらしく暗闇に落下していった。

 

かと思うと落ちたキンジが引き上げられている。

どうやらカナは最初から落とす気はなかったらしくキンジにワイヤーをつけていたようだ。

 

「な、大丈夫だったろ?」

 

カナを信じていたのか姉さんが言った。

 

「あ、ああ……」

 

だが、何であんなことになった?

キンジは気絶してるらしくカナが抱き抱えるとこちらに歩いてきた。

 

「悪いねカナ、私はアリア殺しはやらない。弟の恋路は邪魔したくないんでね」

だから違うと言ってるのに!

本当に人の話を聞かない人だな

 

「私も気が変わったわ。キンジに会って第2の可能性にかけて見ることにしたわ」

 

柔らかにカナは言う。

そういや、理子がこの人の変装してたな……物凄い美人だ。

 

「あなたが椎名の後継ね?初めまして、私は遠山カナ」

 

「し、椎名優希です」

 

抱えられてるキンジは気になるがまあ、姉弟ならいざこざはあるだろう。

殺されてはないみたいだし外傷も見当たらない。

にしても、本当に綺麗な人だなぁ

握手しながら思っていると姉さんが耳元でぼそりと

 

「言っとくが惚れるなよ?カナは男だから」

 

はっ?

思わずカナさんを見るがどこらどう見ても女だしかも一級クラス

 

「嘘?」

 

「本当だ。本人に聞いても無駄だからな。カナはカナの時は男であることを忘れてるから」

 

耳元でぼそぼそと姉さんがカナに聞こえないように教えてくる。

世の中わからねぇ……たまに、女装する俺が言えることじゃないか……

 

「……」

 

カナが俺を柔らかく微笑みながら見ている。

 

「第2の可能性、あなたがいるなら更に高まるわ。本当は希がやってくれれば一番楽なんだけど……」

 

「イ・ウーや教授は面白いからな。私はやらん」

 

イ・ウー!

だんと二人から距離を取るとガバメントを二人に向ける。

和やかだった雰囲気が一気に変わる。

 

「姉さん、カナさんあんた達イ・ウーの構成員に……」

 

「ふっ」

 

水無月希は笑う。

弟を見る目ではなく戦闘狂の目で

 

「だったら?どうする?」

 

 

「イ・ウーは犯罪者集団だ!なんで!」

 

「聞きたきゃ私を倒せ」

 

そう言った瞬間、姉さんが消えたかと思えば大砲のような一撃が腹にめり込むところだった。

 

「ぐっ……は」

 

吐血しながら空中にぶっ飛ばされる。

武器は使ってない。

素手で姉さんは戦ってる。

ガバメントを下に向けるが姉さんはすでにいない。

背後から殺気を感じた瞬間、背中に衝撃が走り飛行機に叩きつけられた。

 

「う……」

 

なんとか受け身は取ったが既にボロボロだった。

口元の血をぬぐいながら飛行機にすたっと降り立た姉さん

 

「どうした優希?」

 

本気でやるしかねぇ!

ワイヤーパージボタンを押し込むとズンズンと重いワイヤーが落ちる。

 

「……」

 

姉さんは何も言わずに腕を組んでそれを見ている。

紫電を抜き放ち前に構える。

巨大な殺気を姉さんに向ける。

 

「成る程、飛龍零式陽炎か」

 

陽炎は相手の感覚を狂わせる特性がある。

一撃にかける!

気がかりはカナだが彼女はキンジを抱えたまま、動かない。

 

「陽炎は別に私も使えるからな。一つ教えてやる」

 

ぎしりと殺気の密度がました。

ぎ、逆に姉さんの姿が陽炎のように揺れている。

 

「陽炎は殺気が命だ。今のようにお前を上回る殺気をぶつければ陽炎は意味を成さない」

 

勝てない……

 

「それが最後の切り札なら諦めろ。私には勝てない」

 

だが、諦める訳にはいかない!

第2の可能性とは何かはわからないがこの二人は最初、アリアを殺すつもりだった。

アリアを!

プツンと俺の意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SiDE水無月希

 

「お?」

 

水無月希には見えた。

優希の髪の色がピンクに染まりかけている。

ローズマリーに使った緋刀の力。

見ては見たいが潮時だな。

水無月希は一瞬で肉薄すると拳を叩きこむ。

ガアアアンという音を立てて紫電と拳がぶつかり合う。

ほぅ、反応したか……まあ、意思はないみたいだが……

甘いな!

水無月希は神速の蹴りを優希に叩き込んだ。

今度は反応できずぶっ飛ばされて飛行機の上を滑った優希が動かなくなり髪の色が元に戻るのを水無月希は確認した。

 

「優しいのね希」

 

キンジを抱えるのと同じく希は気絶した優希を抱えながら

 

「一応弟だからな。手加減はするさ」

 

「本当にあなたならシャーロックを……」

 

今もまったく、本気を見せずに優希を一蹴した実力をカナは残念に思った。

彼女は武器もステルスも使わなかった。

 

「でも私の拳にこいつ反応できたな。緋弾の力……まあ、モード緋弾とでも言うが意識して使えたら優希はまだまだ、伸びるな。戦いがいがある」

 

「本当にあなたは……バトルマニアなんだから」

 

「私は自由に生きる。それだけだよ」

 

水無月希は笑いながら歩き出した


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