緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第128弾 乱戦

ちっ……遅かれ早かれそうなるとは思ってたが……

俺は武装した仲居達や近衛達を見てため息をついた。

総勢50人はいるだろう。

鏡夜との戦いで時間をかけたつもりはなかったがお見通しだったか……

 

「おい、優」

 

キンジの言葉を無視して前に出てきた近衛の日向抜刀してない刀を左手にしながら警告してくる。

 

「優希様、あなたがしていることは反逆です。わかってますか?」

 

手に持つ紫電のことを言ってるんだろう。

本来こいつは後継ぎ以外の人間が持ってはいけない。

なので、今は誰のものでもないのだ。

 

「ローズマリーと戦うにはこいつがいる。どけ」

 

「っ!」

 

日向を含めた近衛や仲居達が怯む。

それだけ怒りを殺気に込めたのだ。

 

「……あなた達も分かってますか?優希様に手を貸すというならただではすみませんよ?」

 

「俺達は武偵だ。仲間を拐われたら助けに行くのは当然だろ?」

 

キンジが言う。

だが、日向はため息をついて

 

「武偵3倍則で最悪懲役になりますよ?」

 

逆らったのが一般の組織なら罪を消すことはできる。

俺にはそのコネもあるからな。

だが、逆らうのが椎名の家だというのは相手が悪すぎる。

今回ばかりは、公安0も俺には味方してくれないだろう

 

「その時はその時。みんなでイ・ウー辺りに行くよ。理子そういうとこ詳しいんだ」

 

確かに、イ・ウーなら椎名の家も簡単には手は出せまい。

だけどそれはそれでやだなぁ……

 

「あなたもですかレキ様?」

 

日向はみんな、従う意思を見せないので黙って日向を見ているレキに聞いた。

レキはドラグノフ狙撃銃を日向に向けながら

 

「私は優さんについていきます。あなたが優さんの敵なら私の銃弾があなたを射抜く」

 

「交渉……決裂ですね」

 

日向は再びため息をつくと右手で刀を掴んだ。

それに合わせ、周囲も各々の武器を構える。

ちっ、ローズマリーの前にハードすぎる戦闘だな……

 

「みんな、一点突破で抜けるぞ」

 

山に入ればこちらのものだ。

 

「殺してはいけません。捕らえなさい」

 

両者が動こうと筋肉にわずかに力を込めた瞬間だった。

 

「待って!みんな待って!」

 

着物は走りにくいのに息を切らせながら咲夜が俺達の間に入り込んだ。

全員が動くのをやめる。

 

「咲夜」

 

「咲夜様」

 

日向と俺が突然現れた咲夜の名前を呼ぶ。

 

「はぁはぁ、お、お母さんからの……当主代理からの伝言です。行かしてあげろと」

 

「え?」

 

「だ、だから優兄達を行かせていいそうです。紫電も一時的に貸すと」

 

「私はそんな命名を受けていません」

 

日向が探るように咲夜を見る。

 

「椎名の直系として誓います!これは当主代理の言葉です。優兄達を行かせてあげてください」

 

あの人が……いや、この状況であの人が行かせてくれる訳がない。

咲夜……お前

 

「申し訳ありませんが咲夜様」

 

日向が咲夜を睨み付ける。

 

「あなたは優希様になついておられます。素直に信用はできません」

 

「当主代理としての母の言葉ででもですか?」

 

「はい、当主様は言われました。必ず生かして捕らえなさいと。残念ながら、命令変更は本人の口からじゃないと私は信じません」

 

「……」

 

必死の嘘だったんだろう。

咲夜は本来、嘘なんてつく子じゃないんだ。

それを俺のために……

 

「咲夜、もういい。」

 

「優兄ぃ……」

 

泣きそうになっている妹に頷いてから

 

「下がってろ後は……おい!」

 

最後は日向に向かい叫んでいた。

視界に飛び込んできたのは塀を飛び越えてきた木偶人形だったのだ。

阿修羅タイプが20体

 

「敵襲!」

 

誰かが叫んだ瞬間、阿修羅タイプの木偶が仲居を斬り倒した。

悲鳴もあげずに切られた仲居が崩れ落ちる。

 

「くっ!」

 

完全に背後からの奇襲だ。

日向は舌打ちして俺と阿修羅タイプを見ながら阿修羅タイプに向かい走り出した。

阿修羅タイプはSランクに匹敵する力をもつ。それが20体、仲居達は銃を持っているが所詮、戦闘は補助が役目なのである。

だが、これは絶好の好機である。

 

「みんなこっちだ!」

 

「きゃ!」

 

乱戦になった広場から逆に走る。

咲夜をお姫様だっこしてな

 

「あっちはいいのか優!」

 

理子が走りながら聞いてくる。

一目見て、劣勢だが立て直すのは難しくないだろう。

だが、走りながら屋敷のあちこちで銃声や打ち合う音が聞こえてくる。

あの木偶人形を使うのがローズマリーの仲間なら間違いなく手引きだ。

こちらにこいと言うな。

 

「大丈夫だついてこいみんな」

 

その時、携帯が鳴った。

無視するか悩んでから

 

「キンジ!落としたら殺す!」

 

「きゃ!」

 

小さく悲鳴をあげながら咲夜はキンジの腕にお姫様だっこされた。

 

「大丈夫だ優。女性は優しくエスコートするさ」

 

ヒステリアスモードだもんな……

それより

 

「……」

 

画面を見るとアリアと表示されている。

まず、間違いないだろうな……

通話ボタンを押し込んでから耳に当てる。

 

「フフフ、繋がりましたの」

 

「貴様……」

 

一番不愉快な声に俺は携帯を握りしめる。

 

「アリアは無事なんだろうな?」

 

「いきなり、違う女性の話題は私焼いちゃいますの」

 

「お前のことなんかどうでもいいんだよ!アリアは無事なんだろうな?」

 

「殺しましたの」

 

「……え?」

 

頭の中が真っ白になる。

殺された?アリアが……

 

「フフ、嘘ですの」

 

「貴様……」

 

嘘と聞いてほっとした。

 

「でも、無事かは優希次第ですの」

 

「回りくどいことを、今からお前を逮捕しに行ってやるから待ってろ」

 

「まあ」

 

ローズマリーは喜んだらしい

 

「お待ちしてますの。後、先程アリアの無事を確認しましたので教えますの。アリアは後、3時間で……」

 

衝撃の言葉を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヴァンパイアになりますの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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