緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第122弾忌まわしき過去ー銀の少女

「で? なんで、こんなとこにいるんだよ?」

 

人に会いたくないというローズマリーの言葉に従い、迷ったが秋葉に連絡して救急箱を持ってきてもらうことにした。

ついでに、いろいろと頼んでおいた。

 

「怖い人が私を追ってくるんですの・・・」

 

「悪い奴か?」

 

俺が聞くとローズマリーははいとうなずきながら

 

「とっても、悪い人ですの」

 

「まあ、それは詳しくあとで聞くとして」

 

切り傷によく聞く薬草を石ですりつぶしてから、ローズマリーの足にすり込んでいく

 

「ひぅ」

 

しみるのか、小さく悲鳴を上げる。

 

「我慢しろよ。 っと縛るもんがねえな・・・」

 

カバンをまさぐるが丁度いいものが見当たらない。

ポケットからハンカチを取り出すと傷口に巻きつける。

 

「・・・」

 

ローズマリーはそれを興味深そうに見ていた

 

「手馴れてますのね」

 

「師匠と散々、世界を回ってたからな。 生傷と耐えることなかったから自然と覚えた」

 

「師匠ですの?」

 

「ああ、戦闘訓練の師匠。 よし、出来た。 にしてもローズマリーって呼びにくいな略してローズにしよう」

 

「ローズ?」

 

「外国人だから知らないか? 日本人は友達には愛称を付けて呼ぶんだ」

 

「友達?」

 

いちいち、きょとんとして聞いてくるなこの子・・・天然さんか?

 

「そうだよ。 ローズって歳いくつ? 俺と同じぐらい?」

 

「1歳?」

 

「嘘つくな!」

 

ばしっとローズの頭を俺は軽く叩く

 

「あう・・・痛いですの」

 

どう見ても、10歳かよくても12歳ぐらいにしか見えない。

頭を抑えるローズを見ながら

 

「そういや、お前・・・」

 

「優様」

 

風が髪を揺らし、空を見上げると秋葉が降りてくるところだった。

秋葉は風を使える一族だ。

短時間なら空を飛んだりできるから、一緒にいることも多い。

 

「頼まれていた物をお持ちしました。 その子は?」

 

カバンを受取りながら中身を確認する。

 

「ローズマリーだ。 ローズって呼んでやってくれ」

 

「わかりました。 よろしく、ローズ、私は山洞 秋葉。優様に仕える近衛です」

 

「よ、よろしくですの秋葉」

 

そう、この出会いこそが後に死ぬほど後悔するすることになる一幕の幕開けだったんだ・・・

屋敷に連れて行こうとするとローズは嫌がった。

自分はもう、大人なんだと思い。

しばらくなら、面倒をみようと秋葉にも口止めし、俺達は1ヶ月に渡る日々が始まったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズと出会い、半月後。

俺と秋葉は食料等を持って、よく洞窟に出かけて修行したり、遊んだりした。

最初は、距離を置きがちだったローズもしだいに俺たちと遊ぶようになっていった。

その日も、遊んだあとに別れ屋敷での夕食の時間

 

「ねえ、兄さん毎日どこ行ってるの?」

 

「ん? 修行だ修行」

 

「最近、優兄、秋葉と屋敷の外ばかり言ってるよね・・・」

 

すっかり、風邪の治った咲夜が不満そうに言った。

 

「外の訓練なんだよ。 秋葉はいると便利だしな」

 

ローズマリーのことは弟と妹にも秘密だった。

というのもローズマリーが

 

「私がここにいることを誰にも言わないで欲しいですの」

 

と言ったからだ。

女の子を守るのは男の務めと考えていた俺はすぐに快諾した。

秋葉も俺が頼めば嫌とは言わない。

まあ、いつか紹介することもできるだろうさ。

 

「私はもう少し、家にいて欲しいなぁ・・・」

 

「そうだよ兄さん。 明日は家にいてよ」

 

お? なんか困ったな・・・

でも、ローズのご飯も届けないといけないし・・・

まあ、秋葉に任せればいいか?

 

「分かったわかった。 明日は家にいるよ」

 

「本当、優兄?」

 

「おう」

 

「みんないるな?」

 

声の方を3人で見る

 

「父さん。 今帰ったの?」

 

鏡夜の言葉に頷きながら明人が上座に座る。

仲居たちが食事を運んで明人前に素早く並べていった。

 

「ありがとう」

 

手を合わせてから明人が食事を開始する。

椎名の家は家族全員揃って食事することはあまりない。

俺も師匠に連れられて家を開けていることが多いし、母親は体が悪いためあまり、部屋からは出てこない。

そして、当主の明人は多忙なため、家にいることがあまりないのだ。

比較的、よく家にいるのは鏡夜と咲夜だけ

 

「今日はどこに行ってきたんだ? 父さん」

 

「東京だ」

 

簡潔に答えてくれる。

何をしに行っていたのか等は教えてくれない。

まだ、早いと判断されているのだができれば、教えて欲しいところだ。

家を継ぐのもあるが人脈を作りたいのだ。

師匠と外国を回って痛感したのは人とのつながりが重要だということ。

諸外国に知り合いがいればいざというときに協力してもらえるなど何かと便利なのだ。

 

「東京…行ってみたいな」

 

鏡夜が想像しながらなのか上を見上げながら言う。

家から出ることあまりないからな咲夜と鏡夜は……

よく出て京都市内が限度という有様だ

 

「別に東京行ったって京都と代わり映えしないって、ビルがにょきにょき立ってるだけだ」

 

一応、東京にも行ったことはあるからな。

もちろん、師匠について行ったときに警察関連と知り合いになった。

闇の公務員と言われる公安0の人達にも会ったがさすがに、一目見ただけで化け物クラスだと思い知らされたよ。

直接、戦闘することはなかったけど今、戦ったら絶対に勝てないよな・・・

もっと、修行して強くならないと

 

「兄さんはすごいな・・・世界中を旅していろいろな経験して」

 

「ああ、まあ大変なこともあったけどな・・・吸血鬼のブラドにさらわれたときはさすがにやばいと思ったし」

 

「吸血鬼」

 

想像したのか咲夜が顔を青くした。

 

「そうそう、こう闇の中からいきなり現れてかぷっとかんで血を吸うんだ。 咲夜なんて一瞬で干からびるな」

 

「ゆ、優兄のいじわる! トイレ行けなくなるよ!」

 

「ハハハ! まあ、家なら大丈夫だろ。 近衛もいるし俺たちもいるんだからな」

 

泣きそうな顔の咲夜に笑いかけながらあの時のことを思い出す。

そういや、理子ちゃんどうしてんだろうな・・・

ブラドから逃げる手はずは整えられてると師匠には聞いたけど連絡先知らないんだよな・・・

談笑の中、明人が口を挟んでくる。

 

「吸血鬼か・・・ルーマニアのブラドのことだな? 良く無事だったな優希」

 

「師匠が助けに来てくれたんだよ」

 

「希か・・・あいつなら確かに、ステルスの攻撃も、ものともしないだろうな」

 

「ステルス?」

 

「秋葉も使うだろ? 風とか雷とか肉体強化とかとにかく超能力みたいなものを使える奴の総称。 能力者とか呼び方もあるけどな」

 

咲夜の問いに答えながら俺はお茶を口に運んだ。

 

「優希、お前は旅の中でステルスと戦うことはなかったのか?」

 

「ほとんどなかった。 師匠にはステルスと戦う時は逃げられるなら逃げろと言われてたから」

 

「そうか・・・優希お前はまた、希と旅に出るのか?」

 

「うん、まあ師匠次第だけど。 またまだ、外国には行きたいし知り合いも多いから会いたいし」

 

やり残したことも多い。

外国では死にかけたこともあるけどきっと、それは未来の経験につながるだろう

 

「・・・」

 

 

父親は黙って俺を見ていたがやがて

 

「お前は椎名の家を継いでくれるんだな?」

 

「当たり前だろ? そのために俺は努力してるんだから」

 

「優希」

 

食事中にも関わらず明人は立ち上がると立てかけてあった日本刀を手に取ると俺に渡してきた。

 

「これは?」

 

「抜いてみろ」

 

困惑した俺が言うと真剣な目で明人言った。

鞘から刀身が現れる。

一目見ただけでも名刀だとわかる。

 

「・・・抜けたか・・・」

 

明人が言う。

訳が分からないので

 

「父さん?」

 

「それはお前にやろう優希」

 

「え? いいの?」

 

「ああ、名は『紫電』、決して無くすな。 命の次に大事なものと思うんだ」

 

紫電か・・・

鞘に収めてから大事に手に持ってみた。

 

「ありがとう。 父さん! 大事にするよ」

 

「ああ」

 

満足そうに父さんは頷いた。

この時の俺は、この刀の価値なんて知る由もなかったんだ。

 

 

 

 

 

 


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