緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第116弾 椎名優希調査記録―咲夜編

サイド 椎名 咲夜

 

「ちょっと話していい?」

 

「は、はい」

 

食事が終わり、部屋に戻る途中に声をかけてきたのは優兄の連れの女の子神崎・ホームズ・アリアさんだった。

私と同じくらい小さな女の子だな……

 

「よろしければ部屋を用意します咲夜様」

 

「あ、うん、睦月いいよ。私の部屋で話すから。護衛もいらないから部屋の外で待っててね」

 

「はい、では散歩は後ほど」

 

「散歩?」

 

アリアさんが聞いてくる。

 

「食後の散歩です。そうだ、アリアさんも散歩しながら話をしませんか?」

 

「いいわ」

 

こうして、始まった。

散歩、私の散歩コースは敷地内にあるガーデニングが施された庭だ。

昔の家は日本式だったが迎撃の観点から西洋式に変えられている。

これは好きではあるが和服とはミスマッチしてると思う。

 

睦月が見えるか見えないかの位置についてるのを見ながら生け垣でできた迷路にアリアさんと入る。

 

「それで聞きたいことってなんなんですかアリアさん」

 

迷路を見ていたアリアさんは

 

「優のことよ。あいつのことを教えてほしいの」

 

「優兄の?」

 

「過去にあいつに何があったの?あの、弟だって優に対する態度が兄弟じゃなくまるで、仇のように感じられたわ」

 

「……鏡兄は……許せないんだと思います……」

 

「許せない?」

 

言っていいのかどうか迷うけど私は優兄が連れてきた友達になるべく真実を伝えたい。

隠して、こじれて一人になっていく兄の背中はもう見たくなかった。

 

「アリアさん」

 

私はほぼ、同じ視線でアリアさんのカメリアの瞳を除く

 

「すべては話せませんがこれから言うことを聞いても……優兄が過去を話しても友達でいてあげてください」

 

「あいつはど……チームメイトよ。私たち武偵は仲間を信じるわ。特に優には私は命を助けられてる。大丈夫よ」

 

ほっとした。

目の前の女性は小さいが信頼に値する人だと私は確信したのだ。

 

「わかりました。アリアさんを信じます。まず、優兄が昔、師匠と世界中を旅をしていたのを知ってますか?」

 

「理子を助けた話ね。知ってるわ。具体的にどこをまわったのかまでは知らないけど」

 

「私も全部は知りません。優兄はイギリスにも行ったと行ってましたからアリアさんともすれ違ってるかもしれませんね」

 

「そうね」

 

「優兄を連れていた師匠の名前は水無月希」

 

「水無月……」

 

「そうです。アリアさんが思い至った人です」

 

 

「あの紫電の雷神レイン・ハートと並ぶ生きた伝説と呼ばれた世界最強の武偵じゃない!武偵に限らず、戦いに身を置くものなら誰でも知ってる超有名人よ!あの人を優は師事してたの?あいつの強さの一端が少しだけ分かったわ」

 

やっぱりすごい人だったんだ……

 

「その死因は聞いていますか?」

 

「なぜか、報道は控えめだったけど知ってるわ。依頼の最中に命を落としたって……死体も見つからなかったとも聞いてるわ……どこで亡くなったのかも死因も発表されなかった」

「水無月 希さんが亡くなったのはあそこです」

 

そう言って私は山の頂上を指差す。

森に阻まれてすべては見えないが巨大な民家のような建物が見えた。

 

「水無月希が京都で?それは、優が実家に帰ってる時に亡くなったってことなの?」

 

椎名の家は京都にある。

亡くなったのが京都なら推理と言えるほどのものではない考えだ。

私は驚いたアリアさんに頷きつつさくさくと道を歩きながら

 

「あの山の上は椎名の旧邸なんです。昔、あそこで事件がありました。水無月希はそのために命を落とし、多くの人間が不幸になった場所です」

 

「事件って何があったの?」

 

「6年前……あそこで優兄は罪を犯しました……誰が見ても仕方なかった罪……私はそれを罪とは見ていませんが回りの多くは優兄を恨みました」

 

「何をしたの優は!あいつが冷たい目で見られるのはなんで?」

 

そういえばアリアさんはホームズ家では居心地が悪かったという。

少しだけ優兄とアリアさんは似ているのだ。

だが、これ以上は罪の根本になる。

 

「私からはこれ以上話せません。罪は優兄から直接聞いてください」

 

アリアさんはまだ、何か言おうとした。

だがら、私は眼帯を外してアリアさんを見た。

アリアには右目に僅かに残る刀傷が見えるだろう

 

「1つだけ言うならこの右目を失明させ切ったのは優兄です」

 

「そんな……あいつはあんたのこと溺愛してたじゃない……なんで……」

 

「誤解しないでください。アリアさん。理由を知れば分かるはずです……私はこの傷を恨んでいないし、仕方ないと言えるんです。でも、他の人は納得できない人も多いんです」

 

「あんたの目のことで?」

 

私は静かに首を横に降る

 

「それ以外の罪もあるんです優兄には……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会話が終わり、アリアさんが去った後、部屋に戻ると横を歩いていた近衛の日向が

 

「よろしかったんですか?あんなにアリアさんに話して」

 

「うん、優兄の友達だからね……多分、優兄も機会があれば話すんじゃないかな?」

 

「受け入れてもらえるんでしょうか?」

 

「じゃなきゃ困るよ……優兄にもそろそろそろ幸せになってもらいたいの」

 

そう、馬鹿みたいに回りとはしゃいでるように見えた優兄も家の人間と話すとどこか悲しげな顔をする。

それは一瞬だができればそんな顔をしてほしくない。

私は兄や家族が大好きだから昔みたいに笑って過ごせる日々が欲しい。

そのためには優兄には過去に向き直ってもらわないといけない。

 

「ですが、咲夜様……最悪の場合、優希様はまた、一人になってしまいますよ」

「う……ん」

 

それは最悪の結末だ。

優兄からアリアさん達が離れていく……兄は罪と並べて仕方ないと苦笑するんだろう……

だが、きっと心は泣いている。

でも、咲夜には勘ではあるが確信ある。

アリアさん達は誰一人として兄を見捨てないと……

それに、私は決めている。

誰が敵になろうと自分だけは兄を信じようと……

 


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