緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第115弾 優希調査記録その1―秋葉編

なんとかみんなの誤解を説いたのもつかの間、案内されたのは大人数が食事するための広間だ。

すでに、案内されていたらしいアリア達

 

「あ、ユーユーおっはよーん」

 

理子が朝からハイテンションに手を降ってくる。

少しは自重しろ!

 

「おはようございます優君」

 

ペコリと頭を下げてきたのは秋葉だった。

 

「おはようみんな」

 

「ふん」

 

不愉快な声が聞こえたので見ると鏡夜だ。

その横には咲夜が座っている。

上座を見るが空席だ。

まだ、着てないみたいだな

 

「やあ、おはよう優希君」

 

と、でっぷりとした腹を揺らしながら朝からのワインを手にしている葉山の叔父さんだ。

和食には合わないだろうにワイン……

 

「さあさあ、ここに座りなさい。と、横を指してきたが」

 

「すみません叔父さん。俺は友達と食べます」

 

「そうかい?」

 

それ以上しつこくは葉山は誘わなかったので空いていたアリアの隣に座る。

続いて当然のようにレキが俺の横に座る。

ちなみに、アリアの対面には理子、理子の隣にはキンジが座っている。

席は下座に近いがまあ、いいさ……

部屋に入ってきた時の周りの空気は冷たかった。

やはり、好意的に俺を受け止めてくれるのは少数らしい。

 

「優、今日はどうする予定なの?」

 

並べられていく和食を見ながらアリアが聞いてくる。

 

「そうだな。俺達はこの辺のことを知らないんだ」

 

「ああ、悪いみんな……今日は昼からちょっと用事があるんだ」

 

「用事ってなになに?」

 

理子が聞いてくる。

 

「ああ……」

 

少しだけあの人の顔を思い出すと

 

「お墓参りだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、上座の主である志野は現れなかった。

納豆に悲鳴をあげるアリア達を見つつ、食事を終えるとついてきた秋葉に

 

「志野さんとの面会はできないのか?」

 

「1000に部屋にとのことです。お昼はお弁当を作ります」

 

「お前が作るのか?」

 

「私の手作りをご希望ですか優君」

 

「ああ……いや」

 

女の子に失礼かもしれんがなんか秋葉って料理失敗しそうなんだよな……アリアも壊滅的だし……多分、レキも駄目だろうな……あいつはカロリーメイトばかり食ってるからな……

理子やキンジは知らんがなんかあいつらはできる気がするぞ。

ハハハ、今度聞いてみるかな?

 

「優君?」

 

「え?あ……」

 

はっとして秋葉を見る。

 

「変わりましたね……今の生活は楽しいですか?」

 

「……」

 

答えられない……この子の前で幸せだなんて絶対に言えないんだ……

 

「ごめんな……秋葉」

 

「何を謝るんですか?」

 

無表情だがその目は俺の目を真っ直ぐに見てくる。

 

「いや……」

 

ため息をついてから足を速めた。

ちょっと準備してから志野さん……いや、母さんの部屋にいかないとな……

 

 

 

 

 

 

 

サイドキンジ

 

「怪しい」

 

「怪しいねぇ」

 

「……」

 

な、なんだみんな優の奴が出ていった途端、話始めたぞ。

レキは相変わらず無言だが視線だけアリア達に向けている。

 

「決めたわ」

 

と、アリアが立ち上がった。

 

「キンジ、理子、レキ。あいつの過去を調べるわよ」

 

「うーん、理子的にはあまりやりたくないんだけどユーユー、自分から話してくれなさそうだしねぇ」

 

「武偵憲章第5条行動に疾くあれ先手必勝を旨とすべしよ」

いや、アリアよあれは、過去を暴くための口実じゃないんだぞ

 

「そうと決まったら役割を分担するわよ。理子は過去にこの辺りで起こった事件を洗って」

 

「ほーい」

 

「あたしは屋敷の人間に聞き込みをするわ。望みは薄いでしょうけど……」

 

確かに……優の実家に来てから、あの鏡夜とかいう弟をはじめとしてなんか優を避けてるというか怯えられてる気がする……

 

「レキは優の監視ね」

 

「はい」

 

レキが素直に頷いたな。

 

「俺はどうするんだアリア?」

 

「キンジ?うーん、あんたが決めなさい。誰に同行するかは任せるわ」

 

「おお、キー君分岐ルートだ。くふふ、誰ルートを選ぶのかな?」

 

にやにやしながら言うな理子。

それに冗談じゃない。

ただでさえ、女といるのは嫌なのにルート選択とやらなんかしてたまるか

 

「俺は一人で調査するよ。お前らもあんまり無茶すんな」

 

つまんなーいという理子にでこぴんしてから俺達調査に乗り出した。

とはいえ、みんなバラバラになっての調査だからな。

何をしたらいいんだ?

インケスタでやるようなことを馬鹿正直にやる必要はないだろう。

理子の方がインケスタの能力は上だからな。

ホルスターのベレッタも見るがこいつも今回は出番はなしだな。

優の家はなんだか強者揃いが揃ってるみたいだからな。

 

「ん?」

 

廊下を歩いてると知った顔が一人で歩いてくる。

 

「山洞」

 

山洞秋葉が足を止めて俺を見てくる。

無表情だがなんか、レキに似てるぞこいつ

 

「遠山君?どうかしましたか?迷ったんなら……」

 

 

「いや、迷ってない。それより今、暇か?」

 

「暇ではありませんが2時間は自由な時間があります。それと、私のことは秋葉で結構です。山洞の名前はこの家ではあまり呼ばれたくありませんから……」

 

「どういうことだ?」

 

「答えたくありません」

 

聞いても無駄そうだ。

 

「分かった。秋葉、じゃあ俺もキンジでいい」

 

「では、キンジ君で」

 

「それでいい」

 

女の子と話すのは苦手だがなんの情報も得ずに戻ればアリアに風穴開けられるからな。少しは、頑張らないと

 

「立ち話も何ですし、部屋で話しましょう。お茶も出します」

 

「分かった」

 

どうやら、客間か何かに案内してくれるらしい。仲居さんもついてるからヒステリアモードの心配も気を付けていれば大丈夫だろう。

幸い、秋葉はアリアよりはあるが子供体系だからな。

だが、俺は甘かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここです」

 

「う……」

 

部屋に踏み込んで俺は躊躇した。

それなりに広い部屋だが、明らかに生活の跡がある部屋だ。

 

「そこのソファーに座ってください。今、お茶かコーヒーを」

 

「あ、秋葉」

 

「なんですかキンジ君?」

 

「なんですかじゃない!ここお前の部屋か?」

 

「そうですが?」

 

そうですがじゃないだろ!

 

「何か問題があるんですか?客間も考えましたが優君の知り合いですから信頼の証として部屋に呼んだんですが……」

 

そういわれると反抗しずらいな……

 

「何か期待してるなら無駄ですよ。私に手を出したら空の彼方まで旅に出てもらうことになります」

 

「そ、そんな期待はしてない」

 

「では」

 

秋葉が行ってしまったので仕方なしにソファーに座り、回りを見渡してみる。

うう……女の子の部屋なんて落ち着かないな……

気晴らしに部屋の中をチェックする。

青いソファーに正面には巨大な液晶テレビ、DVDプレーヤーもきちんと揃ってるし……

回りを見渡すと壁のすみにはベッドがあり、その横にはタンスに大きな本棚が並んでるぞ。

漫画やDVDばかりだな……

もしかして、理子みたいな趣味があるのかこの子

机の上にはノートパソコンもある。

ここまでならちょっとへんな普通の女の子だが異質なのは部屋の逆側の端にはトレーニング用の機材が置かれているな。

壁には立派な槍が3つ並んでいる。

近衛といったか……やはり、戦う女の子なんだなこの子も……

普通じゃない……

 

「お待たせしました」

 

特に注文もなかったので玉露のお茶を出されつつ正面に座る秋葉に話しかける。

 

「アニメや漫画好きなのか?」

 

「嫌いではありません」

 

ということは好きなんだろうな

 

「そんなことを聞きに部屋に?」

 

「い、いや、違う」

 

まずいな、ストレートに聞いても多分、答えてくれないぞ……

こういったことはダギュラの分野だが、あいにく、優のアミカのマリは今回は留守番だ。

 

「こ、この家にはいつから住んでるんだ?」

 

とりあえず話を繋げないと追い出されるぞ。

 

「生まれた時からです。私は椎名の近衛の家系ですから」

 

「その近衛ってのは何をするんだ?」

 

「一番、分かりやすいのは護衛です。椎名の家の人間は役割上、戦闘に巻き込まれる可能性が高いので」

 

「戦闘?何と戦うんだ?」

 

「椎名とかの家に弓を引くもの全てです」

 

「かの家?」

 

「恐らく、日本人なら誰でも知っている家系ですが口に出すことはできません」

 

さっぱりわからん。

日本人なら誰でも知ってる家なんて腐るほどあるぞ。

例えば織田信長の家系なんて誰でも知ってるし、今なら、首相だって日本人なら誰でも知っている。

まあ、答えてはくれないなら省くか

 

「それで、優はその椎名の家の跡取りってことか?」

 

有名な家なのは分かる。

何せ、ランパンの連中は優を椎名の後継と呼んでいた。

何年も優は外国を飛び回ってたらしいから外国にも知り合いは多いらしいし

 

 

「いえ、優君は恐らく後継者にはなれません。後は鏡夜様が継ぐことになるかと」

「ん?でも今回の帰宅は後継者を決めるためのものなんだろ?優は長男なんだからな。それともその鏡夜は優より強いのか?」

 

「優君は最近まで、剣を持てなかったと聞いています。椎名は剣の家系です。剣を持てないなら椎名にいる価値なしと後継者から外されていました。ですが、最近、剣を持てるようになり、後継者としての資格はわずかながらあります。本気で戦えば私は優君の方が鏡夜様より強いと考えています」

 

「じゃあ、なんで優は後継者になれる可能性が低いんだ?才能もあるし剣も持てるなら……」

 

「それは……」

 

秋葉は少し躊躇しながら

 

「あの人が罪を犯したからです」

 

 

「その罪ってなんだ?」

 

「……」

 

秋葉は答えてはくれなさそうだ……

 

「お邪魔したな。そろそろ帰るよ」

 

俺が立ち上がり出口に向かう途中

 

「キンジ君」

 

「ん?」

 

「昼に優君はある場所に行きます。送りますのでついてきてくれますか?仲間のみなさんも一緒に」

 

そこで何かわかるかもしれなさそうだな

 

「分かった。ありがとう」

 

戦果は十分だろう

そう思いながら俺は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド 秋葉

 

キンジ君が出ていき、部屋に取り残された私は机まで歩くと写真たてを手に取ります。

危ないところでした……もし、キンジ君にこれを指摘されたら私は何を言ったか分からない……

そっと家族が並んだ写真を私は机の引き出しに入れて閉じた。


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