緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第113弾 妹登場!

いて!

 

油断していたこともあり、床に尻餅ついた俺の体にアリアが悲鳴をあげながら倒れ込んでくる。

アリアの前には小柄な少女。

びたーんと漫画みたいな音がしその場が沈黙に包まれる。

 

「あれ? 優兄じゃ……」

 

「ど、どきなさいよ!」

 

「す、すみません!」

 

アリアから飛び退いた眼帯の少女はペコリと頭を下げる。

アリアも立ち上がり、俺を睨もうとした、瞬間少女と俺の目が会った。

 

「よう咲夜ひさ……」

 

「優兄!」

 

猪突猛進という言葉がある。

まさに、言葉通り俺の妹、咲夜が胸に弾丸のように満面の笑みを浮かべながら飛び込んできた。

 

「ぐえ!」

 

つぶれたひきがえるのような声を出しながら俺は倒れた。

 

「なっ……」

 

アリアが絶句しているな。

 

「あたた、いきなり飛び込んでくるなよ咲夜」

 

そういいながら俺はぽんと妹の頭に手を置いた。

 

「でも、久しぶりでうれしくて」

 

リスのようなつぶらな瞳を向けてくる咲夜。

ハハ、変わってないなお前は

 

「ただいま咲夜」

 

「はい、お帰りなさい!優兄」

 

少しだけ戻ってきてよかったなと思った時

 

「咲夜!そのクズから離れろ」

 

鏡夜が怒りのこもった声で言ってくる。

「クズなんかじゃありません!優兄です!鏡兄」

 

「咲夜!」

 

「鏡夜……兄様」

 

ぎゅっと俺の服を掴みながら咲夜は言いなおした。

 

「おい!鏡夜あんまり、妹をいじめるな」

 

「黙れクズ、椎名の家を追い出された人間なぞもう、兄弟でもなんでもない!」

この野郎……いい加減しろよ……

戦うべきかと思ったその時

 

「おや?これはなんの騒ぎですか?こんな夜中に?」

 

鏡夜の横の通路から仲居さん二人を連れた白髪まじりの脂ぎった男が歩いてきた。

 

「新吾叔父さん……」

 

鏡夜が言った。

 

「ふむ」

 

口ひげをたくわえた新吾はホールを見回すと

 

「おお!優希君じゃないか!久しぶりだね」

 

「お久しぶりです……」

 

内心で笑いながら俺は言った。

 

「ね、ユーユー!誰誰?」

 

理子が多分、咲夜のことも含めて聞いてくる。

 

「ああ……」

 

俺が言おうとすると

 

「これはこれは可愛らしいお嬢さん達だ。優希君の恋人かな?」

 

ハハハと人なつっこい笑顔で新吾が言う

 

「こ、こい……」

 

アリアがぼんと赤くなったが理子は調子にのったのか

 

「はいおじ様!ユーユーは私の恋人でーす」

 

「違うだろ理子!」

 

即座に否定すると理子はぷーと頬を膨らませ

 

「ええ、キスまでした仲じゃん理子達」

 

「い、いやあれは……」

 

言ってから後悔する今の発言はしたことを完全に認める言葉だ。

 

「優兄……」

 

咲夜が泣きそうな目でこちらを見上げてくる。

ど、どうしたらいいんだ……

 

「……」

 

ぐあ!レキさん!無表情なその視線が痛い!

 

「ゆ、優!あ、あんたやっぱり理子と!」

 

ぎゃああああああ!やめろ!

アリアがガバメントを抜こうとした瞬間

 

「ハハハハハハ、実に楽しい仲間ですな優希君」

 

新吾おじさんが太った体を揺らしながら言った。

 

「自己紹介が遅れましたお嬢さん方と優希君のお友達。私は葉山新吾、椎名の家の代表代理をさせて頂いています」

 

「椎名の家の?そもそも、優の実家は何をしてるところなんですか?」

 

疑問に思ったことをキンジが聞いている。

まあ、気になるのはわかるが……

 

「ハハハハハハ、それについてはまた、明日以降にしましょう。君達、お客様を部屋にご案内しなさい」

 

すっと後ろの仲居が動き出す

 

「志野さんはもう寝たのか?」

 

できれば挨拶をしておきたいんだが……

 

「お母様は今は寝てると思う……最近、体調が優れないから……」

 

悲しそうに咲夜が言う。

 

「そうか……」

 

アリアが何か言いたそうにこちらを見ているが階段を降りてきた仲居の一人が俺の前にやってきた。

 

「お荷物お持ちしますよ!優希ぼっちゃま」

 

「いや、いいよ……」

 

どうせ怖がるんだろうと思い、断ると

 

「駄目ですよ!荷物運びは仲居の仕事なんです!」

 

強引に荷物を奪われてしまう。

以外に思ってその子を見るとかなり、若かった。

というか小さい。

中学生か下手したら小学校だぞ……

そばかすがついた田舎娘といった感じの少女はうんしょっと荷物を担ぎ上げる。

 

「こら、睦月!優希様に失礼でしょう」

 

「ええ、だって中々、荷物渡してくれないもん」

 

「優希様すみません、この子まだ、見習いなもので」

 

仲居かと思えばこのポニーテールの子は近衛だな……

椎名の近衛は私服の着用が許可されている。

仲居は一貫して着物だ。

にしても驚いたな……俺にこんなに普通に接してくれる連中がまだ、実家にいたのか……

 

「いや、いいよ。とりあえずみんなまた、明日だ。ゆっくり休んでくれ」

 

何か言いたそうな面々を見ながら俺達はそれぞれの部屋に通される。

無駄に広い屋敷だな……中身の構造調べないと戦闘になったときは不利になる。

実家で戦闘なんか考えたくもないが新吾叔父さんが現れた時、ふんと言って姿を消した鏡夜の態度を見る限り一戦交えるぐらいはしてきそうだからな……

名残惜しそうにしながらも眠そうな咲夜をまた、明日、会えるからと部屋に帰らせて小学校見たいなメイドと秋葉に見送られ部屋に入ったんだが……

右にシャワーを浴びる部屋があるがもう、今日は寝るか……

念のためにデザートイーグルを枕の下に隠して蒼神を布団の中に納めてから横になると目を閉じた。

ああ、明日からのこと考えると気が重い……

滞在は予定では火曜までだが、戻ってきたならやりたいことも多かった。

この椎名の家じゃない旧本家……秋葉の話なら当時のまま、放置されてるらしい。

 

「行くんですか?あそこに?」

 

秋葉の言葉が重いな……結局、行くとは秋葉には言わなかった。

あそこは誰が決めた訳ではないが椎名の家には禁忌的な場所になってるらしい。

だろうな……わかる……おれは……

そこまで考えて眠気が俺を包む。

ただ、最後の片隅の意識、誰かが部屋に入ってくる気配を感じた。

敵意はまったく感じられない。

だ……れだ?

そして、俺の意識は闇に包まれた。


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