緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

109 / 261
第108弾 一撃必槍

「あたしをなめてるの!」

 

 

防弾ガラスに守られた闘技場にアリアのアニメ声が響き渡る。

名目上は体育館なんだが……

 

「いいえ。舐めてませんよ」

 

秋葉は目を閉じたまま言った。

訓練用に義務ずけられているC装備を秋葉は断り防弾制服のまま、闘技場にたっている。

これにはプライドの高いアリアも対等な条件でやりたいと蘭豹に焚き付けたんだが蘭豹の奴あっさりと

 

「おーおー、やれやれ」

 

ときやがった。

 

「いくらなんでも目をつぶったままじゃ神崎には勝てないんじゃないかな山洞さん」

 

防弾ガラスの向こうを見ながら不知火が言う。

 

「いーや、アリアに勝目は薄いぞ不知火。あいつは予備知識なしに初戦を戦うとえげつないやつだからな」

 

「アリア先輩は負けません!」

 

横に並んで、アリアのアミカのあかりが言うがまぁ……

 

「見てろよ間宮」

 

蘭豹の銃が轟音を鳴らした瞬間戦いは開始された。

秋葉は身長ほどある細長い槍を下に向けたまま、目を閉じて動かない。

アリアが先に動いた。

ガバメントを抜いて三点バーストで六発

当然、全てを防弾制服に絞ったんだろうが秋葉はすっと動くと銃弾をぎりぎりの所でかわした。

おおとアサルトの連中が驚愕の声を上げる。

 

「山洞さん目を閉じてかわしたよね遠山君?」

 

「ああ」

 

キンジと不知火がびっくりしている。

まあ、あいつには銃弾はきかないんだ。

狙撃手が風を読むように秋葉も風を読む。狙撃手は遠距離だが秋葉は近距離でそれをやるのだ。

アリアの銃を振り上げる空気を割く瞬間、ガバメントから銃弾が空気を震わす瞬間を秋葉は読んでいるのだ。

 

「くっ、この!」

 

ガバメントが弾切れになるとアリアは小太刀を抜いてアル・カタを仕掛けるべく突撃する。

 

「……」

 

秋葉は動かない。

上段からの二等をやはり最低限の動きで交わす。

右を振り抜いたアリアは回転しながら鋭い回し蹴りを放つが秋葉はそれすら、交わす。

アリアが動く直前にもう、回避の手順を終えているのだ。

 

アリアはアル・カタで秋葉に猛攻を加えるが秋葉には当たらない。

 

うわ、秋葉の奴、腕あげたな……

昨日は余裕で勝てるとか言ったが俺でも当てられなくなってるかもしれんな……

まあ、秋葉を沈める手順はあるがワイヤーあってこそだからな。

 

「あれは、ただ、回避してるだけじゃないね椎名君。もしかして、山洞さんは予知能力とか持ってる超偵かい?」

 

「当たらずも遠からずだな不知火」

説明してやる気はないが秋葉は武偵で言うならば超偵だ。

だが、能力は予知能力ではないけどな。

 

「あんた超偵?」

 

目を閉じたままでいる秋葉にアリアが少し息を乱しながら言った。

 

「はい、私は風を操ります。あなたの行動は全て、風が応えてくれます」

 

レキ見たいに聞こえるなそういうと……

 

「風?わかったわ。あんたのその目を開けない理由は神経を極限まで研ぎ澄ましてるから」

 

「正解です」

 

秋葉は槍を持ち上げながら

 

「ですが、それが分かったからと私に勝てるとは限りません。どんな強力な攻撃も当たらなければ意味がありません」

 

「……っ」

 

ある意味では秋葉はアリアにとって最悪の相手だろう。

いや、ここにいるアサルトの人間でも秋葉に勝てる奴はそうはいまい。

 

「敗けを認めますか?」

 

「っ、まだあたしは傷1つつけられてない!」

 

「そうですか」

 

刹那に秋葉が動いた。

下段の槍をいきなり上に振り上げたのだ。

金属音がし、アリアの小太刀の片方がはねあがる。

 

「っ!」

 

秋葉はさらに、右側の後ろに槍を引くと猛然と突きを放つ。

「う……」

 

アリアはなんとか交わしたが、秋葉の槍は少し戻りアリアに突きの猛攻を加え出した。

 

「っ!あ」

 

耐えてるアリアも流石だな……あの槍は能力も使ってるからな……

普通に使うよりも早さが段違いだ。

秋葉は空気抵抗を減らすため長刀ではなく槍を使ってるからな。

 

「おい、まさか終わっちまうのか神崎の無敗記録」

 

アサルトの生徒の言葉を聞きながら

俺は思う。

武偵は諦めるな決して諦めるな。

アリアは猛攻にさらされながらも辛うじて、小太刀で受け流している。

一歩間違えば防刃制服に直撃して骨折しかねない。

 

「……」

 

ビュンと再び、槍がアリアを掠めたしゅんかん、アリアは右の小太刀を離すと槍を掴んだ。

 

「う……」

 

既に引き戻す動作をしていた秋葉の懐にアリアが接近して、小太刀を奮った。

うまいな

 

「……」

 

秋葉はあっさりと槍を手放すと後ろに跳んだ。

更に、着地してアサルトの誰かのだろう剣を手に取るが槍を失った以上、秋葉の戦闘力はかなり落ちる。

アリアはガバメントのマガジンを入れ換えると再びフルオート射撃を開始する。

今度は走りながら角度を作る。

たが、秋葉には当たらない。

やはり、最小限の動きでかわしきるのだ。

 

「すごい……」

 

Sランクの戦いにあかりが呟く。

時計を見ると授業終了まで三分引き分けかな……

 

「お、おい優」

 

「あ?」

 

キンジの声に秋葉に目を向ける。

秋葉のウェーブのかかった髪が揺れている。

スゥと秋葉はアリアの弾丸をかわしながら剣を右後ろに……

あ、あいつ!馬鹿か!

扉を破って闘技場に飛び込む。

後ろで蘭豹が叫んだが無視だ!

回りを確認してからワイヤーで加速する。

 

「アリア!伏せろぉ!」

 

「え?ゆ、きゃあ!」

 

アリアを押したおした瞬間

 

「一撃必槍……」

 

秋葉の声が聞こえ光が図上を通過した。

ドオオオンと爆砕音が闘技場を揺らし、慌てて、秋葉の投げて剣の方を見ると

剣が通過した防弾ガラスの場所が溶けて巨大な穴を作っていた。

さらに、その先には融解したらしい赤い鉄が飛び散っていた。

馬鹿かあいつは……殺人技を使いやがって

 

「おい!秋葉!」

 

むにゅ

ん?なんか、柔らかい……げっ!

見ると俺はアリアを押し倒した形になっており多分、ブラジャーごと胸をわしづかみにしていた。

わなわなと顔を真っ赤にするアリア

 

「ゆ、ゆゆゆ、優こんなところで!」

 

「い、いや俺はアリアを助けようとだな」

 

「風穴ぁ!」

 

「ぎゃああああああ!」

 

授業終了のチャイムの中、体育館に結局、俺の悲鳴は響き渡るのだった。

ちなみに、秋葉はその様子を見ながら槍を手に戻しながら見ているだけだった。

ちなみにこの後、俺と秋葉は蘭豹に呼び出され、防弾ガラスの修理費を支払わされたのだった。

経費で落とすと秋葉が払ってくれたがお前が原因だからな!

こうして、強制終了という形で模擬戦は終わりを告げたのだった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。