緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第101弾 絶望の時間

「理子!説明任せたぞ!」

 

「うん!」

 

パラグライダーから俺は飛び降り、理子がキンジとアリアを抱えて空へ飛び立つのを横目に俺はデザートイーグルを取り出すとブラドが現れるのを一瞬、待つ。

 

「ああん?椎名死んでなかったのか?」

 

現れたブラドは鉄棒をとんとんと手で叩きながら言った。

 

「生憎だなブラド。俺があの程度で死ぬと思ったか?」

 

「ほぅ」

 

ブラドは黄金の目を少し細めると空中にいる理子達に目を向ける。

 

「何か作戦を立てたようだが無駄だ無駄だ。まあ、万が一もある椎名は殺しておくか」

 

ぶんとブラドが鉄棒を振りかぶった瞬間、俺はにやりとしてデザートイーグルをブラドに向けて一発放つ。

 

「どこ撃って……うお!」

 

再び、ブラドの後方で爆発が怒る。

跳弾射撃

 

「おらどうした吸血鬼!」

 

走りながら再び一発撃つと今度はブラドの頭に跳弾は命中した。

紅蓮の炎の中から上半身がぶっ飛んだブラドが見えたがすぐに再生される。

武偵は決して人を殺してはならない。

そんな決まりがなけりゃ、武偵弾で決められるんだがな……

「雑種が……ぐっ」

再びブラドの下半身が消し飛ぶ。

容量が大きいためか多少の再生時間は必要なようで時間稼ぎにはなる。

最期にフルオートでブラドに弾丸を叩き込むがこれは武偵弾でなく通常弾だ。

武偵弾は弾切れ……ハハ、500万ぐらいこの戦闘で使ったな。ブラドがにやりとして鉄棒を拾う。

 

「小僧。武偵弾は弾切れかぁ?処刑の時間だ」

 

再びブラドが息を吸い込む。

ワラキアの咆哮で戦闘狂モードを解除する気か。

ならここが勝負どころだ!

 

疾風のようにブラドに走り、切り札を組み上げる。

 

じゃきじゃきじゃきとミンの連結槍のように組み上げたそれは黒い日本刀

さらに、腰から日本刀を抜き取る。

二刀流

 

「蒼龍!」

 

跳躍し二刀を上に振り上げる。

 

「流星!」

 

ズンと体重と技をこめた二刀がブラドの両手を切り落とす。地面に着地すると回転しながら両刀でブラドの足を切り飛ばす。

再生する暇は与えねえ!

椎名の二刀は速度と手数。

ぐちゃっとブラドの頭に刀を差し込むと戦闘狂の笑みで真っ二つに切り裂く。

手足を切断すればブラドは攻撃できない。

このまま、押してやる!

 

「なめるなガキが!」

 

一瞬、再生が早かった右手でブラドが鉄棒を振るってくる。

しゃがんでかわした俺はバックにとんとんと後退しながら建物の影に隠れる。

準備は整ったな。「優あんた!」

 

あきれたようにアリアが俺を見て言ってくる。

 

「今度は二刀流?あんたって……今度は三刀流にでもなるの?」

 

隠されたことが気に入らないのかアリアは怒りぎみだ。

 

「仕方ないだろ?これが俺の基本的な戦闘スタイルだからな」

 

「優、次の模擬戦は本気で戦いなさいよ。手を抜いたら許さないんだから!」

 

ああ、初めて戦った時のこと言ってるのな……

それはそうと

 

「みんな、理子から作戦は聞いたな?」

 

「ああ、だが優、ブラドは俺たちがどこに、弱点があるか気づいていることに気がついてるかもしれない。チャンスは一度しかないぞ」

 

キンジの言う通り、弾数から四点同時攻撃は一回のみ

 

「任せとけよ。そこは俺がなんとかするよ」

 

「ガキども!作戦会議はすんだか?」

 

背後からブラドが現れる。

二刀を構えて俺は振り返った。

 

「行くぞみんな!」

 

「オッケー」

 

理子は胸の谷間から小型の銃デリンジャーを取り出す

 

「いいわ」

 

「ああ」

 

アリアとキンジもスタンバイ完了だ。

俺が走り出す。

ブラドが鉄棒を振りかぶるが一気に加速し、両手ををクロスさせ十字を切るようにブラドの手を切り飛ばした。

だが、これでは、すぐに再生されてしまう。

再生する場所、関節部分に刀を置くと再生に刀が巻き込まれる。

異物が入ったことにより、ブラドの手がだらりと下がる。

さらに、鉄棒を踏んで俺はブラドの顎を蹴飛ばした。

 

「ぐお!」

 

ブラドが悲鳴をあげた瞬間だった。

雷鳴が夜空に轟いた瞬間、四発の銃声が響く。

地面に落ちながら見たのはブラドの舌に描かれた目玉模様に理子の銃弾が命中し、肩にアリアの一発、脇腹にキンジの一発が命中した。

だが……嘘だろ……

 

雷で照準がずれたのだろうか……アリアの一発が最期の目玉模様から外れた。

 

ブラドの目が歓喜にうち震えた目で呆然とする俺に向か再生された右手を張り手のように振るった。

完全に油断した俺だが、なんとか刀で防御態勢は作るがバンと冗談のような張り手で吹き飛ばされコンクリートの壁に背中から叩きつけれた。

 

「が……は」

 

肺から息がもれ、受け身もとれずに地面に落ちる。

視界が……赤く染まってる……

立たないと……

だが、体に力が……

 

「優!」

 

理子が駆け寄ってくる。

ば、馬鹿……逃げろ……この攻撃に失敗したら銃弾を失った俺達に勝目は……

 

「どうだぁ?4世?お仲間と共闘しても所詮、勝目なんかないんだ」

 

「ぶ、ブラド……」

 

震える手で理子は俺の刀を掴んだ。

 

ズンズンとブラドが歩いてくる。

目が笑っている。

 

「私は!理子だ!4世じゃない!」

 

ハイジャックの時に見せたような素早い斬撃だったがブラドは切られた部分を再生させ、理子を掴み上げてしまう。

 

「う……」

 

ブラドは顔に理子を近づけると嬉しそうに

 

「よかったな4世最後に解放されるかもしれない夢を見られてよ」

 

「理子!」

 

アリアが小太刀を抜いてブラドに突撃をかける。

キンジもアリアの小太刀を片方借りて、ブラドに攻撃をしかけようとしている。

 

「そういや、お前も優秀な遺伝子の持ち主だよなぁホームズ」

 

ザクリとブラドの右手に小太刀を突き刺し、理子を解放させようとアリアは試みるが再び、雷鳴が空を鳴らした瞬間、アリアの動きが鈍った。

 

「ほーら、捕まえたぜホームズ」

 

まるで、疾風のようにブラドの空いた手が伸びアリアを捕まえてしまう。

 

「アリア!理子!」

 

キンジが切りかかるより早く、ブラドが吠えた。

 

ビャアアアアアアアヴァイイイイイイイ!

 

衝撃波でキンジが吹き飛ばされ、地面に転がる。

気絶したのか……

 

「は、離しなさいよ!」

 

アリアがブラドの手の中で暴れるがびくともしない。

理子も同様だった。

アリア、理子……キンジ……体が動かねえ……

まるで、精神と体が分離してしまったようだ。

ブラドが背中から羽のようなもの……いや、コウモリのような羽を出した。

 

「さあ、ホームズ、4世、ルーマニアに招待するぜ」

 

「お、お断りよ!」

 

アリアが拒絶するが逃げることができない。

まずいぞ……あれで飛んでいかれたら……

 

「っとその前に」

 

ブラドは倒れて動かない俺の方にゆっくり歩いてくる。

 

「ほっときゃ死ぬだろうが椎名、お前、はふざけたことをし過ぎたからな。殺しとくぜ」

 

アリアと理子を掴んだまま、ブラドが足を上げた。

俺の頭を踏み潰す気か

 

「ゆ、優!起きて!はやく!」

 

焦ったようにアリアが言うが体が……

 

「い、いや優希!優!」

 

理子の声も聞こえる……ああ、結局俺は君を……

 

ズンとブラドの足は地面に振り落ろされた。

 

「「優!」」

 

二人の少女の悲鳴が夜空にこだまする。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優希はやらせませんの」

 

ごっと、風を切り現れたローズマリーはブラドの足の裏に剣を叩きつけた。

ブラドが後退していくのを見ながらローズマリーは俺に向かいにこりと微笑むと

「助けにきましたの」

 

と、とんでもないことをいい放った。


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