緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

100 / 261
第99弾 約束の弾丸

「へ……変、身……!?」

 

アリアが絶句した声をあげる。

今や小夜鳴は俺たちの前で洒落たスーツが紙みたいに破けその下から出てきた肌は赤褐色に変色し熊のように筋肉が盛り上がっていく。

文字通り変身だ。

だが、今しねえ!

呆然とするアリアとキンジを後ろに俺は地面を蹴った。

奴の銃が変身のために理子からそれた。

「ぐるおん!」

 

俺が動いたため狼達が動き出す。

走りながら右のワイヤーを発射するとポールに食い込ませ、宙を飛ぶ。

いかに、獣の足でも飛べない場所まできて、壁に足をつけてから弾丸のように理子と変身中のブラドに迫る。

狼が後ろから追ってくる気配がするがべレッタの発砲音とともに狼はきゃんと泣いて動かなくなる。

キンジが援護してくれたらしい。

みるみるブラドが迫る。

こいつは、化物だ。

そう言い聞かせて日本刀で右腕をぶったきる。

 

「飛龍一式!風切!」

 

居合いのモーションから膨れ上がった筋肉をまっぷたつに切り裂く。

理子をお姫様だっこし背中のワイヤーを巻き戻すと貯水タンクが置かれている高台に着地し、ブラドをにらむ。

 

「悪い助けるのが遅れた」

 

「……」

 

理子は複雑そうな顔で俺を見ていたが何も言わないし抵抗もしない。

ただ、目線をブラドに向ける。

 

「痛いじゃねえか女。変身中に攻撃はタブーじゃねえのかぁ?」

 

理子が萎縮したのが分かった。

久しぶりに聞くなこの声

 

「初めましてだな」

 

すでに声帯までの変わっている。

 

「おれたちゃ、頭ん中でやり取りするんでよ……話は小夜鳴から聞いてる。分かるか?ブラドだよ、今の俺は」

 

こちらを名乗る凶暴そうな目は黄金の輝きを放っている。

 

「久しぶりだなブラド」

 

理子をお姫様だっこしたまま戦闘狂の目で上から見下すようにブラドをにらむ。

 

「あん?だれだてめえ?いや、さっきの攻撃……飛龍……ゲゥゥウアババババババババ!そうか女、お前は椎名の直系だな?数年前に捕まえた犬に椎名の人間がいやがったな。逃がしちまたがな」

 

「その逃げたのが俺だブラド」

 

ばさばさと風を長いかつらに受けながら俺は言う。

 

「椎名優希だ」

 

「ほう」

 

ブラドは目を少し細める。

 

「あの時の撒き餌が何しにきたんだ?」

「てめえを逮捕しにきたんだよくそやろう」

 

「ど、どういうこと優。あんた、あいつと知り合いなの?」

 

アリア眼下にわけが分からないと言う風に言ってくる。

 

「黙ってて悪かったなアリア。俺は数年前にブラドと戦って負けたことがある」

 

正確には忘れてたんだがな……

 

「その話は後で聞くとして今は、あいつよどういうことなの優?」

 

ブラドの変身か……

 

「たぶん……」

 

俺が戦った時はブラドは最初からあの姿だった。

小夜鳴がまだ、刺激に慣れきってない時なんだろう「擬態、みたいなもんだったんだろ?」

 

キンジが説明をいれてくる。

俺に話させるとヒステリアモードの話になるかもしれないからな。

 

「ぎたい?」

 

「アリアの好きな動物番組でもたまに出てくるだろう。例えばトラカミキリはハチを装って自然界で有利に生きようとするが、その際は単に姿を真似るだけじゃなく動作までハチそっくりにせわしなく動く

 

「う、うん。それは見たことある」

 

「ブラド・小夜鳴の変身はそれの吸血鬼・人間バージョンなんだ。あいつは元々、あの姿をした生き物だったんだよ。それが進化の家庭で人間に擬態して生きるようになった。その擬態は高度で、姿だけじゃなく……小夜鳴という人格まで作り出した。厳密には違うようだが二重人格みたいな状態で吸血鬼の姿と人格を内側に隠してたんだ」

 

ヒステリアモードになってるとアリアは気づいたらしくちょっと慌てたようにブラドを見て

 

「人間という役になりきってたのね。まるで人間社会への潜入捜査だわ」

 

「まあ、そんなとことだ」

 

詳しく説明する気はないらしい。

ブラドはその目を俺たち……正確には俺の腕にいる理子を見る。

 

「おぅ4世久しぶりだな。イ・ウー以来か?」

 

理子はぎゅっと俺の服を掴んでくる。

震えている。

 

「4世そういえば、お前は知らなかったんだよな俺が人間の姿になれることを」

 

「ようはてめえ、最初から理子を騙してたんだな?アリアを倒したら理子を解放するって約束を」

 

「お前は犬とした約束を守るのか?ゲゥゥウアババババババハハハ!」

 

理子が悔し涙を流す。

 

理子……

 

「檻に戻れ繁殖用牝犬。少しは放し飼いにしてみるのも面白ぇかと思ったんだがな。結局お前は自分の無能を証明しただけだった。ホームズには負ける。盗みの手際も悪い。弱ぇ上で馬鹿で救いようがねぇ。パリで闘ったアルセーヌの曾孫とは思えねえほどだ。だが、お前が優良種であることは違いはない。交配しだいでは品種改良されたいい5世が作れてそいうからいい血がとれるだろうよ。椎名。お前の遺伝子でも掛け合わせてみるかぁ?」

 

このクズ野郎が……

こいつは今まで会ってきた奴でも最悪にむなくそが悪い。

シンがかわいく見えるほどにゲス野郎だ。

 

「いいか4世お前は一生俺から逃れられねぇんだ。イ・ウーだろうがどこだろうと関係ねぇ。世界のどこに逃げても、お前の居場所は檻の中だけなんだよ。椎名達を殺したらルーマニアに帰ろうぜ4世ぇゲハッ、ゲバババババッ!」

 

「り、理子」

 

「理子」

 

「理子……」

 

俺たちの声に理子は目を閉じてぼろぼろと泣いていた。

 

「あ……アリア……キンジ……優希……」

 

そして、理子は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……た、す、け、て……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「言うのが遅い!」」

 

アリア達がブラドに向かう。

 

ああ

俺は心の中で頷くと理子をブラドから見えない位置にそっと寝かした。

 

「優……今すぐアリア達を退かせてブラドは強い。強すぎるんだよ!あたしはイ・ウーで決闘したけど手も足もでなかった。あいつは初代リュパンですら勝てなかった。何をやってもかなわない……過去それは証明されてることなんだよ」

 

「大丈夫だ理子。俺は負けない。昔とは違う」

 

「ムリ!ムリなんだよ!絶対にムリなんだよ!今すぐここから脱出するしか、生き延びる道は無い!」

 

「勝てない相手じゃない。それに俺はあいつを倒せる連中と知り合いだ。連中はここにはいないが倒せる奴がいるならそれは無敵じゃない」

 

「誰が倒せるって……」

 

「公安0の沖田、実家の薙刀娘、それと師匠……」

 

思い出すように俺は言った。

理子は合ってないが確かに師匠はブラドを圧倒した。

 

 

「理子」

 

俺は彼女の右手にそって握らせた。

 

「これ……」

 

「覚えてるか?城を逃げる前に俺が私した約束の弾丸だ」

 

「うん……覚えてるよ……毎日これを見て……理子をヒーローが助けてくれるのを待ってた……」

 

その言葉に胸を痛めつつ俺は頷いた。

約束の言葉を俺はあの時の気持ちで言う

 

「いつか助けにくるから……その弾丸は僕の宝物なんだ……預かってて……」

 

師匠に初めてもらった銃弾なんだがあの時はそれしか持ってなかったんだ……

子供ながら思い出になるようなもん渡せなかったのかね俺は……

 

「だから、今俺は約束する。その弾丸を俺たちが勝つまで持ってろ。ブラドから解放してやる」

 

ちゃりと理子の十字架を渡す。

ブラドからすっといたんだ。

 

「今の俺は理子を助けるヒーローだからな。任せとけよ」

 

そういうと理子は顔を赤らめた、

演技じゃない女の子らしい……

ハハ、新鮮だな

 

刀を鞘から抜いて理子に背を向ける。

 

「ゆ、優……」

 

「ん?」

 

「ブラドの4つめの弱点……は……胸の中央にあるの」

 

最期の弱点か……よし、それが分かればブラドを沈めることができる。

ブラドが視界に入る前に俺は思いだしたように止まり

 

「なあ、理子」

 

「?」

 

「これが終わったらまた、あのメイドカフェ行こうな」

 

返事を待たずに俺は飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キンジ、アリア!」

 

ブラドと交戦中だった二人に合流する。

 

「優、理子は?」

 

「大丈夫だ。それよりブラドは?」

 

「銃弾が効かない。あの目玉模様を狙ってみたがジャンヌの言う通り4つめ目を見つけないと……」

 

キンジの言葉に俺は頷く。

 

「それは理子から聞いた。キンジ、アリア少し、俺に任せてくれ。ブラドを沈める方法がある」

 

「一対一でやるのね?あの化物と」

 

「ああ、一度負けた相手だからな。リベンジもしたい」

 

「いいわ。やりなさい優」

 

「サンキュー」

 

「ゲゥゥウアババババババハハ話はすんだか?」

 

ブラドが現れる。

 

「糞吸血鬼!お前と俺の一騎討ちだ」

 

「ゲゥゥウアババババババハハ。下らないジョークだな劣等種」

 

「ハっ」

 

戦闘狂の笑みで地面を蹴る。

行くぞブラド!

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。