遅れてしまって申し訳ありませんでした。
ジルからの説明を終えてサリアに案内されているキラとアスラン、キラ達の様子をチラチラと見るサリアにキラは問う。
「どうしたの?さっきからこっちを見て」
「…いえ、所で聞きたい事があるのだけど…」
「何だ」
アスランがサリアの問いを聞き、サリアは思っていた事を聞く。
「あなた達、さっき言っていたザフト軍とオーブ軍って本当にあるの? 私から見たらどう見ても嘘の言葉しか思えないのだけれど」
「それはまずない。俺達は真実を話したんだ、それとも本当に嘘だと言いたいのか?」
「それがどうも信じられないのよね、私は…」
サリアのズバッと行く言葉にキラとアスランは目を合わせ、少々ため息を付く。
彼女がそう思うのも無理はない、あの場所で話しても信じる者は絶対に少ない筈。
そう思う中でサリアがまず最初に食堂の方にたどり着く。
そこには数多くの女性たちが食事をしていて、その中に一人の少女がサリアとキラ達を見て駆け寄る。
「おお!サリア!!ねえねえ!その人達が例の!?」
「ヴィヴィアン、ええそれがどうしたの?」
「さっきのパラメイルじゃない大きなロボに乗っていたあれ! あれって君達のだよね!」
「うん、そうだよ」
キラはヴィヴィアンの問いに答え、それにヴィヴィアンはまたしても大興奮する。
「うお~~!!やっぱりあれってカッケェェェ! ねえ!今度あれに乗せてくれない!」
「駄目だ、MSはおもちゃじゃない」
「おお!あれってモビルスーツって言うんだ!やっぱりパラメイルとは違うんだ!」
興奮しまくっているヴィヴィアンに対し、キラとアスランは思わず苦笑いをしてしまう。
こんなに大はしゃぎする女の子は滅多にいないからだ。
「ほらヴィヴィちゃん、もうその辺にして置きなさい。彼等も困ってるわ」
っとそこに長身の少女がヴィヴィアンの肩を抑え、ヴィヴィアンはようやく収まる。
「ほえ?エルシャは気にならないの?」
「気にはしているけど、そんなに気にしていたら彼等も困るじゃない」
「…分かってくれている子が居て助かる」
アスランは話の分かる少女が居てくれて、少しばかりホッとした。
エルシャはキラとアスランの方を見る。
「自己紹介がまだだったわね、私はエルシャ」
「あたしはヴィヴィアン!よろしくね! ねえ二人の名前は何て言うの?」
「僕はキラ・ヤマト」
「俺はアスラン・ザラだ」
「わお~!覚えやすい名前♪ よろしくねキラ、アスラン!」
すぐにヴィヴィアンに名前で呼ばれ、それにキラとアスランは彼女の堂々差に押されそうになる。
「たくっ、うるせぇな全くよ」
っと別の声にキラ達は向くと、赤い髪の少女がオレンジ色の髪の少女と水色の髪をした少女と共に食事をしていて、赤い髪の少女が睨むような眼で見て来る。
「此処は飯を食う所なんだよ、喰わねぇならどっか行きな」
「ヒルダ」
サリアはすぐに注意をするも、ヒルダは鼻で笑いを飛ばして、トレーにある食事を食べる。
その様子をキラとアスランは目を細める。
「あの子…」
「俺達を敵として見るような目だな」
小声で話すキラとアスランはヒルダ達の方を見ていて、それにため息を付くサリアはキラ達の方を向く。
「ごめんなさい、彼女達が嫌な風な物を見せて。でもこれは事実でもあるの。外から来た人間…私達ノーマを怪物や差別する存在、本当なら私もあなた達をここまで案内させないのだけど」
「…そう」
キラはその事に少し表情を暗くする。
それを見たエルシャは少々慌てながらある事を思い出す。
「あ…!そうだわ! キラ君とアスラン君もまだヒルダちゃん達の事を知らないわよね? そこに居るのがヒルダちゃんにロザリーちゃんにクリスちゃんよ」
「フッ」
「んだよ?」
「…やあ」
エルシャが紹介してもヒルダは明後日の方を向き、ロザリーは睨みつけ、クリスは一言だけ言って後はくすくすと笑っていた。
なんともふざけている様子にキラもアスランも呆れかえる。
「これ…」
「ああ、馬鹿にしているか。あるいは…」
そう思うキラとアスラン、っとそこに。
「あら、キラにアスランじゃない」
っとキラとアスランは後ろを振り向くと、アンジュが食堂にやって来て、ヴィヴィアンとエルシャがアンジュの存在に気付く。
「おお!アンジュ!」
「あらアンジュちゃん、アンジュちゃんも食事?」
「ええ、お腹空いたから」
そう言ってアンジュがヴィヴィアンとエルシャの横を通り過ぎ、キラとアスランの方を振り向く。
「付いて来たら、食事一緒に出してあげる」
「えっ?」
「良いのか?」
「当然よ、助けられたお礼…これしか出来ないけど」
そう言ってアンジュは照れ顔を隠す様に逸らす、それにキラとアスランは少々笑いを堪える。
「おやおや、痛姫様が人間様相手を誘ってるよ」
っとヒルダが挑発的な態度をアンジュに向けながら言い、ロザリーとクリスも同じる様に笑いながらアンジュを見る。
それにアンジュはヒルダ達の挑発を完璧無視し、呆れながら言う。
「あら、何時までも変わらないのね、そのバカげた言葉は」
「…ノーマだかね」
「おい!てめえ調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
ヒルダが言った直後にロザリーが立ち上がって、アンジュに殴りかかろうとした時。
「そこまでだ」
グシッ!
「いててててて!!」
アスランが素早い動きでロザリーの腕を後ろに回してロックし、それにロザリーは激しく痛がる。
「ろ!ロザリー!?」
クリスは思わず立ち上がり、ヒルダはそれに目を細めながらアスランを見て、食堂に居る皆は思わずくぎ付けとなる。
腕を絞められているロザリーは涙目でアスランを見る。
「な!なにするんだよ~!!」
「仲間同士で争いはやめろ、それに食堂で暴れるな」
そう言ってアスランは手を離し、ロザリーは腕を抑えながら睨みつける。
「うるせえ!!お前はあの女の本性を分かってねぇんだ!あのゲスな“皇女殿下”様にな!!」
「黙りなロザリー、行くよ」
そう言ってヒルダは自分のトレーを持って去って行き、それに慌てるロザリーとクリスは自分のトレーを持って、アスランを睨みながら去って行く。
そんな中でキラとアスランはロザリーが言った言葉に耳を疑う。
「皇女…?」
「誰が?」
「…アンジュの事よ」
サリアがその事を言い、それにキラとアスランは思わず振り向いて再びアンジュの方を見る。
アンジュは関係なさそうな表情をし、その様子をキラとアスランは見届けるしかなかった。
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そしてキラとアスランはアンジュが出してくれたお金で食事を貰えたのだが、食堂が気まずい空気になっていた為、別の場所で食事を取っていた。
当然ながらアンジュも一緒だった。
「キラ、アスラン、これがノーマである私達の日常を…」
「…まだそんなに分かった訳じゃないけど、差別は本当だって事だけは分かったかな」
「しかしアンジュ、お前が元皇女だって事は…本当か?」
アスランの問いにアンジュは少しばかり黙り込んで頷く。
「ええ、本当よ、私が16の誕生祭の時に兄に私がノーマである事を暴露されてね、お蔭で私はこのアルゼナルに飛ばされて…何もかもね」
「そっか…、でもお姫様だって事なら食事を作れなかったのも頷けるね」
「ああ、鍋を爆発させてしまうからな」
「う!うるさい!!!」
アンジュは真っ赤な顔になりながら怒鳴り、それにキラとアスランは笑う。
興奮状態になって居るアンジュは笑われながらも次第に笑って行き、そして三人で笑うのだった。
そして笑った三人は夜空の月を見て、アンジュは微笑みながら言う。
「…でもまあ、確かに私は料理には向いてないかもしれない」
「それを決めつけるのはちょっと早い気がすると思うよ、最初は料理が下手な人は練習して行けば上達していくし」
「ああ、アンジュも少しずつ上達して行けば何の問題は無い」
キラとアスランの言葉にアンジュは微笑み、三人は再び月を見るのであった。