ラクスから新たな機体、アンジュとサラのヴィルスガンダムとコロナガンダムを受け取ってすぐにアークエンジェルに運び、その様子をヴィヴィアン達が見ていた。
「すげぇええ! アンジュとサラサラさんの機体かっけぇええ!」
「チェ! アタシ等は無しかよ。つまんねぇな」
ヒルダはつまらなそうに呟き、それには近くで聞いていたルナマリアは苦笑いしていた。
そして出航準備が整ったアークエンジェルとアウローラ、ラクスがその場にやって来てキラ達と向き合う。
「皆さん、どうかお気をつけて、クルーゼは手強い相手です」
「大丈夫よ、あんな奴私がやっつけてやるわ」
「それが一番心配なんだがな」
そう意気込むアンジュにアスランが言う。
アンジュがその事を言われてイラっとするかの様にアスランを睨みつけ、それにアスランは軽く流している。
そんな中でキラはラクスと向かい合う。
「ありがとうラクス、色んなものをくれて…」
「いえ、これくらいした私の出来ることはもうありません。キラ…どうか無理をなさらずに」
「うん、分かった」
ラクスにそう言うキラ、ラクスは次にサラの方を見て、それに気づくサラ。
「(どうかキラをお願いします、サラマンディーネさん)」
「(はい、お任せを。ラクスさん)」
心の中で通じ合っているのか、目線で言いたいことが伝わったことに頷き、それを見たキラは頭を傾げる。
「??」
「どうしたキラ」
アスランに問いかけられたキラはアスランの方を向く。
「いや、別に…(ラクスとサラ、どうしたんだろう…? 何か別の物を感じるような…)」
っとそう心の中で感じていると、空が急激な変化を見せ始める。
それにキラ達は見て、風が吹き始め、それに海の方を見ると、海の向こうにぶ厚い暗い雲が現れる。
「あれは一体…?」
「始めましたねクルーゼ。混乱の世界の幕開けの時を…」
ラクスが言った言葉にキラ達は息をのむ。
「マリューさん!」
「分かったわ、総員乗艦! 本艦はこれよりミスルギ皇国へと向かいます!!」
それに皆はアークエンジェルへと乗り込み、アウローラにもすぐさま準備が入る。
ラクスがそれを見届け、アークエンジェルとアウローラはエンジンに点火が入る。
「アークエンジェル発進!!」
「アウローラ発進!」
二隻の艦はミスルギ皇国へと向かい、ラクスは手を合わせる。
「…どうか皆様に、祈りの光があらん事を…」
そう言い残し、ラクスの体はピンク色の粒子と共に空へと舞い上がっていった。
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そしてミスルギ皇国では、クルーゼがアウラの状態を見ていて、その所にサリアが来る。
「クルーゼ様」
「どうしたかね」
「本当に良いんですか? あれを本当に貰って…」
「良いんだよ、私が直々作った物なんだから。好きに使っても構わんよ」
そう言ってサリアは少々思いつめた表情をするも、すぐに切り替えてその場を離れていく。
サリアが去ったのを見て、クルーゼはある物を取り出そうとした時にエルシャが子供達を連れてやって来る。
「クルーゼさん」
「おや、エルシャか。どうしたかね」
「あの…子供達を本当に連れてってくれるんですか? 前に言ったじゃないですか?『新しい世界の為に君達が必要だ。そして子供達の明るい未来の為にも、そして連れて行く為にも』って、本当なんですよね?」
その事を問いかけられたクルーゼは少し間を開けて、そして言葉をこぼす。
「すまないが出来なくなった」
「えっ…?」
クルーゼの言葉を聞いたエルシャは思わず言葉が止まってしまう。
「その子供達はこれからの新しい世界の環境に不要と判断となった。だから…」
パキン!
クルーゼは指を鳴らすと、子供達は糸が切れたかの様に倒れ込んでいき、それにエルシャ慌てて子供達を抱える。
「ああ!!!クルーゼさん!どうして!?」
「もう必要ないのだよエルシャ、どうか分かってほしい。これからの世界にはね」
「いや!いやああああ!!! あの子たちは!あの子たちは私の全てなんです!! 私はどうなっても構いませんから!!どうか子供達を!!!」
エルシャは混乱した状態でクルーゼにしがみつき、涙を流しながら必死に頼み込む。
しかしクルーゼはため息を付いた後に手を翳す。
それにエルシャは首に何かを掴まれた状態で浮かび、苦しみながらもがく。
そんな様子にクルーゼは細目で呟く。
「私はしつこい子は嫌いだ…」
そう言ってクルーゼはエルシャを離し、エルシャはその場で倒れ込んで咳こみ、クルーゼはそんなエルシャに冷たい言葉を放つ。
「これ以上手間をかけさせないでくれ。私は忙しい上に構っている余裕はない」
クルーゼはそう言い残してその場を去っていき。エルシャはその場で泣き崩れる。
その場を去っていくクルーゼはエルシャの考えに呆れる。
「(やれやれ、これだから子供と言うものは…、だが悲しい現実を見せるのも悪くないな)」
そう罪悪感は全く見せずに、自分の機体に向かうのであった。
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ミスルギ皇国に向かう際にアークエンジェルのブリッジで現在各国の状態を見ていたキラ達。
時空融合の影響によって、人々が巻き込まれていく様子にキラ達は言葉を無くす。
「巻き込まれていく人たちが増えて行く…」
「このままマズイな」
「キラ、アスラン。まさか助けだすって事を言い出すんじゃないでしょうね」
っとアンジュがその事を言い出し、それにキラとアスランが振り向く。
「アンジュ」
「キラ達はやらなきゃ行けない事があるでしょ、それを放置してまで助けに行く余裕があると思う?」
「分かっているが…」
アンジュの言葉に考え込んでしまうアスランとその事に言葉が出ないキラ、そんな様子をサラが言う。
「お気持ちはわかりますが、今はクルーゼを止めなければ行けません。キラ達が助けたい気持ちは理解できますが、どうか分かってください」
サラの言葉に考え込むキラ達、確かに今はクルーゼを止めなくては世界の危機である。
「分かったよ。助けられないのは残念だけど…」
そう言ってキラはブリッジを出て行く。
その様子をマリューが言う。
「アンジュさん、少し言い過ぎじゃないかしら」
「そうだと言うけど、他に手はあるの?」
「じゃあお前はあるのかよ?」
ムウがその事を問うと、それにアンジュは言葉を詰まらせる。
そしてサラがその様子を見て、キラの後を追いかけるのであった。サラが探していると、キラは天窓の外を見ていた。
「キラ、大丈夫ですか?」
「うん…、僕は…やっぱり全員助けたい…。でもクルーゼを野放しには出来ない…、たまにアンジュの言っている事が正しいこともあるけど」
「キラ…」
サラはキラに歩み寄って背中からそっと抱きしめ、それにキラはサラの方を見る。
「サラ」
「キラ、私はラクスさんからあなたの事を任されました。見届けて欲しいと」
それにキラは驚いた表情をし、サラは言い続ける。
「私の代わりにキラを見守る、そう誓いました。だから私はキラを見守り、助けます…これからも」
「サラ…」
キラはサラの手を握り締め、サラはキラの暖かさを感じるのであった。
ビー!ビー!ビー!
すると警報音が鳴り響く。
『総員!第一戦闘配備!総員!第一戦闘配備!』
その放送を聞いて、キラとサラは向き合う。
「行こうサラ…、決着を付けに!」
「はい!」
そう言って二人は格納庫へと走り出すのだった。