まさにアンジュはカガリと被ります。
キラ達が孤島で居る間、アルゼナルではサリア達が乗ったヘリが帰還して燃料の補給をしていた。
「ヘリの補給完了まで30分です」
「遅い!15分でやれ!」
メイの言葉に皆はすぐに行動を開始して15分以内で給油を終わらせようとする。
その様子を遠くから休憩しているエルシャが居て。そこにヒルダがやって来た。
「晴が出る事で」
「あら?ヒルダちゃん」
「わっかんないね~、何であんな女を助けようとしてんのか、エルシャお得意のお節介な奴?」
その事にエルシャは一度目を閉じて、そしてヒルダの方を見てからある事を言う。
「…ヒルダちゃんたちがアンジュちゃんを許せないのは分かるわ。“機体を落としたくなる”程にね…」
「フッ」
ヒルダはその事に笑った、と言うよりもエルシャは薄々感じていた。アンジュの墜落は事故ではなく完璧な細工によく墜落の原因だと言う事に、しかしエルシャはそれをサリア達には言わなかった。
それはアンジュ同様、ヒルダ達も仲間だからこそ言わなかったのだ…。
エルシャはそう感じつつヒルダに思っている事を言う。
「でも誰かが受け入れてあげないと、彼女はずっと独りぼっち。そんなの寂しいじゃない、同じノーマ同士なのに」
そう笑顔で話すエルシャの言葉に、どうも納得ができないヒルダ。
「それにね、アンジュちゃんと似てるのよ。昔のヒルダちゃんに、だからお姉さん放っておけないの」
エルシャは笑顔でヒルダに言い、それにヒルダは笑いながら言う。
「あはは!似てる?あのクソ女と? 殺しちゃうよ~、あんたも…」
そうエルシャに脅して言い聞かせて、その場を去って行くヒルダ。
「補給~補給っと♪ってあれヒルダ?」
入れ違いにサリア達は去って行くヒルダの方を向き、ヴィヴィアンは振り向いて頭を傾げ、サリアはエルシャに問う。
「何かあったの?」
「ううん。何でもないわサリアちゃん」
そうエルシャは笑顔でサリアに言い、サリアは頭を傾げながら考えるのであった。
しかしその中でナオミは薄々ながらもエルシャの考えに気付きいていた。
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孤島で一晩が経ち、キラ達は朝食を取っていた。
アンジュは二人が作ったサンドイッチとコーヒーを貰っていた。
「よく食料があったわね?」
「まあ…確かにね。此処にあったのが奇跡的だったけど…」
キラはそう言いつつ、自分のコーヒーを入れていた。
するとアスランがある物を見つけた。
「キラ」
それにキラはアスランの方を見て、ある物を見た。
そしてキラとアスラン、アンジュはヴィルキスの前まで来てキラとアスランはある道具を置いた。
それは工具の物だった。
「アスラン、出来るの?」
「ああ、見た所壊れかけはあのファン部だけだから、それを修理して通信機さえ直ればこの世界の情報を手に入れる事が出来るだろう」
「直せるの?」
アンジュが二人にヴィルキスの修理の事を聞き、それに二人は言う。
「うん、見た限り案外難しい所じゃないし」
「複雑な構造じゃないから修理出来ない程じゃないしな、しかし海水の近くじゃあ何時電気系統にショートしてもおかしくないな。キラ、フリーダムを持って来てこの機体を海面から浜辺に移してくれ」
「分かった」
そう言ってキラはその場から離れて行き、アスランは工具を取って修理に必要な物を見る。
アンジュはアスランが先ほど言った言葉に妙に引っかかっていた。
「ねえ、さっきあなたが言ったフリーダムって?」
「ああ、それは…おっと、言うより直接見た方がいいな」
アスランが後ろを見て言い、アンジュが見ると、後ろからキラのストライクフリーダムが歩み寄って来て、それにアンジュは驚きを隠せない。
「嘘!?何あれ!!?」
「MSだ、見て分からないか?」
「分からないわよ!!」
アンジュがアスランにそう言いつつ、キラがヴィルキスを海面から浜辺まで移動させて、フリーダムから降りてくる。
「アスラン、移動し終えたよ」
「ああ、それじゃあ始めよう」
そう言ってキラとアスランはレンチやスパナを使ってヴィルキスの故障部を直し始め、その様子をアンジュは先ほどの戸惑いを忘れてしまいながら見ていた。
キラはドライバーを使ってネジを外して見ると、あるレンチを使って外す部分があって、それを見たキラはアンジュの方を見て言う。
「ねえ、そこのトルクスレンチを取ってくれる?」
「これ?」
アンジュがトルクスレンチを取って、キラに渡して、キラはそれを受け取り作業を続けるとアンジュが二人にある事を問いかける。
「『マナ』で動かせばいいじゃない」
「マナ?」
「何だそれは?」
「えっ?マナを知らないの? 人間がよく使う魔法みたいな技術よ、手を使わずにマナを使って物を浮かせたり、車を動かしたりするの、大半の人間はこれを使うのよ?」
アンジュはマナを知らないキラとアスランにマナの事を話す。
マナ。人類が進化の果てに得た幸なる技術。意志の力で物理現象に干渉し、手を触れずに物を動かしたり、光や熱を発生させられる他、統合システムとアクセスすることによって大多数の人間と情報を共有することが可能となった。
その結果、人々は互いに繋がることによって相互理解を深め合い、差別や戦争などの諸問題を克服。貧困や格差の存在しない、平和で穏やかな理想郷を築き上げることが出来た。
「マナ…、そんながあったなんて…」
「ええ、でも…そのマナを使えない者達が居るの」
アンジュはマナの使えない人類の事を話し始める。
ノーマ。産まれながらにしてマナが使えない突然変異体。マナを否定する『退化した人間』と見なされ、社会システムを破壊しかねない危険な存在として人々から怖れ、憎まれている。何故か女性体しか発生しないが、その理由は一切解明されていない。
マナを受け付けないため、拘束できるのは幼少時のみ。そのため日々検疫官がその存在を取り締まっており、発見後は速やかに社会から隔離され、アルゼナルへと送られる。
「これがマナとノーマの話しよ、そのノーマはこの私…」
アンジュからそう聞かされたキラとアスランは思わずあの時の事を思い出す。
『コーディネーターとナチュラル』
その内容がまるでマナとノーマにどことなく似ていると感じていたのだ。
「……まるでコーディネイターがナチュラルを皆殺しに、ナチュラルがコーディネイターを皆殺しにしているのと同じだね」
「ああ、差別での戦争…」
「え?? コーディネイターとナチュラル?」
「うん、どうも似ているんだ、君が言うマナとノーマの話しが僕達のコーディネイターとナチュラルの内容に」
「ついでだから教えて置くか」
そうキラとアスランがアンジュにコーディネイターとナチュラルの話をする。
コーディネイター、遺伝子調整によってあらかじめ強靱な肉体と優秀な頭脳を持った新人類。コーディネイターはナチュラルよりも先天的に堅牢な肉体と優れた運動能力、優秀な頭脳を持っており、過酷な環境や重篤疾病に対する抵抗力も高い。
しかしそれは平均的水準が高いだけで、根本的にはナチュラルと同じ人間である。しかしコーディネイターの存在を許さない者も居た。
「それは何?」
「うん…『ブルーコスモス』だよ、反コーディネイターの信奉者って所かな」
キラはアンジュにブルーコスモスの事を話す。
ブルーコスモスは造りだされたコーディネイターを徹底的に嫌い、プラント本国を核で攻撃したりして、何度も戦争を起こした。
ナチュラルの地球軍、コーディネイターのザフト。その二つの勢力が何度もぶつかって争った。
その内容を聞いてアンジュはキラとアスランの方を見る。
「何よそれ…訳分からない。っと言うよりあなた達…一体何者?どうしてそんなの知ってるのよ?」
アンジュはその事を聞き、キラとアスランはアンジュの方を見ながら敬礼をする。
「ザフト軍ヤマト隊隊長、キラ・ヤマト!」
「オーブ連合首長国、オーブ軍准将、アスラン・ザラ!」
「ざ、ザフト軍に?オーブ軍??」
アンジュはキラとアスランの放つ言葉に戸惑いながら混乱していて、キラとアスランは行った後に再び作業を開始しようにも、アンジュの戸惑いと質問攻めにどうにも集中出来なかった。
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そして次の日、キラとアスランは再びヴィルキスの修理をしようとした時に、アンジュが二人に言う。
「もういいわよ、その機体」
「えっ?」
「通信機を直しても…私を歓迎してくれる人は誰も居ないもん」
「どうしてそう思う?」
アスランがそうアンジュに聞き、アンジュは自分の事を考えながら間を空けて話す。
アンジュはアルゼナルに来たとき、現実を受け入れられずにいて、ずっと現実逃避ばかりしていた。
それが理由で仲間の一人を死なせ、更に仲間の危機に陥れてしまった、それでもアンジュは現実を受け入れる事が出来ずに逃げようとするも、アルゼナルの司令官であるジルにヴィルキスを与えられ、それで敵を倒してようやく事実を受け入れた。
しかし一人で戦う事ばかり考え、仲間の事を考えずにしていて、アンジュはその仕返しを受けて仕舞い、今この島に居ると話す。
それを聞いたキラとアスランは思わず顔を見合い、アスランはため息を付いて言う。
「それはお前がそう思っているだけだ」
「えっ?」
「実際お前の話しがそうでも、実際お前を心配してくれる奴も居る筈だ」
その事にアンジュはフッと考える、いつも気にかけてくれるヴィヴィアン、そして心配してくれるナオミ、危険な目に合わせてなお接してくれるココとミランダ。
アンジュはそれを考えると、確かにそうかも知らない…しかしそれは人見知りのだけかも知らないとアンジュはそう思うのだった。
「本当かしら…」
「当たり前だ、嫌いなら誰も話しかけたり、接したりしないさ」
そう言い残しながらアスランはヴィルキスの修理に取り掛かり、キラは「素直じゃないね」と思いながら作業を進め。
アンジュはアスランの方を見ながら思う、何かと言いながら、実際は気にかけてくれるっとそう思うのだった。