クロスアンジュ 蒼き自由と紅き騎士   作:ライダーGX

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第34話 ジルの真相

真夜中のアークエンジェルでキラがストライクフリーダムの調整に向かう為に格納庫に向かっていて、格納庫に入ると。

 

「おいお前!!何してやがる!」

 

マードックの怒鳴り声が響き渡っていた。

それにキラが振り向くと、格納庫にまだあったヴィルキスの元にメイが何やらスパナを持っていた。

 

「何って、ヴィルキスの調整に決まってるじゃん」

 

「もう夜中だぞ!ガキがさっさと戻って寝ろ!」

 

「子ども扱いするな!」

 

その事にメイが反論して、再びヴィルキスの整備を再開する。

マードックはその事に対しまた怒鳴ろうとした所にキラがやって来る。

 

「マードックさん」

 

「おお坊主じゃねか、丁度良い所に来たぜ」

 

「あっ!キラ! この人どっかやってよ!作業に集中できないよ!」

 

「黙れってんだ!おい坊主!このガキをさっさと退かせ!」

 

二人のやり取りにキラは苦笑いするしかなく、落ち着かせようとキラはマードックに言う。

 

「まあまあマードックさん、少し多めに見て下さい。メイはこう見えてパラメイルの整備班長なんですよ」

 

「はぁ?このガキがか? まさか嘘だろ」

 

「嘘じゃないもん!ちゃんとアルゼナルの整備士として任せれた事もあるんだから!」

 

メイは胸を張る様に威張り、それに呆れる風になるマードック。

 

「こんなガキがか~? たくぅ!勝手にしろ!!」

 

そう言ってマードックは去って行き、メイは「べ~!」と舌を出しながら嫌みを出していた。

キラはそんなメイに注意するかのように言う。

 

「メイ、マードックさんはこのアークエンジェルの整備班長なんだ、だからあんまりいがみ合っちゃだめだよ。それにヴィルキスはもう整備されてるから」

 

「そうはいかないよ、素人整備にはこのヴィルキスは任せられないって、それにヴィルキスがなきゃリベルタスは続けられないから」

 

メイはそう言ってヴィルキスを整備して、キラはそんな事を聞いてすこし思いつめる表情をする。

 

「よし、終わった」

 

「それじゃあもう遅いから早く戻ったら?」

 

「言われなくてもそうするよ、それじゃあ」

 

そう言ってメイは道具箱を持って格納庫から去って行く。

キラがそれを見送った後フリーダムの整備に行こうとした時にマードックが。

 

「おい坊主、少し甘いんじゃないのか?」

 

「えっ?何をですか?」

 

「あの嬢ちゃんの事だ、少しあの機体を整備出来るからって調子に乗りやがって、おまけになんだ?素人整備には任せられないだ~?俺を誰だと思ってやがるんだあいつは!」

 

「まあまあ。でも僕甘いですか?」

 

「完全にな! まあもう過ぎちまった事を悔やんでもしょうがねぇ、フリーダムの整備しに来たんだろう?あんまり無茶すんじゃねぇぞ」

 

そう言い残してマードックは格納庫を去り、キラは少しばかり立ちつくしてしまう。

 

「あまい…僕が、…少し甘いのかな」

 

キラがそう呟きながらフリーダムの整備をしようとした時。

 

「キラ・ヤマト」

 

「っ!」

 

突然の呼び声にキラは思わず後ろを振り向くと、そこにはレイが立っていた。

 

「レ、レイ…ビックリするじゃないか」

 

「すいません、ですが今あなたにお伝えしておきたいと思いまして」

 

その事にキラは思わず頭を傾げ、レイの話しに耳を傾けていた。

 

 

そして同時にアウローラでは、ヒルダが艦長室の側を通る時だった。

 

『うっ…!』

 

「ん?」

 

部屋から唸り声にヒルダは振り向き、少し覗いてみるとベットで寝ているジルが何かに苦しんでいた。

 

「(司令…?)」

 

その後ジルが放つ言葉を聞いて、ヒルダは思わず息を飲むのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして翌日、キラ達はアウローラにやって来て作戦会議を開いていた。

 

「よく眠れたか?」

 

「ええ…」

 

ジルがアンジュに眠った感想を聞き。

アンジュはそう答え、ジルが笑みを浮かばせる。

 

「それは結構…、ではお前たちに任務を与える。ドラゴンと接触、交渉した後お前たちの軍との共同戦線の構築を要請」

 

それにアンジュとサラは驚きの表示を隠せず、キラ達はそれに顔を合わせる。

 

「どうした?お前の提案通り、一緒に戦うと言っているんだ」

 

「…本気?」

 

「リベルタスに終止符を打つには、ドラゴンとの共闘…それがもっとも合理的で効率的だと判断した…」

 

それには流石のジャスミン達も驚きを隠せずだった。

その話しを聞いたサラはアンジュの方を向く。

 

「アンジュ」

 

「ええ!」

 

そんな中でキラ達は何やら真剣な表情を保ったままジルの話を聞く。

 

ジルによる作戦は、エンブリヲが率いるMS部隊が居る場所、暁ノ御柱にエンブリヲが居ることが判明し、そこにドラゴン達と共にミスルギ皇国に進行すると言う作戦。アークエンジェルとアウローラはドラゴン達の後方支援にあたり、ミスルギに向かうと言う説だ。

 

その作戦を聞いている中でアンジュがある事を問う。

 

「ねえ、そう言えばサリア達はどうするの?」

 

「何?」

 

「サリア達も撃つ落とすつもり?」

 

その事にジルは思わず鼻で笑う。

 

「フッ、持ち主を裏切る様な道具はいらん」

 

「道具って…!だってサリアよ!?」

 

ジルが道具と言った言葉にアンジュはそれに反応して言い、ジルは言い続ける。

 

「全てはリベルタスの為の道具に過ぎん。ドラゴン共も、アンジュも、私もな…」

 

「えっ?!ドラゴンも…!?」

 

「貴女…一体何をするつもりですか? 我が民に何をするつもりで!」

 

サラがジルを睨みながら言い、それをジルは少しばかり目を瞑り、キラがジルの方を見ながら言う。

 

「ジル司令、一体何を企んでいるんですか? 答えて下さい」

 

「ドラゴンと共闘…?ふはははははは!! アウローラの本当の浮上ポイントはここだ!」

 

っと机の画面にアウローラだけが浮上ポイントが違う場所であり、それにキラ達はそれに目を奪われる。

キラ達が驚いてる中で、ジルがアンジュに言う。

 

「アークエンジェルとドラゴン共がラグナメイルとモビルスーツ部隊と交戦している間に、アンジュ…お前はパラメイル隊と共に暁ノ御柱に突入…エンブリヲを抹殺しろ!」

 

「はぁ~!?」

 

アンジュはジルのとんでもない作戦に驚きが隠せず、サラは思わず立ち上がる。

 

「貴女!!我が民を捨て駒にするつもりですか!?」

 

「切り札であるヴィルキスを危険にさらす様な真似はできんからな…」

 

「司令官殿、貴女は間違っています」

 

マリューの言葉にジルは振り向き、マリューは真剣な表情でジルを見つめる。

 

「貴女は兵を捨て駒にすれば何でも勝てると思っている、でもそれでは何も勝てない。兵士は司令の命令は絶対でもこんな無謀でいい加減な作戦にはだれも従わないの」

 

「フッ、貴様等に教えておいてやる、この作戦の指揮権は私だ!私がこの命令を出したからには従え!!」

 

「断ります」

 

マリューの強い言葉にジルは一層目線を強める。

そんな中でアンジュは拳を握り締めながらジルを睨む。

 

「冗談じゃないわ…!こんな最低な作戦!協力出来るわけないわ!!それにキラやサラ子達を死なせる事なんで出来ない!!」

 

「ならば、協力する気にさせてやろう」

 

っとジルはコンソールを操作して、壁のモニターにある映像を映す。

それは手足ロープで縛られ、口をテープで縛られたモモカの映像だった。

 

「モモカ!?」

 

「減圧室のハッチを開けば侍女は一瞬で水圧に押しつぶされる」

 

キラ達はモモカが捕らえられている映像を見て驚き、ジャスミン達はジルの行動に驚く。

 

「ジル!あんたの仕業かい?!」

 

「聞いてないよ!こんなの!!」

 

ジャスミン達が口論している中でムウはジルを睨む。

 

「お前、司令官としてやっちゃいけない事をしてしまったな」

 

「フッ、これが私のやり方だ、それにアンジュは命令違反の常習犯、予防策をとっておいたのさ。侍女を救いたければ作戦を全て受け入れ!行動しろ!」

 

「貴女が何をしているのか分かっているですか!!」

 

アスランがそれを問うと、それに笑いながらジルは言い続ける。

 

「リベルタスの前では全てが駒であり道具だ。あの侍女はアンジュを動かす為の道具、アンジュはヴィルキスを動かす道具、そしてヴィルキスはエンブリヲを殺す究極の武器! 」

 

『そこまでです』

 

っと当然のモニターの声にキラたちは驚き振り向くと、減圧室の扉が開き、そこからレイとヒルダがやって来てモモカの拘束を解き、それにジルは驚く。

 

「お前たち!?」

 

『聞いちゃったよ司令、随分大胆な事をしますね~。それにこの会話…もう艦内中すべてに流していますから、皆驚いてますよ~』

 

「な!何!?どうやって!?」

 

ヒルダの言葉に驚きを隠せないジル、その事をレイが説明する。

 

『盗聴器を仕掛けさせてもらったのです、夜中にヒルダに話してその部屋に盗聴器を。それと貴女の秘密を彼女から聞かせて貰いました』

 

「秘密?」

 

キラがレイがジルの秘密の言葉を聞いて、レイは頷きながら言う。

 

『はい、ジル司令は昨夜部屋で魘されている所をヒルダが聞いたようです。それも『申し訳ありません、エンブリヲ様』と』

 

「!!!!???」

 

その言葉を聞いたジルは目を大きく開き、それにキラ達は驚いて振り向く。

 

「ジル!それは本当かい!?」

 

「どうなんだいアレクトラ!!!」

 

マギーとジャスミンに問いかけられるジルはただ唖然とするだけで、レイは少しばかり冷たい目線を向ける。

 

『さあ…全てを話して貰いましょうか。ジル司令官殿』

 

もうなすすべもないジルは観念したかのようにうつむいて仕舞い、そして語り始める。

 

「…ああそうだ、私は…エンブリヲの人形だった」

 

ジルの言葉にキラ達は驚き、レイの近くにいるヒルダも驚きを隠せない。

 

「…私はあの時、リベルタスを行い…エンブリヲを殺そうとした。だが奴に身も心も憎しみ…全てを奪われた。誇りも使命も純潔も…。

ああ…怖かったよ。リベルタスの大義…ノーマ解放の使命…仲間との絆、それが全部…奴への愛情、理想、快楽へと塗り替えられていった。何もかもあいつに踊らされていると感じたんだ…。全て…見抜かれていたかの様に」

 

それを聞いたキラ達はただ唖然とし、マギーはジルを見ながら問う。

 

「何で黙ってたんだ…」

 

「フッ、どう話せばよかったのだ? エンブリヲを殺しに行ったが…逆に見も心も奪われましたと言えばいいのか? 全て私のせいさ…リベルタスの失敗も仲間の死も全部…、こんな汚れた女を救う為に皆死んでしまった…!!」

 

「そんな…そんな!!」

 

メイはとても残酷な事実を知って、自分の姉の死がジルに当たる事に困惑していた。

 

「私に出来る償いはただ一つ…エンブリヲを殺す事だ。奴を殺して…全ての償いを受け継ぐ」

 

「ジル司令、それはただの現実逃避に過ぎません」

 

っとキラがその事を言い、それにジルは振り向く。

 

「何?!」

 

「仮にラウ・ル・クルーゼを殺しに向かっても、今の彼がそう簡単に死ぬかどうかも分からないのです。全てを捨て駒にしても帰って来るのは虚しさと憎しみのもです。何も変わりません」

 

「ジル…私もキラと同意見よ。それじゃあ貴女はただ逃げてるだけよ」

 

その事を言われたジルは歯を噛みしめるしかなかった。

そしてマギーがジルの近くにより、ジルがマギーを見た瞬間。

 

パンッ!!

 

ジルの頬にマギーの平手打ちが放たれ、それにジルはただ黙ったままマギーを見る。

 

「私はあんただから一緒に来たんだ、あんたがダチだからずっと付いて来たんだ…それを利用されていただなんてさ…!」

 

利用されて怒りを隠せないマギーは拳を握りしめ、ジルは何も弁護なく黙った。

 

「何とか言えよ!アレクトラ!! なあ!!!」

 

「そのくらいにしときな、マギー…」

 

「…チッ!」

 

マギーは舌打ちをし、ジャスミンはジルと面と向かい合う。

 

「知っちまった以上、この作戦とあんたをボスにはして置けない。指揮権を剥奪する…いいね?」

 

「…ああ」

 

ジルはジャスミンによってアウローラの指揮権及びノーマ達リーダーの座を失い、それをキラ達はただ黙って見つめるしかなかった。

 

そしてアークエンジェルのブリッジではサイとミリアリアとメイリンがレーダーで監視体制に入っていたその時だった。

 

突如レーダーに機影が映り、それにサイがすぐさま報告する。

 

「レーダーに機影を6機確認!そして後方には戦艦クラスと思われる機影も!!」

 

「「「「っ!!!」」」」

 

そしてすぐさまこの事をミリアリアがキラ達に報告するべく、アウローラに通信を入れる。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アウローラの作戦会議室でミリアリアの通信が入って来る。

 

『艦長!!緊急事態です!!』

 

「っ!どうしたの!?」

 

突然の通信にマリューは立ち上がり、キラ達もミリアリアの通信に振り向く。

 

『レーダーに敵の機影を確認!距離4.500!』

 

「数は!」

 

『6機です!撃ち3機をあの小型の機体と確認! そして残り3機をカラミティ!レイダー!フォビドゥンと確認!!』

 

「分かりました!総員第一戦闘配備!!」

 

マリューの言葉にすぐさま戦闘準備に入るアークエンジェルクルー、その様子にキラとアスランは振り向いて頷く。

 

「僕達も行きます!」

 

「ええ、お願いね」

 

そう言ってキラとアスランはすぐさま作戦会議室から出て、アークエンジェルに戻って行く。

アンジュとサラはそれに頷いてその後を付いて行く。

 

「アンジュ!」

 

ジャスミンはそれに気付いて呼び止めるもすでに向かってしまった。

 

 

アークエンジェルに戻ったキラとアスランはすでにパイロットスーツに着替えたシンとルナマリアに命令する。

 

「シン!ルナマリア!先に出撃してて、僕達もすぐに向かうから!」

 

「「了解!!」」

 

シンとルナマリアはデスティニーとインパルスに乗り込み発進し、急いでパイロットスーツに着替えるキラとアスラン。

そしてストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに乗り込み、システムを起動してベルトを絞める時にアンジュ達から通信が入って来る。

 

『キラ!アスラン!私達も行くわ!』

 

「アンジュ!?」

 

『キラ達だけに任せて置く訳には行きませんから』

 

「お前たち…」

 

キラ達がヴィルキスの方を見ると、もう既に起動状態に入っており、何時でも出撃できる雰囲気になっていた。

止めてもついてくると感じたキラとアスランは諦めて頷く。

 

「分かったよ、でも無理はしないでね?」

 

『ええ、分かって居ますわ』

 

そう言ってアンジュとサラは通信を切り、キラ達の機体がカタパルトに付く。

 

「キラ・ヤマト!フリーダム行きます!!」

 

「アスラン・ザラ!ジャスティス出る!!」

 

キラとアスランのフリーダムとジャスティスが出て、アンジュとサラのヴィルキスと焔龍號が位置に付く。

 

「ヴィルキス、行きます!」

 

「焔龍號、参ります!」

 

二人の機体がスラスターを点火させて飛び立ち、フリーダムとジャスティスの後ろに付く。

 

そしてカラミティ達とクレオパトラ達は出て来たフリーダム達を見て、クレオパトラに乗っているサリアは笑みを浮かべる。

 

「アンジュ、今度こそ捕まえるわ」

 


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