キラとアスランが再びアンジュ達の世界に向かう事を決意して、同時にアークエンジェルも向かう事となった事を聞き付けたプラントに停泊しているエターナルの艦長『アンドリュー・バルトフェルド』が通信でキラ達と話し合っていた。
『全くいきなり居なくなって帰って来たと思いきや、またどこかに向かおうとするとはお前も大胆なことするな』
「すいませんバルトフェルドさん、でもこれは僕達が向かわなければいけないのです。あの人を野放しにして置く訳には行きません」
『ラウ・ル・クルーゼ…、奴が別の人物になり替わってまでも混乱を招こうとするとはな…。止められるのか?』
バルトフェルドの言葉にキラは頷きながら言う。
「止めて見せます。あの人を必ず止めて見せます!」
『……分かった。ただしお前たちだけ向かわせる訳には行かない。こっちからイザーク達を向かわせる、その方が戦力があっていいだろう』
「イザーク達をですか?」
アスランがバルトフェルドの言葉を聞いて頭を傾げ、バルトフェルドは頷く。
『そうだ、あいつ等が居れば大丈夫だ。あとイザークとディアッカの機体なんだが、放置された地球軍の基地からちょっと面白い物を取り出したんだ』
「面白い物?何だよそれ?」
『それは見てからのお楽しみだよムウ、イザーク達は今夜には出発して、明日の朝には到着する予定だ』
バルトフェルドはムウにそう言い、ムウの隣に居るマリューが頷く。
「分かりました、彼等の事は任せて下さい」
『頼むぞラミアス艦長、ではキラ…健闘を祈るぞ』
そう言って敬礼をするバルトフェルドは通信を切り、キラ達も敬礼をして下ろす。
アンジュ達はその様子を見ていて、アンジュが問う。
「ねえ、イザークって誰よ?」
「アスランの元仲間だよ、ディアッカもそうだけどアスランは元ザフトの軍人で、スクールアカデミーとは一緒だったんだ」
「ほえ?元はそっちなの? ねえ何でオーブに渡ったの?」
ヴィヴィアンがその事を聞くと、アスランはそれにうつむきな、そして顔を上げて言う。
「俺が…ザフトを裏切ったからだ、戦争時に当時俺の父と口論し、その後決別してしたんだ…」
「それがどうしてなのよ?」
「今はこれで勘弁してくれないかアンジュ、俺にもまだ話せる状態でもないんだ」
アスランがそう言い、アンジュはそれに少々納得が行かないまま黙り込む。
そしてキラは少しばかり外の景色を見て、サラがその様子を見るのだった。
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夜、オーブ軍はアークエンジェルに弾薬や物資と燃料を詰め込めるだけ送り、皆は最終確認の準備に取り掛かっていた。
一方でキラはもう一度ラクスの墓に向かっていて、ラクスの墓の前に立っていた。
「……ラクス」
キラがそう呟いていると…。
「キラ殿」
っと声を掛けられて後ろを振り向くと、サラがゆっくりと歩み寄って行き、キラの隣に立ってラクスの墓を見つめる。
キラはサラを一度見た後、またラクスの墓を見る。
二人が墓を見ている中、サラがある事を言い出す。
「キラ殿はこの世界は好きですか?」
「…うん、争いばかりの世界だけど…守って行きたいくらい好きだよ」
「そうですか…、人はどうして争うのでしょうか。私達の世界はエンブリヲに滅ぼされた世界とは言えど、諦めずに生き続ける為に共に立ち上がって来ました…」
「人には…人の考える力と言う物が在るんだ、それがどんな結果になろうともね。でも…」
キラの言葉の続きにサラは振り向き、キラは夜空の星を見て言う。
「どんなに残酷な世界になろうとも…。僕は…僕達は歩み続けて行く…、それが…僕達の戦いでもあるんだ」
その言葉にサラの心がグッと来て、キラを見つめる。
キラの真っ直ぐで強い心、サラはそんなキラを徐々に思うようになって行くのをまだ彼女は気づかなかった。
そして翌日、早朝にザフトの輸送機が滑走路に到着し、キラとアスラン、そして付いてきたアンジュ達が居た。
輸送機の扉が開き、扉から『イザーク・ジュール』と『ディアッカ・エルスマン』、そして部下の『シホ・ハーネンフース』の三人が出て来る
イザーク達は階段を降りて行き、待っていたキラ達が出迎える。
「イザーク、ディアッカ」
「ようキラ、アスラン。久しぶりだな?無事で良かったぜ「アスラン貴様!!!!」おっと…また始まったぜ」
ディアッカはイザークが突如アスランに突っかかって行くのを見て呆れ、アスランは突っかかって来たイザークに驚く。
「イ!イザーク!?」
「貴様よくもおめおめと戻って来られたな!! 連絡も寄こさないで!!」
「離せイザーク!! お前はどうしてこうも突っかかるんだ!?」
「うるさい!!」
その様子を見ていたアンジュは二人の異常な威圧感に少々下がりながらサラに話す。
「なんかすごいわね?あれ」
「そうですか? 私にはとても仲良くしていると思いますわ」
っとその言葉にアンジュは呆れてしまう、そしてディアッカはアンジュ達の存在に気が付き、キラに耳元で問う。
「おいおいキラ、何だよ可愛い子ちゃんたちは?めちゃくちゃイケてるじゃねぇか」
「彼女達はアンジュとサラとヴィヴィアン。僕達が行方不明先に知り合ったんだ」
「へぇ~? なあキラちょっと「駄目だよディアッカ、声を掛けちゃ」…お、おう」
キラのスマイルな表情にディアッカは何故かとても声が掛けずらかった。
そんな中でヴィヴィアンが輸送機から降ろされる機体を見て興奮する。
「うお~~~!何あれかっけぇぇぇ!!」
っとキラ達が振り向くと、キラとアスランは思わず目を大きく開く。
それは嘗てイザークとディアッカが乗っていた『GAT-X102 デュエルガンダム』と『GAT-X103 バスターガンダム』であった。
しかしその機体は改造されていて、『GAT-X1022 ブルデュエルガンダム』と『GAT-X103AP ウェルデバスターガンダム』の二機であった。
「デュエル!バスター! まさかバルトフェルドさんが言っていたのはこれ?」
「しかしこの外装はどう見ても違う設計だ、同型機か」
「俺達も見て驚いたぜ、まさかかつての機体とまた乗る事になるなんてな」
「OSの方は俺達が既に乗れる様にしてある。誰も乗れないようにな」
その事を聞いてキラとアスランはただ見上げる事しかなかった。
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そしてアークエンジェルの格納庫で、選び抜かれた精鋭揃いのクルー全員が集められ、出発の前にカガリの言葉を聞いていた。
「諸君、君達はこれからまだ見知らぬ世界に足を踏み入れる事となる、そこは魔法の国と呼ばれるマナを扱う人間がそれを扱う事が出来ない人間の事をノーマと呼ぶ人を差別する世界だ、言わずとも分かるがあの世界は我々の世界と似ている。
ナチュラルがコーディネイターを嫌い、コーディネイターがナチュラルを邪魔者扱いとする、本当に似ている世界だ。
しかしそんな世界を混乱に導こうとする者が居る、その者は嘗てこの世界で生きて死んだはずの者だ。世界を混乱し、破壊の世界に変えるつもりでいる、そんな世界を我々が見過ごす訳には行かない!
この艦はオーブ軍第一次元派遣艦として扱う事となる、当然ながら厳しい戦火も予想される。どうか無事の生還を祈る!」
そう演説したカガリは皆に敬礼をし、クルー一同敬礼をする。
敬礼を終えたカガリが下ろすと隣に居るマリューがクルー一同に向かって言う。
「これより本艦は10.00時により、別世界に向けて発進する!各員は持ち場に付くよう!」
『『『了解!!』』』
すぐさまクルーは自分達の持ち場に向かい、カガリがマリューと向かい合う。
「ラミアス艦長、無事の健闘を祈る」
「はい」
その様子をアスランは遠くから見ていて、キラが寄る。
「アスラン」
「…大丈夫だ、あいつに言わなくても伝わるさ」
そうアスランは言い、キラもその事にただ見つめるしかなかった。
そしてアークエンジェルは発進準備が整い、操縦桿を握るノイマンがマリューに報告する。
「艦長、発進準備完了!」
マリューはそれに頷き、レイの方を向く。
「ではお願いしますね」
「分かりました、浮上した直後に門を開かせます」
「では、アークエンジェル発進!!前進微速!!」
アークエンジェルはゆっくりと進みだし、外に出ていたカガリ達が敬礼をしながら見送り、浮上して行き、レイが手を前に出すと同時にアークエンジェルの前にシンギュラーが現れる。
丁度アークエンジェルが通れるほどの大きさで、アークエンジェルはそのままシンギュラーに通って行く。
そしてシンギュラーを通ったアークエンジェルはアンジュ達の世界にやって来て、ブリッジに来たアンジュ達は再び外の光景を目にする。
「また…帰って来たんだ」
「おう!この匂い確かにあたし達のだ!」
そうヴィヴィアンが言っていると、ミリアリアが報告する。
「艦長、前方にある施設らしき建物の島が見えます」
「映像出せる?」
「はい!」
ミリアリアが映像を前方のモニターに移すと、そこはアンジュとヴィヴィアンにとって見覚えのある島だった。
「あそこは…アルゼナル?」
丁度キラがやって来てその映像を見て呟く、完全に基地機能を失ったアルゼナルを見て呟き、それにアンジュはただアルゼナルを見て呆然とする。
そして夜、アルゼナルの付近の海に着水して停泊するアークエンジェルはクルーを数十名向かわせて探索を開始させた、少し経って数十体の死体が運ばれて来て、その様子にマリューは気の毒な表情をする。
「酷いわね…黒焦げにするなんて」
「本当に似た物だな、俺達の世界と」
ムウは運ばれる遺体を見ながらそう呟き、オーブ兵士がマリューの元にやって来る。
「艦長、遺体はこれで全ての様です、後の物は瓦礫に埋もれていて…」
「そう…分かったわ、後で埋葬するから皆にも伝えておいて」
「分かりました」
兵士はそう言ってその場から離れて行く。
そんな中で海辺の近くに座っているキラ達、イザークとディアッカとシホは海辺の付近を捜索していていなかった。
その中でアンジュは暗い表情に包まれていた。
「帰って来たんだ…アルゼナルに」
アンジュはアルゼナルを見上げて言い、悲しみの声で言う。
「皆…何処に行ったの? まさか…」
「大丈夫だと思うよ、皆…簡単にやられる訳ないから」
キラの言葉にアンジュはただ頷くしかなかった。
「それにしてもサラ、羽と尻尾、結局戻らなかったね?」
キラはサラの特徴である羽と尻尾が戻らない事に問い、それに頷くサラ。
「ええ、一体何が如何なっているのでしょう。戻って来ても戻らないとは…」
「ほよ?何あれ」
っとヴィヴィアンの言葉にキラ達は振り向く、すると海の方に緑色の光の玉が浮いて、そこから三人の人影が現れる。
「っ!アスラン!」
「ああ!シン!レイ!!ルナマリア!!」
「「「はい!!」」」
キラ達はハンドガンを取り出し、アンジュは少し下がり、サラは刀を構えていた。
そして海から上がって来る謎の三人、その中で一人がアンジュの姿を見て。
「あ…あ…アンジュリーゼ…様?」
「えっ?どうして私の名を?」
アンジュは自分の本名を知っている事に反応し、キラとアスランとヴィヴィアンもその事を聞いて反応する。
するとその人物はマスクを外すとモモカが現れる。
「モモカ!?」
「アンジュリーゼ様ー!!!」
モモカはアンジュに駆け寄って抱き付き、アンジュもモモカが現れた事に嬉しながら抱き付く。
そしてヴィヴィアンはその他の者達を見た時にマスクを外したヒルダとロザリーを見て驚く。
「うわ!みんなだ!!」
「ん?うわっ!ドラゴン女!?」
ロザリーはヴィヴィアンを見てビビって引いて、ヒルダは笑みを浮かべてアンジュに駆け寄る。
「本当に…アンジュなの?」
「勿論よ、ヒルダ」
それにヒルダはまた笑みを浮かべる。
そんな様子にキラとアスランは銃を下ろし、シン達にも言う。
「皆、銃を下ろして」
「えっ?でもキラさん」
「大丈夫だよ。味方だから」
「シン、キラの命令だ」
キラとレイの言葉にシンは頷き、ルナマリアと共に銃を下ろす。
そしてヒルダとロザリーはシン達の存在に気付く。
「あんた等…何者」
「心配しないで、僕達の世界の仲間たちだよ」
「はっ?!キラ達の?!」
ロザリーはキラの言葉に驚き、その事にヒルダは思わず眉を歪ませる。
すると崖から二人の影が飛び出して来て、ヒルダとロザリーの動きを拘束して二人の首元にナイフを突き付ける。
突き付けたのはステラとシホの二人で、その様子にキラ達は驚く。
「えっ!ちょっと!」
「お前たち何をしている!」
「何をって敵を拘束してるじゃないのですか」
「何者…」
「いてててて!!!何すんだよ!」
「離せって!!」
突然の拘束に戸惑うヒルダ達、そしてその叫びに駆けつけたマリュー達。
「どうしたのキラ君!!」
「あっ?何だこの光景は?」
ムウが拘束されているヒルダ達を見て呟き、キラとアスランが慌ててステラとシホに誤解を解かせるのであった。