キラとアスランは目を覚ましたアンジュを見て、キラは笑顔で問う。
「良かった、君もう大丈夫?」
アンジュはその事に少しばかり唖然としていたが、すぐにさっきの事を思い出した。
先ほど彼女はついさっきまで裸の状態で寝かされていた。もしかしたら…っとアンジュはキラの言葉を無視して、キラを突き飛ばしてその場から走り出してしまった。
「うぁ!」
「キラ!」
アスランは突き飛ばしてしまったキラを起こし、キラはアスランの方を見ながら言う。
「大丈夫だよアスラン」
「そうか…しかしあいつ、いきなり何をするんだ?」
そしてアンジュは走りながら周りの景色を見て考え込む。
「(何なの此処…、私…どうして…はっ!)」
アンジュはようやく自分のしていた事を思い出す。戦闘中にヴィルキスが異常を起こし、そこで海に落ちたって事を。
海岸の方まで走ると砂浜にヴィルキスがあった。彼女は直ぐに乗り込んで発進しようとするが何も起きない。
「…? どうして動かないの?」
アンジュは原因を調べると、ファン部が少し焦げている部分があって。アンジュはすぐに調べて様とする。
「壊れて動かないぞ。その機体は」
っとアンジュは外を見ると、キラとアスランがアンジュの元にやって来て、アスランがある物をアンジュに見せた。
「その機体のファンにこんな物が詰め込まれていた」
アスランがアンジュに見せた物は少し焦げていた大量の下着であった。
大量の下着を見たアンジュはすぐに犯人が分かった。大量の下着を入れた犯人はヒルダであった事を…。
「この…!このこのこの~!!」
アンジュはアスランから下着を奪い取り、悔しながら下着を破り捨てて踏みつける。
「しかし災難だね君? 本当に大丈夫?」
キラがアンジュに近寄ろうとした時、アンジュはすぐさま銃を抜いてキラの足元を撃つ。
「!!」
それにキラは思わず後ろに下がり、アスランはとっさに銃を抜いてアンジュに向ける。
「何をするお前!!」
「それ以上近づいたら撃つわ…」
アンジュは目覚めた時の事を考えながらキラとアスランに警戒心を持っていた、アスランはアンジュに対し睨みつけていたが、キラがそれを落ち着かせるように話す。
「落ち着いて、僕達は君に危害を加えるつもりはないよ。だから安心して」
「安心してですって…!人を裸にさせておいて!?」
「あの時の君は海水に浸かっていて身体が冷えていたんだ。あのままだったら君は低体温症で死んでいたんだよ?」
キラは冷静に対応しながらアンジュを落ち着かせようとする。しかしアンジュの怒りの炎は消えない。
「嘘よ!!もし目覚めなかったら、私にもっと卑猥で破廉恥なことをするつもりだったんでしょう!」
「…誰がお前の様な奴にそんな事をするか」
アスランはアンジュの暴走発言に思わずつぶやいて、キラは少しばかり冷たい目線でアンジュを見る。
「それじゃあ…君はあのまま海の中で死んでいた方がマシだと…そう言うのかい?」
「っ…それは」
アンジュはキラの言葉に思わず詰まらせる。
「僕は困っている人を放っておけないんだ。だから落ち着いて」
「…う。五月蠅い!!!私に構うな!!」
アンジュは銃をキラに向けた時、アスランが銃を撃ち、アンジュが持つ銃を弾き飛ばす。
それにアンジュは右腕を抑えながら二人を睨みつける。
キラはアスランの方を見て呆れる風に見る。
「アスラン…」
「キラ、こいつには何を言っても──」
「僕に任せてよアスラン。お願いだから…」
「…分かった。しかし妙な事をしたら見逃さないからな」
そう言ってアスランは銃をしまい、キラはアンジュの元にく。
「大丈夫?」
「触らないでよ!」
っとアンジュは差し伸べるキラの手を強引に払い、すぐにヴィルキスの元に行く。
それにキラはアンジュの方を見て唖然とし、アスランはもう我慢出来ずにキラの腕を引っ張る。
「おいキラ、もうあんな奴は放っておけ」
「でも…」
「何時まで関わっても、あっちがあんな風な状態じゃあ何時まで経っても同じだ」
そう言ってアスランはキラを引っ張って行き、アンジュは一目見ただけですぐさまヴィルキスの中を調べるのであった。
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そしてアルゼナルで、ドラゴンを撃退した第一中隊は戦闘の最中にヴィルキスが消息不明となり、執務室上官たちに話して問い合っていた。
その中でアルゼナルの司令官である『ジル』、医者の『マギー』、最年長の『ジャスミン』、そして隊長のサリアとメカニックのメイが居た。
「ヴィルキス落ちたようだね? やっと乗りこなす者が現れたと思ったのにね…」
「機体の調子は良かったのにどうして…!」
メイは拳をぶつけながらあの時の事を悔やむ。もっとアンジュに見ていておけば、あんな事には鳴らなかった筈だと。
「考えるのは後よ、今は機体の回収が最優先よ」
「分かってる!すぐに回収班を編成させる!」
「アンジュもだ」
っとサリアとメイはジルが言った言葉に振り向く。
「アンジュも回収しろ、最悪の場合…、死体でも構わん」
ジルの言葉を聞いたサリアは納得いかない様子。うしてそこまでアンジュにこだわるのか、その理由を聞いても決してジルは答えてはくれなかった。
サリアとメイはヴィルキスを回収するヘリに乗り込んだ際にある者達がやって来た。
「メイち~~~~ん!」
っとサリアとメイは振り向くと、ヴィヴィアンとエルシャ、そしてナオミとココとミランダの五人がやって来たのだ。
「回収に行くんでしょ?アタシ達も手伝う!」
「皆、さっき戻ったばかりじゃない?」
メイは皆に休めと言おうとするが、それをヴィヴィアンが言う。
「早く見つけないと死んじゃうから!」
「「??」」
サリアとメイはヴィヴィアンの言っている言葉の意味が分からず、ヴィヴィアンは元気よく答える。
「アンジュ生きてる!分かるもん!」
「早く見つけてあげないとね、きっとお腹空かしてるわ」
エルシャはサンドウィッチを入れているバスケットを持ってて、すでに準備万端だった。
「それにアンジュさんが居ないと、何だか落ち着かなくて…」
「それ、実は私も同じなんだよね~…」
ココとミランダはアンジュに安否を感じてヴィヴィアン達と同行していた。
サリアは呆れながらもナオミの方を見る。
「ナオミ…」
「ごめんなさいサリア、私もアンジュが心配だから…」
「そんじゃレッツゴー!」
ヴィヴィアンを先頭に乗り込み、エルシャ達も続き。
サリアとメイはヴィヴィアン達の行動に少々戸惑いながらもアンジュとヴィルキスの捜索へと向かった。
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そしてキラとアスランはアンジュをほったらかしにして、フリーダムとジャスティスの調整を行っていた。
「良いのかな…彼女を放っておいて」
「アイツが関わるなって言ったんだ。ほっとけばいい」
そうアスランが言いうも、キラはどうしても放っておけない様子だった。
一方アンジュはヴィルキスに非常食がないか調べていたが一向に見つからなかった。
「どうして非常食がないの?!」
っとアンジュは前にサリアやジャスミンの言葉を思い出す。
『私達ノーマの棺桶よ』
『パラメイルはノーマの棺桶』
そう思い出しながらヴィルキスを見る。
「ノーマの棺桶か…」
アンジュは目を細めていると、海水が増している事に気付く。
どうやら満潮が来たらしく、アンジュは急いでその場を離れる。
そしてキラとアスランの方にも雨が降り出す雲行きを見て、キラは手を止める。
「雨が降って来るね…」
「ああ、取り合えず準備が出来た事だし、そろそろ『ごめんアスラン』」
っとキラは何処かに向かって行き、それにアスランは振り向く。
「キラ!」
そして空が薄暗くなり、嵐の雨が降って来た。
雷鳴がとどろく中でアンジュは雨宿り出来る所を探していた、すると大木の穴を見つけて雨宿りする。しかしそこにある物がゆっくりと忍び寄っていた。
飢えと雨の寒さで体が震える中で、アンジュはある痛みを感じる。
「痛っ!」
アンジュは下を見ると、どうやら蛇が噛みついていて、急いで振り払い、その場から走り出す。
彼女はどのくらい歩いたのか分からないが、だんだんと体力が低下してきた。
そして先ほどの蛇に毒があったのか、徐々に身体がだるくなり。おまけに雨による体温低下にアンジュは倒れてしまう。
「…だれか」
助けを呼ぼうにも、彼女を助けにくる仲間はいない。
「…誰も、来る訳…ない」
助けが来ない事に涙を流すアンジュは、自分は皆の嫌われ者…自分を助けに来るはずは決してない。
起き上がろうとするもぼんやりとしていて上手く立ち上がれない。
そこへ丁度キラがアンジュを探して来て、アスランもその後を追いかけていた。
「おいキラ!」
「居た!」
キラは見た先にアスランは振り向くと、アンジュが倒れているのを見て、キラは駆け寄り、アスランもすぐに駆け寄る。
「君!大丈夫!?」
「おい!」
キラとアスランがアンジュに問いかけるも、既でに気を失っていて意識が無かった。
二人はすぐに容体を調べる、太腿に蛇にかまれた所を見つけ、蛇にかまれたことを知る。
「毒蛇に噛まれてる…」
「ここじゃあ処置も出来ない、すぐに洞窟に行くぞ! …本来ならこいつを放っておいても当然なのに」
アスランはそう言いながらアンジュを背よい、キラと共に洞窟に向かうのであった。
そして洞窟に到着したキラ達は医療箱を取り出して、アンジュに血清を注射して毒を浄化させる。
キラはアンジュの身体中に付いている泥を布で拭きとり、アスランはため息を付く。
「はぁ…、全く…世話のかかる奴だ」
「本当だね。でもこんな強引さを見ると…カガリに似てるね?彼女」
「えっ? ……そうかも知れないな」
アスランはキラの一言を聞いて驚く表情をするも、その言葉に一理ある様な顔をしながらアンジュを見るのであった。
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そしてアンジュとヴィルキスを捜索中のサリア達はヘリで上空を飛び回って探していた。
その中でヴィヴィアンは鼻を使い“匂い”をかぎながらアンジュを探していた。
「そっちはどう?」
「駄目…見つからない」
サリアがエルシャに問う掛けるも、エルシャも見つからない事を言い、サリアはそれに黙り込む。
っとメイがある事をサリアに言い出す。
「サリア、そろそろ燃料が無くなって来たよ」
「そう、分かったわ、それじゃ一度戻りましょう」
そう言ってサリアは一度燃料補給の為ぶアルゼナルに戻るのだった。
夜となり、アンジュが目を覚ます。気が付くと、最初に目覚めた洞窟だ。
アンジュが身体を起こそうとした時、キラが言う。
「まだゆっくりしていなきゃ駄目だよ」
「っ!?」
アンジュはキラとアスランが居た事に驚き、そしてライダースーツの上にある上着を着せられているのを見てアンジュは二人を見る。
「これって…」
「ここに住んでいた人の物を借りただけだ、勝手に使ってしまったがな」
「勝手にって…あなた達ここの人じゃないの?」
「僕達も昨日此処に来たばかりなんだ」
アンジュはキラとアスランの言葉を聞き、思わず唖然とする。
そしてアスランはアンジュにコーヒーを渡す。
「ほら、これを飲んで少し休んでろ。今食事を作っている所だ」
「…いらないわよ」
ぐぅ~~~
っとそう言うってもアンジュのお腹が鳴り、それにアンジュは思わず顔を赤くして恥ずかしがる。
それにキラとアスランは思わず笑い出す。
「はははは♪」
「何だ、やっぱり空いていたんじゃないか」
「……」
ますます顔を赤くするアンジュに、キラは煮込んでいたスープを器に盛り付ける。
そしてアンジュの元に行き渡す。
「はい、熱いから気を付けて」
「…」
アンジュは恥ずかしそうにしながらそれを受け取り、それを食べる。
「少しは安心した?」
「…ちょっとだけ」
そう言ってスープを食べるアンジュ。
キラとアスランはアンジュの様子をそのまま見届け、そして自分達もスープを食べるのであった。
その時、ヴィルキスにある海に“ある奴”が忍び寄って来るのをキラ達はまだ知らなかった。
活動報告にアンケートを出しています。
アンジュの人に付いてはそこで。