サラマンディーネがアンジュをなぎ倒して、アンジュを連れて帰るキラとアスラン。
ガレオン級に乗って宮殿に戻り、アンジュを医務室へと連れて行く。
「医務室はこの先です」
「ありがとうサラマンディーネ」
「この馬鹿を止めてくれて感謝します」
二人はサラマンディーネに礼を言い、それにサラマンディーネは頭を横に振る。
「言っても聞かない者にはこうする事が良いかもしれませんが、正直戦いでは何も解決しませんので、では私は少しばかり用事がありますので」
サラマンディーネはそうキラとアスランに言い、キラとアスランは頷いてアンジュは医務室へと連れて行った。
そしてサラマンディーネは地下格納庫へと降りて、現在急で作り上げた固定ハンガーに固定させているストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを見る。
「…キラ殿達には勝手なことで申し訳ありませんが、エンブリヲに勝つために少しばかりいじらせて貰います」
そうサラマンディーネは呟きながらストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに近寄り、スパナを持って何やら改造し始めた。
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そして医務室へと着いて、アンジュを横に寝かせたキラとアスランはアンジュが目覚めるのを待っていた。
その間アスランがキラにこの後の事を聞く。
「キラ、この後はどうするんだ?」
「うん、僕もその事に少しばかり考えていたんだけど…まだ何も考えてなくて」
そう考え込むキラ、すると…。
「おーい! キラ!アスラン!」
キラとアスランは聞き覚えのある声が聞こえて、その方を振り向くとアウラの民の服装を着たヴィヴィアンがやって来た。
「ヴィヴィアン!」
「元に戻ったんだな。安心したよ」
「うん!そうだよ!」
っとそう言ってると…。
「うわあああああっ!!!」
アンジュが大声を上げながら勢いよく起き上がって来て、それにキラとアスラン、そしてヴィヴィアンが驚く。
「「っ!?」」
「ひぃ~~! ふぅ…ビックリした」
「あれ? ヴィヴィアン!」
アンジュはヴィヴィアンが元に戻ってることに驚き、それにヴィヴィアンは笑顔でアンジュの方を向く。
「オイッス!」
「えっ?ヴィヴィアン…どうして?」
「さあ~ここでクイズです、私はどうやって人間に戻ったでしょうか!」
っとここでヴィヴィアンのお得意のクイズが出て来て、それにアンジュは少々困った表情になる。何も知らないのにどうやって人間に戻ったか分からないからだ。
「ぶ~!残念! 正解は…え~と~…何だっけ?」
その事に呆れるアスラン、っとそこに医者の『ドクター・ゲッコー』がやって来る。
「D型遺伝子の制御因子を調整しました、これで外部からの投薬なしで人間の状態を維持出来る筈です」
「って事でした~♪」
「っ~…君が言ったんじゃないだろう」
アスランはヴィヴィアンのお調子の事に少々呆れかえり、それにキラは苦笑いするしかなかった。
「身体の具合は?」
「え? え…ええ、何とも」
「それは良かったです、姫様が“手加減”して下さったようで」
その事にアンジュだけじゃなく、キラもアスランも思わず反応する。
「えっ?手加減…?!」
「サラマンディーネさんが?」
「ええ、せっかくのお客ですもの、怪我をされては申し訳がないですもの」
そう言ってドクター・ゲッコーがその場を離れて行き、キラ達は互いの顔を見合うのであった。
そして外に出て、一度顔を洗うアンジュ、そこに…。
「その様子ですと、もう大丈夫の様ですね」
キラ達は声の主の方を向くと、そこにサラマンディーネ達と一人の女性が居て、アンジュはサラマンディーネを睨みつけ、それキラは苦笑いし、アスランはまたしても呆れた様子になる。
そんな中でサラマンディーネが一人の女性の方に話しかける。
「ラミア、彼女です。遺伝子照合で確認しました、貴女の娘で間違いありません」
その事にキラ達はヴィヴィアンの方を見て、ヴィヴィアンも自分に指を差しながら傾げる。
「行方不明になったシルフィスの一族、貴女の子『ミィ』よ」
「ミィ…ミィ!本当にミィなの!?」
ラミアと呼ばれる女性はすぐさまヴィヴィアンの方に向かい、そして泣きながらヴィヴィアンに抱き付く。
「ミィ…!」
「いや!アタシはヴィヴィ…ん?」
するとヴィヴィアンは突如匂いを嗅いで、少しばかり唖然とする表情となる。
「この匂い…知ってる、エルシャの匂いみたい、アンタ誰?」
ヴィヴィアンはラミアにその事を聞き、ラミアはヴィヴィアンを見て言う。
「お母さんよ…!」
「お母さん…さん? 何それ?」
ヴィヴィアンはそれに問い、それをサラマンディーネが答える。
「貴女を産んでくれた人ですよ」
サラマンディーネの言葉にキラとアンジュは気づく。
「えっ?てことは…」
「ヴィヴィアンのお母さん?」
「ええ、彼女のお母さんを追って、あちらの地球に迷い込んでしまったのしょう」
その事を聞いてキラとアスランとアンジュは納得し、サラマンディーネはすぐにナーガとカナメに言う。
「皆、祭りの準備を。祝いましょう、仲間が10年ぶりに帰って来たのですから」
それを聞いていたキラ達はただ黙って見つめるのでのあった。
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そして夜になり、アウラの塔で皆が集まっていた。そこにサラマンディーネが儀式用の蝋燭を手に持ち、皆の前に姿を現す。
「サラマンディーネ様よ!」
「サラマンディーネ様ー!」
蝋燭を持っているヴィヴィアンが隣に居るラミアに聞く。
「何をするの?これから」
「サラマンディーネ様のマネをすればいいだけよ」
ラミアがそうヴィヴィアンに言って微笑み、キラ達はその様子を人混みの中で見ていた。
「殺戮と試練の中、この娘を悲願より連れ戻してくれたを感謝いたします」
そう言った後にサラマンディーネは儀式の蝋燭を空へと舞い上げ、それに皆も同じように舞い上げる。
「アウラよ!」
『『『アウラよ!』』』
ラミアも同じように舞い上げ、隣に居るヴィヴィアンも同じように舞い上げる。
その光景をキラとアスランは呟く。
「良い光景だね…」
「ああ、中々めったに見られない光景だ」
「…良かった」
っとアンジュの言葉にキラとアスランはアンジュの方を向く。
「えっ?」
「何がだ?」
「ヴィヴィアンが人間で良かった事よ」
アンジュの言葉を聞いて、キラとアスランは納得した表情をする。
「あ~、そっか…」
「そうだよな」
っとキラとアスランは楽しむヴィヴィアンを見て少しばかり微笑む。
するとアンジュは先ほどとは違って少しばかり不安に思っている事を言う。
「これからどうなるの? 私達、こんな物を見せて、どうするつもり?」
「知って欲しかったそうです、私達の事を」
っとそこにナーガとカナメがキラ達の元に来ていて、カナメがキラ達に話し続ける。
「そしてあなた達の事を知りたいと、それがサラマンディーネ様の願い」
それを聞いたアンジュは振り向いて言う。
「知ってどうするの? 私達はあなた達の仲間を殺した。あなた達も私達の仲間を殺した、それが全てでしょ?」
アンジュがそうナーガとカナメにそう言うも、カナメは頭を横に振る。
「怒り、悲しみ、幸福。その先にあるのは滅びだけです、でも人間は受け入れ、許す事が出来るのです。その先に進むことも…全て姫様の請け売りですが、どうがごゆるりとご滞在下さい…っと姫様の伝言です」
二人は頭を下げて、その場から離れて行く。
「あっそうだった」
っとカナメは何か思い出したかのようにキラの方を向く。
「あのキラ殿、サラマンディーネ様がこの祭りを終えたら会いに来てくださいとおっしゃってました」
「サラマンディーネさんが?」
「はい」
「くれぐれも姫様に無礼の無いようにな」
そう言って二人はその場から離れて行く。
「ごゆるりとだって」
「そうのんびりとしている訳にも行かないんだがな」
そう呟くキラとアスラン、するとアンジュが…。
「帰っていいのかしら」
「「ん??」」
「リベルタスの事を考えると…本当に帰っていいのかなって思い始めて…」
アンジュにその事を聞いたキラとアスランは少しばかり考える表情をして、空に浮かぶ月を見るのであった。