クロスアンジュ 蒼き自由と紅き騎士   作:ライダーGX

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第13話 龍の姫 後編

サラマンディーネと名乗る少女に少しながら困惑するキラ、しかしさすがのキラも困惑しないのは分かるであろう。

何せ彼女達の背中には“ドラゴンの羽と尻尾”があるからだ。

 

サラマンディーネはキラの目線に気付く。

 

「気になりますか?」

 

「えっ?ま、まぁ…」

 

キラはサラマンディーネの発言を聞き、思わず頷きながら戸惑う。

 

「ふふふ、焦らなくても構いませんよ。戸惑いを隠せないのは分かりますが」

 

「姫様、本当にこの男を連れて来る必要があったのですか?」

 

っと後ろに居た青い和服を着た女性がサラマンディーネに問い、それには緑の和服の女性も同じように頷く。

 

「あります、その為にわざわざ“門”を使い、彼を私達の世界に連れて来させたのですから」

 

「えっと…、君達は一体何を?」

 

状況が全く飲み込めないキラは少しばかりサラマンディーネ達に問いかけ、それにサラマンディーネはキラの方を向く。

 

「すいません、まず最初に貴方を無理矢理此処にお連れして、ですがどうしてもあなた、そして向こうに居るもう一人の方に我々が行っている行動の真理を理解してもらいたいのです」

 

「真理?」

 

その事にキラは頭を傾げ、サラマンディーネはそれに頷く。

 

「はい、では私に付いて来て下さい」

 

「ほら立て!」

 

っと何やら青い服の女性はキラを強引に立たせるかのように言い、それにキラは少し戸惑いながらも立ち上がってサラマンディーネの後に付いて行った。

 

キラはサラマンディーネの後ろを付いて行く中で外の廊下に出た所で驚きの光景を目にする。

そこは大型ドラゴン、あのガレオン級とブリック級、そしてスクーナー級のドラゴンが飛び回り、更にそこは宮殿の敷地内である事が分かったのだ。

 

その光景をキラは思わず目にし、それをサラマンディーネは言う。

 

「驚きましたか?」

 

「え…ええ、でも少しばかり文明レベルが低い様な…」

 

「ええ、ここは貴方達が住む世界とは全く別の世界なのです」

 

サラマンディーネの言葉に振り向くキラ、彼女はこの世界に何か詳しいのかと思う。

そしてサラマンディーネの後に付いて行くキラは外に出ると、外で待っていたガレオン級が頭を下げながら待っていた。

 

キラは驚くもサラマンディーネは全く気にせずにガレオン級の頭に乗り、キラに手を伸ばす。

 

「さあ、どうぞ」

 

それにキラは戸惑いつつサラマンディーネの手を掴み、ガレオン級の頭に乗る。

 

そして付き添いの二人は頭を下げ、ガレオン級はキラとサラマンディーネを乗せて飛び去って行く。

 

ガレオン級は二人を乗せたままある場所に向かい、都市の方へと向かう。

そこでキラは驚くものを目にする。

 

それは荒れ果てた都市に壊滅した街、しかもスクランブル交差点や議事堂、まさに日本の物とする物ばかりがあった。

 

「これは…一体どうなって」

 

「驚きましたか。私達の世界は一度滅んでしまっているんです」

 

サラマンディーネの言葉に驚きを隠せないキラ。

 

「どうして?!」

 

「私達の世界は…戦争で完全に滅んでしまったのです」

 

サラマンディーネの言葉を聞いてキラは思わず言葉を失う。

そしてキラ達はあるタワーの場所に到着する。

 

着いたタワーにキラは問う。

 

「此処は?」

 

「ここは『アウラの塔』と私達は呼んでいます。ここは嘗て『ドラグニウム』と呼ばれるのエネルギータワーの制御施設です」

 

「ドラグニウム?」

 

初めて聞くエネルギーにまた頭を傾げるキラ、サラマンディーネはその言葉を頷きながらそのまま中へと案内する。

 

「ドラグニウム、この世界の22世紀末に発見された強大なエネルギーを持つ超対称性粒子の一種です」

 

そしてあるエレベーターの場所に着き、サラマンディーネがそれを操作して下へと向かって行く。

 

「そのエネルギーは世界を照らす筈だったものが、すぐに軍事兵器のエネルギーとして利用され、すぐに戦争へと投入されました」

 

「…(すぐさま戦争への投入…)」

 

その事にキラは思わず過去の出来事を思い出す。

かつて人類はコーディネイターとナチュラルの対立の為に核を使いユニウスセブンを破壊し、そしてそれを妨害するかのようにNジャマーを使って封じ地球を混乱、地球のプラントの戦争を激化させた。

 

それがこの世界に起きていたと知るキラ。

 

「そしてこの世界の環境汚染、民族対立、貧困、格差。どれ一つも解決しないまま人類社会は滅んだのです」

 

「……」

 

彼女が放つ言葉に言葉を失うばかりのキラ、実際にどの種族もすぐに巨大な力を利用し、兵器にする事を優先とする本質がある、しかし間違いだと知るのはいつも後になったり滅んだりして、後悔するばかりであった。

 

「そんな地球に見切りをつけた一部の人間たちは、新天地を求めて旅立ちました」

 

「新天地?」

 

キラはその言葉にどう言う意味なのかがまだ解らず、それにサラマンディーネはキラの方を振り向く。

 

「あの世界、つまりあなた方があの場所、アルゼナルと呼ばれる所のあるあの世界の事です」

 

「っ!?」

 

サラマンディーネの言葉を聞いてキラは一つ気付いた、つまりこの世界とさっきまで居たアンジュ達の世界は二つ存在していたと。

 

「残された人類は汚された地球で生きて行く為に一つの決断を下します」

 

「一つの…決断?」

 

「はい、自らの身体を作り変え、環境に適応する事」

 

「作り変える…っ!まさか!」

 

キラはサラマンディーネの言葉にようやく気が付き、それにサラマンディーネは頷く。

 

「はい、遺伝子操作による生態系ごとです…」

 

「…まさか僕達と同じ様に遺伝子操作を受けていた者が」

 

っとキラの言葉にサラマンディーネは振り向く。

 

「貴方もですか?」

 

「うん、正確には…人口子宮から生まれた…と言うんだけど」

 

その言葉にサラマンディーネは思わず目を見開いた。

そして目的地へと到着したエレベーターは止まり、サラマンディーネは降りて、キラは巨大な空洞が広がる場所を目にして問う。

 

「ここは?」

 

「ここは…アウラが居た場所です」

 

「アウラ?」

 

それにキラは傾げるとサラマンディーネはキラの手を握り、それにキラは思わず見ると目の間にある物が映る。

それは巨大でガレオン級よりも大きい、見た事もないドラゴンだったのだ。

 

「アウラ、汚染された世界に適応する為、自らの肉体を改造した偉大なる子孫」

 

「これが…」

 

「はい、私達は全能であるアウラを助けるべく、あの世界に進出している理由の一つです」

 

それにキラはサラマンディーネの事を聞いて思わず見る。

 

「理由?」

 

「はい、もう一つはあの世界に潜む邪悪なる者を打ち倒し、アウラを連れ去った元凶、エンブリヲを倒す為に!」

 

「エンブリヲ…?」

 

っとキラは初めて聞くその男の名に頭を傾げ、それにサラマンディーネは頷く。

 

「はい、私達の世界を滅ぼし、アウラを利用している奴を私達は許す事は出来ません。その事をあなたに知って欲しかったのです。貴方からは優しさを感じますから」

 

その事にキラは黙り込み、サラマンディーネはキラを連れて宮殿へと戻る。

 

その場に待っていた『ナーガ』と『カナメ』はサラマンディーネの帰りを待っていて、その時キラは気になって居た事を問う。

 

「あの、フリーダム?」

 

「あれなら今私達があずかっております、貴方にはもう少しだけこの場所に居て貰いたいのです、まだ話す事がありますから」

 

そう言ってサラマンディーネはキラを再び部屋に案内し、キラは少しばかりアスランとアンジュの事が心配でたまらなかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

一方アルゼナルの方ではアスランは独房に居るアンジュにキラの事を伝え、それにアンジュは驚きを隠せない。

 

「キラが!嘘でしょ!?」

 

「本当だ。キラはあのシンギュラーの先に飲み込まれてしまい、消息をたった。本当なら俺は今すぐキラを探しに行きたいんだが、あの司令は…」

 

アスランは当時ジルに言われた事にとてもイラだっていた、素直に諦めろっと言われても簡単に諦める訳がない。

 

「…それでアスラン、貴方はどうするの?」

 

「それはこれから考える、アンジュ、お前は出られるまでジッとしていろ」

 

「アスラン、分かったわ」

 

そう言い残してアスランはその場から離れて行き、アンジュはその場に座り込む。

っがそれをジッと見ていたヒルダが言う。

 

「おいおい、あんな奴の言う事を信用するんのかよ?」

 

「当たり前じゃない、私が唯一信用出来る者だもん」

 

「あんな奴のどこがだよ。男って奴は皆自分勝手だよ」

 

「そのぐらいにして、あんまりキラやアスランの事を悪く言うと許さないわ」

 

っとアンジュはヒルダに少しばかり目線を向き、ヒルダは少し気まずそうな表情になってしまう。

 

 

そして翌日、サリアはアルゼナルの上部で何やら花を集めていた。

ある程度集め終えたサリアが紐で花の枝を結ぶ。

 

「あ~、サリアお姉様だ」

 

サリアが呼ばれた方を見ると、幼年部の子供たちとその担当員が居た。

 

「サリアお姉様に敬礼~」

 

子供たちがサリア達に敬礼をし、サリアも子供たちに向かって敬礼をして、子供たちは「サリアお姉様綺麗~」「おっきくなったら第一中隊に入る~!」とそう言って去って行き。担当員も挨拶をして子供たちの面倒を見に行った。

そんな中でサリアは幼い頃の自分を思い出す。自分もかつては当時司令官ではなかったジルの様になりたいと幼い頃からの夢であった……。

 

『私、絶対お姉様の様になる~!』

 

昔の事を思い出しつつも、サリアはそのまま墓地へと向かう。

そしてその場にメイも居た。

 

サリアはメイの元に来て、結んだ花を出す。

 

「これ、お姉さんに」

 

「毎年有難う、サリア」

 

メイがサリアに花の礼を言い、サリアは墓に花を置く。サリアは立ち上がって微笑みを浮かべていて。

それにメイが問う。

 

「どうしたの?」

 

「幼年部の子供たちに、お姉様って呼ばれた。私…もうそんな年頃?」

 

「まだ17じゃん」

 

「もう17よ…、同い年になっちゃった…『アレクトラ』と」

 

誰かの名前を言うサリアは昔の事を再び思い出す。

 

 

それは約10前、アルゼナルの海岸に、後部から煙を上げるヴィルキスが降下して来た。

ヴィルキスはそのままアルゼナルの海岸に着地する、そしてそこに乗っていたのは当時メイルライダーとして戦っていたアレクトラであるジルだった。

 

「アレクトラ!!」

 

そしてアレクトラの元に、当時司令官であったジャスミンがと部下のマギーと一緒に部下もやって来た。

ジャスミンはアレクトラの右腕が無い事を見て、すぐにマギーに命令する。

 

「マギー!鎮痛剤だ!! ありったけの包帯を持ってこい!!」

 

「い!イエス・マム!!」

 

その様子を上のデッキにいる、まだ当時幼かったサリアとメイが居た。

 

「あれは…お姉様の?」

 

サリアが見ている中で、ジャスミンはアレクトラをヴィルキスから下ろす。

 

「しっかりしろアレクトラ! 一体何があった!?」

 

ジャスミンはアレクトラから事情を聞く、しかしアレクトラはある者からメイに伝言があると言うばかりであった。

それを却下するジャスミンは何があったかと事情を問う。

 

ところがアレクトラは突然ジャスミンへと謝る。

 

「ごめんなさいジャスミン、私じゃあ使えなかった…。私じゃあ…ヴィルキスを使いこなせなかった…!!」

 

っと涙ぐんでジャスミンに謝り、それにはジャスミンは何も言えなかった。

 

「そんな事ないよ!」

 

そこにメイとやって来たサリアが居て、サリアはアレクトラの弱さを否定し、最後に「わたしが全部やっつけるんだから!」とアレクトラに向かって言う。

アレクトラはそれにサリアの頭に手を置いて撫でる。

 

 

サリアはその時の事を思い出し、メイはそれに呟く。

 

「全然覚えてないや」

 

「仕方ないわ、まだ3だったもの」

 

サリアは当時3歳のメイに覚えてない事に仕方ないと言い、メイと共に墓地を離れる。

っがサリアはこの時に思った。その時から数年がたち、司令となったジルはサリアにヴィルキスの搭乗を許さない事にかなり不満感が抱いていた。

 

アンジュに出来てサリアに出来ない事は何か…。

サリアは格納庫に付いて、ヴィルキスを見る。

 

「(一体私に何が足りないの…? アンジュと私に一体何が違うって言うの…? あの子に…ヴィルキスは渡さない!)」

 

そうアンジュに悪意を持つサリアはよりヴィルキスの思いが強くなっていくのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてキラは部屋で昨日サラマンディーネが言った事を考えていた。

今の服装はサラマンディーネが用意した和服で、何やらしっかりとした服装であった。

 

「世界…、ドラゴン…、そしてエンブリヲ…、どれも話が分からなくなって来た」

 

そう考えてると何やら外が騒がしく、それにキラは外に出ると、大量のドラゴンが空に向かって舞い上がっていた。

 

キラはそれを目にしてると、そこにサラマンディーネがやって来る。

 

「キラ殿」

 

「っ、サラマンディーネさん。これは…?」

 

「今から私達はアルゼナルに向けて出陣し、『龍神器』のテストしに行きます」

 

その言葉にキラは驚きを隠せない。

 

「な!何で!?」

 

「あそにはアウラ奪還の脅威となる存在が居ます。それを排除してアウラ奪還の道を切り開きます。申し訳ありませんがキラ殿には此処に居て貰います」

 

そう言い残してサラマンディーネはその場を去って行く。

 

「待って!あそこには僕の友達が!!」

 

キラが慌てて呼び止めても、既にサラマンディーネは去って行き、キラはそれにただ棒立ちするしかなかった。

そしてサラマンディーネが操る龍神器、『焔龍號』はナーガ達の龍神器と共に空に舞い上がり、ドラゴン達と共に門へと向かうのであった。

 


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