キラ達がこのアルゼナルに来て約数週間、キラ達はアンジュ達が居る第一中隊を見て疑問に思った事があった。
それはヒルダ達がアンジュに対し戦闘中攻撃を仕掛けていると言う事だ、アンジュはそれを知りながらも全く気にせずにドラゴンを倒していた。
戦闘中に隊長であるサリアはアンジュに叱るばかりでヒルダ達に全く注意をしなかった。その事にキラとアスランはどうも気になっている。
「アスラン…」
「分かっている、あのサリアがアンジュばかり叱っているのには俺もそろそろ言おうと考えていた所だ」
そうアスランはキラに言ってその場を離れて行き、アンジュに叱っていたサリアの元に向かう。
一方でサリアはアンジュに命令違反の事で問い詰めていた。
「アンジュ!貴女これ以上の命令違反をすると!」
「銃殺でも処刑でも好きにすれば?」
そう言ってアンジュはその場から離れて行き。サリアはアンジュの命令無視にイラつきを溜まりつつあった。
そこにアスランがやって来る。
「おいサリア、少し話しがある」
「何よ…」
「お前、どうしてアンジュばかり攻めているんだ。戦いの様子…明らかに他の隊のメンバーがアンジュに攻撃を仕掛けていたぞ」
「…それが何?貴方には関係ないわ」
それを言っただけでサリアはその場から去って行き、アスランは彼女を引き留めようとする。
「待て!まだ話は!」
「その辺にしろ」
後ろから声を掛けられたアスランは振り向くと、そこにジルが居た。
「これ以上の介入は無駄だ。部隊の問題は隊長であるあいつの務めだ」
「…俺にはどうもそれを無視しているかに見えますが」
「お前の思い込みだ、後の事はアイツの仕事だ」
ジルはそう言ってその場から離れて行き、アスランはその事にどうも納得行かなかった。
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そして翌日、食堂でキラとアスランはなんとか稼いだお金で食事を取っているとエマが何やら叫んでいた。
「ありえないわ!人間がノーマの使用人になるなんて!」
エマはアンジュがモモカを買い取った事にまだ納得していない様だった。
「ノーマは反社会的で無教養で不潔で、マナが使えない文明社会の不良品なのよ!?」
「はいはい」
アンジュは空になった器を置き、モモカが次の食事を差し出す。
「モモカさん! あなたはそれでいいの?!」
「はい!わたくし幸せです!」
満面な笑顔で言うモモカにエマは思わず呆れかえるのだった。
それを見ていたヴィヴィアンは飲み物を飲みながら言う。
「良かったねモモカン、アンジュと一緒に居られて」
っとその中でエルシャがため息をする。
「? どしたのエルシャ?」
「もうすぐフェスタの時期でしょ? 幼年部の子供たちに色々と送ろうか迷ってるんだけど…」
エルシャが自分の通帳を見て苦笑いしながら言い、それにサリアが聞く。
「アンジュのせい? 何とかしなくちゃ…」
「どんな罰でも金でなんとかするだろうねアイツ…聞きやしないさアンタの命令なんてさ」
アンジュの事を考えているとヒルダがサリアに何やら嫌みそう言い放って。
「何が言いたいの?」
「舐められてるんだよアンタ。ゾーラが隊長だった時はこんな事なかった筈だけどね現隊長さん?」
挑発行為の様な発言に聞いていたナオミがヒルダに向かって言う。
「ちょっとヒルダ、そこまで言わなくてもいいじゃない」
「あんたは黙ってな」
「そんな…!」
全く耳を貸さないヒルダにナオミは困り果て、嫌な空気を感じたのかサリアがその場を立って、食堂を後にする。
その様子をキラとアスランは顔を合わせながら少々困る。
「困ったね…」
「アンジュもそうだがあいつもだ…、どうにかしないとな…」
その事を考えるキラとアスラン。
そして翌日…。
「風邪?!アンジュが?」
第一中隊のヴィヴィアンがアンジュが風邪を引いた事に驚き、共に居たキラとアスランはその事に顔を合わせる。
「ええ、でもアンジュが居なくても隊の訓練は続けるわよ?」
「そう言えいやあ休んだら罰金が食らうんだっけ?」
「100万だっけな」
ヒルダが言ったその金額にキラとアスランは思わず驚きを隠せない。
「(100万って…)」
「(いくら何でもそれは…)」
いくら風邪を引いたぐらいで100万の罰金を出されることに納得いかないキラとアスランはすぐさまジルの元に行き、それをサリアは横目で見ていた。
そしてキラとアスランはジルが居る執務室に到着し、中に入ってジルに問いかける。
「失礼します」
「どうした、お前たちが来るとはな…」
「あなたにお話があって来ました。隊員の風邪の件に付いてですが、これは余りにも酷すぎるのでは」
「それはお前たちが気にする事じゃない。お前たちは何時からこのアルゼナルの管理役となった? お前たちはただの客だ、余計な心配事は無用だ」
その事に流石にキラとアスランは納得が行かずにいた、いくら客でも風邪ぐらいで罰金まで取られるのは余りにもやり過ぎだからだ。
「話は終わりだ。さっさと出て行け」
「待って下さい、まだ話は」
「終わりだ、行け…」
話を強制的に終わらせるジルに対しキラとアスランは納得しない表情をし、そのまま出て行くしかなかった。
二人が出て行ったのを確認した後、部屋の側で隠れていたジャスミンが出て来てジルに話しかける。
「ジル、アンタも流石に言い過ぎじゃないかい」
「部外者にあれこれと言われる筋合いはない、それに“人間”に我々を理解する奴などいない。あいつ等も例外ではない。利用対象である奴等でもな」
「(…あやつ等は他の違うと思うけどね)」
キラとアスランの事をそう思いこむジャスミンであった。
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アンジュが風邪を引いて数日間、ドラゴンの出現により第一中隊出撃が出たが、当然アンジュは出られずにいた。
そんな中で部隊の雰囲気が良くなったと思っているサリア、そんなサリアをあまりキラとアスランはよく思っていない。
そんなにアンジュが居なくて良いのか?
この思いはキラとアスランの心に引っかかってしょうがなかった。
そしてまた次の出撃にアンジュ無しの出撃が入った。
キラとアスランはこの際にアンジュの部屋に向かった。
その頃アンジュはまだ熱があって、身体が言う事を効かなかった。
アンジュの状態を見たモモカは扉の前で立つ。
「行けません!アンジュリーゼ様!お体を休めないと!」
「アンタを…ハァ…養うのに…ハァ…お金が…必要…ハァ…なの」
っとそう言った時に思わず膝を付いてしまう。
「ああ!アンジュリーゼ様!」
それにモモカは慌てて支える。
その時に扉が開いて、モモカが振り向くとキラとアスランが入って来た。
「あなた方は…」
「キラ…アスラン…」
「アンジュ、無理しなくて良いから、後は僕達に任せてくれない?」
「えっ…?」
頭の中が呆然とするアンジュはキラの言葉を聞いて、意味が分からなかったがそれをアスランが付け加える。
「お前の代わりに出撃してくる。その身体で動けないだろう」
「で…出来るの?」
「あの司令に頼んでくる。だから寝ていろ」
そう言ってキラとアスランはアンジュの部屋から出て行き、アンジュはそれを見つめるだけだった。
そして司令室でジルが第一中隊の出撃を見送った頃、キラとアスランが司令室にやって来る。
「失礼します」
「何だ」
「司令、お願いがあります」
その事にジルは目線を細めながら見て、エマはそれ何かと感じつつも見ていて、オペレーターの三人娘たちもキラ達の方を見る。
「俺達に…出撃許可を下さい」
「え?…ええっ?!」
エマはその事に驚き、当然パメラ達も驚く。
ジルは煙草を吸い、キラ達の方を向く。
「アンジュの事か?」
「このままじゃああいつは外に出て、弱った体で出撃してしまいます。俺達が代わりに出て、ドラゴンを撃退して行きます」
その事にジルは再び煙草を吸い、そして灰皿に煙草を押し付け消す。
「良いだろう、出撃を許可する」
「はっ?!本気ですか!?」
「本気だ、丁度良い機会だ、お前たちのあの機体…見て置きたいからな」
「ありがとうございます、では」
そう言ってアスランは礼を言い、キラと共に司令室を出て立ち去って行った。
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そしてキラとアスランはストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの元に行き、システムを起動させて、コックピットでパイロットスーツに着替えてヘルメットを被りバイザーを下ろす。
「アスラン!」
「ああ!行くぞキラ!!」
キラとアスランが乗るストライクフリーダムとインフィニットジャスティスはアルゼナルから飛び出して行き、VPS装甲を起動させてサリア達が向かった戦場へと向かう。
その頃サリア達第一中隊は巨大な新種のドラゴンと対決をしていた。
しかしそのドラゴンは重力を操り、サリア達を高重力場に引きずり込み、押し潰そうとしていた。
「なっ!?」
「う…動けねえ…」
「一体何なの…コレ!? 助けて!ヒルダ!ロザリー!」
そんな中でサリアはこの状況をどうするかを考えていた。
「(どうする…、部隊の全滅だけは避けなければいけない、最悪我々だけでも機体を捨てて脱出…いえ、そんな事をすればこの重力場に!どうすれば…!)」
厳しい決断を迫られていると、一発のビームが大型ドラゴンに向けて放たれる、しかし重力影響で軌道が僅かにずれて、それにドラゴンは回避する。
「「「!?」」」
サリア達は振り返ると、空からストライクフリーダムとインフィニットジャスティスがやって来て、キラがビームライフルで撃ったのだ。
「あれは…」
「おお!!キラ!アスラン!!」
サリアはキラ達の登場に唖然し、ヴィヴィアンは喜びながら見る
そんな中でキラはビームを外した事に気になって居た。
「外れた?」
「キラ、あのドラゴンから高重力場が出ている、恐らくその影響でビームがずれたんだ」
「成程、それで…」
『あなた達!どうして!?』
キラ達の通信にサリアが入れて来て、やって来た事に問うとキラがそれに答える。
「僕達はアンジュの代わりに来たんだ、彼女何かと出撃しようとしてたから」
「後は俺達がやる、お前たちは下がってろ!」
っとそう言って通信を切り、それにサリアは慌てて言う。
「ちょ!ちょっと待ちなさい!こっちに来たら重力が!!」
そう言うサリアの言葉は全く届かず、キラとアスランはドラゴンが放つ重力場に突入する。
キラ達のMSは高重力でも全く怯むことなく飛び続け、ドラゴンの角から高重力が発生しているのをアスランが見つける。
「キラ!あのドラゴンの角から高エネルギーが出ている!」
「あそこから重力場が!分かった!!」
キラはMMI-M15E クスィフィアス3レール砲を展開し、ドラゴンの角にめがけて放つ。
レール砲はそのままドラゴンの両角に直撃し、ドラゴンの高重力場は消える。
そしてアスランが一気に急降下して、ビームサーベルをアンビデクストラス・ハルバードにして、ドラゴンの身体に切り刻みながら地面に着地する。
すぐにファトゥム-01のMA-6Jハイパーフォルティス ビーム砲を放ち、ドラゴンの腹部を狙い撃つ。
最後にキラがMGX-2235 カリドゥス複相ビーム砲をドラゴンに向けて放ち、アスランは一気に急上昇で退避し、ドラゴンの身体を貫いて、大爆発していった。
「凄い…倒しちゃった」
ナオミはキラとアスランが数秒でドラゴンを撃退した事に唖然としていた。
その様子をサリア達は騒然とし、ヴィヴィアンは大興奮していた。
キラとアスランはその様子をジッと見ていたが、キラは何故か心を痛く感じていた。
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大型ドラゴンを撃退し、基地へと帰投した皆、今回はキラとアスランが活躍していたが、二人は皆に戦闘配給を全て分けていた。
「うひょお~~!こんな大金!夢みたいだ!」
「ゆ…夢じゃないよ!」
ロザリー達は山積みにされたキャッシュを見て顔を綻ばせていた。
そして今回現れたあの新型ドラゴンはフリゲート級と新たに認定された。
そしてアンジュの方は…。
「…ちょっと、少し少ないんだけど」
「ああ、その事なんだが…どうも休んだ奴に大量に渡すのはおかしいと言われてな。今回はそれで我慢してくれ」
「…分かったわよ」
アンジュはしぶしぶと了解し、それにキラは苦笑いしていた。
サリアはそれに少々ため息を付いた後、コホンッと咳払いするサリア。
「どう?これで満足?」
サリアはヒルダ達にある事を言う。
「色々あったけれど私達はこのチームでやっていかなくちゃいけない。アンジュを後ろから狙うの…もうやめなさい」
その事に思わず身体をピクリと震えるロザリーとクリス。ヒルダは何ともない表情をしていた。
「アンジュも報酬独り占めやめなさい。アンタは放っておいても稼げるんだから。これは隊長命令よ」
「へっ、誰もアンタの言う事なんか聞きやしないって『良いわよ別に』!?」
「私の足さえ引っ張らなければね」
っとアンジュは予想外に肯定する。
「私も良い…かな」
いつも隠れがちなクリスがそう言う。
「ま、まぁ~…アタシはしばらく金がある内は‥‥良いかな」
クリスに釣られるようにロザリーも続けて言う。
「アンタ達何言いくるめられてるのよ!?」
「そ、そういうワケじゃないけど…」
「チッ…! 裏切り者」
唯一一人だけヒルダは納得できないのか立ち去る。
「ヒルダ…」
ロザリーはヒルダが立ち去ってしまったのを見て少し申し訳なさそうにしていた。
「それじゃあ!行きましょうか!」
っとエルシャ達はアンジュを連れて何処かに行ってしまう。
それにキラ達は顔を見合う。
「何処に連れて行くんだろう?」
「さあな」
アスランは手を上げてそう言い、キラは頭を傾げるのであった。
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ある場所、ある玉座で数名の女性たちが何やら話し合っていた。
「何たること!偽りの民達があのような物を持っていたとは!」
「このままでは我らの真の目的が…!」
何やら悩み込んでいる女性たち。っとそこで一人の女性が…。
「皆さん、私に少しばかりお願いしてもよろしいでしょうか」
「何か策があるので?『サラマンディーネ』」
サラマンディーネと呼ばれる女性は皆の言葉に頷き、皆の方を見ながら言う。
「あの者達…私達が今何をしているのかを話そうと思っています」
「何ですと!?」
「正気なのですか!?」
それにサラマンディーネは頷く。
「はい、恐らくあの者達は自らやっている行いの事に気付いていない。話せばきっと分かる筈、ですので…私はこの蒼い翼の者を此処に連れてこようと思います」
サラマンディーネが見ているのは、大型ドラゴンを撃退したストライクフリーダムに乗るキラの映像だった。