D×D magico   作:鎌鼬

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休暇

 

 

天使の暴走によって出来上がっていた研究所のカチコミを終えた俺は“牙”のメンバーと助けた子供たちと共に神の子を見張るもの(グリゴリ)に戻る。子供たちはこれから検査が待っていて家族がいるものはそちらへ、いないものはジイさんが作った孤児院に送る予定なのだが……前者は多分ないだろう。悪魔なら言葉や物で誘導して神器使いや異能持ちを転生悪魔にしたり、堕天使なら名前だけを神の子を見張るもの(グリゴリ)の所属にして神器や異能の扱い方を教えたりするが教会はエグい。

 

 

まずは勧誘をする、そして勧誘が断られた場合マトモなやつなら監視をつける程度で終わるのだが地位や権力に固執している奴なら家族を異教徒やはくれ悪魔の仕業に見立てて殺害、その後教会関係の孤児院に送りつけてエクソシストに仕立て上げたり研究所に送ったりする。

 

 

そのせいで基本的に研究所へのカチコミで助けた子供は孤児院送り、一人立ちして孤児院から出る者もいるがそれ以上に入る者の方が圧倒的に多いのだ。最近ジイさんが新しく孤児院を設立するか悩んでる。

 

 

俺は子供たちのことをクラウスに任せてアザゼルの元に向かう。手には今回のカチコミのことに関する報告書と研究所で手に入れた研究成果の資料。アザゼルは報告書よりも当事者からの口頭での報告の方を重視しているのでそれを兼ねてこれらを渡しに行くのだ。

 

 

「アザゼル〜帰ったぞ〜」

 

「あぁ、ヒサメか。ご苦労さん」

 

 

何やら図面らしき物を引いているアザゼルがいた。アザゼルの最近の目標は人工的に神器を作り出すことらしい。まぁこちらとしてはマトモに仕事をしてくれれば文句は言わない。

 

 

「これ今回のカチコミの報告書と研究所で手に入れた資料。前々から思ってたけど今回のカチコミで確信したわ。宗教家マジキチ」

 

「どれどれ……うへぇ、マジかよ……良くこんな胸糞悪い研究してられるな」

 

神の為に(for god)神の為に(for god)神の為に(for god)!!神様なんて免罪符を持ってるから宗教家がヤバいんだよ。あぁ天上におわす我らが父よ!!貴方が為に行う我らの行為を許し給え!!ってね」

 

「相変わらず口が汚いが実際にそうなんだよな……今回の件はミカエルに抗議するぞ。その時に呼び出されるかもしれないから一応気に留めておけ」

 

「あいよ。そういやタレコミ言ってきた奴どうなった?」

 

「あぁ、確か……バルパーだったな。あいつは一応神の子を見張るもの(グリゴリ)の庇護下に置いてある。元々教会でも技術屋か研究者をしてたみたいでな、こっちの研究にも興味津々の様子だったぞ」

 

 

それを聞いて安心する。今回の件でタレコミをした者は教会から異端者認定されることになる。自分の地位を投げ捨ててでも子供たちを守ってくれた奴を見捨てるのは心苦しいからな。

 

 

「それを聞いて安心したよ。んじゃ、俺は予定通りにオフってことで」

 

「今日から三日だったよな?了解了解、緊急事態でも無い限りは呼ばないし“牙”の連中も休みにしてやるよ」

 

「……思えば神の子を見張るもの(グリゴリ)に入ってから初めてのマトモな休みなんだよな……」

 

「あぁ……コカビエルに扱かれてた頃は休みの日は爆睡してたし、“牙”を設立してからも半日休暇しかやれなかったからな。それに関しては済まんかった」

 

「給料良いから耐えられるけどよ、これで無給とかだったら反逆待った無しだったな」

 

「流石にそこら辺はしっかりやらせてもらってるさ。じゃ、休暇を楽しんで来いよ〜」

 

 

資料に目を向けながら手を振るアザゼルに手を振り返しながら俺は部屋から出る。そして研究所でのカチコミで俺の護衛に回っていた夜叉を呼び出して付けていた鬼面を取る。

 

 

「つう訳で今から三日は休暇だ。ユーリ、お疲れ様」

 

「お疲れ、様……」

 

 

鬼面の下から現れたのは銀髪碧眼の少女だった。彼女はユーリ、そしてその幼い見た目とは裏腹に隠密と暗殺に特化した戦闘スタイルで通常の戦闘でもあの研究所で見せた短剣投擲で戦える上にユーリの型に嵌れば最上級の悪魔や天使でも殺せるというトンデモロリータである。

 

 

「俺は人間界に行くつもりだけどユーリはどうする?」

 

「ついて行って、良い……?」

 

「良いぞ?ただ向こうで泊まるつもりだから準備して来な」

 

「分かっ、た……」

 

 

俺の言葉に嬉しそうにそう返すとユーリトテトテとでも効果音が付きそうな歩みで去っていった……あー癒されるわ〜

 

 

「っと、俺も準備しなきゃな」

 

 

絶対に他の奴に見せられない顔になっていたのを直して俺は自分の部屋へ人間界に向かう準備をしに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さって、到着しました人間界!!」

 

「到着……」

 

 

予め神の子を見張るもの(グリゴリ)が用意していたセーフハウスから人間界に転移する。家から外に出れば広がるのは住宅街と青空、基本的に“牙”として活動するときは夜だから何気に転生してから初めて青空を見た気がする。

 

 

「どうする、の……?」

 

「とりあえず飯食ってから買い物に行こうか。俺もユーリも支給された服しか無いからな〜」

 

 

アザゼルから人間界用の服として俺はカーゴパンツとTシャツにパーカー付きの上着、ユーリはワンピースを支給されているが休暇らしい休暇を今日まで貰っていなかったのでこれだけしか無い。娯楽品と服が欲しいところだな。明日明後日は観光みたいなことをしよう。

 

 

「それじゃ、行こうか」

 

「うん……」

 

 

ユーリに手を差し出すと迷わずに握ってくれた。人間界では一応俺たちは兄妹として振舞う事を決めている。そうした方が説明が楽だし、俺は身体は成人になってるから少女を連れ回している大人の構図が出来てしまいタイーホ待った無しになるからな。

 

 

そんな感じで俺たちは久方ぶりとなる人間界で休暇を過ごす事にした。

 

 

 





〜神器使い
一番綺麗なのは堕天使、監視を付けたりしているが本人の意思を尊重している。二番目は悪魔、本人に選ばせているが誘惑や誘導しているので若干黒い。ワースト天使、一応勧誘はするが断られたら実力行使で無理矢理教会の所属にしている。ミカエルや良識派はこれに頭を悩ませている。

〜孤児院
“牙”が設立されてから孤児院に送られる子供の数が激増、コカビエルは新しく孤児院を建てるか悩んでいる。

〜バルパー
今回の研究所の内容についてタレコミをして来た人物。この件で彼は異端者認定されているので神の子を見張るもの(グリゴリ)で保護する事になった。いったいどこの聖剣狂いの司教なんだ……

神の子を見張るもの(グリゴリ)ブラック
コカビエルに扱かれてた頃は休みの日は爆睡、“牙”が設立されてからは半日休暇で神の子を見張るもの(グリゴリ)に待機していることが当たり前だったのでヒサメにとって初めてのマトモな休みになる。休暇は少ないがその分給料が良いらしい。

〜ユーリ(10歳)
“牙”の時は夜叉を名乗っている銀髪碧眼の少女。ヒサメ曰く型に嵌れば最上級の悪魔や天使でも殺せるらしい。基本無表情だが親しい付き合いの人は喜怒哀楽の判断が付くらしい。“牙”の初任務の際にヒサメに保護されて、それ以降ヒサメに懐いている。神器持ち。


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