D×D magico   作:鎌鼬

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すいませんが時間を飛ばして十一年後です。

あと若干性的な描写が入ります。




暗部

 

 

「「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

 

物騒なことを叫びながら両側から切り掛かって来る教会所属の退魔師ーーーいわゆるエクソシストの光の剣を後ろに一歩下がってかわし、避けられたからと追撃してこようとしている二人の喉元に手刀を叩き込む。それだけでエクソシスト二人の首は宙に舞い、地面に落ちた数秒後に身体が崩れ落ちる。

 

 

俺がいるのは教会……天使たちの陣営であるとされている研究所。俺はアザゼルからの指令でここに襲撃を掛けている。何故堕天使総督であるアザゼルが動いているかというとタレコミがあったからだそうだ。無論、それをそのまま信じるわけでは無く裏を取ってみれば真っ黒。そこでコカビエルのジイさんから合格を貰って神の子を見張るもの(グリゴリ)に事実上所属している俺にこの研究所のカチコミ指令が来たわけだ。

 

 

アザゼルはミカエルがこんなことを許すはずが無い、下の者が暴走しているのだろうと言っていたが俺からすれば部下の把握を仕切れていないミカエルにも罪がある。それはアザゼルにも言えることなのでその事を言ったら言葉詰まりながらも部下との交流を考えていただけマシだと言えるかもしれない。

 

 

さっき殺したエクソシストで研究所内で感じられる気配は奥で固まっているものだけ、研究員たちは俺のカチコミと同時に逃げ出したらしいが外でガン待ちしている俺のお仲間に捕まっているだろう。

 

 

一番奥にあった電子ロックのされている扉に手を捩じ込んで無理やり開く。するとそこにはーーー裸のままでガラスケースの中に閉じ込められている子供たちの姿があった。種族は人間から始まり悪魔や堕天使、それらの人間とのハーフ、悪魔と堕天使のハーフまで幅が広い。タレコミとアザゼルの裏を取った内容が本当ならここでは神器の研究と悪魔と堕天使への対抗手段が模索されていたはずだ。つまり教会関係者からすれば悪魔や堕天使は滅するべき不倶戴天の怨敵、それらを絶滅させることこそが目的で子供でも悪魔や堕天使には慈悲をくれてやるつもりは無いとのことだ。

 

 

やっぱり宗教ってキチってるよな。

 

 

「あーあーこちらヒサメこちらヒサメ、“子羊たち”を発見した。今からそちらに送るが見た感じ衰弱しているのでそこのところよろしく」

 

『こちらクラウス、了解した。医療班のスタンバイは完了している。いつでも受け入れ可能だ』

 

 

無線機を使って外にいる正義の味方を目指していそうな声が聞こえてくる。向こうの準備が整っていると分かると即座に黒龍の爪刃(アブソリュート・エッジ)を発動させてガラスを斬る。殴っても壊せるのだがそうすると破片が中に行くから子供たちに被害が出てしまうからな。

 

 

呼びかけて転移用の魔法陣へと入るように指示するが子供の目は誰もが死んでいる。反応も鈍いので一人ずつ魔法陣の上に連れて行って外へと送る。

 

 

だが、俺が助けているのは助かる見込みのあるものだけ。なるべく助けてやりたいのだが中には生きているよりも死んだ方が救われる者もいるのだ。

 

 

「あーーーあーーーうーーー」

 

 

それがこいつだ。ガラスケースの中では無く鉄格子の部屋の中で閉じ込められていた子供。だがその姿はもう人の形をしておらず肉塊にしか見えない。子供と断言出来たのは溢れる声が幼かったからだ。もう心が死んでいる。

 

 

「……ヴリトラ」

 

『あぁ』

 

 

腕から刃物を生やして数度振るう。抵抗も無く肉塊となっていた子供はバラバラになり、黒炎に包まれて灰に変わる。

 

 

「願わくば、来世に幸多からんことを祈る……安らかに眠れ(Rest in peace)

 

 

切り刻まれて燃え尽きた子供に決まり切った祈りを捧げる。この世界に覇道神がいないことは分かっているが黄昏の女神の目に止まって輪廻転生の理の中で来世でこそ幸せになって欲しい。

 

 

「ここで最後か」

 

『油断するなよ……ここが一番ヤバい』

 

「それくらい理解出来てるよ」

 

 

鉄格子の部屋から出て再奥にある部屋に向かう。この研究所に来た時から感じていたのだがこの部屋が一番ヤバいと俺の直感が警鐘を鳴らしているのだ。

 

 

「あぁ……テメェ、教会の狗じゃねえな……」

 

 

そこにいたのは白髪に赤目、いわゆるアルビノの特徴を持っていた十二歳位の少女だった。全裸なのはこれまでの子供たちと変わり無いが過剰なまでに鎖に拘束されていて、しかも性器からは赤と白の液体が溢れている。ここまで腐ってると怒りを通り越して呆れるしか出来ないな。

 

 

「毒吐けるなら大丈夫そうだな。俺はヒサメ、神の子を見張るもの(グリゴリ)に所属している。“牙”の隊長って言ったら分かりやすいか?」

 

「あの違法研究している施設強襲しまくってる?やっふぃ、僕チンラッキー」

 

「名前は言えるか?あと何やられてた?」

 

「フリード・セルゼン、元エクソシストさ。突然司教に呼び出されたと思ったら薬決められてこの有様、研究員たちが言うには崇高な研究の礎になれることを喜べだとよ。あと時たまレイプされてた」

 

「やっぱり宗教ってキチってるな、神の名前を使えば何しても許されると思ってやがる」

 

 

宗教がキチってることを再認識しながらフリードを拘束している鎖を解いて上着をかける。流石にいつまでも裸っていうのは悪いからな。

 

 

「ひとまずお前の身柄は神の子を見張るもの(グリゴリ)で預かる。そこで一通りの検査を受けてからこれからの身の振り方を考えると良い」

 

「……やっべぇ、堕天使の方が天使よりも天使してる風に見える。これからはアザゼルを信仰しなきゃ」

 

「歩けるか?入り口の方に転移用の魔法陣を設置してある」

 

「あー……ちょっと無理ですわ。マトモなモン食わせてくれなかった上にこっちのことを考えないで手荒くやられて足腰ガクブルですわ」

 

「ファッキン過ぎるだろ……しゃあねぇな」

 

「うぉっ!?ちょ!?」

 

 

歩けないとの事だったのでフリードを横抱き……俗に言うお姫様だっこで持ち上げる。軽いなこいつ……子供だってことを考慮しても軽すぎる。おそらくフリードが言ってた通りにマトモなものを食べていなかったことが原因だろう。

 

 

「ちょちょちょ!!待った待った!!これは恥ずかしいって!!」

 

「餓鬼が恥ずかしがってるんじゃねえよ。それにこれの方が楽で良い」

 

 

本当に恥ずかしいのかフリードは顔を赤くして暴れているが弱々しい。軽度だが衰弱しているようだな……早く連れて帰った方が良いだろう。

 

 

そう思いこの部屋から出ようとしたが……突然に床が崩れて光の槍が飛び出してきたことでそれは叶わなかった。手はフリードを抱えているので使えない。なので蹴りで槍を砕き、重力に任せて落ちて着地する。

 

 

「穢れた堕天使風情が良くも我が崇高な計画を台無しにしてくれたな……!!」

 

 

そこにいたのは三対六羽の翼を広げた天使。その顔は憤怒に歪んでいて足元には移動用だと思われる魔法陣があった。

 

 

「ガキを犠牲にするのが崇高な計画?何それ?新しいギャグ?天使ジョークなの?そんなことをしてて良く生きていられるね御宅、俺だったら恥ずかしくて自殺してるよ」

 

「ふん!!悪魔や堕天使のガキを使って何が悪い!!これでミカエルよりも上に立てると思っていたのに……!!貴様ぁ!!」

 

「嫉妬かよ、大罪の一つだぜ?よく堕天しないな」

 

 

まぁアザゼルやジイさんが言うには聖書の神はすでに死んでいて、それまで聖書の神が運営していたシステムとやらに狂いが生じているらしい。ミカエルが神に代わってシステムを運営しているらしいがそれでも全てをカバー出来るわけじゃないらしいし。

 

 

「死ーーー!?」

 

 

天使が光の槍を投げようとする。フリードはそれに怯えて身を縮こまらせるが俺は自然体のままだ。何せーーーこいつがいるからな。

 

 

「な……なんで……」

 

 

驚愕の声を出したのは天使。それはそうだろう、あいつは自分が光の槍を投げてフリード諸共俺を串刺しにするイメージをしていたはずだ。だが現実はそうなっていない。突然空中から短剣が現れて天使のことを串刺しに、そしてそのまま昆虫の標本みたいに壁に磔にしたのだから。

 

 

「……」

 

 

その原因は俺の前に現れてた鬼面。影法師のように虚空から突然現れた鬼面はゆらりと俺の前に立って僅かだが怒気を漏らしている。

 

 

「やっぱりお前が黙ってないよなぁ夜叉よぉ。肉親を兄弟を異教徒だからと教会連中に殺されたお前ならよぉ」

 

「……」

 

「おの、れ……神の……敵め……!!」

 

 

夜叉は黙りのままだが視線は天使からは離れず、天使は天使で磔になっているのに憎しみの籠った目で俺たちのことを睨んでいる。

 

 

「あとはお前に任せる。好きにしろ」

 

「……御意」

 

 

夜叉に天気のことを任せると俺は跳んで上の部屋に戻る。転移用の魔法陣に向かう途中で天使の叫び声が聞こえたのだが気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったか、怪我は無いか?」

 

「第一声が心配の声だとありがたいね。俺は大丈夫、あとこいつは衰弱してるから医療班に連れて行く」

 

「承知した」

 

 

俺が転移用の魔法陣を使って外に出ると眼鏡をかけた偉丈夫ーーークラウスが声をかけてきた。クラウスは俺と別の世界から来たらしい転生者で、ジイさんに助けられた恩を返す為に神の子を見張るもの(グリゴリ)に所属している。

 

 

クラウスが走って行ったのを見届けて俺は医療班のテントに向かって歩き出す。

 

 

「……なぁ、ヒサメさん、だっけ?」

 

「ん?どうした?どこか痛むか?」

 

「いや、そうじゃ無いけど……どうして堕天使なのにこんなことをしてるの?」

 

「どうして、か……」

 

 

フリードの疑問に俺はジイさんのことを思い出していた。ジイさんってば顔は悪人面で訓練にも一切手加減とかしない癖に根は優しいし、子供みたいな願いを持ってるからな。

 

 

「自己満足が半分、残り半分は……ジイさんの手伝いがしたかったからだな……ジイさんってば顔恐ぇのに顔に似合わずに優しいから、それの手伝いがしたいと思ったんだよ」

 

「ふぅん……」

 

 

それだけ聞くとフリードは疲れたからなのか目を閉じて眠り始めた。

 

 

フリードの寝顔を見ながら俺はジイさんの願いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神の子を見張るもの(グリゴリ)の幹部であり、聖書に名を残すほどの長い年月を生きている堕天使コカビエル。

 

 

彼の願いーーー子供たちが笑っていられる世界を作りたいという思いを、俺は綺麗だと思ったから手伝っているんだ。

 

 

 




〜ヒサメ(15歳)
コカビエルに鍛えられてお墨付きを貰うほどに成長。神の子を見張るもの(グリゴリ)で新しく設立された“牙”の隊長に着いている。イメージはmagicoのファウストで毛先が黒い青髪。

〜研究所
神器の研究と悪魔や堕天使を効率的に殺す手段を研究していた。その過程で実験体に使っていた子供を使って生物兵器を作ろうとしていたが内部からのタレコミで“牙”の目に止まり壊滅させられる。

〜牙
神の子を見張るもの(グリゴリ)で新しく設立された部隊。目的は迫害されている神器使いや凡そ人道的な扱いをされていない子供を保護すること。そこには種族の差別は無く、保護した子供はコカビエルぎ私財で設立した孤児院に預けている。

〜ヒサメの取捨選択
少しでも助かる見込みがあるのなら極力助けるようにしているが今回のように完全に精神の壊れたものや人としての生が望めないものは殺すことで助けている。だが所詮それはヒサメの自己満足であり、そのことを罵倒されても受け止める覚悟はある。

〜フリード・セルゼン(12歳)
原作のマジキチ神父、この小説ではフリードちゃん。エクソシストとして働いていたが司教に一服盛られて研究所送り。そこで怪しい施術を受けさせられている。

〜天使
一応上級天使。ミカエルに嫉妬していて、ここの研究によって自分がミカエルよりも上に立てることを信じてやまなかった頭の中お花畑な天使。なお磔にされたあとに拷問されて死んだ模様。

〜夜叉
鬼面を付けた人物。“牙”の一員で隠密と暗殺に長けていて今回はヒサメの護衛を担当していた。家族が進行していた宗教が教会から邪教認定されて殺された過去を持っている。教会関係者絶対殺すマン。

〜クラウス(34歳)
眼鏡をかけた偉丈夫。ヒサメとは別の世界から来た転生者で、過去にコカビエルに助けられた恩を返す為に神の子を見張るもの(グリゴリ)に所属している。“牙”の副隊長でもある。イメージは血界戦線のクラウス・フォン・ラインヘルツ。

〜コカビエルの願い
子供が笑っていられる世界を作りたい。ヒサメの父親のピースの平和主義はここから来ている。綺麗なコカビエルはお嫌いですか?


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