D×D magico 作:鎌鼬
フリードと結ばれた翌日、疲れて眠っていたフリードを起こしてから一緒に朝食をゆっくりと楽しんで拠点に戻った。戻った時には丁度皆が準備を終えていたので腹ごなしもかねて〝牙〟で採用しているトレーニング方法をする事にした。
その方法はーーー二十四時間ぶっ続けで俺と一対一で戦う事。休憩時間も食事時間も睡眠時間も無しで。こいつらは素材は良いのだが圧倒的なまでに経験が無い。例外は甘粕と匙だが、匙に関しては前々から面倒を見ているので除外、甘粕に関しては身体が追い付いていないので経験を生かせていなかった。そのため経験と甘粕の齟齬を無くすためにひたすらに戦う事にした。
だが超越者である俺がまともに戦えば指先一つどころか身動ぎでこいつらは粉微塵に砕け散る事間違い無しだ。そこでしたのは力を極限まで削ぎ落とすこと。削いで削いで、超越者じゃない者の上位者位にまで落として、存在を分割して戦ってやった。
一誠、匙、甘粕に関しては殆ど定まっているのであとは完成させるだけ。木場祐斗と塔城小猫は自分の戦い方を決めさせて、それを伸ばす様に指示をしておいた。
問題だったと言えるのは誠二だった。これまでまともに喧嘩もしたことが無いらしく戦いに関しては素人だったのだ。まぁそれは仕方無い事だ、何せ誠二は悪魔に転生するまでは一誠や甘粕の様に武を齧ったことの無い一般人だったのだから。だから俺が習得している武術を叩き込んでやった。そのどれもが基礎だけだが俺も基礎しか教えられていないのだからしょうがない。基礎させ習得していれば、そこから先は我流で頑張れという事らしい。まぁ一から十までその武術に沿って学べばその通りの動きしか出来ないから強ち間違いじゃ無いんだろうけど。
そして誠二に関して嬉しい予想外が一つ。なんとこいつはどれだけ叩き潰しても自分の足で立ち上がって来たのだ。ボロボロになって全身の骨が砕けたとしても、震えながら立ち上がって啖呵を切ってみせる。素直に凄いと思った。トラウマになる様な事をして逃げ出すと思っていたので嬉しい誤算だった。なので念入りに、叩き潰してやった。この経験がきっと彼を強くさせると信じて。
そうしてトレーニング組を二十四時間ぶっ続けで叩き潰して、俺は〝牙〟の制服を纏っていた。〝牙〟の制服は胸の辺りに黒い羽を生やした龍が刻印されている純白のコートと黒ズボンだけ。シンプルイズベストだ。
「む〜……相変わらずこの制服苦しいにゃ〜」
「堅っ苦しいのは苦手だぜぃ」
「そう?僕チン意外と好きだけど?」
「俺もこれは気に入ってるぞ。動きやすいしな」
「着崩すと舐められるから着崩すなよ。特にエロリスト黒歌」
「エロリスト!?エロリストって何!?」
「エロリストだろうが……あんないつ脱げるか分からない着崩すしで着物なんか着てよぉ……お陰で孤児院のガキ共が真似しだしたぞ。どうしてくれる」
「それは黒歌さんの責任じゃないでしょ!?ヴァーリ助けて!!」
「済まない黒歌……俺は、無力だ……!!」
「ヴァーリ!?」
黒歌は油断するとすぐに危ない格好するからな……お陰でガキ共の教育に悪い悪い。教育係りになってる母さんも黒歌のせいで苦労しているからな……
「この歩く18禁め!!」
「なんで罵倒されなきゃならないの!?」
なんでも。と、まぁ切り替えないと何時までもダラダラと続けそうだから悪ふざけはこの辺りにしておこう。俺が切り替えるとそれを察してくれたのかヴァーリたちの雰囲気も張り詰める。
「それじゃあ、行こうか」
そう言ってから先ずは転移魔法で転移。そして徒歩で十分程歩き、マーキングがしてあった大樹の根元の
霧が満ちた空間を歩き続ける事数分、足が痛いとか言い出してヴァーリに背負う様に強請った黒歌の尻をフリードが竹刀でケツバットしだした頃にようやく霧が晴れた。
霧の先にあったのはーーー巨大な都市だった。石造りの建造物が建ち並ぶ巨大な都市。ここが【アドラー】の拠点、構成員達からは帝都と呼ばれている
でも完全に自給自足が出来て、外界から独立出来てるのに組織って言い張るのはどうかと思う。
ヴァーリ達は初めてここに来たので規模のデカさに驚いているが、俺は何度か来た事があるので歩き出す。ヴァーリ達も俺が動いた事に気付いて正気に戻ってついてくる。
真っ直ぐに伸びる大通りを通り抜ければ帝都の中心部、【セントラル】に辿り着く。ここがアドラーの本拠地。人外の魔の手から人間達を守る為に立ち上がった人間達が集う場所だ。
セントラルの入り口に当たる鋼鉄の門の前には一人の女性が立っていた。アドラーの制服である黒い軍服を纏った金髪の女性は俺たちを見つけると駆け寄ってくる。ヴァーリとフリードが僅かに警戒の色を見せるがそれを目で捻じ伏せる。ここに来たのは協定を結ぶ為であって戦いに来たんじゃ無いんだ。
「久しぶりね、ヒサメ」
「最後に来たのは半年前だったか?まぁそちらも元気そうで何よりだよ、ジャンヌ」
出迎えてくれたのはジャンヌ。それはかつて神の啓示を聞いてオルレアンを救った聖処女と同じ名前。それもそのはず、彼女はジャンヌの子孫に当たるのだから。歴史では処刑されて子孫は居なかったはずなのだなどうも処刑される寸前のところで慕う者らに救出され、そこからはただの村娘として生きていたとかなんとか。
「それじゃ、案内は任せるわ」
「えぇ……でも殺気とか感じても手出しはしないでね?そこのあなた達もよ」
「流石にこれから協定結ぼうって相手に喧嘩売らねぇよ……なぁヴァーリ?ん?どうした?目ぇ逸らして?返事は?ん?ん?」
「ヴァーリェ……」
「なぁボス、こいつここでシメちまう?」
「私の出番と聞いて」
「脱ぐなやエロリスト」
コートを脱ごうとしていた
「グォォォ……!!」
「目がっ!!目がぁぁぁぁぁぁ!!」
「さっさと行くぞ〜」
ジャンヌの案内の元、セントラルの中に入る。頭を押さえている黒歌と目を押さえてのたうち回っているヴァーリは首に縄を着けて引きずる事で解決。美猴がドン引きして、フリードは羨ましそうな目で見ていたので黒歌の縄を渡してやると嬉々として引き摺り出した。
「相変わらずね、ヒサメは……まぁウチでも良く見る光景だけど」
「良く見るの!?」
「天秤……ウチの部隊の一つの隊長が生意気な新人を教育する時とか、
「運が良ければドMのフェニミストが幼女にお馬さんごっこやらされているシーンを見る事が出来るぞ〜っと、噂をすればなんとやらだな。あっこ見てごらん」
渡り廊下に出て、向かいを指差すと身なりのいい格好をした金髪の青年が銀髪の幼女を背中に乗せて四つん這いで歩いている姿が見えた。
ジャンヌはそれを視認した瞬間に聖なる気配を感じる剣……聖剣を投影してその青年目掛けて全力で投擲した。着弾して砂埃が上がり、二人の姿が見えなくなる。
「さぁ、行きましょう」
「こいつ迷わずに殺りに行ったぞ!?」
「あの迷いを一切感じない投擲……凄いなぁ、憧れちゃうなぁ」
「いつもの事いつもの事」
美猴は混乱しているけど似たような光景なら
業の深い光景をなかった事にしながら、黒歌とヴァーリを引き摺ってセントラルの中を進む。十分程で目的地らしき扉に辿り着き、内側から独りでに門が開いた。
部屋は広く、中心部には円卓が設置されている。上座には漢服を羽織った青年が座っていて、その側に魔法でも使っているのか認識がし辛い人影があった。そして部屋の外には気配が幾つか感じられる。
そんな中、漢服を羽織った青年は俺たちを見据えて手を広げながら言い放った。
「ーーーやぁ、久しぶりだねヒサメ。そして
対人外組織のリーダー、かつて中華にて魏を建国し、三國を平定しようとしていた覇王の子孫がそこにいた。