D×D magico 作:鎌鼬
「君らはお茶して待ってようか」
「は、はぁ……」
「あ、私も手伝います」
「ならそこの菓子を皿に盛り付けておいてよ。俺はお茶淹れるから……あぁ、何が良い?紅茶?コーヒー?日本茶?それとも日本酒?」
「なんでさらりとお酒を候補に入れてるんですか?」
「実体験から。俺がコーヒーでって言ったら相手は日本酒だったからな……しかも一升瓶と升で」
いや〜懐かしいな。初めて餓鬼道様と会ってから二十年か……一応餓鬼道の赤子だからあの人は俺の事を把握しているだろうけど俺からは干渉できないんだよな……ホームシックって訳じゃないけど久しぶりに会いたくなってきた。
「なんですかそのキチガイは……紅茶でお願いします」
「あ、私も紅茶でお願いします」
「はいよ」
トレーニング組は全員友人の神器である【
「どうして私たちをここに連れて来たんですか?」
「リアス・グレモリーからの干渉を避ける為。身内が転生したとはいえ無関係な人間を裏側に引きずり込もうとしていたからな、二人だけにしておくと無理矢理転生させるなんてあるかもしれないから」
「想像出来てしまうなぁ……」
「悪魔に転生ですか……」
「悪魔に転生させるには事前に互いの了承を取ることが現魔王に決められていてな。それで多少転生でのトラブルが減ったんだがそれでも無理矢理とか誘導してとかの問題は残っている。ちなみにはぐれ悪魔の大半がこれに当たる」
自分から悪魔に転生して現実との食い違いに絶望して逃げ出すのなら同情の余地はない。だがこうした前例で転生させられた者たちは哀れすぎる。サーゼクスやアジュカさんもこの問題には頭を抱えているが悪魔の貴族連中はどうしても他種族を見下す傾向にあるからどうしようもない。なので秘密裏に騙されて悪魔に転生させられて、はぐれになった転生悪魔の情報を
「そうなんだ……そんな話は原作には……」
「ん?今、原作って言った?」
俺の話を聞いて〝原作〟という言葉を呟いた誠。原作という言葉は転生者がよく使う言葉だ。無論全ての転生者がこの言葉を言う訳ではないが少なくとも転生者以外で使っているのを聞いたことが無い。
「もしかしてお前は転生者か?」
「えぇ!?」
「っ!!ち、違っ!!」
「あぁ、安心してくれ。俺も転生者だから」
「って、貴方も転生者なんですか!?」
淹れた紅茶を差し出しながら俺も転生者であることを明かす。それに誠が驚いていたがそれよりもアーシアが転生者という言葉に反応していた事が気になる。転生者の存在は存外に知られていない。各組織のトップとその部下が知っている程度だ。なので聖女として祭り上げられていたとはいえアーシアが転生者の存在を知っていることは気になる。
「アーシア、転生者のことを知ってたのか?」
「はい……私がまだ教会にいた頃に何人か私を連れ去ろうとしていた人がいたんです。その人達はその時の護衛の人にやっつけられましたがその人が転生者について教えてくれたんです。自分もそうだからって」
「成る程ね……」
アーシアを守っていた転生者。教会に所属しているという時点で嫌な予感しかしないが少し気になる。余裕が出来たら探してみるか。
「転生者が他にもいるだなんて……もう原作グチャグチャだよ……」
「そういえば原作って言葉は知っているけど中身までは知らないな。今までとの相違点だけでいいから教えてくれないか?」
「……まず兵藤家ですけど私と誠二は居ませんでした。それと一に……一誠兄さんが赤龍帝で、戦車も塔城さん一人だけでしたね。それにアーシアも堕天使の事件の時に悪魔に転生してました。あとは……甘粕正彦なんて人もいませんでしたし、匙先輩とも今の時点では関わりは無かったですね」
「うわっ、本当にグッチャじゃないか」
変わりすぎだろ……いや、原作には転生者なんて存在は無かったから当然といえば当然なのかもしれないけど。
「原作については大まかな方針だってことにして過信しないほうが良いと思うぞ」
「そうさせてもらいます……あ、美味しい」
「美味しいですね。あ、ヒサメさん。セージさんたちは今何をしているんですか?」
「ん?今やってるのは徹底的に心を折る事だね」
「「……え?」」
アーシアは驚愕、誠からは何やってるのこいつ的な目で見られた。どうしてこんな目で見られなければならないんだ?
「え、ちょ、え、本当に何やってるんですか?」
「あ、見てみる?」
フィンガースナップを一度鳴らして
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
『嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
『アーシアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』
『フフフフーーーフハハハハ!!!!』
『ヒャッハァァァァァァ!!!!』
『クククッ……アッハッハッハ!!!!』
発狂して絶叫している木場祐斗と塔城小猫と誠二、楽しそうにしている一誠と匙と甘粕の姿があった。
「ーーー」
「ーーー」
アーシアと誠、絶句である。まぁ何も知らずにこれを見せられたらこうなるよな……因みにトレーニングの内容は見せていない。ただ絶叫している姿だけを見せている。にしても下三人良い空気吸ってやがるな。
「えっと……このトレーニングの意味は?」
「誠二たちは精神が弱いからな、まずは精神を鍛える事から始めてる。徹底的に心の傷を抉ったり、心の傷を作って塩塗り込む作業だな。下地作りと言っても良い、こうしないといくら覚悟しても肉体が精神に追い付けないでズレが起こるから。下の三人はもう精神は十分強いと思って模擬戦させてる」
「……」
「酷い事をしているって考えてるな、アーシア」
アーシアの考えは読みやすかった。それでも睨みつけるだけで言葉にしていないのは俺に恩があるからだろう。
「あぁそうさ、俺にも酷い事をしているという自覚はあるさ。だけどこれを求めたのは他ならぬこいつらだ。なら俺はどんなに酷い事をしてでもこいつらを育てる義務がある。何、嫌なら逃げても良いさ。俺は止やしない……こいつらが逃げたければだがな」
画面越しからでもわかる。誠二たちはこのトレーニングに本気で嘆いて絶望しているのに、泣き叫びながら越えようとしている。なら、俺は本人たちが逃げ出すまではどれだけ非難されようとも育てるだけだ。
まぁ匙以外の二人は若干予想外だったけどなぁ!!
「……だったら、私はみんなを支えます」
「止やしないさ、むしろ進める。支えてやれ、繋がりが無いとどうしても脆くなるからな」
「……なんか生き生きしてません?」
「いやぁ、趣味と実益を兼ねてるからねぇ」
「外道だ!!この人外道だ!!」
「アッハッハッハ」
否定はしないさ。
〜ヒサメの拠点
『休暇』で出てきた住宅。扱いとしては
〜原作
この世界外から転生してきた転生者がよく使う言葉。転生者でも知らない者はいるがこの言葉を使っているのは転生者だけである。転生者の見分け方の一つ。
〜教会の転生者
アーシアの護衛をしていた。何を考えているのかは現在では不明。なおアーシアが魔女として糾弾されていた時にはアーシアの護衛から外されて別の任務を与えられていた。
〜
他者は異物で、異端で、ただの化外で、己の純正を損なう穢れでしかないと言い切るウンコマン。実際それで最強の覇道神なのだからタチが悪い。