D×D magico   作:鎌鼬

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magico magic

 

 

「ーーーっと、こんな感じか?」

 

 

俺の目の前で黒炎に焼かれて灰になりつつある木を見ながら俺は黒龍の爪刃(アブソリュート・エッジ)を仕舞う。神器を覚醒させた時は色々とあったがそれから時間が経って二年、俺は十歳くらいの身体に成長している。

 

 

『悪くは無い。だがピースに比べればまだまだだな。あやつの神器の発現は知覚することを許さなかった。気がつけば武器が砕かれて手足に刃が突き刺さっている、そんなレベルだったぞ』

 

「こっちとら神器覚醒させてまだ二年だぞ、無茶言わないで欲しいね」

 

 

ヴリトラとの関係は良好と言ってもいい。俺自身が龍であるヴリトラのことわ嫌っていないし、ヴリトラの方も俺のことを気に入っているらしく色んなことを教えてくれる。母さんからも教えてもらっているがヴリトラの方が神器として世間に出ていたからなのか知識が広い。だけど本当ならヴリトラは神器に封印されていた段階で意識は無かったらしいのだが父さんが保持者になってから何故か目覚めたそうな。

 

 

『ヒサメは龍の子だ、それに堕天使と人間の血を引き、更には転生者ときている。なら妥協するな。すればお前が守りたい者が守れぬぞ』

 

 

ヴリトラにそう言われてから俺はヴリトラに戦闘訓練らしき物を教えてもらっている。らしきものというのはヴリトラが初めて見た人型の戦闘が父さんで、殺さずに戦闘不能にさせる程度で終わらせていたからだとか。それにしても平和(ピース)って名前で殺さずを貫いただなんて……

 

 

「聖人でも目指していたのかね、俺の父さんは」

 

『自分は弱いから人の死を背負いたく無い、それに生きていたらきっと良いことがあるはずさ……それがあやつの口癖だった。どちらかと言えばエゴイストなのだろうな』

 

「だからって死んだら終わりじゃ無いか。残された奴のことを考えるなら血塗れになっても帰らなきゃいけなかったんだよ……そのせいで俺は父さんの顔を写真でしか知らない、母さんは父さんのことを夢に見て夜に泣く」

 

『だからヒサメは加減はしないのだな』

 

「そりゃあそうさ。正義貫いて死ぬのなら悪になって汚くても生き残る……つまり堕天奈落こそが真理……!!」

 

『堕天奈落……あぁ、ヒサメが良く口にする覇道神という神の一人か』

 

「そうそう、我と我が民たちは善ゆえに、縛る枷が無数にある。犯せぬ非道が山ほどある。善では悪を打倒できぬ、 故に我が民よ、巨悪を喰らう悪となれ、ってね。善であるから手段が限られる、なら悪となって手段を選ばずに巨大な悪を滅ぼそうって事さ」

 

『ふむ……中々に深いな』

 

「そりゃあ思いだけで神座に至った人間の言葉だ、深く無い訳がない」

 

 

ヴリトラとの会話を切り上げて俺が向かった先にあるのは見上げる程の大岩。俺の目線よりも少し下には赤い染みが出来ている。

 

 

『今日もやるのか……本当にこの様なことで魔法を習得することが出来るのか?』

 

「まぁこの世界には無い魔法だから不審がるのもわかるさ……俺も半信半疑だけどな!!」

 

 

そして拳を固く握り締めて俺は大岩を殴る。

 

 

これこそが俺が魔法を習得するための儀式。これが俺にとって初めての儀式で本当にこんなことで魔法を習得出来るのかと不審がるヴリトラの気持ちはわかる。だけど餓鬼道(あのひと)が嘘をつくとは考えられない。

 

 

「あと五百回!!頑張るぞぉい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

『……』

 

 

五百回大岩を殴り終えた時、俺もヴリトラも言葉を無くしていた。何故なら見上げる程の大岩の大半が吹き飛んでいる。そして拳には目に見える程に魔力が収集されている……これは、疑いようが無い。

 

 

「いぃぃぃぃ……よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!魔法習得出来たぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉいぃぃぃぃ!!!!」

 

『まさか……本当にこの様な方法で魔法を習得出来るとは……世の中の魔法使い連中が発狂するな』

 

「そこ、お静かに。折角魔法を習得出来てハッピーなのに水を差さない!!」

 

 

それにしてもめでたいことだ。初めて魔法を、それもmagicoの魔法を習得することが出来たのだから。

 

 

「今ならヒュドラとも戦える気がする……!!」

 

『よせ、前にヒュドラにちょっかいかけてティアマットに泣きつかれたことを忘れたのか』

 

「……あ〜そうだったな」

 

 

神器を覚醒してすぐの時に偶々出会ったヒュドラに喧嘩ふっかけてボコボコにされた事があった。重傷では無かったが帰った時に母さんに泣き付かれた事があったのだ。出来るだけ心配させたく無いのでヒュドラと戦うのは止めにしておこう。

 

 

「んじゃ帰るか。ついでに何か取って帰ろう」

 

『肉にしておけ。ヒサメの年頃なら肉を食わねば成長しないぞ』

 

「俺も肉が食いたいと思ってたところだ」

 

 

ヴリトラと話しながら晩飯の獲物を探す。この森は俺の遊び場と言って良い。何処にどんな生き物がいるのかわかるし、多分目を瞑ってても森の中を走る事が出来る。

 

 

獲物を探して森の中部を彷徨っている時だった。

 

 

「ーーーしゃんなろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

そんな掛け声と共に爆発音が聞こえ、地面が揺れた。

 

 

「うおっと!?」

 

『何だ!?』

 

 

地震かと思ったが揺れはすぐに治まって再び揺れる気配も見られない。そもそもアジュカさんから聞いた話によると冥界では滅多に地震は起こらないらしい。考えられるのは……誰かが戦っていること。

 

 

「行くぞ」

 

『用心しろ、魔法を習得したとはいえどヒサメはまだ子供だ』

 

 

ヴリトラの言葉に頷きながら掛け声のした方に向かって走る。

 

 

そして見つけた。少し開けた場所で桃色の髪をカチューシャで纏めてデコを見せている女性と頭を潰されて死んでいる猪。

 

 

『……あやつの様だな』

 

「……そうみたいだな」

 

「っ!?誰!?」

 

 

声を潜め、我流ではあるが気配を消していたはずなのに気が付かれ、俺の側にあった木にクナイが突き刺さる……クナイ?あぁ!!もしかしてNARUTOのサクラか!?だったら転生者なのか?

 

 

「……」

 

 

まとまに正面から入ったところで部が悪いことは分かっているので両手を上げて降参のポーズを取りながら転生者らしき女性の前に姿を見せる。

 

 

「子供?って、怪我してるじゃ無い!?」

 

 

女性は大岩を殴ったことで出来た傷に気がつくと駆け寄って来て怪我をしている部分に手を翳した。すると女性の手が光り、俺の怪我が治っていく。医療忍術だな。

 

 

「ふぅ……もう大丈夫よ」

 

「……お姉さんはどうしてここにいるの?」

 

「お姉さんたちはね、この森にいる悪い龍を倒しに来たの」

 

 

女性の言った言葉に頭の中が真っ白になった。悪い龍を倒しに来た?いや、それが母さんのこととは限らない。龍で分類するならヒュドラだって龍に入る。ヒュドラを倒しに来たのならーーー

 

 

天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)って言うのだけどーーー」

 

 

天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)……つまり母さんの名前が出た瞬間に神器を発動させて女性を切り刻む。過去最速で発動した神器は女性を笑顔のままで切り刻み、死体を黒炎で燃やし尽くした。

 

 

母さんを倒しに来た?どうして今更、それに母さんはアジュカさんとの約束で害を与えない限り手出しはされないはずなのに。

 

 

『ヒサメ、考える場合では無い』

 

「……どうして?」

 

『あの女はさっき私たちはと言った。それはつまりーーー』

 

 

一人じゃなく複数で来ている。そのことに気付いた俺は全力で森の奥に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が家である森の奥に辿り着く。この四年間で一日たりとも欠かすことなく見てきたはずのそこはいつもと違った景色になっていた。

 

 

地面には大穴が空き、柔らかい草で覆われていた土が顔を出している。

 

 

見慣れない金髪と、黒髪と、白髪の三人の人間。

 

 

そしてーーー血塗れになって、横たえている母さんの姿だった。

 

 

 

 





〜堕天奈落
難しく語るのなら作中であった通りなのだが分かりやすく言ってしまえばダークヒーローの様なものだと作者は考えている。だけどこの理で出来た世界はパラダイスロストなのよね……

〜魔法習得
大岩を殴って魔法を習得しました。この世界の魔法使いがこのことを知ったら昇竜してくるに違いない。どんな魔法かわかるかな?

〜転生者?
NARUTOのサクラの容姿の転生者らしき女性。ヒサメの母であるティアマットを倒そうと仲間と共にやって来たがそな言葉を聞いたヒサメに反射的に殺された。

〜金髪と黒髪と白髪の三人の人間
上記の転生者らしき女性の仲間。ヒントを教えておくとNARUTO繋がり。いったいだれなんだろう……?

〜血塗れのティアマット
三人にやられて瀕死のティアマット。


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