D×D magico   作:鎌鼬

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ヒサメとライザーと求める者たち

 

 

「……お茶をどうぞ」

 

「ん、あんがとさん」

 

 

白髪のロリータ……塔城子猫からお茶を受け取って躊躇わずに一口飲む。毒なんて警戒する意味も無いし、入れられる訳が無い。一般的なルートで手に入る毒なんて超越してる奴には無意味だからな。最低でも神話に登場するような……例えばヒュドラなんかの毒で無いと効果は無い。

 

 

「うん、美味いな。どこのお茶?」

 

「コウントリーのうぉ〜いお茶です」

 

「コウントリーのか……帰りに買って帰るか」

 

「イヤイヤ、市販のお茶で良いんですか?急須とか使わないで目の前でペットボトルの淹れられてましたけど」

 

「美味いなら美味いで良いじゃ無いか、俺はその辺り気にして無いぜ?というよりも同じ品質を大量に作れる人間の技術は素直に凄いと思うぞ」

 

 

これは転生してから一番思うようになったことだ。人外連中は一品物を作る事に関しては凄いと思うがそれを大量に作ることは出来ないのだ。聖書の神が作った神器なんかがそうだな。例えばポピュラーな神器で知られる龍の手なんかも幾つか集めて調べてみたら微妙なバラツキが見られる。それも誤差の範囲と言えるのだが神器マニア代表のアザゼルからしてみればダメな事らしい。

 

 

まぁその辺りは悪魔の魔力や天使堕天使の光のような異能を持つ事が少なかったから代わりに技術が伸びてこうなったんだろう。

 

 

「さて、俺がここに来た理由だが……今度のレ、レ……レーシングゲーム?までに俺たちからしてみればクソザコナメクジレベルのお前たちを鍛える為だ」

 

「レーティングゲームです。てかクソザコナメクジって……俺たちそんなに弱いですか?」

 

 

ご丁寧に訂正をしてくれたのは前に会った時に日本刀を持っていた少年……兵藤一誠。

 

 

「まぁ一般常識内で言えば悪くは無いんじゃ無いかなレベル。だけどガチで戦闘を本分にしている奴らからしてみれば殻付きヒヨコどころか受精卵以下だよ。分かりやすく言ってやろうか?ドーナシークとお前位の差がある」

 

「……あぁ、成る程」

 

 

割と酷いことを言った気がしなくも無いのだが兵藤一誠はそれを聞いて納得したように頷いていた。うん……こいつはドーナシークとの実力差をしっかりと理解してるな、その上でドーナシークを越えようとしてる。純血やら転生やらでのぼせ上がってる阿呆よりもこういう奴の方が強くなるんじゃ無いかという期待が持てる。

 

 

「あれ?俺たちを鍛えるって事はフェニックスとの結婚を反対してるって事ですよね?」

 

「良いとこに気付いたなセェェェジィ」

 

「なんで俺の名前を妙に伸ばして言うんですか」

 

「なんとなく」

 

 

いやね、ここには人間讃歌歌う魔王がいるから。それで誠二なんて名前を聞かされたら思い付くのが逆十字しかないから。

 

 

「ぶっちゃければ今回婚約を受けた阿呆とライザーの両親以外のフェニックスの悪魔たちはリアス・グレモリーとの結婚を反対している」

 

「は?じゃあなんで婚約なんて話になったんですか?」

 

「親父が酒の勢いでな……俺には婚約者がいるのにだぞ?」

 

「それがライザーの隣にいる奴、ユーベルーナだな。だけど縁談は成り立ってしまって、悪魔社会的にも断るわけにはいけない。格下であるフェニックス家がグレモリー家との縁談を断るのは凄い失礼になるからな。例え上手く断れたとしても貴族社会からは白い目で見られる事になる」

 

 

フェニックス家とグレモリー家とでは位に差がある。俺からしてみれば魔王を輩出したグレモリーも原罪(オリジナル・シン)を持つライザーを輩出したフェニックスも同等に思えるのだがそれでも悪魔社会のトップを輩出したという点は大きいのだろう……しかし輩出したってだけで家まで権力を強くするってどうなんだか。それにサーゼクスの滅びの魔力はグレモリー家由来のものでは無い。正直言ってグレモリー家が強くなる理由が分からない。

 

 

「面倒だ……出奔するか?」

 

「それも手段の一つだが良いのか?眷属たちを食っていけるのか?フェニックスの涙を売れば金にはなるだろうがあれはフェニックス家がルートを独占してる。売るとなれば悪魔以外、そうなれば必然的に悪用されるぞ」

 

「はぁ……親父殺すか」

 

「頑張れ」

 

 

さり気無く親殺しを仄めかしているライザーだが俺からは止めるつもりは無い。実はライザーの父親は〝牙〟の情報網で正規の値段の数倍の値段で悪魔以外にフェニックスの涙を流している疑いがあるのだ。調べでは殆ど黒、近々サーゼクスたち魔王に報告してから殺すつもりだった。無論ライザーにライザー以外のフェニックスの悪魔たちにもこの事は伝えてある。

 

 

その結果は……肯定だった。貴族としての在り方を厭うのでは無く受け入れ、それに相応しくあろうとしているフェニックスの悪魔たちからすれば利益に目を眩ませて悪魔の害になる様な行動をしている父親の行動は許せなかったのだろう。

 

 

因みにフェニックス兄弟の長男ルヴァル、次男リヴァイとは組織や陣営を無視した個人的な交流がある。ライザーに妹と弟がいるのは知っていたが名前までは知らなかったし、それに友人の弟妹だかれと言って仲良くする理由は無いし。

 

 

「それにグレモリーもフェニックスも数少なくなっている純血悪魔だ。悪魔の上層部からすれば純血悪魔を増やすために何としてもこの婚約は成立させたいだろう」

 

「なんというか……本人の意向を完全に無視してますね」

 

「貴族に関わらずにある程度の地位を持ってるとこんなもんだ。俺も何度かお見合いさせられた事があるからな〜……ひと目で欲が詰まった肉袋だと理解出来る奴ばっかだったけど」

 

「それは……なんというか御愁傷様です」

 

「まぁそんなことはどうでも良いんだよ」

 

 

懐からタバコを取り出して火を点ける。無論煙は妊婦であるユーベルーナには煙が流れない様に魔術を使って別の場所に送ってる。

 

 

「ライザーはリアス・グレモリーをフェニックス家に迎え入れたく無い、その為にはお前たちに勝ってもらってこの婚約をご破算させてもらわなくちゃならない。その為に俺は来た」

 

「……だから鍛えるって事ですか?」

 

「その通り。レーティングゲームでは俺はライザーと殺り合う、だからお前らはドーラ・フェニックスを潰せ」

 

「……強くなれるんですか?」

 

 

代表として聞いたのは一誠だが、アーシアを除いた全員が俺の事を見ていた……その目の奥に強さへの渇望を煌めかせて。

 

 

「強くなれるかはてめえら次第としか言えないな、ケツ引っ叩いたところで立ち上がらない様なら鍛えてやる意味が無い」

 

「よろしくお願いします」

 

「俺も、よろしくお願いします!!」

 

 

真っ先に頭を下げたのは一誠と誠二。まぁこいつらは強くなりたいって知っているので驚く事はない。

 

 

「僕も、よろしくお願いします」

 

「私もです」

 

 

金髪のイケメン……木場祐斗と子猫も頭を下げた。この時、俺は二人に少しばかり興味を持った。確かにこの二人には兵藤兄弟の様に強さへの渇望が見えたのだが……それ以外にも強い憎しみを感じた。

 

 

「ーーー復讐」

 

 

一言呟く。それが聞こえたのか二人は僅かに肩を震わせた。復讐心ねぇ……ま、強くなる理由としては悪く無いな。

 

 

「了解。レーティングゲームまでの間、鍛えてやるよ。どの程度強くなれるかはお前たち次第だがな……ついでにソーナにも声掛けておくか」

 

 

ソーナの所の魔王がどんな奴かが気になる。見極める意味でも魔王と会っておくのも悪く無いだろう。

 

 

「んじゃ、また明日とか」

 

 

とりあえずやる気は感じられたのでそれに満足して帰る事にした。

 

 

 


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