D×D magico   作:鎌鼬

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epilogue・1

 

 

堕天使たちが駒王町で色々とやらかしてから一週間が経った。週明けの学校で、一誠はいつも通りになりつつあるリリィへの餌付けを行っている。

 

 

「今日のお昼は唐揚げと焼き飯、それとサラダだよ〜」

 

「待ってました!!」

 

 

はじめはリリィの極貧っぷりに同情しての事だったが慣れとは恐ろしい物で自分と誠二と出席日数の関係で時々登校してくる誠の弁当を作る時にもう無意識でリリィの弁当も作っている。

 

 

作ってきた焼き飯を頬張っているリリィを見て幻の尻尾が千切れんばかりに左右に振れているのが見えてしまうのは仕方のない事だろう。

 

 

弁当を食べ終えてほうじ茶を飲んでのんびりしている時にふと思いついた。今回の事はどういう形で決着したのだろうかと。

 

 

「なぁリリィ、今回の事だけどもう解決したのか?」

 

「あれ?リアスから聞いてませんか?」

 

「何も」

 

「あの子は……」

 

 

リリィの口ぶりからではリアスから説明があるはずだったのだろうが生憎一誠も誠二も何も聞いていない。何事も無かったかのように淡々としていたのだ。それでも何か気に入らない事があったのか苛立っている素振りは見られたのだが。

 

 

「えっと……まず駒王で色々とやっていた堕天使三人ですけど、彼らはどうも人質を取られて命令されていたらしいんですよ。で、その事を考慮して悪魔陣営のトップと堕天使陣営のトップが話し合いをした結果、堕天使陣営から幾らかの賠償を支払う事で話は終わっています。その事に関しては兵藤君の方が詳しいと思いますけど」

 

「あぁ……直接会って頭下げられたからね」

 

 

教会で戦った日から2日経った時に、“牙”のリーダーを名乗るヒサメがやって来てレイナーレたちがどうしてこんな事をしたのかを説明し、済まなかったと土下座をしたのだ。脅されて命令されていたとはいえレイナーレたちの行動によって一誠と誠二と甘粕の三人の命が失われたのだ。

 

 

とは言っても一誠と甘粕はその事をさほど気にしておらず、後日改めてドーナシークとカラワーナとの再戦を希望し、誠二はアーシアの生活の保護を求めたことで終わっているのだが。ヒサメは前者の願いは快諾し、後者の願いについても元々そのつもりだったらしく毎月の生活費の振り込みと住居を用意すると言っていた。

 

 

だが住居に関してはアーシアがそこまでしてもらうわけにはいかないと拒否。話し合いの結果、兵藤家にホームステイという形で住むことで話は纏まった。アーシアが望むのなら日本国籍の発行もしてくれるそうだ。

 

 

話しは纏まったように思えたのだがヒサメは足りないと思ったらしく、困った事があったら一度だけ力になると約束をして帰って行った。口約束としか思えなかったがソーナ曰く、自分から言いだした事は守る人だから心配いらないとの事だ。

 

 

「で、彼らを脅していた黒幕の堕天使ですけど、魔王様直々に手を下したらしいです。この事に関しては堕天使陣営も了解済みです。まぁどうやらその堕天使は神の子を見張るもの(グリゴリ)に所属していない野良の堕天使ーーー悪魔で言う所のはぐれ悪魔と同じみたいですけど」

 

「つまり……独断でこれをやったと?何がしたかったんだろ?」

 

「さぁ、こればかりは分かりませんよ」

 

 

黒幕であるヘスティーナはあの後赤屍蔵人によって魔王の元まで連れて行かれ、魔王直々に処分された。その時に色々といらない事を言って魔王たちを苛立たせたりしたのだが語るまでも無いだろう。

 

 

「で、グレモリーが苛立ってるのは?」

 

「はぁ……なんでも自分だけ除け者にされたのと自分の考え通りに行かなかったからだとの事です……」

 

「ガキかよ……」

 

 

リアスが不機嫌だった理由、それは自分だけ除け者にされて、自分の考え通りに物事が進まなかった事にある。

 

 

リアスは確かにある程度の地位を持っているのだがそれでも悪魔という組織からすれば末端、良くても中間職程度の存在でしか無い。そんな立場であれば物事が終わった頃にこういう事があったと結果だけを伝えられてもおかしな事では無いのだがリアスはそれが気に入らなかったようだ。

 

 

そしてリアスは今回の出来事を利用して一誠と誠二眷属入りさせ、自分は恩人であるというイメージを植え付けたかったようだ。結果として二人を眷属にする事には成功したのだが不信感を持っている事もあって忠誠心は無いに等しい。そこで一度反対し、時間を置いてから問題無いと許可する事で恩を売ろうとした。だが一誠たちの行動が予想よりも遥かに早かった事でそれは無駄になったのだが。

 

 

そもそも今回の件はリアスにとってもギリギリなところがあった。自分の領地であるこの土地で堕天使に好き勝手させ、一誠たち三人を殺された挙句に排除しなければならないカルト集団の始末をフリードにされた。魔王たちはこの報告を受けてリアスの管理者としての能力が不足しているのでは無いかと考えているがリアスに擦り寄る事で甘い汁を吸おうとしている一部の悪魔たちの意見によって保留する事になった。まぁ、再び何かしらの問題が起これば話しは変わるのだが。

 

 

どちらにしてもこれで堕天使たちによる一件は終わりを迎えたのだ。その事を素直に喜ぼう。そして来るべき再戦の日まで己を高めよう。

 

 

あの日のヒサメの戦いーーーいや、蹂躙を見て一誠は驚愕した。あそこまで突き抜けた暴力が存在するのかと。それと同時に決意する。いつか自分のあの高みに至ってみせると。

 

 

約束されたドーナシークとの再戦の日を思い描いて一誠は穏やかな笑みを浮かべる。

 

 

「ほへぇ……」

 

「……どうした?間抜けな顔して」

 

「間抜けってなんですか間抜けって……兵藤君もそんな顔するんだなぁって思っただけですよ。なんていうかこう……縁側で日向ぼっこするお爺ちゃんみたいな?」

 

「それは俺が老けて見えるってことで良いんだよなぁ極貧ワンコがぁ……!!」

 

「や〜め〜て〜!!髪引っ張らないで〜!!」

 

 

年寄り扱いされた事で額に青筋を浮かべてリリィの髪を引っ張る。有り触れた、当たり前のような時間であるが、こんな時間を大切にしたいと一誠は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

✳︎レイナーレ大勝利の翌日

 

 

レイナーレたちを助けた翌日、アザゼルからは休んでも良いと言われたが事後処理のことを考えると休んでいられない。当事者であるレイナーレと共に“牙”の隊員たちを集めて処理について話し合っていた。

 

 

「ーーーというわけだ、表立ったことは俺がやるから良いとして裏側で色々とやってもらうことになるぞ〜」

 

「……ヒサメ、一つ聞いて良い?」

 

「どした?ユーリ」

 

 

律儀に手を上げて聞いてきたのはユーリ。15歳になった彼女は昔とは比べ物にならない程に成長している。身長は160もあるし、スタイルも飛び抜けている訳ではないが全体的に締まったバランスの良いものになっている。

 

 

「……レイナーレとヤった?」

 

「ブフォ!?」

 

「ちょ……!!ユーリ!?いきなり何言ってるの!?」

 

「だってヒサメにレイナーレの匂いが混じってるし、レイナーレも歩きにくそうにしている。ティアマットから聞いた性交渉の翌日に類似している」

 

「母さん……!!」

 

 

ユーリは神の子を見張るもの(グリゴリ)で育っている。ここで保護された子供たちは社会に出ても困らない程度の教育を受けさせることはアザゼルと爺さんの方針によって決められている。その事には俺からしても反対は無いんだが……時々アザゼルが保健体育の授業だといってAVを見せるから救いが無い。その後俺と爺さんでボコっているが反省した様子が見られないし。

 

 

ユーリが母さんに聞いたっていうのは母さんぎ身近な大人だったからだろう。母さんに非がないのは分かっているが怨まずにはいられない。

 

 

そして予期せぬ質問だったからモロに反応してしまった。これではレイナーレとヤったと言っている様なものだ。事実、隊員たちは勘付いたらしく、

 

 

「マジ?え、マジなの?」

 

「隊長がレイナーレちゃんと……だと……!?」

 

「そんな……!!そんなのって有りかよぉ……!!」

 

「fack of foolish god!!!!」

 

「俺たちのレイナーレちゃんが……!!」

 

「隊長、レイナーレとしたのなら、俺ともヤ ラ ナ イ カ ?」

 

「レイナーレ、本当に貴女隊長としたの?」

 

「どんな感じだった?教えてよ?」

 

「隊長のブツのサイズは?」

 

「え、えっと……」

 

「答えなくても良いからぁ!!」

 

 

律儀に女性隊員に聞かれたことを答えようとしているレイナーレの口を塞ぎ、ニッコリと笑いながら殺意を隊員たちに向ける。

 

 

「ーーー君たちの選べる選択肢は二つだ……一つは忘れること。もう一つは余計な詮索をしてブチ切れた俺と一緒に訓練場に行って訓練をする事……どっちが良い?選ばせてやるよ」

 

「あれ?俺たち何話してたっけ?」

 

「おい、何か覚えているか?」

 

「俺のログには何も残っていないな」

 

「うっ……ここは……どこだ?」

 

「あれは……黒の侍!?」

 

「ヤ ラ ナ イ カ ?」

 

 

よし、平和的に解決したな!!誰か記憶喪失になってたり、余計なことを思い出したりしてる奴がいるけど問題ない!!なんか目の前で股間をギン♂ギン♂にさせた奴が前後に腰を振ってるけど!!あ、仕事から逃げているアザゼルの姿が、身代わりにしよう。

 

 

「Wasshoi!!身代わり・ジツ!!効果ぁ!!アザゼルは俺の身代わりとなって掘られる!!」

 

「ヒサメェ!!テメェェェェェェェェェ!!!!」

 

「ウホッ、イイアザゼル♂」

 

「アイェェェェェェ!?アベ!?アベナンデ!?」

 

 

憐れアザゼル、仕事から逃げる代わりにアベから逃げる事になる。アザゼル掘られるべし、慈悲は無い。

 

 

「……なぁなぁレイナーレ、実際のところどうだったんだ?」

 

「……情報プリーズ」

 

「え、えっと…」

 

 

……部屋の隅で話しているユーリとフリードとレイナーレの姿は見なかった事にしよう。騒ぎ立てて聞くよりもまだ常識的だし、うん。

 

 

なお、この後日で俺とレイナーレとの関係が神の子を見張るもの(グリゴリ)に広がる事になる。

 

 





ダラダラと話していた内容を纏めると、

・レイナーレたちは監視ありだが丈量酌量の余地ありと判断される。
・黒幕堕天使は魔王の元にドナドナされて処分済み。
・被害者である一誠、誠二、甘粕にはヒサメが直接頭を下げた。
・一誠、甘粕はドーナシークとカラワーナとの再戦を希望、誠二はアーシアの生活の保護を求めて当人たちは手打ちとなった。
・堕天使、悪魔陣営としては堕天使から悪魔に賠償を支払うことで手打ち。

こんなところです。

リアスが不機嫌については自分が管理している領地なのに自分の知らぬ間に全てが解決してしまってたから。管理者といっても所詮は末端や中間管理職みたいな立ち位置ですから、梯子外されて結果だけを知らされてもおかしくは無いです。

……疲れているからかもしれないがこんな方程式を思いついてしまった。もしよかったら感想を教えて欲しい。












シュピーネ×獣殿



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