D×D magico   作:鎌鼬

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匙VSフリード

 

 

教会の礼拝堂、そこでは二つの影が軌跡を残しながらぶつかり合っていた。一つはソーナの眷属の匙元士郎。繰り出すのは手刀殴打蹴撃。武道の心得など知らぬ存知ぬ必要無いと言わんばかりの体制から放たれる攻撃は全てが必殺になり得る威力を誇る。

 

 

それをアッサリと払い除けてみせるのはフリード。光の剣や手足を使って必殺を軽々と逸らし、受け止める。

 

 

二人の戦い方は非常に酷似していた。型など知らないがそんな物を身につける暇があれば実戦を行うという気概を持っていたからだろう。滅茶苦茶で非効率な動き方だというのに両者の攻撃は打ち合わせていたかの様に全てが必殺となり、全てが不発に終わらせられる。

 

 

「ーーーつまりなんだ?お前らは脅されてて、黒幕は別に居ると?」

 

「その通りでごぜえますよ匙っちゃん」

 

「おい、匙っちゃん辞めろ」

 

 

そんな殺し合いの最中で二人は親しげな様子で軽口を叩き合っていた。先程までは人の目があったから知らないような態度を取っていたが実は二人はある人物を通して知り合っていたのだ。甘粕はカラワーナと戦ってここから離れ、逃がさないという名目で結界を張っている為に他人の目も耳も気にする必要が無くなったからこうして情報を交換し合っていた。

 

 

「クソビッチがミットちゃんのことを人質に取ってるせいでレイナーレちゃんたちは泣く泣く従ってるです〜だから悪いのは全部あのクソビッチなんです〜」

 

「そうか、よっ」

 

 

最長距離で放たれる匙の踵落とし。遠心力の乗せられたそれはフリードの頭部に目掛けて落ちる。そのままなら頭部が砕け散るその一撃をーーーフリードは()()()()()()()。さらに受け止めるのと同時に光の剣を匙の胸部に目掛けて突き出す。それを匙は右手で()()()()()()()()

 

 

あり得ない光景である。フリードは人間、身体能力は悪魔である匙には及ばず盾にした腕ごと潰される筈なのに。匙は悪魔、身体能力こそ勝っているものの弱点である光の武器を素手で受け止めれば焼かれる筈なのに。両者は平然としていた。

 

 

フリードが立っていられる理由、それは加護にある。天使勢の主だった戦力と言えば悪魔祓い(エクソシスト)が知られている。彼らは人間だ。それなのに人外相手に戦えているのは天使から加護を受けて身体能力を強化させ、対抗手段となる光をある程度使える様にしている。ある程度とはいっても何かしらの媒体を用いなければ使用できない程度でしか無い。フリードの場合は剣の柄や弾の入っていない銃を使うことで光の剣を作ったり、光を弾丸として射出したりをしている。そしてその加護は天使が堕天した存在である堕天使も使える。天使に比べれば僅かながらに劣るという欠点があるのだがそれは格が高い堕天使なら存在しなくなる。フリードに加護を与えた堕天使はーーーコカビエル。聖書に名を残す程の堕天使。その加護となれば上級悪魔相手だとしても対等以上に戦える。

 

 

匙が平然としている理由は彼が宿している神器にある。その神器には龍が封印されている。その龍の影響を受けて匙の身体は純粋な悪魔では無く、龍の因子が混じった悪魔になっていた。悪魔に光は有効なれど、龍に光は効かない。無論格の高い者が扱う光なら効くだろうが加護で与えられた程度の光なら通さない。今回の場合はフリードがコカビエルの加護を持っていたので光の剣を掴んだ手の平に火傷が出来ているが数分もすればすぐに治るだろう。

 

 

それが、弱い人間である筈のフリードと光に弱い悪魔である筈の匙とが戦えている理由だった。

 

 

「てめぇらの意思でやってない事は分かった。()()()からも保護してやってくれって頼まれてる」

 

「マジっ!?やっふぃ!!」

 

「だがなーーー」

 

 

喜んでいるフリードを匙が睨め付ける。放たれている殺気の中に隠し切れない怒気が混じっている。それに気がついたフリードは喜ぶのを止めて構えた。

 

 

「てめぇらがやったことで甘粕先輩が悪魔に転生しちまった。過ぎたことをぐちぐち言うのはみっともねぇし先輩が気にしていないから俺があーだこーだ言うのは御門違いだってのは理解してる……だけど、腹の虫が治らねぇんだわ」

 

「それだけじゃ無いんだろ?」

 

「あぁそうだーーーてめぇら、よくも会長に恥を掻かせてくれたな?」

 

 

カラワーナによって甘粕が殺されて悪魔に転生した。それは本人が気にしていないと言っているが慕っている甘粕に危害を加えられて冷静でいられる程匙は賢く無い。そして何より許せなかったのはーーーフリードたちの行動によってソーナの顔に泥を塗った事だった。この地はグレモリーとシトリーが合同で管理をしていて立場はグレモリーの方が上だがだからと言ってシトリーは関係無いというわけでは無い。グレモリーに付き従う上級悪魔に責任を押し付けられる可能性がある。それによってソーナの評価が下がるだろうと匙は考えていて、それに怒っているのだ。

 

 

匙が主であるソーナに忠誠を誓っていて、()()()()()()()()()()()()()ことを知っていたフリードからすればその怒りはもっともであると思えた。

 

 

「殴らせろや、それで俺からはチャラにしてやる」

 

「ヘイヘイヘーイ、落ち着こうぜ匙っち。ボスから保護するように言われてるんだろ?それに嫁入り前の身体にあんまし傷付けたく無いし」

 

「匙っち辞めろ、それにあの人からやり過ぎなければ手ぇ出しても良いって言われてんだよ」

 

「マジかよ……いや気持ちは分からないでもないけど……マジかよ……」

 

 

匙の言うあの人とフリードの言うボスという人物は同一らしく、その言葉が本当だと分かったフリードは目に見えるくらいに落ち込んだ。確かにフリードたちは脅されていたとは言え無罪放免というわけにはいかないだろう。ちょうど良いところの落とし所としてソーナと何かしらの契約をしたのは予想できる。

 

 

無抵抗なままに匙に殴られるのは癪だと考え、フリードは光の剣と銃を手にした独特の構えを取った。先程までの方がテンションが高く、絶好調のように見えたが今のフリードには隙が見られない。実際、フリードを知る人物からすれば今の状態のフリードの方が厄介だと知れ渡っている。

 

 

「ーーー神器無し武器有り」

 

「ーーー異能無し手加減無しで殺る気はあっても殺し無し」

 

「ーーー行くぜオラァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「ーーー来いよトカゲ野郎ォォォォォォォォ!!!!」

 

 

そうして二人は、()()()()()()()()()で戦いを再開した。

 

 

 





匙VSフリード

実は二人はある人物を通して知り合っている。今回は対立しているのでそれを隠す為に始めの方では知らないフリをしていた。

フリードが人間なのに悪魔と戦えている理由は捏造。だけど天使や堕天使の加護にこれ位の効果が無いと人間じゃ人外の相手にはなれないと思う。

匙に関しては分かる人ならわかると思う。

最後は要約すると『武器だけで殺し合いしようぜ!!だけど殺しはナシな!!』ってこと。殺し無しの殺し合いは良くある事です。



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