D×D magico   作:鎌鼬

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一誠VSドーナシーク

 

 

「ハァーーー!!!!」

 

 

始めに動いたのは一誠、空に飛んでいるドーナシーク目掛けて悪魔に転生した事で強化された脚力を十全に使って跳躍する。そして斬撃。振り下ろし、斬り上げ、斬り払いの三撃を放つ。音すら置き去りにしている剣速、常人なら何があったのかを悟る事なくバラバラになっていただろう斬撃。

 

 

「フンーーー」

 

 

ドーナシークは鼻で笑い、光の大剣の一斬で全てを迎撃した。一誠が手を抜いていたわけでは無い、そも格上だと認識している相手に手を抜くなど自殺行為に等しい。これはただ単に、ドーナシークの方が強いということ。

 

 

「シィーーー」

 

 

弾かれながらも空中で体制を整え、()()()()()()()()。出来ると確信していたのでは無く、しなければならないという脅迫概念に追われて取った行動でドーナシークに布都御魂を振り下ろす。それすらもドーナシークに防がれるもののその一刀は先程のとは剣質が違う。

 

 

「ムーーー」

 

「オォォォォォォォォーーー!!!!」

 

 

先程の斬撃は全力で速く振るう事を意識して放ったがこの斬撃は重たくなる事を意識して放った。その結果、防がれはした物のドーナシークは宙から地面に落ちる事となる。

 

 

それに続く様に自然落下して着地した一誠は縮地でドーナシークとの距離を詰めて斬りかかる。落とされはしたもののドーナシークは砂埃の中無傷。瞬間移動と見間違う速度で斬りかかる一誠の剣を弾き返した。

 

 

「あはーーー」

 

 

届かない。宙から引きずり下ろす事は成功したものの、一誠の全力の剣はドーナシークにカスリもしない。刃さえ通れば斬れると自負している一誠の剣が、触れる事すら許されなかった。

 

 

「あははーーー」

 

 

そんな絶望的とも言える状況の中で一誠は笑っていた。一誠の中には怒りや絶望などの感情は存在しない、あるのはただーーー純粋なまでの歓喜。

 

 

「凄い!!凄いなぁ!!ドーナシーク!!!!剣がまったく届かない!!斬る事が出来ないだなんて初めてだ!!!!」

 

 

始めは急所を狙っていたものの今は狙う事など考えていない。頭、首、腹、腕、脚ーーー我武者羅に振るって斬ろうとしているのに、届く気がまったく起こらない。端から見ればドーナシークが防戦一方の様に見えるのだろうがドーナシークから攻める気配が感じられない事は一誠本人が一番良くわかっていた。

 

 

「どうして反撃してこない?」

 

「殺すなと、そう命令されているからだ」

 

 

布都御魂が斬り払われて火花が飛び散る。ドーナシークはヘスティーナから悪魔たちを殺すなと命令されていた。本来のドーナシークなら才こそあれどまだ高みに達していない一誠など虫でも払うかの様に一斬で殺す事ができただろう。だがその命令のせいでそれが出来なかった。

 

 

故にドーナシークは反撃をしない。だが殺されてもやらない。その結果が防戦一方だった。

 

 

「ふざけるなよーーー」

 

「ふざけてなどいない。命令に逆らえば仲間の命が失われるからな」

 

 

その言葉を聞いて当然一誠は怒るがドーナシークはその怒りを受け流した。確かに一誠からしたらふざけている様に見えるかもしれないがドーナシークは真剣なのだ。まだ先のある若者の命を散らせたく無いからこそ、こうして道化に成り下がっている。

 

 

「だが、その怒りはもっともだ。故にこうしようーーー傷一つだ。俺に擦り傷でもつけてみせろ。そうすれば手を出してやろう」

 

「上等ーーー!!!!」

 

 

斬りかかる、防がれる、先程までと同じ光景が繰り広げられる。

 

 

一誠が弱いというわけでは無い。これだけの齢でこれ程の境地に達しているのは数えられる程しかいない。もし彼の生まれた世が乱世などの戦乱の時代ならば戦士として大成していたであろう。

 

 

だが、対峙するドーナシークとは比べ物にならない。堕天使と悪魔という種族の差こそあれど身体能力のスペックに然程開きは無い。

 

 

一誠とドーナシークとの間にあるのはーーー経験と技量の差。一誠が鍛錬に励んでいた頃よりも前からドーナシークは殺し殺される世界に身を置いていた。強くなろうという選択肢が与えられたわけでは無く、強くならなければ生き残れないという環境。一誠の年齢の数十倍の時を戦いに費やしていたドーナシークとの差は容易く埋められるものでは無い。

 

 

届かない、今まで研鑽を積み重ねてきた自慢の剣が。

 

 

届かない、自分が超えるべき目標と定めた剣士が振るっていた剣術が。

 

 

圧倒的なまでの実力差、例えるなら月とスッポンだろうか。天変地異が起ころうとも覆らない。それがなんともーーー心地が良い!!!!

 

 

「ハァァァーーー!!!!」

 

 

剣速が跳ね上がる。もう自分の意思では振るっていないのでは無いかと思えるほどに速い。だが届かない。光という違いはあれど大剣という小回りの効かないはずの武器でドーナシークは全てを防いでみせる。その堅牢さはまるで牙城を相手にしているかと思うほどだった。

 

 

「まだだーーー」

 

 

一合一合武器がぶつかり合う度に自分の中で何かが湧き上がるのを感じる。そも、一誠は師という者を持った事は無かった。勝手に師と呼んでいる人物はいるものの、彼から剣を教えて貰った記憶は無い。ただ彼が振るっていた剣を真似ているだけで我流の剣と変わらないお粗末な物だった。

 

 

我流の剣ではドーナシークには届かない。ならそれに届く剣を作るしか無い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ーーー何?」

 

 

始まりからすでに数百はぶつけ合った。そんな時、僅かに一誠の剣が変わっている事をドーナシークは感じた。先程までの剣は言ってしまえばただ振るっているだけ、一応は型に嵌った剣であったが剣士とは言い難い物だった。

 

 

だが、その剣が徐々に変わってきている。一合弾く事に凄まじい勢いで成長していくのが大剣越しの感覚で感じられた。そしてその剣筋は見覚えのある物だった。

 

 

「貴様、まさかーーー」

 

「そうだよ!!お前の剣を参考にさせてもらってるのさ!!!!」

 

 

一誠の貪欲さにドーナシークは驚愕する。足りないものを補う為に模倣する事は間違いでは無い。だがそれをしようと思えば大なり小なりのプライドが邪魔をして上手くいかない事がほとんどだ。

 

 

しかし、一誠はそれに当て嵌らない。何故なら、彼の目指す極地は剣士としての頂点。剣を振るう事こそが意地なれど、剣を真似る事には少しの躊躇いも持たない。

 

 

「ーーー」

 

 

一誠の剣が変わったことでドーナシークの受けが徐々に綻び始める。想定外の成長速度に動揺を隠し切れなくなっているからだ。

 

 

そして、ついに、

 

 

「ハァァァーーー!!!!」

 

 

一誠の放った渾身の突き、これまで斬撃ばかりを放っていた為にその突きに目が追い付かずにドーナシークは反射的に首を曲げる事でそれを避けた。

 

 

「はぁ…はぁ……ようやく、届いたぞ」

 

 

息絶え絶えに語る一誠の言葉通りにかわしたはずのドーナシークの頬には血が流れ出ていた。一誠の突きを避け切れずに掠ったのだ。そしてこれが、一誠が初めてドーナシークに着けた傷でもある。

 

 

「ーーー正直に言うと予想外だった。まさかこれ程までの速度で成長をするとは」

 

 

頬から流れる血を拭いながらドーナシークは呟く。所詮若造だと見下していたところもあったかもしれないがよもや傷をつけられることになるとは考えてもいなかった。

 

 

「だが、良いだろう。誓い通りに反撃をしてやろう」

 

 

そしてドーナシークが今日初めて殺意を見せた。来るかと気構えている一誠。そしてーーー瞬きをしていないのにドーナシークが眼前に現れて大剣を振り下ろした。

 

 

「ッーーー」

 

 

考えている余裕など無く、転がるようにしてその場から全力で飛び退く。一誠が飛び退いた直後に聞こえる破砕音、転がりながら体制を立て直せばドーナシークの足元に小規模ながらもクレーターが出来ているのが見えた。

 

 

あれを受け止めれる気など無い。触れた瞬間に叩き潰されるのがオチだろう。

 

 

「ーーー来いよ」

 

 

だが一誠は臆さない。必ずこの強者を斬り伏せてやると誓い、布都御魂を握り直す。

 

 

「無論だーーー」

 

 

それに応えるようにドーナシークが動く。実力差など歴然、その差は例え命を賭けたとしても届かないと思われる程に離されている。だが、()()()()()()()()()()()

 

 

ドーナシークの大剣が振り下ろされたーーー

 

 





ドーナシーク強い(確信)

始まりの頃はドーナシークに叶わなかった一誠だったが、斬り合いの最中でドーナシークの剣を手本とする事で急成長、見事に傷一つ付ける事を成功させる。

その結果ドーナシークが反撃開始。成功したとはいえ今の一誠だとドーナシークの剣を受け止めようとしたら叩き潰される、受け流そうとしたらそれごと叩き潰されるぐらいの力の差があります。



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