D×D magico   作:鎌鼬

25 / 44
二人の転生悪魔

 

 

「はぁ……」

 

 

朝の公園で一人沈んでいたのは誠二。昨夜の出来事もあり、リアスから休めと言い渡されて学校を休んだのだが……思い悩む事があった。

 

 

「俺って……弱いなぁ……」

 

 

それは自分の弱さ。同じ日に転生した兄の一誠は戦えていたと言うのにバイサーの時も、フリードの時も自分は後ろで腰を抜かして震えているだけしか出来なかった。それに関しては殺し合いの場に迷い無く飛び込める一誠がおかしいと言うしか無いのだが誠二にはそれを気にする余裕が無かった。

 

 

「神器か……もっと強いのだったらなぁ……」

 

 

誠二の神器は龍の手(トゥワイス・クリティカル)だと教えられた。効果は単純に2倍にすると言うもの。元々が強い者が使えば脅威となりえるのだが元一般人で身体能力も高い部類に入っていない誠二の力を倍にしたところでドングリの背比べとしか言えない。

 

 

もっと強い神器なら彼女を、アーシアを守れた。昨日の夜に再会したシスターのアーシア。出会って、一誠と戦っていたはずのフリードに悪魔だとバラされて、腹を殴られて気絶させられた。情け無い自分に腹が立つ。

 

 

「力が欲しい」

 

 

力が、力があれば、戦えた。守られるだけで無く隣にだって協闘出来たし、フリード相手にも倒せるとまではいかないだろうが一誠が戻ってくるまで持ちこたえる事が出来たはずだ。

 

 

力を得る為にはどうしたら良いのか、そんな答えの出ない問いの答えを考えている時に昨日聞いた声が耳に届いた。

 

 

「……誠二、さん?」

 

「……アーシア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー久しいな、一誠」

 

「ん?……あぁ、甘粕か」

 

 

誠二は学校を休んだが自分には必要無いと考えた一誠は登校して、そのまま一日を過ごした。その代わりに部活を休んで買い物をしていたら甘粕に出会った。数日あっていないと言うだけで甘粕の雰囲気は変わっているように見える。

 

 

治療されているのだろうが全身には薄っすらと傷跡が残っていて、滲み出ている気配は鋭い物に変わっている……甘粕本人から言わせれば“戻っている”の方が正しいのだろうが。

 

 

「悪いな、最近何かとあってな。あ、ジュースいるか?」

 

「何、こちらも色々とあって時間が取れなかったからな。ファンタを頼む」

 

 

自販機に硬貨を入れて甘粕用にファンタを、自分用にコーラを買って近くにあったベンチに腰をかける。開けてコーラを一口飲み、思ったことを口にした。

 

 

「ーーー甘粕……お前、()()()()()()()()?」

 

 

甘粕から感じられる気配が悪魔のそれだった。数日前までは間違いなく人間だったのに、だ。考えられる可能性としては一誠と同じように悪魔に転生したとしか考えられないがその主までは分からなかった。

 

 

「あぁ、堕天使に殺されて蒼那に助けられた。そういう一誠こそ、悪魔に転生しているみたいだが?」

 

「俺も堕天使に殺されてな……ドーナシークって名前に聞き覚えは?」

 

「無いな。俺を殺したのはカラワーナという名前の堕天使だ」

 

「そうか……」

 

 

ドーナシークにカラワーナ、それに天野夕麻とフリード。少なくとも堕天使側には四人いる事が甘粕からの情報でわかった。

 

 

「ドーナシークに出会ったら逃げろ、そんで俺に教えろ。あいつと決着を着けたい」

 

「良いだろう、その代わりにカラワーナを見つけたら教えろ。俺はあいつを打倒せねばならぬからな」

 

 

一誠と甘粕との間で約束が交わされた。互いに胸の内にあるのは僅かな怒りと、その怒りを塗りつぶす程の期待。怒りとは一方的に殺された自身に対するもので、期待はアッサリと自分を殺せる程の強者との再戦を待ち望んでいるから。奴を倒して今よりも高みに至ろうと、彼らは強敵を望んでいるのだ。

 

 

「ところで支取のところはどうよ?」

 

「良くさせてもらっている。元々交流はあったし、他の者たちも純粋に歓迎してくれるしな」

 

「いいなぁ〜こっちはグレモリーが無能すぎて眷属辞めたいんだかど」

 

「そういえば蒼那がグレモリーが忠告を聞いてくれないとボヤいていたな……」

 

 

「忠告されてるのに後手に回ってるのかよ……本当無能だわ……はぐれになってやろうか?いや、でもそうすると誠二がなぁ……」

 

「何?誠二も悪魔になったのか?」

 

「俺よりも前に殺されてな……」

 

 

久しぶりになる会話を楽しみながら、二人は互いの近況を話し合った。二人の仲は悪くは無く、互いに親友だと思いあっている。その上同じ転生悪魔ともなれば口が軽くなったとしてもおかしく無いだろう。一誠から出てくる内容がリアスに対する愚痴がほとんどだとしても。

 

 

そんな時に、一誠の携帯に電話がかかる。画面を確認すればそこに出ている名前は誠二。

 

 

「もしもし、どした?」

 

『兄貴……兄貴ぃ……!!』

 

 

電話越しに聞こえてくるのは誠二の嗚咽。それだけで何かが起きた事を察する事ができる。

 

 

「おい誠二!!何があった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アーシアが……アーシアが殺される……!!』

 

 

 





〜誠二の心境
自分の弱さに嫌気をさしています。その内、『もっと力を(I need more power)!!』とか言いそう。

〜甘粕正彦
馬鹿登場。一誠たちがガバガバな新人研修をしている中でソーナたちによる丁寧な新人研修を受けていました。まぁ一日目が悪魔社会に関する事柄、二日目からはぐれ討伐or眷属内での手合わせというスケジュールだったけど。

〜堕天使に対する感情
怒りはあるけど少しだけ、二人にとってはそれよりも強者と戦えるという期待の方が大きい。

〜誠二の嗚咽
原作通りに遊んでいたら夕方にアーシアを連れて行かれた。その際にレイナーレについてきていたドーナシークがアーシアに何をするかを告げた。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。