D×D magico   作:鎌鼬

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はぐれ悪魔討伐

 

 

零時を超えた深夜、一誠と誠二はオカルト部のメンバーに連れられて駒王町の外れにある廃墟に来ていた。今回の目標であるはぐれ悪魔と呼ばれる存在がいるという廃墟が視界に入った瞬間、リアスと姫島と誠二以外が警戒を強める。一誠は周りに人影が無いことを確認してから布都御魂を取り出し、木場と塔城とリリィも武器こそ持っていないが周囲に気を配っている。

 

 

その姿を見て一誠は後者の三名に関心を、前者の二名に呆れを抱いた。誠二はこうした経験をまったく積んでいないからまだしも、リアスと姫島はまったく警戒している様子を見せていないのだ。二人の口ぶりからすればはぐれ悪魔の討伐というのは頻度こそ少ないものの珍しい依頼では無いはず。それなのにこの対応は冗談かと思いたくなってしまう。

 

 

「誠二、龍の籠手だっけ?一応出しとけ。何があるか分からないからな」

 

「お、おう!!」

 

 

一誠に注意されて誠二は龍の籠手を装着する。予め武器を持っているか否かで生存率は違ってくる。二度も家族の死ぬところを見たく無いからの一誠からの注意だった。

 

 

そして廃墟の入り口に辿り着きーーー()()()()()()()()()()()()()()()()。それを見て一誠は顔を覆う。リリィからの説明ではぐれ悪魔は主に危害を加えて逃げ出した、もしくは強引に転生させられて逃げ出した転生悪魔のことだと教わっている。自分が追われていると自覚しているのなら罠の一つや二つ仕掛けていてもおかしく無いというのにこの無警戒っぷり、幸いな事に罠は無かったらしいがリアスの能天気さに思わず布都御魂を振りたくなる衝動に駆られる。

 

 

「ーーーはぐれ悪魔バイサー!!大公の命により貴方を討伐しに来たわ!!さぁ、出てきなさい!!」

 

「ーーー」

 

「ストップ!!兄貴ストップ!!」

 

「兵藤君!!気持ちは分かりますけど落ち着いて!!」

 

 

それに加えてこれだ。誠二とリリィが止めてくれなかったら一誠は無意識に振り上げていた布都御魂を振り下ろしていただろう。逃げ手と追っ手の立場だというのにわざわざ来たことを教えて何になるというのだ。力を過信しているものなら兎も角、普通なら逃げ出すことも考えられるというのに。

 

 

「んん〜?誰だ誰だ〜?傲慢チキな悪魔の臭いがするぞ〜?」

 

 

だが今回の相手は前者だったらしく、廃墟の暗がりからノソノソと上半身裸の女性の姿が現れた。以前の誠二ならはしゃいでいただろう。だがすぐに視界に入った下半身が完全に獣のそれであった。

 

 

「良い二人とも、良く見ておきなさい。これが力に飲まれた者の末路よーーー私はリアス・グレモリー!!良くも私が管理する町で好き勝手やってくれたわね!!」

 

 

何やら格好つけた言い方をしているがすでに一誠からの評価は下の下まで下がっていて、誠二はバイサーの姿に衝撃を受けていて聞いていなかった。

 

 

そしてバイザーがリアスの名前、正確にはグレモリーの姓を聞いた瞬間に目の色を変えた。

 

 

「グレモリィ?グレモリー……グレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリーグレモリィィィィィィィイ!!!!」

 

 

発狂したとしか思えない程にバイサーはグレモリーの姓を叫ぶ。興味を示していなかったはずの目に憤怒の色を映しながらバイザーは身体を低くして戦闘体制に入った。

 

 

「上級悪魔!!貴族!!元72柱のグレモリー家!!殺す!!絶対に殺す!!殺シテヤルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

「ーーー祐斗、小猫」

 

 

リアスの指示を受けて飛び出したのは木場と塔城。木場は二振りの剣を握り、塔城は指貫のグローブを装着している。それを眺めながらリアスは敵の目の前だというのに悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の説明をし出した。

 

 

それを聞きながらも一誠は二人の戦闘に目を向ける。木場はスピードで撹乱し、塔城はそれで出来た隙を狙って小さな身体に似合わない一撃を叩き込んでいる。どちらも人間とは比べ物にならない程の身体能力の高さ。だがそれはバイサーにも言えた事だった。

 

 

木場の目にも止まらぬ斬撃と塔城の重い打撃を受けながらバイサーは健在。細かな傷は出来ているが明確なダメージにはなっていないと目に見えて分かる。

 

 

そして動いたのはバイサーだった。木場によって作り出された隙に飛び込んだ塔城目掛けて元の数倍にも膨張した人間の腕を振るった。これまで振り払うような反撃しかしなかったバイサーからの予期せぬ攻撃をマトモに喰らい、塔城は廃墟の壁を突き破って外へと飛び出した。見たところガードは出来ていたので大丈夫だろうが木場一人では火力不足である。

 

 

それを判断した一誠は布都御魂を握り締めて飛び出す。幸いバイサーの注意は完全に木場に向けられているので接近するのは容易かった。後ろで五月蝿いリアスの声を聞き流しながら一誠はバイサーの獣の右脚二本を斬る。

 

 

刃を通して感じたのは岩のような手応え。どうやらバイサーの筋肉の密度は異常に高いらしく、浅く斬ることしか出来なかった。

 

 

「兵藤先輩!?」

 

「文句なら後で聞く。来るぞ」

 

「死ネェェェェェェェェ!!!!」

 

 

怒り狂うバイサーの一撃を回避する。怒る事で昂り、周りが見えなくなる代わりに力を発揮させるタイプと逆に冷静になるタイプとがあるがバイサーは前者の模様。一撃でも当たれば動けなくなるだろうが単調な攻撃しかして来なかった。

 

 

岩を砕くほどのバイサーの攻撃をひたすら避け続け、注意が木場に向かった瞬間に再びバイサーの脚を斬る。初めの一撃はバイサーの筋肉の密度が予想外の高さだったために浅く斬ることしか出来なかった。だがそれを踏まえて、刃が通るのなら何ら問題は無い。刃さえ通れば斬れない物などなにも無いのだから。刃が脚に食い込み、振り抜く。その結果、バイサーの脚は切断された。

 

 

「ギィィィィィッ!?」

 

 

続けてもう一本斬ろうとしたところで木場に服を掴まれて無理矢理後退させられる。それに文句を言ってやろうとしたが直後に降り注いだ雷を見て止めた。見れば姫島が恍惚な表情をしながらバイサーに向かって手を突き出している。それだけで姫島の性癖がわかる瞬間だった。

 

 

筋肉によって物理攻撃には強かったバイサーも雷を落とされてはひとたまりも無かったのか、姫島の攻撃が止んだ時には黒焦げになっていた。それでもまだ動いているところを見ると生きてはいるらしい。戻ってきた塔城はそんなバイサーの姿を見てドン引きしていた。

 

 

一誠に向かって何か言いたげな目をしていたがバイサーを倒す事が先決だと判断したのか、バイサーと向き合った。

 

 

「コロ……コロス……」

 

「じゃあね」

 

 

リアスが手に魔力を集めて、バイサーに放とうとしてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー待テ」

 

 

上から落ちてきた短剣によって手を貫かれた事で阻止させられた。

 

 

「……え?」

 

 

突然の妨害に唖然とするリアスを抱えて引いたのはリリィ。そしてバイサーを中心となるように五角形に短剣が突き刺さる。姫島がバイサーに向かって雷を放ったが淡い緑の壁に遮られた事で届く事は無かった。

 

 

「障壁!?」

 

「ーーー」

 

 

驚く姫島を無視するように現れたのは鬼面。鬼の面を被り、ボロボロのローブで全身を隠しているために性別も判断出来ない。だが問題は、鬼面がバイサーを庇うような行動をした事だ。

 

 

「イッ……!!貴方、一体何者!?なにが目的なの!?」

 

「ギ、ギザマハ……」

 

「……転移、起動」

 

 

鬼面の呟きでバイサーの姿が消えた。鬼面の言った通りならバイサーは何処かに転移させられたのだろう。そして鬼面は短剣に刺された手を押さえながら叫ぶリアスに向き直る。

 

 

「私ハ“牙”ノ構成員、ハグレ悪魔バイサーハコチラデ保護サセテモラウ」

 

「“牙”、ですって……!!神の子を見張るもの(グリゴリ)の!?」

 

「ソウダ。保護条件ヲ満タシテイルカラ保護シタ、気二ナルノナラババイサーガハグレト成ッタ経緯ヲ調ベテミロ」

 

 

抑揚の無い声で淡々と鬼面は理由を話した。そして言いたい事だけを告げて鬼面は廃墟の暗がりに消えていった。

 

 

「おいグレモリー、お前が驚いていた“牙”って何だ?」

 

「……堕天使勢力神の子を見張るもの(グリゴリ)の保持している部隊よ。目的は分からないけどはぐれ悪魔の保護や神器保持者を集めていると報告されているわ……」

 

 

そしてバイサーが鬼面に連れ去られ、リアスが怪我を負ったという事で討伐は中止となった。

 

 

 





〜無警戒リアス
普通に追う側と追われる側だと追われる側が警戒して何か罠でも仕掛けていそうなのに無警戒で踏み込むリアス。これは一誠がキレても仕方ないですわ。尚、原作リアスも同じ模様。

〜木場&小猫VSバイサー
バイサーを少しばかり強化。結果木場の攻撃は薄皮一枚斬る程度、小猫の攻撃も耐えるという奮闘を見せてくれる。

〜一誠&木場VSバイサー
だけど逸般人一誠の参戦により不利になる。刃が通れば斬れるってわっけわかんねぇなぁ……

〜鬼面乱入
影の薄かったヒサメサイドより鬼面登場。目的はバイサーの保護。

〜“牙”
悪魔側からは神の子を見張るもの(グリゴリ)の保持する部隊で、はぐれ悪魔や神器保持者を集めている程度の存在しか知られていない。

〜バイサー
住んでいた村が流行病によって死に掛けている時に、悪魔との契約で村のみんなを助ける代わりに眷属になるという経緯で悪魔に転生。だが契約が果たされず、村が流行病で滅んだとわかって悪魔を殺してはぐれ悪魔となった。グレモリーに過剰なまでの反応を見せていたのはその悪魔が貴族だった為にグレモリー=貴族=主だった悪魔と思ったから。獣の下半身と異常な筋肉密度は主だった悪魔の改造によるもの。悪魔の駒(イーヴィル・ピース)戦車(ルーク)


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