D×D magico   作:鎌鼬

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神器覚醒

 

一誠と誠二は転んだシスターを助け起こす。そのシスターはアーシア・アルジェントと言って、どうやら廃墟となった教会の再建の為に派遣されたシスターの様なのだ。その教会の位置を知っていて、そして然程離れていないことから二人はアーシアをその教会に案内することにした。

 

 

そして教会が近づくにつれて、二人の中に恐怖心が生まれる。何故かという疑問が浮かぶがそれは最近悪魔になったということを思い出して解消された。悪魔が聖なる物を恐れるのはおかしな話では無い。人間だって肉食獣がいれば怖いだろう。

 

 

一誠はそれを精神を統一させることで沈め、誠二はアーシアに格好の悪いところを見せたく無いという男の意地で堪えて無事に教会の前にまで送り届けることができた。

 

 

アーシアが案内の礼にお茶でもどうかと誘って来たが二人はそれを時間帯と夕飯の支度があるからという理由をつけて断った。

 

 

そして翌日の放課後、眷属のことについてリアスと話している時に誠二がその事を漏らしてしまい、二人はリアスに怒られていた。とは言ってもまともに聞いているのは誠二だけで一誠は何処吹く風で聞き流していたが。

 

 

「ーーー良い二人とも、今後不注意に教会に近づいたらダメよ?忠告無しに消滅させられても文句言えないわ」

 

「だったら前もってそういう事を説明しておけよ。悪魔の常識だからって説明しなかったのか?こっちとら数日前までは人間だったんだぞ?説明もされていない常識なんぞ知るわけ無いじゃ無いか」

 

「ーーー」

 

「コラ!!」

 

 

額に青筋を浮かべたリアスが手に魔力を集めて一誠に放とうとした瞬間にリリィが拳骨を落とした。痛みでコントロール出来なくなったのか魔力は霧散して消える。

 

 

「ッ〜!!何するのよリリィ!!」

 

「それはこっちのセリフです!!何魔力を放とうとしているんですか!!今回は誰が見ても説明を怠ったリアスが悪いです!!」

 

「私は!!貴女の主よ!!」

 

「正確にはサーゼクス様が命じてなっただけですから。私の王はサーゼクス様です。その事を忘れたとは言わせませんよ?」

 

 

リアスがリリィと言い合っているがどう見ても旗色が悪い。話から察するにリリィはどうやらサーゼクスという人物からリアスの眷属になる様に言われているので眷属になっているだけのようだ。部下というよりもお目付役の方が合っているのだろう。

 

 

「そういえば、俺に宿っている神器ってどんなのなんですか?」

 

 

そんな時に誠二がおもむろに口にしたのは自分が殺された理由である神器の事だった。確かに気にならないと言えば嘘になるだろう。堕天使達が警戒して殺す程なのだから余程強力な物か、希少な物なのかーーーそれとも、危険な物なのか。

 

 

「……そうね、朱乃」

 

「はい」

 

 

リアスに返事を返し、姫島が床に何やら書き始める。始めは何をしているのか分からなかったが時間が経つにつれて魔法陣を書いているのだということがわかった。

 

 

「出来ましたわ」

 

「ありがとう。誠二君、ここに立って貴方が思い描く一番強い存在を思い浮かべて」

 

「強い存在……」

 

 

突然強い存在を思い浮かべろと言われても直ぐには出来ない。一先ず指示通りに魔法陣の中心に立ち、強い存在を上げてみる。

 

 

始めに思いついたのは誠二が愛読している漫画の主人公だったが……所詮それは想像の産物で、現実で一番強いのかと聞かれたら返事に困る。人間だった頃ならノータイムで返事が出来ていただろうが悪魔となってファンタジー溢れる世界だと知ってからは難しい。

 

 

思い付くのはすべてサブカルチャーからの物、本当に強いという確信が持てなくなってきた誠二はサブカルチャーでは無く現実で一番強い存在を思い浮かべる事にした。

 

 

そして思いついたのはーーー誠二の兄である一誠。一昨日の夜に堕天使の襲撃にあった時に彼は臆すること無く自分を守る為に悪魔にとって毒になる光の槍を掴んで戦ってくれた。

 

 

「ーーー石上神道流甲の一」

 

 

その時の事を思い出しながら誠二は構える。一誠は右手で槍を掴んでいたが誠二は左手で空想の剣を握る。慣れていない格好の為に違った構え、だがこれこそが今思い付く誠二の中の強者の構え。

 

 

「首飛ばしの颶風ーーー蝿声(さばえ)ェェェェェェェェェ!!!!」

 

 

気合いと共に左手を振るう。無論それは技として成り立っていない。斬撃が飛ぶ事なくただ空を切っただけ。だがそれでも条件は満たしていたらしく、誠二の左手に赤い籠手が現れた。

 

 

「これが俺の神器……?」

 

「……これは龍の手(トゥワイス・クリティカル)、かしら?」

 

「龍の手とは大層な名前を……で、どんな能力なんだ?」

 

「所有者の能力を一定時間二倍にする……それだけよ。神器としてはありふれた物ね」

 

 

そう言ったリアスの目には明らかに失望が混じっていた。それどころか完全に顔に出てしまっていて隠すつもりは無いらしい。姫島も同じ様な顔になっていたがそれ以外は本当に誠二の神器が龍の手なのか疑いを持っていた。本当に龍の手だとしたら兵士の駒を8個も消費するはずが無い、誠二の能力から見ても精々二、三個が良いところだ。それなのに8個も消費したという事は……神器が規格外である以外に考えられない。

 

 

リアスと姫島が落胆している側で誠二は龍の手の能力を聞いて驚いていた。リアスはありふれた物だと言っていたが能力を二倍にするというのはかなり凄い。

 

 

「凄いな……」

 

「ま、元になる誠二が弱かったら倍にしたところでっていう話になるけどな」

 

「分かってるよぉ!!少しぐらい喜ばせてくれたって良いじゃ無いか!!」

 

「増長している足元すくわれたらおしまいだから現実教えてるだけさ。ちょっとそこどいて、俺も試してみたい」

 

 

一誠がそう言うと誠二はブツブツと文句を言いながらも魔法陣から退いて場所を空けてくれた。一誠はその中心に立ち、誠二がやった様に一番強い存在を思い描く。

 

 

一誠の中で最も強い存在と言えば彼が剣を振るう様になったキッカケを与えた人物に他ならない。庭に植えられた桜から落ちる花弁と一緒に舞った剣舞は今でも鮮明に思い出す事ができる。それこそが一誠が剣士になる事を決めた根幹、一誠の起源。であるなら、最も強いのはその人物しかいない。

 

 

諸余怨敵皆悉摧滅(しょよおんてきかいしつざいめつ)ーーー」

 

 

紡がれる祝詞は一誠の意識を切り替える言霊。それ自体には全くの意味は無いが一誠からすれば師との繋がりという何物にも変えられない存在になる。

 

 

「石上神道流、奥伝の一 ……早馳風(はやちかぜ)――御言の伊吹(みことのいぶき)!!!!」

 

 

その剣技はある日に師が気まぐれに見せてくれた石上神道流の奥義、その実体は極限の視線誘導と体捌きを駆使する乱撃技で数多くの剣士が夢見る至高の剣でもある。無論今の一誠には扱う事は出来ないがいつの日かその頂に達してみせると誓っている。

 

 

そして空手で振るわれた一誠の手の中に一振りの日本刀が現れた。その日本刀には一切の装飾が施されておらず、正しく斬るためだけにあるとしか思えない刀だった。

 

 

「これが俺の神器ねぇ……」

 

「うわぁ……日本刀とかイメージ通り過ぎる……」

 

「それは……刀かしら?朱乃、この神器の名前分かるかしら?」

 

「……刀と言えば霊妙喰らいし凶剣(ヴェノム・ブラッド・ブレード)が有名ですが資料とは違うようですし……」

 

 

一誠の神器はどうやらリアスも姫島も知らないらしい。詳しく調べれば分かるかもしれないがその資料はどうも手元に無いらしく時間がかかるとのこと。一誠からしてみれば名前なんてどうでも良かった。これで何時でも刀を手にすることが出来る程度しか思っていなかった。

 

 

「なぁ兄貴、折角だから何か名前を付けたら?何時までも剣とか刀とかだとアレだし」

 

「名前ねぇ……じゃあ布都御魂(ふつのみたま)で」

 

 

誠二から言われたので付けた名前は一誠が師と仰ぐ剣士が持っていた刀の銘から取ったもの。師がいる頂に達し、そして超えてみせるという意思表明でもある。

 

 

「ーーーよし、それじゃあ二人が神器を覚醒した事だし悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の説明も兼ねて悪魔の仕事に向かう事にしましょう」

 

 

一誠がこの場の誰も知らない神器を持っていた事で立ち直ったリアスが態とらしく手を叩いて注目を集めてそう言いだした。悪魔の仕事と聞いて思い当たるのは人間の願いを叶えてその対価を得るという物だがどうやらリアスはその事とは別の事を言っているようだ。

 

 

「悪魔の仕事って何するんだ?」

 

「普通は人間からの呼び出しに応じて願いを叶えるっていうのよ。その場合はその願いに応じた対価を契約者からいただく事になってるわ。最も人間の間で知られている様な魂を対価にしたっていうのは滅多に無いけど」

 

「そして今回は大公からの依頼ではぐれ悪魔の討伐に向かいます」

 

 

さらりと姫島は言ってのけたが誠二はいきなり実戦を体験する事になるとわかって唖然としていた。一誠に至っては呆れているようだ。

 

 

 




〜アーシアとの出会い
丸々カット。だって変えられるところが無いから。

〜教会の危険性
この小説ではリアスが前もって説明していなかったから二人は教会の危険性について全く知りませんでした。原作だと説明してたっけ……?

〜リリィの立ち位置
リアスのお目付役。彼女はリアスが眷属にしたのではなくサーゼクスからの命令でリアスの眷属になっている。なのでリアスに対する忠誠心は無い。

〜誠二の神器
この段階では龍の手として認知されています。原作でも真っ先に上がった名前なんだけど……兵士の駒を8個も消費しておいてありふれた神器というのは無いと思う。

〜龍の手は強い?
作者の私見だが龍の手は普通に強いと思う。元の身体能力がしれている人間だとそれ程でも無い様に感じるが、もし魔王達や堕天使幹部、熾天使たちが持っていたら……

〜一誠の神器
布都御魂(ふつのみたま)、命名一誠。飾りの無いまさしく斬るためだけにある様な刀。リアスも姫島も知らない神器らしい。能力は不明。一誠からすれば何時でも剣を持つ事が出来る程度の認識でしか無い。現代社会じゃモノホンのポン刀は持ち歩けないからね。

〜唐突な実戦
数日前まで一般人だった誠二は白目むいて気絶しても許される。


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