D×D magico   作:鎌鼬

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説明と矛盾

 

 

「ーーー天使、悪魔に堕天使ねぇ……ハッ!!何時からリアルはファンタジーになっちまったんだか」

 

 

リアスから悪魔を始めとした人外らの情報を聞いた一誠は忌々しそうにそうぼやいた。悪魔や天使など在り来たりなファンタジーゲームにありそうな存在という認識でしか無いが実際に目にしてしまい、それを真実だと知ってしまっているので否定出来ないのだ。

 

 

「……兄貴、俺話について行けないんだけど」

 

「悪魔=転生厨、天使=狂信野郎、堕天使=神器とか言うののマニアと覚えておけば良い」

 

「なるほど!!」

 

「余りふざけてると本気で怒るわよ……!!」

 

 

一誠の適当すぎる説明に納得している誠二の姿を見てリアスは怒気を隠そうとしない。確かにふざけた説明ではあるがそれでもリアスが長ったらしく話した内容の要点は抑えているのだ。それをりかいしているのかリリィ、木場の二人は困った様に苦笑いしているし、塔城も無表情だが何かを堪えるように肩が震えている。

 

 

「まぁそういう存在がいるって事は分かった。それで次の質問、なんで俺たちは堕天使に殺される必要があったのかだ」

 

「……恐らく、彼らの狙いは誠二君に宿っている神器ね」

 

「神器っていうと説明にあった聖書の神様が作ったとか言う道具の事だよな?」

 

「えぇ、誠二君に宿っていた神器が彼らにとって不利益な物だった。だから殺したと私は考えているわ」

 

 

それを聞いて一誠は違和感を覚える。神器マニアと言われる堕天使がわざわざ神器を宿した誠二を殺しておきながら目的である神器を持ち去らないという事があり得るのだろうか?殺害後に持ち去ろうとして一誠が乱入した為に持ちされなかったと言われれば納得出来そうだがあの時堕天使は天野夕麻とドーナシークの二人いて一誠はドーナシークに抑えられていた。ならその間に天野夕麻が神器を抜き出せた筈、なのにそれをしないでドーナシークの指示に従って逃げた……何か引っかかりを感じるものの、ここでは答えが出ない疑問だったので頭の隅に置く事にする。

 

 

「なら俺が死んだのは巻き添いって事か……そいじゃ本命の質問だ。俺たちに何をした?どうして俺たちは今こうして生きている?」

 

 

これこそが一誠と誠二が一番知りたかったこと。あの日二人は完全に死んだ筈だった、それなのに今こうして生きている。その上前よりも身体能力が高くなっている。それが一番の疑問だった。

 

 

「貴方達が堕天使に殺された後、私は公園に転移させられたわ。恐らく誠二君が持っていたチラシに反応したのね」

 

「チラシ?……あぁ!!もしかして『貴方の願い叶えます』とか言ういかにも怪しげな言葉の書かれたチラシの事ですか?」

 

「えぇそうよ」

 

「え?お前いつの間にそんなの貰ったの?」

 

「確か……駅前で配ってたの貰ったな」

 

「悪魔ェ……」

 

 

駅前でチラシを配るという悪魔の実態に一誠は頭を抱える。悪魔を呼び出そうとしたら何かしらの正式な手順やら生贄やらを踏まえて呼び出すのが普通だとサブカルチャーからの知識ではあるが思っていたのだ。それなのにチラシ一枚で悪魔を呼べるとか……悪魔を召喚して契約したと言われているファウストがこの事を知ったら絶叫して倒れること間違い無しだろう。

 

 

「それで私は呼び出されて……これを使ったのよ」

 

 

リアスが取り出したのはチェスの駒。せにはそれの区別は付かなかったが一誠はそれから妙な気配が放たれていることを察した。

 

 

「それは?」

 

「これは悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と言って他の生物を悪魔にへと転生させる為に使う道具よ。例え死体だとしてもこれを使えば悪魔として蘇生させることが出来るの」

 

「つまり……俺たちから許可を取らずに悪魔に転生させたと?」

 

「……えぇ、緊急事態だったからね」

 

 

そう言って済まなさそうにリアスは顔を顰めた。()()()()()()()。それを見て一誠は更に畳み掛ける。

 

 

「悪魔に転生してから人間に戻ることは?」

 

「不可能よ。この悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を開発した魔王が戻すための研究をしているけど進展がないと聞くわ」

 

「ここの土地はグレモリーが管理していると言っていたな?」

 

「そうよ、実質の支配権は日本の神話勢力が持っているけど政治的な関係で私と他にもう一人の悪魔が治めているわ」

 

「その上下関係」

 

「私が上ね、もう一人は実質的には補佐に回ってもらっているの」

 

「最後だ……堕天使がこの町に侵入してきたことに気づいていたか?」

 

「……いいえ、貴方達が殺されるまでまったく気づかなかったわ」

 

「……そうか」

 

 

一方的に聞きたいことだけを聞いて一誠は朱乃の淹れた紅茶に口を付ける。茶葉の良し悪しなどは分からないが美味いと言うことだけは分かった。

 

 

「で、俺たちをどうするつもりだ?まさかそのまま好き勝手暮らして良いとか言うんじゃないだろう?」

 

「そうね、貴方達にはこれから私の眷属として活動してもらう事になるわ。誠二君はオカルト研究部に入部してもらって……一誠君は兼部でも構わないわよ」

 

「へいへいっと。んじゃ、その事に関してはまた明日ってことで。そろそろ帰らないと買い物やれ家事やらが出来なくなるんで」

 

「分かったわ。リリィ、祐斗、二人を見送ってあげなさい」

 

「はい」

 

「わかりました」

 

「あ、私も付いて行きます」

 

 

知りたいことを知れたのか、一誠は席を立ち上がった。時刻はすでに6時を回り、一誠の言っていた理由も彼の家庭状況を鑑みればおかしくは無いのでリアスはそれを認めてリリィと木場に見送るように言った。塔城までついて行ったのは予想外だったがそれはそれで良しとする。

 

 

「ふふ……ふふふ……」

 

「あらあら、嬉しそうですわねリアス」

 

「それはそうよ。だって元々狙っていた誠二君は兵士の駒を8個も消費した有望株、それに『駒王学園の剣客』の一誠君も付いてきたのよ?とっておきの騎士の駒を使ったけど将来性を考えればお釣りが出るわ」

 

 

一誠と誠二の価値を思い出して嬉しそうに笑うリアスは『駒王学園の生徒』としてのリアスでは無く、『悪魔』としてのリアス・グレモリーの笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー肉買った、野菜買った、卵買った、牛乳買った……他にいる物あったっけ?」

 

「いや、無いと思うぞ」

 

 

手提げ袋に詰められた買ったものを見ながら一誠は誠二と家路に着いていた。夕暮れ時でまだ明るいとはいえ後30分もすれば辺りは暗くなるだろう。

 

 

「で、兄貴。兄貴から見てグレモリー先輩はどうだった?」

 

「ーーー正直言って信用ならん」

 

 

話題として上がったのはさっきまで話し合っていたリアスのこと。彼女に対する評価を聞かれて一誠は周囲を確認した後に迷うこと無くそう言い切った。

 

 

「グレモリーがこの土地を管理していて、しかも実質的な立ち位置はもう一人よりもグレモリーの方が上、それなのに俺たちが殺されるまで堕天使の侵入に気づいていないという時点で無能感が半端じゃ無い。しかも俺たちの身の振り方を聞いたら迷うこと無く眷属入りを決定させられた。望んで悪魔になったわけじゃ無いのにな」

 

「……確かにそうだな」

 

「そして何より気に入らないのが……あいつは自分の不手際で俺たちが殺されたというのに一言も謝ろうとしなかった。普通なら謝罪の一つでもありそうなのに申し訳無さそうな顔して終いだ。そんな相手を信用も信頼も出来るかよ」

 

「言われてみれば……あれ?でもそうだったら何で眷属入りのことを了解したのさ?」

 

「グレモリーが他のもう一人と2人でとはいえ土地の管理なんて大層なことを任されている時点で悪魔の中でもそれなりの地位……人間で言うところの貴族ポジションにいることは想像出来る。そんな奴の誘いを断ってみろ、不敬罪とか要らん罪をかけられて処刑とか目に見えてる」

 

 

一誠が首を掻っ切るジェスチャーをするのを見て誠二は顔を青くさせた。確かにリアスは高校三年生という若さなのに土地の管理という大役を任されている。それは将来を期待されている地位にいるということ。そんな彼女の申し出を断ればどうなるかなど想像するのも容易い。もしも自分が口を出していて変に話が拗れていたら大変なことになっていたと誠二は肝を冷やした。

 

 

「不満だらけだがまぁ悪いことばかりじゃ無い。グレモリーの下に着くということはそれなりの力を持ってる奴の庇護下に入っているのと同じことだ。分かりやすく言ったら暴走族のバックにヤクザがいる的な感じだな」

 

「……もしかして、俺のために?」

 

「それもあるな……あとは、グレモリーの下にいたらあの堕天使……ドーナシークとまた戦えるかもしれないから」

 

 

ドーナシークと、自分たちを殺した堕天使の名前を口にしたとき、一誠の身体から何か嫌な気配が流れ出した。それは一般的にいうなら殺意と呼べるもの。気配の感じ方など全く知らない誠二に感じさせるほどに濃厚な殺意を一誠は発しているのだ。

 

 

だがその顔には憎悪だけでは無くどこか喜びも混じっていることを誠二は気がついた。これが一誠の欠点とも言えるところだ。

 

 

一誠はどうやら戦闘狂の気質を持っているようで、中学生の頃には散歩に出掛けるノリで「道場破り行ってくるわー」と行って出掛け、道場の看板片手に帰ってくることが何度かあった。

 

 

恐らく一誠は自分たちを殺したドーナシークのことを憎んでいるのだがそらと同じくらいに彼のことを求めているのだろう。ここしばらく出来ていなかった格上との死合、それを一誠は無意識のうちにか求めてしまっているのだ。

 

 

「……分かったけど無理しないでくれよ?死んでまた生き返れる保証なんてどこにも無いんだから」

 

「分かってるよ、俺だってもう死にたく無いからな」

 

 

そう言って一誠は乱暴に誠二の頭を撫でる。誠二からすれば恥ずかしい事この上無いのだが一誠らしさも感じる事があって許す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーキャァ!?」

 

 

そんな時、2人の目の前で修道服を着た少女が転んだ。

 

 

 





〜悪魔=転生厨、天使=狂信野郎、堕天使=神器マニア
変わる事の無いたった一つの真実。

〜堕天使の狙い
リアスは誠二の神器が目的だったと予想、だが一誠の考え通り神器を持っていかなかったという矛盾が生まれる。

〜悪魔へ転生
無許可で人外にへと変えた上に人間に戻れないというとんでもない行いを平然とやってのけた。原作イッセーだとハーレムにつられて気にしていなかったようだが普通に考えてアウト。

〜領地について
本来なら日本の神話勢力が管理しているのだが政治的な関係から悪魔が土地を治めている。原作を読んだ時の不思議をこういう形で解釈しました。

〜リアスは堕天使に気づいていなかった
ガバガバ過ぎる。堕天使に好き勝手させた上にシスターの侵入も許してるし……

〜眷属入りに関して
不審感が振り切れているものの戦う力の無い誠二の事を考えると眷属入りせざるを得ない。それに加えて一誠はドーナシークと戦えるかもしれない可能性から。


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