D×D magico   作:鎌鼬

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極貧ワンコ

 

 

翌日、一誠は昼休みに一人で弁当を突いていた。別に友人がいないという訳ではなくそういう気分だったから。いつも一緒に食べている甘粕は生徒会に用事があるらしく断られ、誠二も友人らと食べると言っていたので一人で食べる事にしたのだ。

 

 

「あ、いましたいました」

 

「ん?」

 

 

屋上の扉が開いて現れたのは昨夜に出会ったリリィ。彼女は可愛らしい包みのされた弁当を片手ににこやかに笑いながら一誠に近づく。

 

 

「あの、よろしかったらご一緒させて頂いてもよろしいですか?」

 

「……まぁ、別に良いけど」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

リリィから敵意が感じられない事から害する気は無いと判断して申し出を受ける。座っていたベンチに詰め寄って場所を空けるとリリィは几帳面に礼を言って一誠の隣に座った。

 

 

そして包みを解き、何の気なしに覗いた弁当の中身を見て一誠は驚愕する。リリィの弁当の中に詰められていたのはーーー圧倒的モヤシ。米も、パンも、その他の副菜主菜も不要と言わんばかりに炒められたモヤシがギッシリと詰められている。

 

 

「えっと……それは?」

 

「これですか?昨日スーパーの特売で買ったんです!!凄いですよ!!一袋5円でした!!」

 

 

そんな事を言って無垢な笑みを浮かべるリリィを見て思わず目頭を押さえてしまった一誠を誰が責められようか。噂によればリリィは海外からの留学生で良家のお嬢様らしかったがこんな弁当を持ってきているところを見るとそれは全くのデタラメだったと思い知らされる。

 

 

「……良かったらいるか?」

 

「……良いんですか?」

 

「別に良いよ。てかそんな弁当見せられたらねぇ……」

 

 

流石に特売で買ったモヤシを弁当に詰めて持ってくる程に極まった生活をしているリリィを前にして放置出来るほど一誠は冷たくは無かった。リリィは遠慮しがちに一誠の弁当から卵焼きを箸で掴んで口に入れる。すると目に見えて分かるほどにリリィの表情が明るくなった。

 

 

「美味しいです!!」

 

「そうか……もっといる?」

 

「ハイ!!」

 

 

弁当を差し出すとリリィはそれを受け取って過剰なまでに喜びながら食べていた。料理の一つ一つを食べて美味しいと喜ぶ姿を見てリリィの頭と腰から犬の耳と尻尾が生えている様に幻視してしまった一誠は悪くない。数分後、そこにはだらし無い顔で幸せそうにしているリリィと足りない時の為に買っておいたコッペパンを齧っている一誠の姿があった。

 

 

「はふ〜幸せです〜」

 

「んな大袈裟な……って言えないのが悲しいところだよな。5円のモヤシで胸張るってどんな生活してるんだよ」

 

「あはは……いつもなら実家からの仕送りでどうにかしているんですけど不況の煽りにあったとかで減らされまして……家賃やら生活費やらを除くと食費すら残らなくて……」

 

「悲し過ぎる……!!」

 

 

本人に非があったのならそれまでなのだが今回に関しては実家の方で何やらあったらしくリリィには何も非がない。一誠の目から液体が溢れてしまうのも仕方の無い事だ。

 

 

「……明日も持って来てやろうか?」

 

「えっ!?……イヤイヤ!!そこまでお世話になるわけには!!」

 

「極貧生活してるのを知って何もしないほうが精神衛生上よろしく無いんだよ!!明日も作るからな!!ハイ決定!!」

 

 

それだけ言うと残っていたコッペパンをすべて口に詰め込んで一誠は立ち上がった。どうやら強引に打ち切る事で反対させないつもりらしい。

 

 

「ありがとうございます!!」

 

 

咲夜と同じ様に聞こえたリリィの礼に、ヒラヒラと手を振る事で返して一誠は屋上から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後になる。一誠はリアスの使いを名乗ったリリィに案内されて旧校舎を歩いていた。その時に一悶着があったりするのだがそれは今は黙っておこう。

 

 

「にしても旧校舎ねぇ……オカルト研究部だっけ?妙にあった所に部室置いたな。狙ったのか?」

 

「そんなわけ無いですよ。人気の無いって条件で探して合っていたのが旧校舎だったていうだけです」

 

 

そんな会話を続けていると目的地であるオカルト研究部の部室に着く。部室の前には誠二と金髪の男子生徒ーーー木場祐斗が立っていた。どうやら一誠とリリィのことを待っていた様だ。

 

 

「ん?木場か?お前のオカルト研究部の部員だったのか?」

 

「そうですよ兵藤先輩、あど最近武道場に顔出せなくてすいませんでした」

 

「んー別に気にして無かったな……甘粕と伊達先生とのバトルが濃過ぎて」

 

「あはは……あの人たちに比べたら影薄くなりますよ」

 

 

実は祐斗は一誠と一緒に武道場でバトっていた事があるのだが最近用があるとかで来ていなかった。だがそれに一誠は気づいていなかった。それもこれもキャラが濃過ぎる甘粕と伊達先生(ふたり)が悪いのだろう。気にしていないと言われて落ち込んでいる祐斗は悪く無い。

 

 

祐斗が部室の扉を開くとそこは以下にもという具合のオカルト要素の打ち込まれた部室だった。所狭しという感じで置かれているオカルトグッズ、床や壁や天井に描かれた魔法陣。そしてここに入った瞬間から一誠と誠二は不快感を覚えた。

 

 

「兵藤君、意識をしっかりしてください」

 

「誠二君、しっかりして」

 

 

リリィと祐斗に言われて意識をしっかりさせる為に深呼吸を数度、そうすると不快感は薄れた気がした。

 

 

余裕が出来たので観察を再開すると一番奥には姫島朱乃が立っていて、部室の中央に置いてあるソファーに座っている白髪の女子生徒の姿があった。

 

 

「うおっ!?塔城子猫ちゃん!?」

 

「塔城子猫……あぁ、マスコットの?」

 

「マスコット言わないでください」

 

 

一誠の言った通り、塔城子猫は駒王学園で誠と共にマスコットとして知られている。背丈が145センチ程度しか無い上に可愛らしい容姿をしているからそう呼ばれているのだが本人からすればそれは不満らしく、齧っていたお菓子を片手に膨れている。

 

 

「そりゃあ悪かった。んで、呼び出した張本人は?」

 

「部長ならシャワーを浴びています」

 

 

部室に入った時の不快感で気がつかなかったが確かに言われた通りカーテンで仕切られた部屋の奥から水の音が聞こえてくる。どうやら塔城の言っていた通りにリアスはシャワーを浴びている様だ……ここに来る様に言いつけておいてだ。

 

 

「呼び出しといてかよ……外で待ってる」

 

「ちょっ!?一人にしないで!!」

 

 

不快そうな顔をした一誠が部室を出ようとする。それに誠二が泣きそうになりながら続く。前までの誠二なら鼻の下をだらし無く伸ばしていただろうがどういう訳かあの日から誠二の性欲は無くなってしまっている。なので学園の有名人が集まっている空間に一人でいる事が辛いのだろう。

 

 

「ーーー待ちなさい、その必要は無いわ」

 

 

カーテンから腕が伸び、姫島がそれにタオルを手渡す。リリィたち三人はそれを呆れた様子で見ていた。どうせ彼女の事だからタオルを巻いただけの姿で現れるのだろうと。

 

 

「痴女と話すつもりは無いんで」

 

 

それを一誠は振り返りもしないで一蹴し、部室から出た。誠二も出る際に一礼して一誠の後に続く。それを聞いたリアスが顔を引き攣らせながら現れたのは言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、何から聴いたら良いのやら……」

 

 

数分後、制服を着たリアスがソファーに座り、一誠と誠二が向かい合う様に座っていた。口を開いたのは一誠で、誠二は口を閉ざしている。これは事前に二人で話して決めていた事で、今回の話し合いでは一誠が主だって話す事にしていたのだ。

 

 

誠二が話したとしてもリアス相手では萎縮してまともに話せないと一誠が判断したからだ。誠二もそれに反対する事なく、必要な時を除いて黙っておくと決めていた。

 

 

「まずはそうだな……()()()()()()()?昨日みたいに魔法陣で登場とかありえない。ゲームやファンタジー物の小説で出てくる魔法使いみたいじゃないか」

 

「……そうね、まずは私たちの説明からね」

 

 

話の主導権を一誠に握られているのが気にくわないのか、リアスは自分を落ち着かせる様に姫島の用意した紅茶を飲みながら意味ありげに為を作ってそう言った。いつもの一誠なら茶化す言葉の一つでも言っていたのだろうがそれは一誠と誠二の求める話題でもあったので黙っておく事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー私たちはね、悪魔なの」

 

 

その言葉と同時に、リアスの背中から()()()()()()()()()()()

 

 

 





〜リリィ・アイゼン
どこかの貴族令嬢の様に礼儀正しい…だが実際には結構カツカツな生活をしている。主に食費方面で。容姿のイメージは型月ファンならセイバーリリィ、黄金の爪牙ならベアトリスをイメージしてくれれば幸せになれる。

〜餌付け
極貧生活で食事もままならなかったリリィに思わず一誠が弁当を上げた結果ワンコリリィが生まれる。もしくは極貧ワンコでも可。
(∪^ω^)わんわんお!!

〜木場祐斗、塔城子猫
木場祐斗は表面上の変化は無いが、塔城子猫は原作よりも成長している。無論、胸もである(迫真)これも転生者の仕業。

〜不快感
部室に入った途端に精神干渉をしてくるというエゲツなさ。いっその事清々しい。一誠なら精神力の強さから自力で抵抗出来ていたが誠二はモロに食らっていた。祐斗がアドバイスしていなかったらヤバかった。


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