D×D magico   作:鎌鼬

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不気味な一日

 

 

ーーージリリリリリリ!!

 

 

「う……ん……」

 

 

けたたましく鳴る目覚ましを手の平で圧し潰すようにして止めて時間を確認する。時刻は午前の六時、高校生からすれば早い時間帯の目覚めかもしれないが一誠は日課となっているトレーニングと家事などをしなければならないので自然とこの時間に起きるようにしているのだ。

 

 

時間を確認し、寝起きのまま数秒呆然としーーー一気に意識を覚醒させた。

 

 

「えっ!?どうして……」

 

 

一誠は今自分が生きて部屋にいるという事実を飲み込めないでいた。自分は公園で誠二を殺したドーナシークと名乗る男に斬られて死んだはず、それなのに部屋にいるのだ。寝間着を脱いで身体を見ても斬られた痕は全く残っていない。

 

 

「……夢?」

 

 

可能性として上がったのはさっきまでの出来事がすべて夢だという事。余りにも現実離れした光景だったのでこれはそうであって欲しいという願いも込められているが可能性としては一番ありえる。一誠はベッドから降りて部屋の隅に置いてあった木刀の数を数える。木刀の数は壊れたりした時の為に五本常備しておくようにしている。だが木刀の数はーーー

 

 

「三本……やっぱり夢じゃ無い……」

 

 

三本に減っていた。これはドーナシークに壊された木刀の数と一致する。つまりあれは夢では無いという証拠に他ならない。つまり自分が斬られ、誠二が殺されたのは現実ーーー

 

 

「っ!!誠二!!」

 

 

その事に気が付いた一誠は部屋から飛び出して誠二の部屋に向かう。自分の部屋の隣になっている誠二の部屋に入るとーーー大量のエロ本が散らかっている部屋の中に置かれたベッドの上で、涎を垂らしながら眠っている誠二の姿があった。

 

 

それを見て、一応首に手を当てて脈がある事を確認してから安堵のため息を吐く。

 

 

そして迷う事なく誠二の頭に手刀を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッテェ……もっと優しく起こしてくれよ〜」

 

「ウッセェ、こっちだって動揺してたんだから文句言うな。あと醤油取ってくれ」

 

 

手刀で叩かれた頭が痛むのかブツブツと文句を言いながらも誠二は調味料の置いてある棚から醤油を探す。

 

 

誠二を起こした一誠は昨日あった出来事ーーー誠二が殺され、一誠が殺されたことーーーが夢で無かった事を確認し、登校時刻が迫っていることに気がついて誠二を手伝いとして台所に立たせていた。

 

 

誠二も昨日の事をしっかりと覚えていた。天野夕麻とデートの途中に寄った公園で、夕麻から謝罪されるのと同時に何かに胸を貫かれた事を。感覚からすれば間違いなくあれで自分は死んだはずだと思っていた。なのに生きているという現実で、多少混乱していた様だが一誠も同じ境遇にあったので何とか落ち着けた様だ。

 

 

「……なぁ兄貴、俺ってあの時に死んだんだよな?」

 

「……あぁ、俺からは死んだ様にしか見えなかった。仮に急所を逸れて生きてたとしてもあの傷が跡形も無くなるなんてあり得ない。それに俺なんて肩から腰までバッサリやられてたのに無傷なんだぞ?普通じゃあり得ない」

 

「……いったい何があったんだよ」

 

「俺も聞きたいわ」

 

 

昨日何があったのか考えるものの答えは出てこない。そうこうしている内に朝餉の用意は出来て、誠が寝間着姿のまま眠たいのか目を擦りながら現れた。

 

 

「おはよう……あれ、誠二も起きてたの?」

 

「あぁ、なんか目が覚めてな……そうだ誠、昨日俺たちどうやって帰って来たか覚えているか?」

 

 

何かヒントになるかもしれないと、自分たちの夜の事をさり気なく聞き出そうとしての質問だった。だが、

 

 

「はぁ?何言ってるの?昨日は家にいたじゃん」

 

 

返って来たのは予想外の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に一体どうなってるんだよ」

 

「まさか誰も天野夕麻を覚えていないとはな……」

 

 

誠の予想外の言葉に誠二は天野夕麻とデートに行った事を口にしたがそれどころか天野夕麻という名前に誠は聞き覚えが無いと言ったのだ。誠二は彼女が出来たと自慢した友人らに天野夕麻の事について聞いたのだが彼らもそんな人物を知らないと口を揃えて言った。誠二の携帯のアドレスを調べても天野夕麻のアドレスは無く、メモリーに保存していたはずの彼女と撮った写真も無くなっている。

 

 

誰も天野夕麻を覚えていない。それどころかそんな人物が居なかったかの様に言っているのだ。覚えているのは一誠と誠二の二人だけ。頭を抱えたくなるのも無理は無い。

 

 

訳のわからない現状に悶々としながら一誠と誠二は駒王学園へと向かっていた。そう言う時間帯なのか、周囲には駒王学園の制服を着た生徒たちが一誠らと同じ様に登校している。

 

 

そんな時、強い風が吹いた。男子生徒は大丈夫だったが女子生徒はスカートで、風によって捲れてしまう。慌てて抑えたが、目の良いものならスカートの中の下着が見えただろう。

 

 

ふと、一誠は誠二が大人しいことに気がつく。いつもの誠二ならこんな光景を目にすれば最優先で何かしらのアクションを起こすのだが()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……兄貴……ヤバイ……いつもなら興奮するだろうラッキースケベな状況なのになにも感じない……!!」

 

「……地球でも滅亡するのか?」

 

 

誠二の性欲の強さは一誠が一番良く知っている。いつもなら鼻の下を伸ばしてだらし無い顔をするはずの誠二が顔色一つ変えなかったのだ。地球の滅亡を心配する一誠の心境は間違いでは無いだろう。

 

 

 

「キャァァァァァァァァ!!!!」

 

 

駒王学園の校門の辺りまで辿り着いた時に、人だかりと共に黄色い声が上がっていることに気がつく。何かあったのかと思い、謝りながら人混みを掻き分けると三人の女子生徒の姿があった。

 

 

一人は黒髪の女子生徒、姫島朱乃。

 

一人は金髪の女子生徒、リリィ・アイゼン。

 

一人は赤髪の女子生徒、リアス・グレモリー。

 

 

全員が一誠と同じ三年生で、優れた容姿から『駒王学園の三大お姉様』という呼び名で慕われている女子生徒たちだ。この騒ぎも彼女たちなら納得が行く。下手なアイドルよりも容姿が良い彼女たちなら騒がれてもおかしく無い。というよりも、いつもの事になっている。

 

 

何かあったのかと野次馬根性丸出しで行った一誠だったがいつもの事だと分かり肩透かしを食らった時、三人の内の一人のリアス・グレモリーが自分と誠二の方を向き、僅かに笑った事に気が付いた。

 

 

「笑った……?あいつは一体何に笑ったんだ……?」

 

 

リアス・グレモリーの行動に不信感を抱く一誠だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーふぅ、この程度で疲れるとは衰えたものだな……」

 

 

その日の夜7時頃、甘粕は制服姿のまま暗くなった夜道を歩いていた。一般生徒である甘粕がどうしてこの時間に帰ることになったのかというと先日の蒼那と仁村を呼び出した事でだ。あのチラシは慈善活動で行われているものなどでは無く、対価を払う必要がある。甘粕はその対価として蒼那が会長を務める駒王学園生徒会の手伝いをしていたのだ。

 

 

そしていつも通りに甘粕ぎこなせる範囲の仕事を終わらせて家に帰る途中、前からカッターシャツとパンツルックというラフな格好をした女性がやって来ていることに気づいた。季節的にはおかしく無いとは言えど、その女性の身体つきがハッキリと分かる服装は目を引く。

 

 

甘粕は道の端により、通り過ぎようとした時ーーー己の直感に従って全力で前方へと飛び出した。それは甘粕の前世で培ってきた経験則から来る直感。それが全力で避けろと警鐘を鳴らしたのだ。

 

 

飛び出すのと同時に何かが砕ける音が聞こえた。転がりながら体制を立て直し、音がした方を見ればそこには先ほどまで甘粕の頭があった高さに拳を突き出して壁を砕いていた女性の姿があった。

 

 

「……避けられましたか」

 

 

そう呟き、女性は壁に突き刺さっていた拳を抜いた。女性らしい細腕だが壁を砕いた拳には傷一つどころか赤くすらなっていない。それを見た甘粕は全神経を女性に集中させた。

 

 

「避けないでください……下手をすると余計な痛みを感じますから」

 

「……どういう理由かは知らんが俺のことを狙っている様だな?」

 

「えぇ、私はカラワーレ。貴方には怨みはありませんが……貴方を殺す様に命令されています。怨みたければ怨んで下さい、怨まれたとしても私はその命令を遂行しなければならないのです」

 

「何やら理由がある様だな……まぁそれは俺がどうこう出来るものでは無いのだがな。俺は甘粕正彦、言っておくがここで死ぬつもりなど断じて無い」

 

「分かっています」

 

 

女性ーーーカラワーレはそう返して甘粕との距離を一歩で詰めて拳を放った。女性の細腕だというのに風を切る音が甘粕の耳に届く。格闘技の中で最も速いと言われているボクシングのジャブよりも速い一撃を甘粕は皮一枚を掠らせる程度でかわせた。それは狙ったものでは無く、皮一枚掠るギリギリで無ければかわせなかったのだがそれでも避けれた事には変わりは無い。

 

 

即座に踏み出し、カラワーレの死角になっていた下からアッパー気味に拳を放つ。前世の最盛期に比べれば欠伸が出る程に遅い物ではあるが今の甘粕の全力はこの程度しか無いのだ。

 

 

油断が、それとも慢心からか、カラワーレはその攻撃に気付きながらも反応を見せなかった。そして甘粕の拳がカラワーレの顎にぶつかりーーー甘粕の拳の方が砕けた。全力で加減無しに放たれたので痛める程度では無く拳が壊れる。

 

 

「チィッーーー」

 

 

舌打ちをしながらも甘粕は止まらない。砕けていない方の手でカラワーレの服の襟を掴み、股を蹴り上げると同時に脚を払う。決まれば空中で巴投げわする形でカラワーレを投げ飛ばせるはずだったがーーーカラワーレは不動。股を蹴り上げた脚は拳と同様に砕け、払ったはずのカラワーレの脚はその場から1ミリもずれていない。

 

 

この一瞬の硬直をカラワーレは見逃さなかった。即座に甘粕の顔を掴み、地面にへと叩きつける。肺から空気が漏れながらも甘粕はカラワーレの手を振り解こうとするがまるで万力にでも絞められているのでは無いかと思う程の握力でそれは叶わない。

 

 

甘粕を叩きつけたことでカラワーレの服が破れ、その下から下着が見えてしまうのだがカラワーレはそれを気にすること無く、

 

 

「ーーーゴメンなさい」

 

 

謝罪と共に貫手で甘粕の心臓を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー甘粕、先輩?」

 

 

カラワーレが甘粕の殺害に成功してから数分後、そこに悪魔である匙と仁村がやって来た。殺されているのが甘粕だと気付きて仁村は呆然とし、匙は不快そうな顔をして主に甘粕が殺されたことを報告した。

 

 

「……やだなぁ甘粕先輩、冗談ですよね?ほら、起きて起きて、こんなところで寝ていたら風邪引きますよ?」

 

「……留流子」

 

「約束、しましたよね?また遊ぼうって、今度買い物に付き合ってくれるって……約束破っちゃダメですよ?先輩」

 

「ーーー留流子!!甘粕先輩は……もう……!!」

 

「どうして……どうして……ッ!!」

 

 

甘粕が死んでいると理解させられて仁村は甘粕の死体に泣き付く。仁村が甘粕のことを慕っていたことを知っていた匙は悔しそうに歯を食いしばり仁村の好きにさせる事にした。

 

 

そんな時、主である蒼那からある報せが届く。

 

 

「ーーー了解です……はい、はい……失礼します。留流子、甘粕先輩を学校まで連れて行くぞ」

 

「……え?」

 

「会長からの指示だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「甘粕先輩を、悪魔に転生させる」

 

 

 





〜一誠と誠二
とある方法により生存。ただ確実に死んだはずなのにどうして生きているのか分からずに混乱している。そして周囲が『天野夕麻』という人物の事を知らないでいるという現状により混乱は加速する。誠は覚えてはいるが原作に関わりたく無い為に嘘をついた。

〜誠二の異常
性欲の権化だったはずの彼の性欲が薄まった様です。これでおっぱいドラゴンフラグは消えたな!!(白目)

〜対価
願いを叶える代わりに対価を要求する悪魔稼業。甘粕は労働で対価を払っています。

〜甘粕VSカラワーレ
カラワーレ圧勝、大体スペックの差で負けてる。現在の甘粕は常人よりも上な程度だからどう足掻いても人外には負けてしまっている。Dies風にいうなら遊び無しで殺りに来たベイVS蓮炭の一番初めの戦い。本来のスペックだったら最初の不意打ちをカウンターして終わっていた。

〜ヒャッハー&仁村留流子
堕天使の侵入に気が付き自主的に見回りをしていたら現場に遭遇。仁村は甘粕と縁があって慕っていたので甘粕ぎ死んだ事に号泣、ヒャッハーもヒャッハーする事無く、意気消沈してソーナに連絡をしてした。


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