D×D magico 作:鎌鼬
レイナーレがヒサメにへと『助けて』というメールを送った日から遡る。
ここは駒王町にある私立駒王学園。女子校で、いわゆるお嬢様学校として知られていたそこだったが少子化の影響で入学希望者が減少し、三年前から共学になっていた。
この日はすでに授業は全て終わり、友人と話し込んでいる生徒や帰宅しようと準備している生徒、自身が所属している部活動に向かおうとしている生徒などが見られる。
そんな中で、茶髪の整った顔つきの男子生徒がカバンを背負い廊下を歩いていた。同じ学年の生徒からは別れの挨拶をかけられるが後輩からは遠巻きに見られている。だがそれは彼が避けられているという訳ではなく、学園内で有名人として知られているからだ。
彼の名前は
「じゃあね、イッセー君」
「アイアイ、さよなら」
「部活頑張ってね」
「言われなくても頑張るから」
「見て見て……兵藤先輩よ……」
「今日もカッコ良いわぁ……」
「流石は『駒王学園の剣客』……」
「なのにどうして先輩の弟は……」
兵藤一誠は剣道部に所属しているものの、公式の大会に出た経験は一度も無い。何故なら彼が習っていたのは剣道では無く剣術だったから。似ているように見えて違うものを習っていたのだが剣道部の顧問に相談したところ二つ返事で剣道部に所属するが大会に出ない事を許可してもらったのだ。どうやら顧問の先生は剣道だけで無く剣術にも理解があったらしく、時々であるが木刀で防具無しの真剣試合をしている。そんな事から着いた渾名は『駒王学園の剣客』、本人からすれば行き過ぎた呼び名だが周りからすれば相応しい物なのだろう。そのルックスと、時々行われる真剣試合から兵藤一誠は駒王学園で広く知られていた。
そんな彼にも、恥ずべき部分というのは存在する。
「ーーーま、て、やコラァァァァァァァァァァ!!!!」
「「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」」」
「……またか」
絶叫が聞こえた先には走る坊主、メガネ、茶髪の男子生徒三人。その後ろには金髪の男子生徒が走って追いかけていた。金髪の男子生徒は良い意味で学園中に知られているが、三人の男子生徒は悪い意味で学園のゆうめいじんにはなっている。
まず、金髪の男子生徒は
そして男子生徒三人だが……彼らは『変態三人組』という呼び名で知られている二年生。ひどい呼び名だと思うかもしれないのだがその通りなのだからしょうがない。教室内でエロ本やAVを周りの目を気にせずに広げる、女子更衣室を覗くなどの行為を平然とやってのけて学園内の女子生徒全員から不倶戴天の敵として知られている。
どうせ匙と三人の鬼ごっこも彼らが何かをやらかしたから怒ったのだろう。
「オラァ!!」
「イヤァァァァァァァァァァァ!!」
匙が一番後ろにいた坊主ーーー松田の首根っこを掴んで投げ捨てる。松田は近くにあった掃除用具の入っているロッカーに頭からシュートされて動かなくなる。
「ヒャッハァ!!」
「ノォォォォォォォォォ!!」
続いてメガネーーー元浜の頭を掴んで投げ捨てる。元浜は壁にビタァン!!とぶつかって廊下に落ちて動かなくなる。
「松田ぁ!!元浜ぁ!!……クソッ!!お前たちの犠牲は無駄にしない!!俺は絶対に逃げ延びてやるぅ!!」
「ーーー知らなかったのか?俺からは逃げられない」
「アイェェェェェェ!?アニキ!?ナンデアニキ!?」
最後の茶髪ーーー
「兵藤先輩、わざわざすいません」
「良いって良いって、ウチの弟がいらん迷惑かけてるからこの位は当然だって」
匙が一誠に気がつき、申し訳無さそうな顔をして謝罪したが本人は大して気にした様子を見せない。これが一誠の恥ずべき部分、彼の弟の兵藤誠二が『変態三人組』として知られていることだ。何にも関係がなかったらただの他人事で済んだかもしれないが残念なことに一誠と誠二は兄弟、他人事では済ませられなかった。
幸いと言うべきなのか、誠二がいくら変態行動をしたところで一誠の評価は下がらない。むしろ誠二の変態行動を止めているということで評価が上がっている節が見られる。そしてそれに比例して被害にあった生徒に頭を下げる回数も増えている。
「身内の恥部だよ本当に……」
「大変そうっすね……んじゃ、俺はこいつらを連れて行くんで」
「しっかりと反省させてやってくれ」
変態三人を引きずって去っていく匙に手を振って別れを告げて一誠は部活へと向かう。
増設された男子更衣室で胴着に着替え、武道場に行くと一誠よりも先にここに来て木刀を振っている男子生徒がいた。
彼の名前は
甘粕は現れた一誠に気がついて木刀の素振りを止めた。
「む、来たか」
「待たせた。ウチの弟が変態行動してたから止めて匙君に引き渡してやったから」
「兵藤誠二か……欲望に素直なことは悪い事ではないが、それで周りに被害を出すとなるとな……」
「ホンットあいつは恥だよ……去勢してやろうか?」
「……手段の一つとして考えておくのも悪くないな」
甘粕は別の繋がりで匙と交流があるので彼の苦労を考えると一誠の去勢発言を否定しきれなかった。性欲自体は一誠にも甘粕にもあるが誠二たちのそれは常人と比べて桁外れに大きい。去勢したところで性欲が無くなるか怪しくなってきたところで一誠は考えるのを止めた。
「フッフッ……良し、やろうか」
「応、来い」
柔軟を終えた一誠がそう告げると甘粕との間に緊張感が走る。互いに防具は付けておらず、握られているのは木刀、当たりどころが悪ければ死ぬかもしれないのだが二人にその事に対する危機感は無かった。
「ーーー行くぞォォォォォォォォ!!!!」
「ーーー石上神道流兵藤一誠、推して参る!!!!」
二人の他に誰もいない武道場に、木刀同士がぶつかり合う音が響き渡った。
〜兵藤一誠
原作の主人公……なのだが転生者のいる影響なのか、二年生ではなく三年生であり、性欲も人並みになっている。部活は剣道部に所属しているものの納めているのは剣術の石上神道流、時々顧問や甘粕と木刀ではあるが真剣試合をしている。最近の悩みは弟が恥部なこと。
〜兵藤誠二
原作の一誠ポジションに収まっているものの転生者では無い。名前が違うだけの原作の一誠を想像してもらえればオッケー。最近の悩みは兄の一誠が剣道部に所属しているせいで剣道部の女子の着替えが見れないこと。
〜匙元士郎
〜甘粕正彦
馬鹿。
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