D×D magico   作:鎌鼬

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悪魔との邂逅

 

 

ヴリトラの気配を感じて探していたらはぐれ悪魔と悪魔少女、それに少年に出会いました。悪魔少女は純粋な悪魔の気配がするので神器持ちでは無い。となると可能性としてははぐれ悪魔か少年のどちらかだが……少年の方から気配を感じるな。

 

 

「なんだぁ貴様ぁ?」

 

「ユーリ……いんや夜叉、少し遊んでやれや」

 

「御意」

 

 

俺が上着から取り出した鬼面をユーリに渡すとそれを被り、ユーリは感情を欠片も感じさせない無機質な声で返事をしながらはぐれ悪魔へと飛びかかって行った。俺は飛び降りて悪魔少女と少年の方に降り、悪魔少女に向かって恭しく礼をする。

 

 

「失礼、私は神の子を見張るもの(グリゴリ)の部隊である“牙”に所属しているヒサメと申します。彼女は夜叉、我々は貴女とは敵対するつもりはありませんのでご了承ください」

 

「貴方があの“牙”の!?……失礼しました。私はソーナ・シトリー、シトリー家の次期当主です。こちらも貴方方と事を構えるつとりはありません」

 

「シトリー?シトリー……あぁ、あの魔王のセラフォルー・レヴィアタンの!!つまり貴女は彼女の妹、でよろしいですかね?」

 

「その通りですが……姉、いやセラフォルー様の事をご存知で?」

 

「それはもちろん、色々と厄介な事をするものですから最低でも各勢力のトップの情報くらいは頭に入れてありますよ」

 

 

にしてもこの子があのセラフォルー・レヴィアタンの妹ね……シトリー家は元72柱の貴族の家系で氷の魔法を得意としてきた悪魔。セラフォルー・レヴィアタンも氷の魔法を使い、その実力の高さ故に魔王となったのだが……直接の面識は無いのだがアザゼルからセラフォルー・レヴィアタンの写真を見せられた時は目を疑った。だっていい歳した大人が所謂魔法少女の服を着てたんだもの。それを見てフリーズして、きっと休みの日に趣味のコスプレでもしてたんだなと思ったらアザゼルからそれがセラフォルー・レヴィアタンの正装だと告げられてまたフリーズした。

 

 

第一印象が真面目な委員長のこの子がセラフォルー・レヴィアタンの妹とか……苦労してるんだろうな。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!一体何がどうなってるんだよ!!あの化け物は!?それにあんたは!?しかも悪魔って!!」

 

 

俺とソーナ・シトリーは元々裏側の住人だから話は早かったが裏側の事を知らない少年はユーリに短剣を投げられて動けないでいるはぐれ悪魔を指差しながら叫んでいた。

 

 

「あぁ、悪かったね。君の名前は?」

 

「さ、匙元士郎……」

 

「匙元士郎、いい名前だね。さて、結論から言ってしまえば俺と彼女は人間じゃない。人から悪魔や堕天使と呼ばれる存在だ」

 

 

そう言いながら俺は背中から堕天使の黒いカラスの様な羽根を片方だけ出して見せる。ソーナ・シトリーもそれに乗ってくれたのか悪魔の蝙蝠の様な羽根を広げる。

 

 

それを見た元士郎は口をパクパクさせながら俺に指を指して唖然としている。それはそうだろう、人間じゃ空想の存在として知られている悪魔や堕天使が実在していたなんて分かればこうなる。

 

 

「さて、シトリー様。我々は悪いが休暇中なのです。貴女に押し付ける様で悪いのですが元士郎少年の事を任せてもよろしいですか?代わりにあのはぐれ悪魔はこちらで始末しましょう……もちろん、手柄は貴女に差し上げますので」

 

「……いいえ、必要ありません。今の私では倒せないはぐれ悪魔を倒したと言っても誰も信じないでしょう。功績は貴方方に差し上げます」

 

 

ふぅん……なかなか頭が回る様だな。ソーナ・シトリーはこの件で神の子を見張るもの(グリゴリ)に貸しを作ることを嫌って楽に手に入る功績を拒んだ。血筋や家柄に固執している悪魔なら喜んで飛びついただろうがそうなると“自分では倒せないはぐれ悪魔を堕天使に倒してもらい、それを自分の手柄とした恥晒し”となる。各勢力の中がよろしくない今ではそんなことを知られれば付け込まれる格好の隙となってしまう。この子はそれだけの事に気付いている。正直言って将来が楽しみだ。

 

 

「なるほどなるほど、流石は魔王を出したシトリーの家系というべきか、なかなか頭が回る様ですね」

 

「あら、さり気無くこちらに隙を与えようとしているヒサメ様程ではございませんよ」

 

「クククッ……」

 

「フフフ……」

 

 

うん、なんかこの子とは仲良くなれそうな気がする。

 

 

「ギャァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

あ、ユーリが相手してたはぐれ悪魔が首跳ねられた。ソーナ・シトリーと元士郎に集中してて気づかなかったな〜

 

 

「ご苦労、では帰ろうか……っと、その前に」

 

 

はぐれ悪魔の相手を終えたユーリから鬼面を取り、その場から立ち去ろうとしたがここに来た本来の目的を思い出して元士郎に近づく。俺が近いたことで元士郎はビクリと身体を跳ねらせたがそれでも一歩も引かずに俺のことを見ている。なかなかに根性の据わった奴だな。

 

 

「じゃあ兄弟?縁があればまた会おうや」

 

 

意味ありげに話し話しかけ、ユーリを伴って今度こそこの場から離れる。元士郎には十中八九ヴリトラに関係がある神器が宿っているだろうが今は中途半端に覚醒している状態。完全に覚醒しているのなら兎も角今の状態ではあまり魅力は感じられないので伏線だけを仕掛けておくことにする。

 

 

だけどまぁ、はぐれ悪魔を倒したことはアザゼルに報告しなきゃならんだろうな。あちらの不手際とはいえ悪魔の領分にこちらから手を出した訳だし。最悪休暇を切り上げて神の子を見張るもの(グリゴリ)に戻る様に言われるかもしれない。

 

 

「ご苦労様、帰って風呂入って寝るか」

 

「……うん」

 

 

そう考えると鬱ってくるのでユーリに癒されることにしよう。

 

 

 






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