D×D magico 作:鎌鼬
「あぁ〜久々のコンビニ弁当うめ〜!!」
買ってきたコンビニ弁当をひたすらに掻き込む。転生して以来コンビニ弁当を食べた事が無かったので実に15年ぶりのコンビニ弁当だったりする。こう、上品じゃ無いけどチープな感じが良い。
「美味し……」
俺の隣ではユーリが座ってアイスキャンデーをペロペロとしている。
「どう、する……?」
「ん〜?今日は買い物は済ませたし……もう帰って寝るくらいしかやる事無いんだよな」
服やら娯楽品やらはすでに買い終わって最低限を残して
それに……前世からやりたかったこともあるし。
「ふぅ、ごちそうさんっと……じゃ、試してみますか」
「タバコ……?」
「あぁ、ユーリは俺が転生者だって知ってるだろ?前世から二十歳になったら吸いたいと思ってたんだ。だからこうして肉体が成人になった今に吸おうってわけ」
前世からタバコを吸う大人がカッコ良いと憧れ、二十歳になったら吸いたいと願って三十年以上は経っている。実年齢ではまだ二十歳じゃ無いが種族的には成人しているので吸えるのだ。
コンビニで買ったタバコの封を開けて口に咥え、ライターの火を近づける。そうして見て覚えていた通りにタバコを吸って肺臓を煙で満たして吐き出す。
「ふ〜……種族的な違いからなのか分からないけどこんなものかって感じだな……悪くは無いけど」
「そう……」
「気になる?」
「少し……」
「ユーリにはまだ早いな。あと十年我慢してなさい」
「はぁい……」
無表情ながらにも不貞腐れた様子でアイスキャンデーを舐めているユーリの頭を撫でてやる。すると雰囲気が明るくなった。無表情だけどちゃんと見てれば何が気に入らないのかとか何が気に入ってるとか分かるんだよな〜
ユーリがアイスキャンデーを食べ終えるのをタバコを吸いながら待っている。すると……いつも身近で感じられる気配が離れた場所から感じられた。
「……ヴリトラ」
『わかっている……これは我の断片、我の魂の封印された神器が近くにあるようだな』
「殺す……?」
「殺して解決だなんて蛮族思考やめーや。ひとまず接触して見てからだな。話し合いで済めばそれで良し、力使って被害出す事に悦ってるようなら物理的に神器抜いて終わらせようや」
『ヒサメのその考えも中々に蛮族思考だぞ』
「お静かに」
ここから然程離れていない場所から感じられたヴリトラの気配を追いかけて俺とユーリは黄昏時の裏路地に入って行った。
「歩きタバコは、メ……」
「え〜?カッコ良いのに……」
「ーーークソックソックソッ!!」
裏路地で悪態をつきながらフラフラと歩いている少年がいた。彼の名は匙元士郎、今年小学校を卒業して中学校へと入学した少し粗暴なところはあるが普通の少年……のはずだった。
「なんで……なんでこんな事になったんだよ……」
顔は暗くて分からないが声色は泣きかけているように聞こえる。匙がこうして裏路地を彷徨っているのには理由があった。
ことの始まりは二週間前、彼の両親の顔色が悪かった。二人は疲れているだけだろうと判断して、匙本人もそう思っていたが……両親は翌日、起き上がれなくなるほどに衰弱していた。
二人は即座に入院、匙は二人の心配をしながらも中学校へと通っていたが……クラスメイトたちが次々と体調不良を訴えて早退していった。
その結果匙のクラスは学級閉鎖となり、匙は空いた時間に両親の見舞おうと病院に向かった……そして、匙が病院に訪れると匙の近くにいた病人たちが次々と意識を失っていった。
そこで匙は気づいた。自分のせいではないかと。彼らが意識を失い、クラスメイトの体調が悪くなり、両親が衰弱したのは自分のせいではないかと。
そして匙は病院から逃げ出した。出来るだけ人のいない場所を探してフラフラと彷徨う生活を始めた。そうすることでそこにたむろしていたガラの悪い連中に絡まれる事になるのだがそいつらは匙に近づくと顔色を悪くして逃げていく。
そうして二週間が経った。マトモな物を食べておらず、水すら飲んでいないというのに匙の身体は前よりも調子が良くなっているように感じられる。
「ハハッ……まるで吸血鬼……化け物みたいじゃねえか……」
裏路地の壁に寄りかかりながら匙は自虐気味に笑った。人に害を与えながら自分が良くなっているなどまるでオカルトの代名詞ともいえる吸血鬼そのものではないかと力なく笑う。
「誰か……助けてくれよ……」
そう呟いた匙の目からは涙が流れていた。匙はまた若く、無意識とはいえ誰かを無差別に害しているとなれば泣きたくもなるだろう。
匙を救える者はいないーーーはずだった。
「あの……」
しゃがみ込んで顔を隠していた匙に声がかけられる。声から判断出来るのは若い女という事だけ。親切から声を掛けてきたのだろうと匙は判断したがどうせ直ぐに自分のせいで気分を悪くして逃げるだろうと思い無視する。
「あの……すいません……」
だがその声の主は逃げない。それどころか肩を揺さぶってきている。匙が顔を上げるとそこにはメガネをかけた自分と同い年くらいの少女がいた。
「貴方が呼びましたか?」
「ーーーはぁ?」
少女の言葉に匙は唖然とする。匙は間違ってもこの少女を呼ぼうとだなんて考えていない。むしろ一人であることを望んでいたからだ。
「えっと……何かチラシのような物を受け取ったことはありませんか?貴方の願いを叶えますって書かれた」
「チラシ?」
身体を探って見るとポケットの中から少女の言った通りの言葉とオカルトじみた魔法陣の書かれたチラシがクシャクシャの状態で出てきた。そこで匙は思い出す。両親への見舞いに行く前の買い物をしていた時に配られていたこれを渡されたと。
「ふーん……あんた、本当に願いを叶えてくれるのか?」
「はい、それ相応の対価は必要になりますが」
「対価……悪魔みたいだな……だったらーーー」
そして匙はこの二週間で自分に起きたことを話し始めた。諦め半分ではあるが、もしかしたらという願いを込めて。
「……」
「なぁ、あんた、願いを叶えてくれんだろ?だったら……どうにかしてくれよ……でないと俺はどうにかなっちまいそうだ……!!」
「もしかしたらーーー」
少女には匙の今起きていることに心当たりがあったのか言葉を紡ごうとするーーーが、
「キヒャーーーキヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!匂う!!匂うゾォ!!メスとオスのガキの匂い!!」
それは下卑た笑い声に遮られた。裏路地の暗がりから現れたのは3メートルはあろう巨大な体躯の化け物。上半身は人だが手と下半身のあるべき場所がカマキリのそれになっている。
「な、なんじゃありゃあ!?」
「っ!!はぐれ悪魔、マンティア!!」
匙は化け物の登場に後ずさりし、少女は舌打ちをして身構える。何が起きているのか分からなくて匙の脳がパンクしそうになる。
「ーーーあれははぐれ悪魔、ご主人に噛み付いて逃げ出した飼い犬だと思えや」
それに答えたのは落ち着いた男の声。声が聞こえた方向は上から、必然的に全員の視線が上に向く。
「ったくよぉ、せっかく気配がしたから出向いたら悪魔にはぐれ悪魔と来たもんだ。厄日か?厄日なのか?なんで面倒事が纏めてくるんですかねぇ……」
「日頃の行い……?」
「あーホント神ってゴミだな!!死ねば良いのに!!」
いた。建物の淵に腰を下ろしてこちらを見下ろしている人物が二人。一人は毛先が黒い青髪で咥えタバコをした青年、もう一人は青年の膝の上に座っている銀髪碧眼の少女。
ここに、ヴリトラの神器を持つ者同士が出会った。
〜匙元士郎
ヒャッハー予定者。今回は神器が中途半端に目覚めて周りに被害を出していた頃の話なのでショタ匙。
〜メガネの少女
一体どこの魔法少女(笑)の妹なんだ……
〜マンティア
はぐれ悪魔。手が鎌で、下半身がカマキリの下半身のどこからどう見ても化け物。
活動報告にてせーはいせんそー開始のお知らせをしています。よろしかったらどうぞ。
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