D×D magico 作:鎌鼬
注意
この小説では作者の別の小説の主人公が登場します。そんなに頻度は多くするつもりはありませんがそれが不快だと思われるならプラウザバックをお勧めします。
「ーーーパァンパカパァン!!おっめでとうございまぁす!!」
「……はぁ?」
現象確認、死んだと思ったらどこかの家のリビングにいて黒いコートの男におめでとうと言われた。なにがなんだかわからないよ。
ちなみに死因についてはどこにでもある交通事故。信号待ちしていたら軽トラに引かれました。ネット小説にある様な誰かを助けて〜なんてことはしていない。
「とりあえず説明頼んでも?」
「そりゃあ呼び出したこちらとしては当然の義務だ。そこに掛けてくれ、紅茶とコーヒーどっちが良い?」
「コーヒーブラックで」
「あいあい」
とりあえずテーブルで座って待っていると淹れたてのコーヒーが目の前に置かれ、コートの男は一升瓶と升を持っていた。いきなり飲酒とはたまげたなぁ……あ、コーヒー美味い。
「んで説明だったな、先に言っとくと君は死んでいる」
「それは自覚してます」
「うん、なら話は早い。偶々君が今日死んで、偶々君のことを拾った俺が偶々黄昏の女神の真似事をしてみようと考えついたわけだよ」
「何度偶々言うんですか……って黄昏の女神なんて想像の産物じゃないですか」
「いるよ」
「え?」
「黄昏の女神、いるよ。ついでに無間と水銀と黄金もな」
……衝撃、覇道神は実在していたようだ。ウンコマンの因子潰さなきゃ(使命感)
「……ってことはこの世界の理は輪廻転生?」
「いんや、我欲界餓鬼道。天狗道みたいな考え方だけど渇望は唯我じゃなくて親愛ってところが違うな……ま、滅尽滅相対象が他人から敵対者に変わっただけだから無害無害!!」
「滅尽滅相って言われている時点で不安が止まらないんですがねぇ……」
道理で家族愛やら兄弟愛が強い訳だ。だけど天狗道に比べれば数千倍はマシなのだろう。最も素晴らしいのは輪廻転生なのだろうが。
「で、黄昏の女神の真似事でしたっけ?つまり転生させると?」
「実は興味深い世界を見つけてね、そこは輪廻転生の理を受けていない世界なんだ。そして別の神の理を受けている。便宜上その神のことを外神とでも呼ぶか。黄昏の理がどうなっても俺の知ったこっちゃ無いが餓鬼道の理を害されるならその外神を滅尽滅相しなきゃいけなくなる。つまりその世界にお前を送り込むことで
「諜報、みたいなものですか?」
「認識としては間違っちゃ無いな、だけど連絡を取る必要は無い。お前のことを餓鬼道の触覚として送るから情報は勝手に俺に流れてくるからな。無論断ってくれても構わない。そうなら輪廻転生の理で転生させてやるから」
「ちょっと待って、この世界の理は餓鬼道なんでしょう?」
「俺、その気になれば歴代覇道神の理を流せるから」
なんだこのバクキャラは(白目)だけど拒否権はあるようだな。ネット小説だったら有無を言わさずに勝手に転生させられたりとかあるけど。でもまぁ、答えは決まってる。
「行きますよ、家族に未練が無いと言ったら嘘になりますが皆なら立ち上がってくれると信じてます。それに知らない世界に行くとかロマンに溢れてるじゃないですか、男として胸が躍りますよ」
「良い返事をしてくれてどうも。だが裸一貫で送り出すのは心苦しいから幾つかくれてやるよ」
「それはいわゆる転生特典ですか?」
「そうだな……まずは餓鬼道の加護をくれてやろう、親愛の対象が危険に脅かされているならパワーアップする祝福だ」
「……波旬の糞みたいな?」
「やって欲しいならやってやるぞ?」
「やめてくださいおねがいします」
そんなことをされて喜ぶ趣味は無い、普通に祝福でお願いします。
「次に……こいつだな」
そう言うとコートの内側から一冊の本を出した。一応断りを入れて中身を読ませてもらうとそこには儀式と魔法の二種類について書かれていた。
「この間水銀に頼んで家族旅行で連れて行ってもらった平行宇宙で面白い魔法を見つけてな、ある儀式をクリアするとそれに応じた魔法が使えるようになる世界だったんだよ。それには俺が調べた魔法とそれを習得するための儀式について纏めてある。二つ目はその魔法を習得することが出来る種だ。今から送る世界がその世界と同じ法則だとは限らないがその本を持っているお前ならどこであろうとその魔法を習得することが出来る」
「おい待て、これとある週刊少年誌で見たことあるぞ」
「シオン君とエマちゃんに会ってきた」
「マジか(驚愕)」
まさかmagicoの魔法を使えるようになる日が来るとは……それに個人的な考えだが習得だというのもありがたい。この人が与えてくれたのはあくまでそれを得ることが出来る可能性、最初っから使えるようになる訳では無い。よくネット小説だとまんまで与えられて自分の力のように使っているがそれは間違っていると俺は考えている。それは本来の持ち主のちからであって与えられた者の力ではないから。だから、可能性というのが嬉しいのだ。それで得た力は胸を張って自分の力だと言えるのだから。
「それで追加に魔法の残量が分かる懐中時計だ。あそこの魔法は使用回数が決まってるからな。魔眼にしても良いけどどうする?」
「時計でお願いします」
魔眼と言われて俺の厨二精神が疼いたけど懐中時計の方が好みなので厨二精神には我慢して貰おう。
「まぁ、こんなところか。転生は赤ん坊からの転生になるぞ。そうした方がこっちが楽だからな」
「つまり頑張ればこのままの姿でも転生出来ると……こっちはしてもらう立場ですから贅沢言いませんよ。それに肉親を知らないんで二度目とは言え出来るのは嬉しいですし」
「マジ?」
「マジマジ、俺が赤ん坊の時に強盗に殺されたらしいです。まぁ孤児院と義理の親には良くしてもらったから不満はありませんけど」
このカミングアウトで男の俺を見る目が少し変わった気がする。感覚的にしか言えないが……まるで同じ境遇の人間を見るような感じだ。
「そうか、なら行こうか」
「その前に、名前教えてもらって良いですか?」
「そういや言ってなかったな……時雨だ。それじゃあ俺の理の赤子君よ、願わくば幸多き生を歩んでくれ」
祝福するように言われた一言で俺の意識は無くなった。
「ーーーさて、と」
対峙していた少年が消えたところで時雨は立ち上がり、少年が座っていた椅子の上に乗っている球体を手に取った。これは少年の魂だ。そして時雨は少年の魂を持ったままリビングから外に出る。
リビングの外は混沌だった。何も無いように見えて、何かあるように感じられる。前に向かっているはずなのに後ずさっている。下を歩いているはずなのに逆さまになっている。物理法則を無視した世界が広がっていた。
時雨はその混沌の中を歩いて行き、奥にある光の中に少年の魂を入れた。
「ーーーお、早速干渉してきたな……ふむふむ、神々が暇潰しのために用意した世界ね……独立していたのはその為か……ならこっちには被害はなさそうだな……ん?」
その世界の情報を干渉から逆に読み取っていると、別の世界から餓鬼道に干渉しようとしている気配を感じた。餓鬼道の世界は時雨の覇道によって閉じた世界になっているので他の世界からの干渉を受けることは無い。
だからと言って、不快では無いと言うわけではない。
「誰だぁ?
怒りを隠そうとしないで混沌を素手で引き裂く。そこにいたのは時雨が外神と呼んでいた存在。時雨が餓鬼道から出てきたことに驚愕し、そして敵意を露わにしている。
「逃がさねぇ許さねぇ!!テメェラはこの俺が直々に掻き毟って滓も残さずばら撒いてやらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そうして親愛を歌う覇道神は
…………?転生出来たのか?周りが暗くてよく分からん。後なんか水っぽい。もしかしてまだ産まれていないのか?でもなんかこう……本能が暴れろと言っているんだが。
待っているのもアレなので本能に従って暴れることにする。とは言っても足や手を伸ばしたりする程度なのだが。
そうしているとーーー手が何かを突き破った。
……ファ!?え?何?もしかして母親の腹を突き破っちゃった?大惨事じゃないですかぁ!!
パニックになりそうだったが手を引っ込める時に堅い物に当たった感触がした。もしかしてこれって卵の殻か?まさかの人外転生?
だけどここが卵の中なら加減する必要は無い。えいやーと殻を壊して外に飛び出す。元の身体だったら楽だったんだろうけど今の赤んbodyじゃ重労働だよぉ……飛び出して視界に映ったのは茶色一色。赤ん坊の視力じゃはっきりしないけどもしかして洞窟か何かの中か?人外転生は確実みたいだな。
「あぁ……産まれたんだな……」
後ろから声がしたので振り返ったからそこには青い髪の人がいた。顔はボヤけていて見えないけど身体が細胞単位でこの人が母であることを告げていた。だけど……それとは別にこの人の声が喜びと悲しみが混じった涙声だったのは気になった。
「私の子供……あの人の息子……」
だが卵から出るのに疲れたのか、母に抱き締められて暖かい温もりを感じると抵抗する暇も無く眠りについてしまった。
〜我欲界餓鬼道
この小説の主人公である少年の世界の理。法則としては親愛の強化、家族友人親友学友仕事仲間など、程度はどうであれ身内と認識したのなら深く愛するようになる。要するに狭く、深く。その分、縁の無い他人には無関心になりがちな傾向になる。なお、それらによって害をなされると滅尽滅相しようとする。
〜magico
とある週刊少年誌で掲載されていた漫画。ファンタジーなのだがこの漫画での魔法は特定の儀式をすることで得られる使用制限ありの魔法。覇道神様は家族旅行でこの世界に行ったらしい。
〜外神
覇道の流出を受けていない別宇宙を納める存在の名称。キチ覇道神様は無関心だが我らが黄昏様はそれらすら抱き締めたいと望んでニートが頑張っている模様。だけど黄昏様が抱き締めたいと願っても向こうがそれを望んでいるとは限らないのだよ……
〜時雨
咒は第七天時雨、理は我欲界餓鬼道。私の書いていた別の小説の主人公で、その中では覇道神になることを拒んでいたがこの世界はなっていたらというifの世界。某ウンコマンの様な危険な因子は発生を感知したら即座に排除し、マトモな覇道であっても本人曰く『俺が愛した奴らが生きていた世界を任せるんだ。少なくとも俺が任せられると思った奴じゃないと譲ってやれん』らしく、特異点まで来る渇望持ちは現れるものの代替わりは起きていない。詳しく知りたい方は『調律者は八神家の父』をご覧下さい。