俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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 ぎりぎり間に合った!


058 《On Air Fourth》

「復刻! 第四回死んだ世界戦線ラジオ始めちゃいますかー!」

「テンションが高いなぁ……」

 キラッと某アイドルの様に決めたゆいにゃんを眺めつつ、俺はため息を吐いた。

「今日のゲストはゆいにゃん! いつもうるさいけど今日はめちゃくちゃうるさい!」

「だって私今回いい出番ないじゃないですかー! ひなっち先輩振って、しおり先輩に怒られただけですよ!? やってられっかー!」

「じゃあやらなくていいよ」

「構ってよー。最近ひなっち先輩も構ってくれないんですよー」

 そりゃ構ってくれないだろう。

 誰が好き好んで振られた相手に構っていくのだろう。

「ついでに今黙ってるけどゲストに音無君もいるから!」

「俺は関係ない」

 黙秘を続けている被疑者に話を聞きに行くと、マイクを放り投げられた。

 おこだなー。

「何? タッチーに仲間外れにされたこと怒ってんの? プ~クスクス! どう思いますかゆいにゃん!」

「豆腐メンタルですね!」

 思いきり絞め技をかけに行った音無君をスルーしつつ、俺は淡々と仕事をする。

 雨野多々はクールに去るぜ。

「最初は質問のコーナー! 最初の質問はこれ! 『悠さんが暴れて困ります。どうにかしてください。というかしろ! お前の姉だろうが!』とのことです」

「どう考えてもそれお前宛の懇願だろ」

「ギブ! ギブ!」

 絞められているゆいにゃんをスルーしつつ、悠姉さんが暴れてるのかーと想像して関わりたくないなーと思った。

 だってベッドの上で動けない状態なのに俺は振り回されていたわけでして。

 自由の身となった悠姉さんの相手を出来る気がしないわけでして。

「つまり諦めろ! 俺は犠牲になりたくない!」

「お前姉を何だと思ってるんだよ……」

「というかもう自然災害だよね。台風とかそういうレベルだよ、アレ。周りを巻き込んで被害を大きくしていくタイプ。しかも自分自身も超巨大」

「人類滅亡クラスじゃねぇか」

 ぽっくりと逝って戻ってきたゆいにゃんが首を撫でながら立ち上がる。

 そんなにガチで絞めてたのか。

「まぁ姉さんも生前はあんまり動けなかったからさ。好きにさせてあげてよ」

「多々……。そんなしんみりするセリフ言いながら、絶対お前内心台風の進路をこっちに向けないでくれって思ってるんだろ?」

「言わせんなよ恥ずかしい」

 だろうなと言う音無君のツッコミは無視します。

 無視しますったら無視します。

「次の質問! 『普通のコーヒーが売り切れています。何故かわかりますか?』そんなのここに犯人がいるじゃん。な、コーヒージャンキー」

「俺は別にコーヒージャンキーってわけじゃないんだが……」

 不満そうな顔をする音無君。

 その顔に俺が不満です。

「取り敢えず昨日何本飲んだ?」

「最近は減らしてるからな。10本だ」

「……その前の日は?」

「11本だな」

「その前の日は?」

「12本だな」

 なんだろう……嫌な予感がする。

「一週間前は?」

「お前の様な勘のいいガキは嫌いだよ」

「俺多分音無君より年上だよ」

 音無君に鋭い右ストレートをぶっぱなしながらそう言うと、仕方なくゆいにゃんの相手をすることにした。

 コーヒージャンキーは消え去ったのだ。

「次の質問。『最近熱くなってきましたが、水着でプールで泳ぎませんか? 川でも可』 ほほぅ……水着ですか」

「あ、これ変なスイッチ入ったパターンだ」

「水着は本来下着と同じような形をしているにも関わらず、水着だからと見せることに抵抗の無い者達が多い。つまり合法的に下着を見れると言うこと……!」

「しおり先輩に通報しておきました」

「やめてよー。しおりに言われたら俺死んじゃうよー」

「多々先輩めんどい」

「何、いつもと反対だと!?」

 不毛な争いだからやめました。

 というかゆいにゃんにめんどいって言われると結構傷つく。

 こう……馬鹿に馬鹿って言われるみたいな。

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん! あたしも混ぜろー!」

 唐突に現れたしおり。

 一歩下がって全力ダッシュで逃げようとする俺に対し、しおりは右手を掴むとそのまま俺の手を引いて抱きしめた。

 俗にいう、首をキメてきている状態である。

「はっはっはっ。合法的に下着が見れることが嬉しかったかい?」

「ちょ、ちょっと待ってしおり。締まってる。締まってる……!」

「絞めてるんだよ。言わせないで恥ずかしい」

「恥ずかしがる要素どこにもないですよねぇ……!?」

 完全に殺しに来ていることを理解した俺は、必死にもがく。

 もがく度に、こう首に幸せな感触がくるわけで。

 まぁ必然的にそれを理解しているしおりも恥ずかしがるわけで。

「なんで絞める力を弱め、ない、の」

「だって早く逝かせれば、恥ずかしいのは少しで済むじゃん?」

 可愛い顔で絞められた俺は逝った。

 

 

 

「というわけでここからは超絶美少女しおりんが司会をするぜ!」

「しおり先輩ちっすちーっす」

「おやおや、やる気がないゆいにゃんじゃないか。おいでおいで。遊んであげるよ」

「いや、ホントマジですみませんでしたから、そのにこやかな笑顔をやめていただいてよろしいでしょうか? 死ねる」

 冗談が通じないなーと言いながら、少しゆいにゃんを絞められなかったのが残念だ。

 なんで今回はこんなに絞め技が多いのかって?

 絞めだからだよ。言わせんなよ恥ずかしい……。

「にしてもよく彼氏を失神させるよな。本当に付き合ってるのかお前達」

「おっ。煽られてる? もしかして私煽られてる?」

「煽りよる(笑)」

「よろしいならば戦争だ」

 コーヒージャンキーを殺しに行こうとすると、まぁまぁ落ち着いてと復活したタッ君に言われてしまった。

「まったく仕方ない。早めに蘇ったタッ君に免じて許してやろう」

「ですってジャンキー」

「ただしゆい。てめーはだめだ」

 てめーは私を怒らせた。

 何もしていないのに理不尽だと騒ぎ始めたバカはおいておいて、とりあえず司会進行を進めるとしよう。

 私は司会なのだから。

「取りあえず実はタッ君を失神させたかったのには理由があるのよ。以前の放送で戦線ランキングっていうのを発表したでしょ? それの続き」

「あー。そういえばそんなこともあったねー」

「そうそう。それについて投票があったから、さっそく発表してくね。題して『戦線の中で彼氏にしたい人ランキング!』」

 彼氏にしたい。

 それはモテそうとか、結婚したいランキングとは全く違う未知のランキング。

 何故なら自分が付き合ってもいいと思える人というのは、かっこいいとかというのはまた別の感情や評価が入ってくるからである。

 つまりタッ君達男性陣にはわかりにくいランキングなのである。

「それはまぁ気になるな。男子陣にとっては結構重要なことだろうし」

「あれ? コーヒージャンキーはあんまり気にならないタイプ?」

「いやそんなことはないけど。男子だからもちろん気になりはするさ。でも結局最後に決めるのはその二人であって、周囲の意見なんてあんまり関係ないだろ」

「おー、イケメン」

「ただそれが貧乳好きの妹大好き人間の言葉だと考えると色々と考えさせられるよね」

 回りの反対を押し切って妹に告白しそうな人だし。

「因みにこのランキングからは既に付き合っているタッ君と、付き合っていそうで付き合っていないちょっぴり付き合っている高松君も除いています」

 となると結構限られてくるんだよね。

「というわけで上位三位の発表!」

「結構緊張するな」

「第三位! これはちょっと意外な、大山君!」

 大山君の名前を出すとタッ君がちょっぴり気難しい顔をするのが好き。

 その時の微妙そうな顔がまたかわいいんだよね。

「理由としては、戦線の中では一番人畜無害そうとのこと。他にも、個性があまりないから色々な趣味に付き合ってくれそうとかあるね。要するに自我が強い子達から好かれてる」

「まぁわからなくもないな。自分に合わせてくれそうってところだとやっぱり大山が上に来るんだろう」

 なんかコーヒージャンキーが解説者になっているのが気に食わないけどまぁ妥協しよう。

「まぁ反対意見もあったんだけどね。あまりにも趣味が無さすぎるとか、ちょっと普通すぎてNPCと一緒にいる感覚になるとか」

「普通っていうのも好き嫌いが分かれるものだからな」

「俺はちょっと苦手。やっぱりNPCの感性っていうのが体の中にちょっと残ってるし」

 それはまぁ仕方がないんじゃないかな?

 基本タッ君NPC嫌いだし。

「なんていうか引っ張られてる感あるんだよね。あぁしなきゃみたいな」

「まぁそれは多々にしかわからないことだから俺達はなんとも言えないけど、そう思うんならそうなんだろう。お前の中ではな」

「なんで今日こんなに喧嘩売ってくるのこのコーヒージャンキー」

 まさに煽り芸である。

「第二位に行くね。第二位はまぁちょっとわかるけど、ゆいは気分複雑! 日向君!」

「本当に微妙な気分になりますね!」

「でもまぁ妥当な理由ではあるよね。一緒にいて面白そうとか、何気ない気遣いをしてくれそうとか」

「ぐ、ぐぬぬ……」

 ゆいがすごい顔をしているのを見て笑っていると、それ以上はやめときなよとタッ君に言われてしまった。

 タッ君に言われてしまったら仕方がない。

「まぁゆいが無理なら日向はホモの道に走りそうな雰囲気あるよな」

「や、やめてくださいよ! そんなこと言われたら振りづらい」

「振る気満々なんだ。まぁ仕方ないけど」

 そこらへんはきっと次で明らかになるだろうし。

 こんなところで本当の気持ちをきいてもしょうがないし。

「んで、一位だったのは音無君と。わかってたでしょ」

「んー、一応あの戦線ではまともな部類に入るとは思ってたけど、別に付き合いたいと思われているとは思わなかったわ」

「あぁそういう考えはあるかもね。まともな人っていうのは結局一握りしかいないわけだし。その一握りに俺は入っていないわけだし」

「まともな部類ではないよな」

 まともな部類に入ってるのが少ないって、もうそっちがまともじゃないんじゃないのかなと思ったりする。

 実際戦線ではまともなほうが頭おかしいみたいな扱い受ける時あるし。

「取り合えず発表し終えたけど、どうだった?」

「ある程度予想できる順位だったからなんとも言えないよね」

「逆にそうだよね。取り敢えず時間も時間だし終わりの挨拶かな」

 私がそういうと、タッ君は頷いた。

「これにて七章は終了とさせていただきます!」

「また次回! 八章をお楽しみに!」

「お相手は、何かいいことあるのが俺雨野多々と」

「何かいいことあったら嬉しい関根しおりと」

「何かいいこと見つけるゆいにゃん!」

「何かいいことあるといいな。音無結弦でした」

「次回をお楽しみに!」

 




 PCのディスプレイが逝かれました。
 めっちゃぶれてて辛い……。
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