俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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 今回で7章は終了となります。
 そしてあとがきが長いです。
 色々と投稿していない時期があったので、それについての謝罪や、この小説についての話などを載せておきます。
 よければ見ていただけると幸いです。


057 《Reversible》

「文化祭が近づいてきたわ」

 ゆりちゃんが久しぶりに戦線メンバーを集めたと思ったら、言ったことはそれだった。

 しかしだ。

「何故天使がここにいる!」

 野田君が案の定ハルバートを構えているが、それをゆりちゃんが宥めた。

「今回は生徒会と合同よ。なんでも、いつもはしゃいでる私たちの力を借りたいんですって」

「今年の文化祭のテーマが、はしゃげ・騒げなのよ。だからいつもはしでいる貴方達の力を借りようと思って」

 まさか生徒会から協力を頼まれるとは思わなかった。

 というか生徒会と戦線って争ってるんじゃなかったっけ?

「ふん。俺達の力を借りなければならないとは無様な」

「お前は文化祭を何だと思ってるんだ……」

 野田君がアホなのはいつものことだからいいとして、それにしても酷いな。

「なら基本方針は私達が決めていいのよね?」

 頷くタッチーに対して、ゆりちゃんがにやりと笑みを深める。

 あぁ、これは何か企んでいるな。

「なら今回の文化祭は仮装パーティで3日間やるわ!」

「長いわね。でもコンセプトはいいと思うわ」

 なんか妙に生徒会が協力的だ。

 気になったので音無君を見ると、さっと視線を逸らされた。

 誰にも気づかれないように視線を逸らすあたり、きっと本当にばれたくないのだろう。

 なら仕方ない。言わないでおこう。

 ただし後で食券を貰ってやる。

「しかしあれね。生徒会からの協力がここまで得られると、逆に気持ち悪いわ。何を企んでるのかしら音無君」

「えぇ!? 俺!?」

 いや君だろうに。

 どう考えても生徒会へとアプローチをかけることができて、尚且つ戦線の願いを叶えることの難しさを知っている人物は君しかいないだろう。

「彼は関係ありませんよ」

 そこでまさかの助け舟を出したのは、直井だった。

 お前が助けに入るのかーという驚きを覚えながらも、まぁ隠蔽工作をさせるならこいつが一番かなと思う。

 何せ催眠術があるのだから。

「確かに彼は会長と仲良くしていますが、あくまでもそれは会長個人とのこと。我々生徒会は彼の意見を通すつもりなどありませんので」

 突っ込みにくい最低限のことだけを告げ、直井は一歩下がる。

 流石のゆりちゃんでもこれが、生徒会と戦線の問題であって、タッチーと音無君の問題ではないと察したようだ。

 まぁ実際は癒着してるんですけどね。

「仕方ない。信じるわ。仮装パーティと言っても、別に全員が全員仮装しなければならないわけじゃない。そちらは好きにどうぞ」

「過度な露出は禁ずるわ。不純異性交遊に発展する可能性があるから。特にそこ」

 タッチーの指が俺を指していたので、すっと体を退ける。

 するとなんということでしょう。そこにはみゆきちちゃんの姿が!

「し、しないよぅ!」

「本当にそうかしら? 実は露出魔だったり……」

「しません!」

 本当にと再確認するタッチー。何故みゆきちちゃんを露出狂にしたがるのか。

 まぁ露出はさせられることになるんでしょうけど。

 主にしおりのせいで。

「そういえば。GirlsDeadMonstersだったかしら?」

 ふと俺の方を向いてきたので頷くと、タッチーは驚くべきことを告げた。

「貴方達に生徒会から正式にライブを申し込むわ」

 空気が静まり返る。

 それは生徒会として絶対にあり得ないことであり、同時にしてはいけないことであった。

 公認ではない器具を勝手に使っている者達へ、使用を認める様な宣言。

 しかも時間帯的にやってはいけない時間にライブをしているのだ。

「……本当にどういうつもり?」

「どういうつもりも無いわ。努力している者はいつか実る。それだけよ」

 タッチーはそう言うと、校長室を後にした。

 まず校長室に来た以上、ここを戦線が使用していることを認めている様なものなのだが。

「厄介なことになったわね。そういうやり方もあったのね……」

 やられたと理解しているのは、きっと俺とゆりちゃんだけだろう。

 他はいきなりどうしたんだと言う顔をしている。

「ゆりっぺ、そりゃどういうことだ?」

「彼女達は方針を変えてきたのよ。問題を起こさせない様にするんじゃなくて、予め問題を組み込んで来たの。やられたわ。これじゃあ例えガルデモがゲリラライブをしたとしても、文化祭の一部として片づけられてしまう。それに私達主催な以上、私達の行動全てが文化祭の進行通りってことね」

 流石の音無君も驚いている以上、彼がかかわっていたのは最初だけなのだろう。

 後で音無君から少し話を聞くとして、こうなった以上やらなければならない。

 ライブをしない、という選択肢はない。

「やってやろうじゃないの」

 ゆりちゃんはそう告げた。

「私達がやることが全部計画通り? そんなもの超えて見せる。私達が企画するんだもの。地獄の様な文化祭にしてやるわ!」

 おっほっほと言いながら去っていくゆりちゃんを眺めながら、リーダーって大変だなと改めて感じた。

 

 

 

「で、音無君はどこまで知ってたの?」

「最初だけ。俺が言ったのは、文化祭をみんなで楽しむ為に、戦線主体でやったらどうかなってところまでだ。それ以上のところは正直知らなかった」

 いつものコーヒーを飲むコーヒージャンキーに対して、サイダーを飲みながら話す俺。

 実にいつも通りの風景だった。

「つまり隠されていたと」

「という感じじゃなかったのはお前もわかってるんだろ?」

 あ、ばれてるのねという感覚で音無君を見る。

 最近俺の考えを読む人が多くて困る。

 プライバシーなんてなかったんや。

「誰かが意見を出したみたいな感じだよね。勿論直井じゃなさそうだったけど」

 あいつもあいつで、誰かから教えてもらったみたいな感じだったし。

 となるとまぁこんな愉快痛快なことをしてくる人は一人しか知らないわけで。

「姉さんかなー」

「お前の姉さんって、この世界にいたのか?」

「いるらしいよ。しおりが会ったって。まぁ最後には会うことになると思うよ」

 どういうことだよと言う音無君を軽く流して、よくもまぁはっちゃけたなぁとしみじみ思う。

 ベッドの上で出来なかったことを、楽しんでいるならそれでいいんだけど。

「ならお前の姉さんが入れ知恵したってことか?」

「そうだろうね。ってことは直接的に生徒会に意見を言える立場に入ったのかな? 生徒会顧問とかやってそうだけど」

 まぁおおよそ当たっているだろうなと思いつつ、姉さんの最近の露出の多さに少し驚く。

 服的な意味じゃなくて出番的な意味で。

 時間がないって、ことなのかな?

「ねぇ音無君。音無君はさ、この世界で苦しい過去を持ってる人達を救いたいと思ってる?」

「最近な。そう感じてるようになった。俺自身救われてないから何とも言えないけど」

 それは救われてたら、すぐさま行動に移すくらいの覚悟があるってことなんだろうな。

 そして多分、音無君は救われているんだろう。

 タッチーが音無君に救われているみたいに。

「そっか。ならいいかな」

 きっと世界はまだなくならない。

 時間がないってことはつまり、そういうことなんだろう。

 救いたい人達を救うことができない時間がくる。

 つまり、世界の崩壊は始まっているってことだ。

「取り敢えずジュースごち」

「あぁ。言わないでくれよ」

「音無君自体被害者みたいなものだしね。本当の加害者は一人だけだろうし」

 音無君が疑問の目を俺に向けてくる。

「というか本当にお前のお姉さんなのか? 別人って可能性はないのか?」

 姉さんじゃない人が、この世界を動かしている?

 バカバカしい。そんな考え、あるはずないじゃないか。

「俺は姉さんがやってるって信じてるよ」

 この信頼関係だけは、絶対に崩れないんだから。

 

 

 

SIDE:直井

「やぁやぁ生徒会諸君こんにちは。世界一の美少女こと雨野悠さんだよ」

 あまりにもあっさりと登場した黒幕。

 彼女のことを黒幕と気が付くことができたのは、僕だけだった。

「雨野多々の姉、雨野悠だと……!?」

「おやおや驚いているね直井君。私は君に感謝と尊敬を持っているのだから、もっと親しく悠おねーさんと呼んでもらっても構わないよ」

 お姉さんというにはあまりにも貧相な胸をしているものの、まぁ僕にとってはいい感じの大きさなので気にしない。

「おっと内心でディスられた気がする。処す? 処す?」

「テンションが高いな。本当に雨野悠なのか?」

「私が雨野悠であることは決定事項であるし、そもそもそんな質問に意味はないよ直井君。自分が自分であることを証明できるのは自分のみであり、相手がどう思っているかなんて然程重要なことじゃないんだから」

 訂正しよう。

 確かにこの女性は雨野多々の姉だ。

「何故ここにいるのかしら?」

 会長の言葉に、悠さんはにやりと笑みを浮かべた。

「今日から生徒会顧問になってね。君達に色々とアドバイスをしてあげるためにここに来たのさ」

 顧問というと、やはりこの世界のイレギュラーもしくは神は悠さんだったのか。

 子供しか来れないはずの世界で大人になっている時点で、彼女は異常過ぎる。

「あり得ないわ。大人はこの世界に来ることができない」

「ふむ。中々重要な意見をありがとう。では聞こう。いつからこの世界が子供しか来れないと錯覚していた?」

「なん、だと……」

 素で驚いてしまったが、仕方がないだろう。

 子供しか来れないわけではない?

 つまりこの世界には父もいる可能性が――。

「まぁ来れないだろうね。君の仮説は概ね正しい。正確には来ても意味が無いから来ないと言う方が正しいか。例えは直井君。君は辛い過去を持っているから、この世界に来ることができた。だけど未練があるとして、童貞コミュ障ヒキニートがこの世界に来れると思うかい?」

 来れない、のか?

 いやだが虐められていたと仮定すれば、来れるはずだ。

「結論は来れない。いやこれは童貞コミュ障ヒキニートを批判しているわけじゃなくて、要するにどうにかなることとどうにもならないことの違いなんだよ」

 虐められていたからこの世界に来た。

 そんな人間が来れるならば、この世界はそれこそ溢れかえってしまうだろう。

 だがそうじゃない。

 度合によるということだ。

「虐められていて何もアクションを起こさずに引きこもり、親の脛を齧って生きてきたとしよう。そんな人生認められないと思うとしよう。そんな奴をこの世界は認めない。アルバイトをすればよかった。誰かに打ち明ければよかった。転校すればよかった。それでどうにかなるような奴は、この世界に来れない。この世界に来れるのは、大人まで生きられないほど酷い世界を体験している者達だけなのだから」

 大人はこれないわけではない。

 大人まで生きることが出来ていることが、どうにかなってしまったことの証明だとされているのだ。

 勿論大人まで生かされてしまった者もいるだろう。

 そういう者達だけがこの世界に来れるのなら、大人は自然とこの世界には来れない何かを見つけている。

「ちょっと難しかったね。要するに、大人はこの世界に来ることはできる。ただし、大人まで生きれた時点で、この世界にいる子供達程苦しい目にはほぼ合ってないってことさ。何せ大人というチャンスすら与えられずに死んでいくんだからね」

 なら。なら目の前にいる彼女はどれほどの過去を持っているというのだ。

 大人なのにここに来てしまうなら、どれほど辛い世界を見てきたというのだ。

「さてと、無駄話はここまでにしようか」

 パンという一拍子によって、僕の思考は止められた。

 会長も何か考えていたのだろうが、それもストップをかけられた。

 視線が集まる中で、悠さんは笑顔で告げた。

「戦線と生徒会の一大戦争をしようじゃないか」




 7章終了!
 とまぁ最近悠おねーさんがたくさん出てきていますが、別に話数を減らそうなんて考えていませんよ!
 本当はもうちょっと7章として書きたかったんですけど、話の区切り的にここがベストだったのでこの57話を7章のラストとさせていただきました。
 日向の恋、音無の記憶、高松の恋に関しては8章9章で決着をつけたいと思います。
 今までしていなかったのに何故章終わりのあとがきをと思う方はいるかもしれません。
 ただ最近友達からもわかりにくい部分が増えてきたと言われたので、少々あとがきで言わせてください。すみません。

1.何故悠の口調が変わっているのか。
 これは口調を忘れていたとかではなく、単純に悠というキャラの性格に問題があると考えていただいて構いません。彼女は言ってしまえば、多々と二人きりの時だけあの口調になるのです。

2.あのおっぱい会議はなんだったのか。
 ネタです。趣味です。友達におっぱい成分が少ないと言われたからです。

3.日向が蓮君
 これはどうしてもこの小説の設定上、日向には刹那が好きな日常の大切さをする人間になってほしかったからです。

4.他の人のルートはないのか
 あります。バッドエンドか原作と同じように消えるエンドしかないですけど。

 とまぁこのくらいにしておきますが、わからないことがあれば聞いてもらって構いません。
 答えられる範囲であれば答えようと思います。
 この件については本当に申し訳ありません。

 そして何より、投稿期間についてです。
 本当に申し訳ございませんでした。
 失踪したと言ってもいい程長い間投稿しなかったにも関わらず、多くの方々に待っていましたという言葉をいただき、感謝で胸がいっぱいになりました。
 読者の方々の暖かいお言葉のおかげで、自分はこのように感謝してもらえるようなことがしたいと思い将来の夢を決めることができました。
 拙い小説ではございますが、皆様を笑顔にできたらと思います。
 これからも『俺としおりんちゃんと時々おっぱい。』をよろしくお願いします。

第8章《晴れ時々豪雨~Clear sometimes heavy rain~》
「私、ずっとずっと好きだった」
 to be continued

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