本当に申し訳ございません。
スランプを抜け出せず、現在もスランプのままですが精一杯書きました。
これまで書けなかったブランクもあり、下手くそな文章が更に下手くそになってしまったかも知れません。
それでもだんだんと更新感覚を詰め、出来る限り毎週投稿できるように戻りたいと思います。
よろしくお願いします。
「やっぱね、ゆいにゃんはおっぱいをもっと大きくするべきだよね」
「ふんっ!」
久しぶりのしおりの
ここに集まっているのは、しおり、みゆきちちゃん、俺、まさみちゃんの四人だ。
ひさ子ちゃんが居れば俺のハーレムカッコ仮なのになぁ。
「また変なこと考えてるでしょタッ君」
ギクリとする俺に対し、ため息を吐くだけで許してくれるしおり。
流石のしおりも、俺が常にそっち方向に頭が向かってしまうことを理解しているんだろう。
「後でハートブレイクしないとダメかなぁ……」
「申し訳ございませんでした。謹んで謝罪させていただきます」
あの痛みを知っている者ならば、二度と受けたくないと思う一撃を。
彼女の一撃は既に進化した!
「それはメガ進化ですか?」
「ひさ子さんとのジョグレス進化」
「交わるんですねわかります」
ゆっりゆりだね! と親指を上に上げてグッドを表すと、ハートブレイクパンチが飛んできました。
その場で苦しむ俺に、誰も反応してくれない。
まるでいなかったように扱いやがって!
「兎は寂しいと死んじゃうんだよ!」
「タッ君は兎と言うよりも狼だから大丈夫」
「ぼっちと申すか」
「私がいるでしょ?」
「「エヘヘヘヘ」」
ガタンと言う音と共に立ち上がったまさみちゃんとみゆきちちゃんに土下座して謝り、本題であるゆいにゃんと日向君の話に戻る。
「取り敢えず戦犯は日向君だとして、次点でゆいにゃんかな」
「ゆいにゃんも悪くはないとは言えないからねー」
「あの雰囲気を出していた日向君も悪くないとは言えないしね」
どっちもどっちだけど、正直俺達には自分以外の恋愛なんて殆どないわけで。
そんな恋愛処女の俺達が――俺の場合は恋愛童貞?
「ねぇ、恋愛処女ってよく聞くけど、男子の場合は恋愛童貞?」
「タッ君はただの童貞でしょ?」
「うるさい処女ビッチ」
「なんだと経験豊富系チェリー」
「なんだかんだ言って、お前達ってすごい仲いいよな」
わかってくれるかまさみちゃんと思い感動の視線を送っていると、しおりに横っ腹を抓られた。
ハハハ。嫉妬は止したまえ。
いや、ほんと、その拳を下ろしてください。
「しおりん、そろそろ話進めないと」
「おっとそうだったぜみゆきち。私達はゆいにゃんと日向君の恋愛を成就させる通称【日向君成就作戦】をさっさと進めないといけない」
「その名前長いから、日向作戦でいいよもう」
「オッケー」
日向作戦の概要を考えようとするも、やはりここに恋愛経験の差が出てくる。
方や付きやっていたとはいえチェリー。
方や最近付き合いだしたとはいえ処女。
方や人見知りの可愛い子。
方や音楽キチ。
どう考えても恋愛のことを語れるメンバーなんてほとんどいない。
「俺としおりと同じ様にするのもありだとおもったけど、まぁあんなのは稀有な例だからね」
「――ゆいと日向は稀有な例じゃないのか?」
予想外の、まさみちゃんからの言葉に俺はきょとんとする。
稀有な例じゃないかと聞かれれば、稀有な例だ。
ただ高松君と遊佐ちゃんみたいな、友達からの普通の恋愛ってわけでもない。
「なんていうか、仲の良かった男子がいきなり告白してきたみたいな感じだよね」
「ビックリして断っちゃったけど、実は気になる的な?」
「少女漫画みたい……」
「みゆきちは少女だから少女漫画を読んでたんだね!」
ちなみにサブカルチャーの深さから、しおりが何を読んでいたかはお察し。
勿論俺もお察し。
「ふむ。両方共互いに相手のことを好きだけれど、この現状の関係性を壊すのが怖すぎて何も出来ないし、なにかされてもそれを流してしまおうって状況ってことか。ややこしいね」
全員が神妙に頷いたのを見て、俺も頷く。
これが一番手っ取り早いのは、他にも多くのカップルを作ってしまうことだ。
周りがカップルになれば、ゆいにゃんは恐らくそれに流されて日向君の告白を受け入れるだろう。
でも――。
「ゆいにゃんの周りで、カップルにさせれる人達がなぁ」
多分、俺達を含めて二組しか出来ないでしょ。
俺としおり、高松君と遊佐ちゃん。
もしかすると音無君と誰か。
他のメンバーは基本的に、女子は付き合うものじゃなくてつるむものって感覚が今までの戦線生活でかなり溶け込んでいると思うから、かなり難しいと思う。
それこそ高松君みたいに元から好意を持っていたとか、俺や音無君みたいに新しく入ったメンバーしかいないだろう。
だったらなんで、日向君はゆいにゃんのことが好きなんだろう?
ずっと前から好きだったなら、その鱗片くらい見てもいいはずだ。
そんなことにも気が付けないほど、日向君の演技ってうまかったけっけ?
出されたお茶を口に含みながらそれについて考えていると、コトンと湯呑を落としてしまった。
もう飲み干していたからいいものの、あまりに自然に落ちた湯呑を見て一瞬惚けてしまう。
「どうかしたのタッ君?」
「いや、湯呑落としちゃったからさ。ちょっとびっくりしただけ」
「そっか」
今の一瞬で見抜かれたであろうしおりを気にしないふりをして、俺は話に戻った。
「取り敢えずやっぱりゆいにゃんにはメリハリが足りないと思うんだよね。最近話題のロリ巨乳って言うのがいいかもしれないよ」
「どの界隈で話題なの?」
「戦線男子」
「そう」
しおりからの肝臓打ち、まさみちゃんからのストレート、みゆきちちゃんからのチョップを受けて俺はその場に撃沈した。
あぁここにいる人、最高でも普通くらいしか無かったんだった。
「女性の前で胸の話をするのはどうかと思うよタッ君」
「ははっ。それもそうだったね」
しおりのジト目にヘラヘラと笑い、チラリと他の女子のメンツを見る。
B、B、C。
「しおりがやっぱり一番だよ」
今度はまさみちゃんからの顔面パンチ、みゆきちちゃんからの肘打ちで口から酸っぱいものが出そうになった。
段々と威力が上がっていく気がするのは気のせいだろうか?
「で、結局のところどうする? ゆいにゃんにメリハリをつけるのがダメだと俺の意見はもう底をついちゃうんだけど」
「そんなことで底を付くタッ君の意見の少なさに絶望したよ」
ズバズバと心を抉られた俺は体育座りでしくしくと泣き真似をする。
しかし普通に無視して話が進められ始めたので、仕方なく会話に参加することにした。
べ、別に寂しくなんてないんだからね!
「それで実際のところどうなの? ゆいにゃんと日向君の仲を取り持つなんていうことが、俺達にできるとは思ってないんだけど」
「うわぁ。根本的な問題にたどり着いたね」
さっきからちょっと上から目線でどうかするかを考えていたけれど、そんなことが本当に出来るとは限らないのだ。
「恋愛経験が一番多いのが俺の時点で、ぶっちゃけお察しっていうか……ね」
「まぁそうだよね。私達って他人の恋愛に手を出してるくらいなら、自分達の恋愛してろよって言われるレベルだよね」
「そんな私達が恋愛指導……」
まさみちゃんは少し考えてから、無いなと告げた。
「でも、手伝えることはあるはずだよ」
まっすぐと明確な意思を持って告げたみゆきちちゃんに、俺は頷く。
恋愛は殆ど知らなくてもいい。
それでも助けられる人がいるのなら。
「頑張ろうよ」
みゆきちちゃんのその言葉に俺達は笑顔で答える。
「「「うん」」」
俺達は歩み始めることができるはずだ。
パタンと言う音と共にまさみちゃんが帰り、僕はふぅと大きく息を吐く。
ここに残っているのはみゆきちちゃんとしおりと俺だけで、俺は今日は部屋に戻らないつもりだ。
別に戻ったところで、待っているのは何の反応も無いNPCなのだから。
「ねぇタッ君。教えてくれるかな?」
だけど今は帰ることにした方が良かったかなと思ってる。
どの道しおりは逃がしてくれなかったと思うけれど、それでも今ほど厳しい視線は受けずに済んだはずだ。
「いつから?」
「今日からかな。最初の違和感は、空き缶が投げて入らなかったところ」
隠しても仕方がないので素直にそう言うと、しおりは唇を少し噛みながら俺に近づき、パンといい音を立てて頬を叩いた。
「ただの間違いだと思ってたんだけどね。さっきの湯呑で本格的に気がついた」
「前兆を見逃すタッ君じゃないよね」
「うん。まぁそうだけど」
前兆はあった。
その前兆を、こういうことの前兆だとしっかりと理解していた。
だけど――そうじゃないと心の何処かで決めつけてしまっていた。
「しおりん、どうしたの?」
「タッ君は今、文字通り消えかけてるの」
消えかけていると言う言葉で成仏と言う言葉を察したみゆきちちゃんは、首を傾げる。
今まで消えれないと苦しんでいた俺が消えかけているとすれば、それは勿論喜ばしいことでもあるのだろう。
しかしそうじゃない。
「成仏じゃない。俺の消えかけてるって言うのは、存在そのものだよ。肉体と精神が違う人物だから、いつかは起こるかもしれないとは思っていたんだ」
ご存知の通り、僕の体は僕のものじゃない。
天野夕緒と言うもう一人の雨野多々の体を借りている状態だ。
だからこそ、摩耗が発生する。
動くたびに、生きるたびに精神は肉体と衝突し、体に負担をかける。
本来動かせないはずのものを、無理矢理動かしている状態に近いんだ。
それも、NPCと言うかなりの情報媒体を持っている体を。
「魂の摩耗。しおりと漫画の話をしている時に可能性で話してはいたけれど、まさか現実になるなんてね」
はははと空笑いするけれど、今が全く笑えない雰囲気だってことぐらいわかってる。
俺だって怖い。
自分の知らないところで、自分が死にかけてたなんて思いたくない。
だって漸く天野夕緒とも分かり会えたんだ。
漸く話すことができたんだ。
漸く本当に大切にしてあげれるかもしれない人が見つかって、やっと愛してると言っても消えない人が出来たんだ。
やっと人としての幸せを知れそうになったんだ。
そんなの――認めたくないに決まってるじゃないか。
俺は完璧超人なんかじゃない。
ただ生きる為に精一杯生きている人間で、だからこそ怖いんだ。
「体に支障が出たって言っても、生死に関わるレベルじゃないし一日に一度や二度レベルだから大丈夫。でももし俺に何かあるレベルになったら、皆に言って欲しい」
「それまでは隠すってこと? 今まではそんなこときにしてなかったのに――」
「
その怖さを乗り越えることができない。
当然だ。今まで僕は大切なものは失うものだと思ってた。
だけど失わずに済むそれを見つけてしまったから。
失わないでいられるそれを見つけてしまったから。
自分のせいじゃない何処かで、唐突に無くなってしまわない普通の幸せを知ってしまったから。
俺は――怖くなる。
「……わかった。タッ君がそう言うなら私は言わない」
「しおりん?」
目を閉じてしおりはそう言った。
「みゆきちはどうする?」
「しおりんがそう決めたならそれでいいよ。でも多々君、一つだけ約束して」
みゆきちちゃんの言葉に、俺はみゆきちちゃんの方を向く。
「絶対にしおりんを悲しませないで」
そこにあるのはいつもの辿たどしい少女の姿じゃなくて――覚悟を決めた女性の姿だった。
「うん」
即答しなかったのは、彼女のその思いに押されたからだ。
俺が本当に答えるべき言葉は、そうではなかったはずなのに。
「俺は絶対にしおりを悲しませないよ」
結局俺は、嘘吐きだった。
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